Spanner エディションによる Spanner 料金モデル変更について紹介
こんにちは、クラウドエース株式会社 SRE 部の阿部です。
この記事では Google Cloud Next Tokyo '24 で発表された Spanner エディションにおける料金モデル変更について紹介します。
Spanner の変更点概要 (Google Cloud Next Tokyo'24 発表から抜粋)
2024 年 8 月 2 日の基調講演で、Spanner の新機能について発表がありました。
発表内容は以下の通りです。
- Spanner Graph (参考:公式ブログ)
- ベクトル検索(Vector search)
- 全文検索(Full-text search)
- Spanner エディション (Spanner editions)
Spanner Graph やベクトル検索といった生成 AI を意識した新機能の追加が行われています。
その中で、Spanner の料金モデルを変更する Spanner エディションが発表されました。
Spanner エディション (Spanner editions) 概要
Spanner エディションの内容は下記ブログ、および、ドキュメントで発表されています。
Spanner エディションは 3 つのティアで構成されており、それぞれ以下のような特徴があります。
- Standard エディション: 単一リージョン設定で一般提供される機能(Data Boost 等)と 99.99% の可用性を提供します。また、スケジュールバックアップを今後提供予定です。これまでの Spanner の基本機能であるゼロメンテナンス時間、自動シャーディング、シームレスなスケーリング、ネイティブ PostgreSQL Interface は Standard エディションで提供されます。
- Enterprise エディション: Standard エディションで提供される機能に加えて、Spanner Graph、全文検索、ベクトル検索といった機能を提供します。また、追加のリードレプリカ、マネージド オートスケーラー、増分バックアップ(今後提供予定)をサポートします。
- Enterprise Plus エディション: Standard エディションと Enterprise エディションで提供される機能に加えて、最大 99.999% の可用性を提供するデュアルリージョン構成、および、マルチリージョン構成を提供します。また、地域別パーティション分割機能を提供します。
表にまとめると以下の通りです。
Standard | Enterprise | Enterprise Plus | |
---|---|---|---|
可用性 | 99.99% | 99.99% | 最大 99.999% |
構成 | 単一リージョン | 単一リージョン | デュアルリージョン、マルチリージョン |
ゼロメンテナンス時間 | ✅ | ✅ | ✅ |
自動シャーディング | ✅ | ✅ | ✅ |
シームレスなスケーリング | ✅ | ✅ | ✅ |
PostgreSQL インターフェース | ✅ | ✅ | ✅ |
Data Boost | ✅ | ✅ | ✅ |
Reverse ETL from BigQuery | ✅ | ✅ | ✅ |
スケジュールバックアップ ※ | ✅ | ✅ | ✅ |
Spanner Graph | ❌ | ✅ | ✅ |
全文検索 | ❌ | ✅ | ✅ |
ベクトル検索 | ❌ | ✅ | ✅ |
リードレプリカ | ❌ | ✅ | ✅ |
マネージド オートスケーラー | ❌ | ✅ | ✅ |
増分バックアップ ※ | ❌ | ✅ | ✅ |
地域別パーティション分割 | ❌ | ❌ | ✅ |
※が付いている機能は今後提供予定です。
Spanner エディションの価格モデル
Spanner エディションは以前のようなノード単位の価格モデルから、以下のような価格モデルへ変更されます。
- 以前のノード単位の価格モデルに代わり、コンピューティングコストとストレージコストはレプリカ単位で請求されます。(ドキュメントではレプリカ ≒ サーバとして一部表記されています)
- データのレプリケーションコストがコンピューティングコストから切り離され、追加の透明性を持つ新しい SKU が導入されます。
- 読み取り専用レプリカは、フラットレートではなく使用されるエディションに基づいて読み書き可能なレプリカと同じ価格設定になります。
- ウィットネスレプリカのストレージコストは課金対象外になります。
レプリカ単位の補足
請求におけるノード数とレプリカ数の関係を読み解くのが現状の資料だとわかりにくいですが、読み解いた限りでは以下の通りです。
- シングルリージョンの場合、1 ノードを 3 レプリカ(3 サーバ)としてカウントする。
- デュアルリージョンの場合、1 ノードを 6 レプリカ(6 サーバ)としてカウントする。(ウィットネスレプリカも含まれる)
加えてリージョン係数も含まれます。 - マルチリージョンの場合、1 ノードを 5 レプリカ(5 サーバ) としてカウントする。(ウィットネスレプリカも含まれる)
加えてリージョン係数も含まれます。
ストレージコストについても、これまではノード内レプリカの平均データ使用量から計算されていましたが、エディションを適用することでレプリカ(サーバ)毎に保持しているデータ使用量で請求されます。
エディション適用前後の価格計算例が下記のドキュメントに記載されております。ご参考にご覧ください。
参考: New compute capacity pricing
価格計算例を見る限りですと、コストの変化として単一リージョン構成の場合 Standard エディションで同等、Enterprise エディションで少し高く、Enterprise Plus エディションにする場合は高額になるようです。
Spanner エディションの提供スケジュール
Spanner エディションは以下のスケジュールで提供予定です。
- 2024 年 9 月 24 日以降: Spanner エディション提供開始、新規インスタンス作成時にエディション選択が可能になります。
- 2024 年 11 月 1 日以降: 現在の価格モデルでの新規インスタンス作成が停止されます。
- 2025 年 1 月 13 日以降: 既存の Spanner インスタンスをエディションに更新していない場合、使用パターンに一致する最も低いエディションに自動的に移行されます。
まとめ
Spanner エディションは、Spanner の新しい料金モデルと機能追加を提供するものです。
既に Spanner を利用しているユーザーにとっては、利用中の機能を考慮した上で、エディションの選択を検討する必要があります。
9 月 24 日までには Pricing ドキュメントが更新されると思いますので、その際には詳細を確認してください。
この記事が Spanner エディションについての理解に少しでもお役に立てれば幸いです。
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