自宅で構築したk8sに別PCからkubectlをたたく!
kubectlたたきたい
自宅でオンプレのk8s環境の作成を行う場合、直接Linuxのターミナルか別PCからLinuxにSSH接続してkubectlをたたくと思います。これを別PCからSSH接続せずにコマンドプロンプトkubectlをたたくというのが今回の目的です。
環境
- master:1, worker:1のシンプルなk8s環境
- k8s version: v1.24.3
使用される仕組み
- Certificate Signing Requests
- RBAC Authorization
- kubeconfig
以上の仕組みを少しだけ解説します。
Certificate Signing Requests(CSR)/kubeconfig
公式サイトに以下のように説明されています。その下が和訳になります。
The Certificates API enables automation of X.509 credential provisioning by providing a programmatic interface for clients of the Kubernetes API to request and obtain X.509 certificates from a Certificate Authority (CA).
A CertificateSigningRequest (CSR) resource is used to request that a certificate be signed by a denoted signer, after which the request may be approved or denied before finally being signed
Certificates APIは、Kubernetes APIのクライアントが認証局(CA)にX.509証明書を要求して取得するためのプログラム的インターフェイスを提供することで、X.509クレデンシャル・プロビジョニングの自動化を可能にします。
CertificateSigningRequest (CSR) リソースは、証明書が指定された署名者によって署名されることを要求するために使用され、その後、要求は最終的に署名される前に承認または拒否される可能性があります。
簡単に言うとkube-apiserverにアクセスする際に認証が必要ということになります。
例えば、PC1でたかし君というユーザーでkube-apiserverにリクエストを行った際に、まずは本当にたかし君なのかの認証を行い、たかし君だと確定できたら、次にこのリクエストを許可するかしないかの認可を行う形になります。
このなかでも「認証」機能を実装しているのがCertificateSigningRequest (CSR)とkubeconfigになります。実際に行う際に詳しく説明します。
RBAC Authorization
Role-based access control (RBAC) is a method of regulating access to computer or network resources based on the roles of individual users within your organization.
ロールベースアクセスコントロール(RBAC)とは、組織内の個々のユーザーの役割に基づいて、コンピューターやネットワークリソースへのアクセスを規制する手法のことである。
簡単に言うと、ユーザーに与えられる権利を規制することができる機能になります。
例えば、PC1でたかし君というユーザーはPodとDeploymentの作成のみ許可されているとします。そうするとPodを作成したいというリクエストを行うことができます。
一方で、先ほど作成したPodを削除したいというリクエストとなると許可されていません。
したがって、「認可」機能を実装しているのがRBACになります。実際に行う際に詳しく説明します。
以上の仕組みを使用し実装していきます。
実装したい目標
PC1を使用しているたかし君から以下のことを行いたいと要望がありました。
「PC1からDeploymentとServiceの管理したい」
とのことでした。というていでやっていきます。
今回はNamespaceに「takashi」を作成し、ここで以下のコマンドを打てるように実装します。これでたかしくんの要望は満たせると思います。
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境にnginx:1.16のDeploymentを作成
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境のDeploymentの一覧を確認
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境にService(NodePort)を作成し、Deploymentの公開
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境のServiceの一覧を確認
- Windows(PC1)からnginxのスタートページの閲覧
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境にある作成したDeploymentとServiceの削除
実装の流れ
詳しい流れはこのリンクを参照下さい。
1. 秘密鍵,証明書署名要求の作成
CSRはSSL認証を使用しています。詳しくはご自身での勉強をお願いします(調べればすぐ出てくると思います)。
- まずはk8s環境の入っているマスターノードにSSH接続か直接ターミナルの移動をお願いします。
ssh <Linuxユーザー名>@<プライベートIPアドレス>
- 秘密鍵を保存するディレクトリの作成
mkdir takashi
- ディレクトリの移動
cd takashi
- 秘密鍵の作成
openssl genrsa -out takashi.key 2048
- 証明書署名要求(CSR)の作成
openssl req -new -days 3650 -key takashi.key -out takashi.csr
- 確認
ls
> takashi.csr takashi.key
lsコマンドで以上の二つがあれば問題ありません。
2. CSRの作成
- 先ほどと同じディレクトリに以下のようなyamlファイルを作成
vi takashi.yaml
apiVersion: certificates.k8s.io/v1
kind: CertificateSigningRequest
metadata:
name: takashi
spec:
groups:
- system:authenticated
request:
expirationSeconds: 8640000
signerName: kubernetes.io/kube-apiserver-client
usages:
- client auth
- digital signature
