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私たちの発言は「負債」になるか、「未来への投資」になるか

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こんにちは。株式会社ココナラのマーケットプレイス開発部 Web開発グループ バックエンド開発チーム所属のさいぴーです。

こちらは株式会社ココナラ Advent Calendar 2025 12日目の記事です。

はじめに

突然ですが、私はコミュニケーションに関して「気にしすぎる」タイプの人間です。

この言い方で相手は傷つかないだろうか。あの発言は誤解を生まなかっただろうか。
さっきのSlackの返信、冷たく感じられなかっただろうか。そんなことを考えてしまうことが1日に何回、何十回もあります。

そこで、他の人はどうやってコミュニケーションをとっているのだろうか、と観察するようになりました。
その結果、私なりにコミュニケーションにおいて重要な3つの要素が見えてきました。
それが、相手の持っている情報を知ること、相手のレベルを知ること、相手の感情を知ること、です。

そして、それらを前提としたコミュニケーションを実践することも、プロダクト開発を成功させる一つの重要な要素だと考えています。

この記事では、この3つの要素を軸に、エンジニアとして働く中での「相手を知る」ことの大切さについての持論を書いてみます。

何のためのコミュニケーションか

私たちの日々の開発業務において、コミュニケーションがどんな時に発生するか振り返ってみましょう。
要件の不明点を洗い出す時、アーキテクチャやAPI、DBの設計をしている時、コードレビューをしている時など、様々なシーンでコミュニケーションは発生します。

では、それらのコミュニケーションは何のためにあるのでしょうか。
目の前の議論に勝つためか。それとも、自分の正しさを証明するため、相手の間違いを指摘するためか。

違うはずです。

そもそも、私たちの目標は、プロダクト開発、問い合わせ対応、プロモーションなど様々な施策を通じて、ユーザーに価値を届け続けることです。
その結果として、ユーザーにサービスのファンになってもらい、その対価をいただくことで事業を継続させることです。

そして、そのためには、チームで協力し、早く、安全に、良いプロダクトを創り続けることが必要になります。

この目的に立ち返ったとき、メンバー同士の意見の交流、議論は欠かせません。多角的な観点からあらゆる可能性を考えることが重要です。
「コミュニケーションは大事ですよね」という言葉をよく耳にしますが、それは単に「気持ちよく開発をするため」だけのものではありません。
コミュニケーションとは、ユーザーに価値を届けるための一つの実践的な手段です。設計や開発、ドキュメンテーションなどと並び、重要な要素です。

コミュニケーションってなんだろう?

では、「早く、安全に、良いプロダクトを創り続ける」ためのコミュニケーションとは何か。
私は、物事を決めつつ、メンバーの成長を促しつつ、チームに健全な影響を生み出すこと、少なくともこの3つが達成できれば、良いコミュニケーションである、と考えています。

逆に、例えば、早く決めることだけを優先して、メンバーの成長を妨げたり、仕事を奪ったり、心理的に負担を強いるようなコミュニケーションは、
短期的、かつ緊急事態などの状況においては正解とも言えるかもしれません。しかし、中長期的な組織成長においてはどうでしょうか。
そのような決定は、技術的負債と同じように、「コミュニケーション負債」として組織に蓄積していきます。

上記に挙げた「物事を決める」「メンバーの成長を促す」「チームに健全な影響を生み出す」の3つを達成するために必要なのが、最初に書いた「相手を知る」ことだと考えています。

相手を知るということ

こんな経験はありませんか?

  • 背景を共有していない相手に前提をすっ飛ばして説明した → 話が噛み合わなかった
  • 新人エンジニアにベテラン向けの説明をした → 全然伝わらなかった
  • 厳しい言い方をした → 相手が萎縮してしまい、その後意見を言ってくれなくなった

これらはすべて、「相手を知る」ことが足りていなかったケースです。
そんな事態を回避するためにも、相手の「情報」「レベル」「感情」を知ることが大切だと考えています。

情報を知る

相手がどんな情報を持っているか、どんなコンテキストを有しているか。
同じチームでも、プロジェクトの経緯を知っている人と知らない人がいます。
ある機能の仕様変更を知っている人と知らない人がいます。

「それ、前にも説明しましたよね」

この一言は、たしかに事実を述べているかもしれません。
しかし、相手は本当に聞いていたのでしょうか。聞いていたとしても、覚えていられる状況だったのでしょうか。

相手の情報量を把握せずに話すと、「物事を決める」こと自体が難しくなります。
前提が揃っていないまま議論しても、噛み合わないまま時間だけが過ぎていきます。

「以前に説明した〇〇について、どのくらい覚えていますか?」

本題に入る前に一言だけ、相手が持っている情報、前提を共有することで、
その後の説明の温度感や深度を調整することができます。

レベルを知る

相手の経験、スキル、理解度を推し量ることも、コミュニケーションにおいてはとても重要です。
同じ情報を有していても、その解像度、理解度には個人差があることも往々にしてあります。

