Prusa MK3Sでの手動多色印刷(1) 〜積層方向の色替え〜
Prusa MK3SとPrusaSlicerを用いた手動でフィラメント切り替えを行う多色印刷について説明します。装置の指示にしたがって手動でフィラメント交換をする必要がありますが、交換が数回程度なら実用的です。
今回は「私の3Dプリンター履歴書」でも軽く触れた積層方向の色替えです。Prusa MK3SおよびPrusaSlicerを用いると驚くほど簡単に実施できます。簡単なモデルを例に設定方法を示します。
1.各種環境
動作環境
- OS:Windows 10 Pro 22H1
- スライサー:PrusaSlicer-2.5.0+win64
- プリンター:Original Prusa i3 MK3S+(MK3SからMK3S+へのアップグレード品)
サンプルモデルの諸元
- 縦:30mm、横:70mm
- ベースの厚さ:1.6mm、ロゴの厚さ:2.0mm、合計3.6mm
- ベース部分とロゴ部分の2色印刷
2.スライス手順
最初はそのままスライス
最初にそのままスライスします。積層ピッチはデフォルトの0.2mmです。
スライス後のプレビュー画像で、右側のスライダーを色替えしたい最初の層(ここではロゴが始まる層)に移動します。このとき、プレビュー画像にはロゴの1層目が表示されています。
スライダーの位置で分割
スライダーの右側の+マークをクリックすると、この層を含めた上側の層(ロゴの層)と、下側の層(ベースの層)に分離されます。
スライダーを最上位層まで上げてみると、想定通りにベースとロゴが2色に分かれていることがわかります。
色指定すると実物のイメージに
フィラメント設定でフィラメントの色を指定してベース部分を黒に、スライダーの上でマウス右ボタンをクリックしてロゴ部分を赤にしてみました。実物と同じ配色にすると実感がわきます。
分割指定の解除
スライダーを分割位置まで移動すると、右側のマークが×(バツ)に変化しますので、ここをクリックすれば分割指定を削除できます。
3.プリント手順
スライダーを上下して層の分割位置が適切であることを確認したら、再度スライスします。これで最終的なGコードが得られますのでプリントしてみます。
旧フィラメントのアンロード
最初はベース部分の色のフィラメントでプリントします。色替えの層に到達すると、エクストルーダーが右手前に移動します。
ここから手動でフィラメント交換をします。表示されたメッセージにしたがって行います。最初は既存のフィラメントをアンロードします。LCDノブをクリックします。
アンロードの確認が表示されますので、確認できたら「Yes」を選択してLCDノブをクリックします。
新フィラメントのロード
新しいフィラメントをロードするよう表示されますので、フィラメントを挿入してLCDノブをクリックします。
ノズル内の古い色を排出後、新しい色に変化したか確認があります。それぞれの意味と挙動は以下の通りです。
- Yes: 色替え確認できたのでプリントを再開します。
- Filament not loaded: 前の手順でロードし忘れたらこれを選択します。すでにロード済みの場合、ノズルからの排出が追いつかず、エクストルーダーが滑りカチカチと音がすることがあります。
- Color not correct: 追加で数cmほどフィラメントを排出します。排出が不十分で前の色が残っている場合に使います。排出後、再度確認画面になります。
プリント再開
とても簡単にできあがりました。Anycubicで実施した頃とは大違いです。
4.作成例
F1コースのオブジェ
積層方向の色替えは何度でも行なえますので、例えばこのようなものも、色替え位置を間違えなければ簡単にできます。これは3Dデータ公開サイトのThangs.comから頂いたものです。F1観戦時に重宝しています。
ジグソーパズル・カッターとの組み合わせ
ちょっと古い記事ですがPrusaのブログで見つけた記事を参考に作成しました。
記事内のリンクからOpenSCADのスクリプト「puzzle_cutter_generator.scad」をダウンロードし、OpenSCAD上で大きさや分割数を設定してパズルカッターのSTLを作成します。現行のPrusaSlicerを使えば、記事のような複雑な手順を実施しなくても簡単にできます。
パズル化する対象を選択してマウス右ボタンから「切り取りボリュームを追加」でパズルカッターを指定し、位置や大きさを調整します。その後は本記事の手順で積層方向の2色印刷を行います。
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