- key encipherment
- 作成したtakashi.csrのデコード
cat takashi.csr | base64 | tr -d "\n"
長い文字列がが表示されますがこれをコピーします。これを先ほど作成したyamlファイルのrequestの箇所にコピーします。
apiVersion: certificates.k8s.io/v1
kind: CertificateSigningRequest
metadata:
name: takashi
spec:
groups:
- system:authenticated
- request:
+ request: LS0tLS1CRUdJTiBDRVJUSUZJQ0FURSBSRVFVRVNULS0tLS0KTUlJQ2lqQ0NBWElDQVFBd1JURUxNQWtHQTFVRUJoTUNRVlV4RXpBUkJnTlZCQWdNQ2xOdmJXVXRVM1JoZEdVeApJVEFmQmdOVkJBb01HRWx1ZEdWeWJtVjBJRmRwWkdkcGRITWdVSFI1SUV4MFpEQ0NBU0l3RFFZSktvWklodmNOCkFRRUJCUUFEZ2dFUEFEQ0NBUW9DZ2dFQkFMNWRocXNGNmNyNUs3OWJobHVzS0Jwc25EcmF4YkhnNkJCY3AvWDQKSDUvc1k1T1dsVmJBdGxWeE13d0xZV3l3N3dxQXA5TjZyMXpLUkVwRXRYWnNkQU9DNGE2WUwxMlhSeW9RMkE2Ywp4UDhwMEhXVEt1S044TEhDNDJna3kwcDlpM2FhYXlTRkRNbnJrM0hPMngwN2ppZ0RDa2UwbnlXOFlESjYzcEJpClZZeVk0SHZFdGYvOTdVNEtLS21oU3hrZXNQMUlYOWxLazRpZFB6M2lQYjE2SmJBa21aLzdueXRRUVFnMzdpWlAKTGlqc1NzZ2Rha3U5cDArRVJGRVdTMmt4SlBJWFA5V0lHQVl0bzcxcEZkVndDWlp6M1NmcHZUVk5udTFLWTlvVwpXL1dlNm4xMUZKYm9uNGpIWW1Rc2gydEZ1cWhLVGs4VktEdkVaWGpUNUYvYmw3TUNBd0VBQWFBQU1BMEdDU3FHClNJYjNEUUVCQ3dVQUE0SUJBUUJveExaR3RsQ09OQzFrcTJJcXAxSElqWDJNKzZxVWcySkJkRERxdVlNcElXQmcKc1J2aDR1b0tHSkdVRkJyMUhveE02WDZVazk3cTk0eFE5dk42ZURnYk55R2dNQmdQRzdKdG5uNlpRYnpLbG9HbApkUFRhdnI1bzNFSW9uVjF4U0tlUFMyWnBNcW1Rc3NaczNUaU5HdTFxL09NOHNxWTIycElqWmphZ0hVOW9YYTlMCkExVi9JZzdlSGt2UkFXUHphM1pCVGdCcXA3TkEwNU8vczd5SkNseFg0enV5SjFwd0xBaHBKVFpwbXE4Sk92YVAKUWJoRksvUVREVDFMNUVZQkV3MVNnaGNBVFJKeXBlREdQSStHSmxuWUg4UjExQXJ4NXlvZVU3WEYvb0Nlam4yNgpCdnNxQkVCLzh2TDdiYWdWdTFGc2xUNFAyZis4UzBaSWhXSS9saU1CCi0tLS0tRU5EIENFUlRJRklDQVRFIFJFUVVFU1QtLS0tLQo=
expirationSeconds: 86400
signerName: kubernetes.io/kube-apiserver-client
usages:
- digital signature
- key encipherment
- client auth
- CSRのアプライ
kubectl apply -f takashi.yaml
> certificatesigningrequest.certificates.k8s.io/takashi created
3. CSRの承認
CSRの確認をしましょう。
kubectl get csr
以上のコマンドを打つとたかし君が追加されていると思います。しかしCONDITIONはPENDINGなのでまだ承認されていません。以下のコマンドを打ちます。
kubectl certificate approve takashi
再びCSRの確認を行うとたかし君のCONDITIONはApprovedになっていると思います。これで承認は完了です。
4. 証明書の取得
kubectl get csr takashi -o yaml
このコマンドによりtakashiのyamlファイルを見ることができます。
この中のstatus.certificateにある文字列が認証書のコードになります。
したがってjsonpathで抽出し、crtファイルで保存します。
kubectl get csr takashi -o jsonpath='{.status.certificate}'| base64 -d > takashi.crt
続いてクラスターの認証書をファイル保存します。
kubectl config view --minify --raw -o jsonpath='{.clusters[*].cluster.certificate-authority-data}' | base64 -d > ca-cluster.crt
確認を行います。
ls
> ca-cluster.crt takashi.crt takashi.key takashi.csr takashi.yaml
lsコマンドで以下の4つがあれば大丈夫です。
5. PCにkubectlのイントール
以下のリンクが参考になります。
- SSH接続を切断
exit
- 任意の場所にフォルダーを作成します
mkdir takashi
- フォルダ下に移動
cd takashi
- curlを用いてkubectlをインストール
curl -LO "https://dl.k8s.io/release/v1.24.3/bin/windows/amd64/kubectl.exe"
- ダウロードしたファイルを環境変数のPathに登録
以下が参考になります。
- kubectlの実行可能か確認
kubectl version --client
versionがv1.24.3と表示されれば大丈夫です。
6. ユーザーおよびクラスターの証明書とキーファイルをPCにコピー
- keyファイルとcrtファイルをWindowsのtakashiフォルダーにコピー
scp <Linuxユーザー名>@<プライベートIPアドレス>:~/takashi/takashi.key ./
scp <Linuxユーザー名>@<プライベートIPアドレス>:~/takashi/takashi.crt ./
scp <Linuxユーザー名>@<プライベートIPアドレス>:~/takashi/ca-cluster.crt ./
- dirコマンドで確認
dir
