AIを"先輩"として活用する - 駆け出しエンジニアの成長戦略
株式会社ココナラ 技術戦略室の いっちー です。
本稿は株式会社ココナラ Advent Calendar 2025 11日目の記事です。
はじめに
私はリードエンジニアとして日々開発に携わっていますが、最近ふと考えることがあります。
「もし自分が今、駆け出しエンジニアだったら、AIとどう付き合っていくだろう?」
GitHub Copilot、ChatGPT、ClaudeなどのAIツールが当たり前のように使われる時代になりました。これらは間違いなく強力な武器です。しかし同時に、駆け出しエンジニアにとっては諸刃の剣でもあります。
- AIに頼りすぎて、基礎が身につかないのでは?
- かといって、AIを使わないのは非効率では?
- そもそもAIを使わないと、技術トレンドに取り残されるのでは?
この「依存」と「活用」のバランスをどう取るか。私なりに考えた結果、ある格言をヒントに一つの答えにたどり着きました。
山本五十六の格言を"逆転"させる
有名な山本五十六の格言があります。
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ
これは「教える側」の心得として広く知られています。では、これを「教わる側」の視点でひっくり返したらどうなるでしょうか?
やってみせてもらい、聞かせてもらい、やってみて、評価してもらわねば、我は育たず
この逆転した格言こそ、AIを"先輩"として活用する際の指針になると考えました。
- やってみせてもらう → AIにお手本を見せてもらう
- 聞かせてもらう → なぜそうなるのか説明してもらう
- やってみる → 自分で手を動かす
- 評価してもらう → フィードバックをもらう
AIは24時間いつでも付き合ってくれる"先輩"です。この4ステップを意識することで、AIへの「依存」ではなく、成長のための「活用」ができるようになります。
AIを"先輩"として活用する4ステップ
それぞれのステップを具体的に見ていきましょう。
ステップ1:やってみせてもらう
まずはAIにお手本を見せてもらいます。ただし、ここで重要なのは 「答えをもらう」のではなく「お手本を見る」という意識 です。
例えば、APIのエラーハンドリングを学びたいとき:
❌ 悪い例:「エラーハンドリングのコードを書いて」
⭕ 良い例:「APIのエラーハンドリングのベストプラクティスを、サンプルコードで見せてください」
「書いて」ではなく「見せて」という意識の違いが、学びの質を変えます。
ステップ2:聞かせてもらう
お手本を見たら、次は 「なぜそうなるのか」を説明してもらいます。
「このコードで try-catch を使っている理由は?」
「なぜここで early return を使うのですか?」
「他の書き方との違いは何ですか?」
ここで大切なのは、 曖昧な理解のまま次に進まないこと です。「なんとなくわかった」で終わらせず、自分の言葉で説明できるレベルまで理解を深めましょう。
AIは嫌な顔一つせず、何度でも説明してくれます。人間の先輩には聞きづらい「初歩的な質問」も遠慮なくできるのがAIの強みです。
ステップ3:やってみる
ここが 最も大切なステップ です。AIに教わった内容を、必ず自分の手で書いてみましょう。
- AIが生成したコードをそのままコピペしない
- 理解した内容を元に、自分で書き直す
- うまくいかなくてもOK、それが学び
「見た」「聞いた」だけでは身につきません。手を動かすことで初めて自分の力になります。
ステップ4:評価してもらう
自分で書いたコードをAIにレビューしてもらいます。
「このコードをレビューしてください。改善点があれば教えてください」
「セキュリティ上の問題はありますか?」
「もっと読みやすく書く方法はありますか?」
人間のコードレビューでは得られない即時フィードバックが得られます。そして、指摘された点を修正して再度レビュー。このサイクルを回すことで、着実にスキルが向上します。
学習に特化したAI機能:Claude Code の Learning モード
4ステップを実践する上で、特におすすめしたいのが Claude Code の Learning モード です。
多くのAIコーディングツールは「効率的にコードを生成する」ことに主眼を置いていますが、Claude Code の Learning モードは 「学習者が自分で考え、書く」 ことを重視した設計になっています。
Learning モードの特徴
/output-style learning コマンドで切り替えると、AIがコードを全て書くのではなく、 TODO(human) というマーカーで あなたが書くべき箇所 を指示してくれます。
function calculateTotal(items) {