例えば、コードレビューで「この設計、イマイチじゃない?」と言われたとき、ベテランなら「なるほど、確かに」と受け止められるかもしれません。
でも、新人にとっては、何が間違っているのか、どう直せばいいのか、そもそもわからないことがわからない、なんてこともあります。

「この部分、こういう観点で考えるとより良くなりそうですね」
「不安だったら一緒に作業してみましょうか」

言い方やアプローチひとつで、同じ指摘でも受け取り方は変わり、次につながる建設的な議論ができるようになります。

相手のレベルを知り、適切にフィードバックすることは「メンバーの成長を促す」ことに直結します。
相手が今どこにいて、どこに向かおうとしているのか。それを知った上でコミュニケーションを取ることはメンバーだけでなく、チーム全体の成長の一助となります。

感情を知る

では、情報とレベルを把握していれば、誰にでも一律で丁寧に優しく接すれば十分かというと、そうとも限りません。
そのメンバーの特性、性格、過去の経験や普段の言動から、どのような伝え方が響くかを考えることも重要です。

ストレートに言ってほしい人もいれば、丁寧に説明してほしい人もいます。
褒められると伸びる人もいれば、厳しく言われた方が燃え上がる人もいます。

「情報を知る」「レベルを知る」は比較的汎用的で、初対面だったり経験年数などからある程度把握できます。
でも「感情を知る」は、日々のやり取りや接点の中で、少しずつ見えてくるものです。

だからこそ、日頃からメンバーとの関わりを大切にする。その積み重ねが、相手に「響く」コミュニケーションを可能にし、その結果として良い成果や関係構築に繋がります。
ただ一言、その人の背中を押すような言葉をかけることができれば、きっとその人の成長にもつながるはずです。

未来にもつながるコミュニケーションを

ここまで、目の前の相手を知ることについて書いてきました。

でも、私たちのコミュニケーションは、目の前の人だけに届くわけではありません。
PRのコメント、コードのコメント、ドキュメント。これらは残り続け、未来の誰かが読むことになります。

深夜2時に本番障害の対応に追われているとき、プロジェクトの佳境で今にも切れてしまいそうな集中力で作業しているとき。
例えば、あるコードがどのような思想に則っているのか確認したくなった人がいたとしましょう。

Gitでblameを確認し、PRを覗いたとき、その目の前に「この設計は間違っている」とだけ書かれたコメントが現れたとしたら。
もし「この観点で考えるとより良くなりそうですね」と書かれていた場合と比べて、どちらが助けになるかは言うまでもないですよね。
前者は、未来の誰かの時間と精神を奪う「コミュニケーション負債」として残り続けます。

変数名のつけ方、コメントの書き方、アーキテクチャの選択。それらすべては人の言葉で後世に伝わっていきます。
今、たった5秒で書き換えたこのコメントが、未来の誰かの時間の短縮、精神の安寧、そしてさらなる成長につながるとしたら、その価値は計り知れませんよね。

それでも、うまくいかないこともある

ここまで偉そうに書いてきましたが、正直、私もこれらを完璧にできているわけではありません。
余裕がないときに、つい素っ気ない返信をしてしまって、後から「あの言い方はまずかったかも」と反省したり。
ふと投稿したSlackのメッセージが反感を買ってしまったり、いらぬ争いを起こしてしまったり。
そんなことが今でも日常的にあります。

また、相手に配慮することより、事態の収束が優先される状況も多くあります。
納期が迫っているとき、本番障害が起きているとき、曖昧にせずはっきり伝えるべきときなど、厳しく率直な言葉が必要な場面は確実に存在します。

大切なのは、相手と状況を知った上で「使い分ける」ことだと思っています。
「相手によって態度を変える」という八方美人の話ではなく、目的を達成するために、その時点で最適な手段を選ぶことが大切です。

おわりに

私たちの目標は、ユーザーに価値を届け続けることであり、そのためにチームで協力してプロダクトを創り続けることです。
そして、その目標を達成するために、健全なコミュニケーションを欠かすことはできません。

相手の持っている情報を知り、相手のレベルを知り、相手の感情を知り、それらを踏まえたコミュニケーションを心がける。
その積み重ねが、迅速に物事を決め、メンバーやチームの未来につながる健全な影響を生み出すことにつながります。
そして、これこそが「未来への投資」になると信じています。

コミュニケーションの先には、いつも人がいます。
その人がどんな人なのか、どんな言葉を求めているか、自分なりにできる範囲で考え続けてみたいと思います。

翌日の記事は yuto suzuki さんです。お楽しみに!

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