kubectl.exeとtakashi.keyとtakashi.crtとca-cluster.crtファイルがあれば大丈夫です。
7. 証明書とキーファイルをもとにkubeconfigにuserを設定
- userの登録
takashiとしてkubeconfigにuser登録します
kubectl config set-credentials takashi --client-key=takashi.key --client-certificate=takashi.crt --embed-certs=true
- 確認
kubectl config view
ここにたかし君が含まれていれば大丈夫です。
8. kubeconfigにcluster,contextを設定
- kubeconfigにclusterの登録
kubectl config set-cluster takashi-cluster --server=https://<プライベートIPアドレス>:6443 --certificate-authority=ca-cluster.crt --embed-certs=true
- kubeconfigにcontextの登録
kubectl config set-context takashi@takashi-cluster --cluster=takashi-cluster --namespace=takashi --user=takashi
- kubeconfigにcurrent-contextの設定
kubectl config use-context takashi@takashi-cluster
- 確認
kubectl config view
ここに追加したclusterとcontextがあれば大丈夫です。
またcurrent-contextがtakashi@takashi-clusterとなっていれば問題ありません。
9. Role,Rolebindingの作成
今回の要件はNamespaceがtakashi下でのServiceとDeploymentの管理ということになります。
- Namespaceの作成
kubectl create ns takashi
- Roleの作成
kubectl create role takashi-role -n takashi --resource=deployment,service --verb=*
ServiceとDeploymentのコマンドをすべて許可します。
- Rolebindingの作成
kubectl create rolebinding takashi-rolebinding -n takashi --user=takashi --role=takashi-role
登録したtakashiとRoleを紐づけします。
- 確認
kubectl get ns
kubectl get role,rolebinding -n takashi
ここに作成したNamespace, Role, Rolebindingがあれば大丈夫です。
ここまで行うと実際にkubectlの実行が可能になっていると思います。
検証
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境にnginx:1.16のDeploymentを作成
kubectl create deployment nginx --image=nginx:1.16 --replicas=3
> deployment.apps/nginx created
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境のDeploymentの一覧を確認
kubectl get deployment
NAME READY UP-TO-DATE AVAILABLE AGE
nginx 3/3 3 3 61s
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境にService(NodePort)を作成し、Deploymentの公開
kubectl expose deployment nginx --port=80 --target-port=80 --name=nginx-service --type=NodePort
> service/nginx-service exposed
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境のServiceの一覧を確認
kubectl get service
NAME TYPE CLUSTER-IP EXTERNAL-IP PORT(S) AGE
nginx-service NodePort 10.110.146.250 <none> 80:31410/TCP 27s
- Windows(PC1)からnginxのスタートページの閲覧
http://<プライベートIPアドレス>:<NodePort>にアクセス
「Welcome to nginx!」が見れれば成功
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境にある作成したDeploymentとServiceの削除
kubectl delete svc nginx-service
kubectl delete deployment nginx
> service "nginx-service" deleted
> deployment.apps "nginx" deleted
追加課題
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境のPodの一覧を確認
kubectl get pods
Error from server (Forbidden): pods is forbidden: User "takashi" cannot list resource "pods" in API group "" in the namespace "takashi"
- Windows(PC1)から「takashi」というユーザーでk8s環境でPodの作成
kubectl run nginx --image=nginx
Error from server (Forbidden): pods is forbidden: User "takashi" cannot create resource "pods" in API group "" in the namespace "takashi"
Roleで認可されていないリクエストは実行できないことが分かります。
以上からPC1からDeploymentとServiceの管理したいという要求は満たせています。
まとめ
今回は別PCからSSH接続せずにkubectlをたたくということで以上のことを行いました。工程が多く初期設定の際には躓くことが多いかと思われます。またユーザーの認証期間が過ぎますとまた同じように1, 2, 3, 4, 6, 7の工程が必要になります。
参考URL
参考にさせていただきました。ありがとうございます。
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