// TODO(human): ここにitemsの合計金額を計算するロジックを実装してください
// ヒント: reduceメソッドを使うとシンプルに書けます
}
さらに、コーディング中に教育的な「Insights」も提供してくれるため、「聞かせてもらう」と「やってみる」が自然に組み合わさった学習体験ができます。
なぜ Learning モードが効果的なのか
- 受動的な学習を防ぐ - コピペで終わらせない仕組み
- 適切な難易度 - 全部は書かせず、ポイントだけ自分で書く
- 即座にヒントがもらえる - 詰まったらAIに聞ける安心感
まさに「やってみせてもらい、聞かせてもらい、やってみて、評価してもらう」を一つのツールで実現できる機能です。
効果的な質問の仕方
AIから良い学びを得るためには、質問の仕方が重要です。
曖昧な質問 vs 具体的な質問
❌ 曖昧:「このコードがわかりません」
⭕ 具体的:「この関数の3行目で使われているmapメソッドの動きを教えてください」
❌ 曖昧:「エラーが出ます」
⭕ 具体的:「TypeErrorが出ています。nullチェックが必要ということでしょうか?」
具体的に聞くほど、具体的な回答が返ってきます。
「なぜ?」を深掘りする
AIの回答を鵜呑みにせず、「なぜそうなるのか」を掘り下げましょう。
「なぜここでasync/awaitを使うのですか?」
「Promiseで書いた場合との違いは何ですか?」
「この書き方のデメリットはありますか?」
一つの質問から派生して深掘りすることで、表面的な理解から本質的な理解へと進めます。
自分の理解を確認する
学んだことを自分の言葉で説明し、AIに確認してもらうのも効果的です。
「私の理解では〇〇ということだと思うのですが、合っていますか?」
間違っていれば訂正してもらえますし、合っていれば自信を持って次に進めます。
学習フローから実践フローへの移行
ここまで紹介した4ステップは、あくまで 基礎力を身につけるための学習フロー です。いつまでもこのフローを続ける必要はありません。
成長に伴い、どこかのタイミングで 「AIが生成したコードをレビューして取り入れる」実践フロー に移行していくのが自然です。では、その移行タイミングをどう見極めればよいでしょうか?
移行のサイン
1. AIのコードを見て「なぜこう書いたか」が理解できる
説明を求めなくても、コードの意図が読み取れる状態です。「ああ、ここは○○のためにこう書いているんだな」と自然に理解できるようになったら、そのパターンについては学習フローを卒業できます。
2. AIの提案に「良い/悪い」の判断ができる
AIの出力を鵜呑みにせず、批判的にレビューできる状態です。「ここはこう書いた方が良いな」「この実装はセキュリティ的に問題がありそう」と改善点や問題点が見えるようになれば、レビュー側に回る準備ができています。
3. 「自分でも書ける」という確信がある
時間をかければ同じコードが書けると思える状態です。「書けるけど、効率化のためにAIを使う」という意識であれば、依存ではなく活用です。
4. 同じパターンを何度も経験した
全ての領域で一気に移行する必要はありません。「CRUDの実装は慣れたから実践フローで」「認証周りはまだ学習フローで」というように、 領域ごとに段階的に移行 していくのが現実的です。
移行は「卒業」ではなく「使い分け」
新しい技術やフレームワークに触れるときは、再び学習フローに戻れば良いのです。学習フローと実践フローを状況に応じて使い分けられるようになることが、AIと上手に付き合うエンジニアの姿だと考えています。
まとめ
本記事では、駆け出しエンジニアがAIを活用して成長するための考え方を紹介しました。
山本五十六の格言を逆転させた 「やってみせてもらい、聞かせてもらい、やってみて、評価してもらわねば、我は育たず」 を実践することで、AIへの「依存」ではなく、成長のための「活用」ができるようになります。
4ステップのおさらい:
- やってみせてもらう - お手本を見せてもらう
- 聞かせてもらう - なぜそうなるのか説明してもらう
- やってみる - 自分の手で書く(ここが最重要!)
- 評価してもらう - フィードバックをもらう
AIは、24時間いつでも付き合ってくれる最高の"先輩"です。しかし、基礎力を築くのは自分自身 です。AIに頼りきりになるのではなく、AIを活用して自分を成長させる。その意識を持って、日々の開発に取り組んでみてください。
駆け出しエンジニアの皆さんの成長を応援しています!
明日12日目は、さいぴーさんによる「コードの向こう側にいる「人」を見つめて」です。
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