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【Next Tokyo 25 レポート】見慣れたイベントが、社会人になったら「全く新しい景色」に見えた話

に公開

【導入】プロローグ:同じイベント、違う景色

Google Cloud Nextで集めてきたグッズたち、ストラップには Google Cloud と Cloud Ace があしらわられていて可愛い
はじめまして!
クラウドエースで Google Cloud と向き合う毎日を送っている新米エンジニアのかいとです!

今年の春、クラウドエースに新米エンジニアとして入社してからはや4ヶ月。特にこの2ヶ月は、Google Cloud の技術的な課題を抱えるお客様を直接サポートする業務を担当してきました。
この業務からお客様の「困った」に日々向き合う中で、技術を「どう使うか」という視点が、私の中で急速に育っていったのです。

そんな私が、学生時代にも参加したことのある「Google Cloud Next Tokyo」(以下、Next Tokyo)に、今年は社会人として参加。

そこで発見したのは、「同じイベントのはずなのに、全く新しい景色が広がっていた」という驚きでした。
本記事では、その「発見」が何だったのか、そしてそこから見えたエンジニアとしての成長について語ります。

【第1章】学生時代の私:技術への「憧れ」と「認められたい」が原動力だった頃

参加目的:最新技術への純粋な好奇心

数年前、まだ学生だった私が Next Tokyo に参加した目的は、純粋な好奇心でした。当時の技術レベルは、ITパスポートの資格をなんとか取ったくらいのクラウド初学者。セッションで語られる最先端の技術や、それを使いこなす企業の「すごさ」に触れること自体が目的でした。

イベントの楽しみ方:「外」から世界を眺める感覚

基調講演の熱気、未来を感じさせるデモに圧倒され、ただただ「すごい!」「面白い!」と感動していました。会場で催されるクイズやハンズオン企画に参加しては、ノベルティグッズをもらって喜んだり、巨大な技術コミュニティの片鱗に触れたような高揚感を覚えたり。

根底にあった気持ち:コミュニティへの所属欲求

今振り返ると、それは最先端の技術コミュニティに「所属したい」「すごいエンジニアの一員として認められたい」という、一種の社会的欲求承認欲求に近かったのかもしれません。技術はどこか遠い世界の「憧れ」であり、自分はまだその世界の「外」から景色を眺めている感覚でした。

【第2章】新社会人の私:「自分ゴト」になった技術と「自己実現への憧れ」

視点の変化:すべての情報が「仕事のヒント」に見える

そして今年。クラウドエースのエンジニアとして、お客様が抱える課題と向き合う毎日が、私の視点を根底から変えました。Next Tokyo で語られるすべての技術や事例が、自分の業務やお客様の課題に直結する「自分ゴト」として、リアルな意味を持って飛び込んできたのです。

セッションを楽しむ際の劇的な変化

その変化は、セッションの聞き方に最も顕著に現れました。以前はただ「すごい!」と受け取るだけだった情報が、具体的な「武器」として自分の手元に引き寄せられる感覚。特に印象的だった3つのセッションを例に、その変化をお伝えします。

1. 基調講演:壮大な未来像が、具体的なビジネス課題に

基調講演では、今年も生成AI や AIエージェントが拓く未来像が、華々しいデモと共に語られました。特に私の印象に強く残ったのが AIエージェントたちです。Google Agentspace(以下、Agentspace) の一般提供や Google Workspace Flows のプレビュー提供の開始といった、働き方を大きく変えうるサービスが次々と展開されていたのが印象的でした。

[基調講演 Day1]

[基調講演 Day2]

一般提供が発表された Agentspace では、データのインデックス作成から検索、アクションまで、すべての操作が日本国内で完結できる点が強くアピールされており、
AI活用を進める上でデータを外部に出したくないと考える企業にとって、特に魅力的な選択肢だと感じました。
また、デモでは実際の業務フローに Agentspace を導入した場合の新たな働き方として、一つの統括エージェントが複数のエージェントを緻密に連携させる様子が紹介されておりました。
この時の私にとって、Agentspace に限らず「AIツールが仕事にどのような効果をもたらすのか」、その未来像に大きな期待感を抱いたことを覚えています。

  • 以前の私なら: 「AIが自動で業務を進めるなんて、まるでSF映画だ。すごい世界が来るんだな」と、遠い未来の出来事として、ただただ圧倒されていたでしょう。
  • 今回の私は: 登壇企業が語るAI活用の裏にある「どんな業務を効率化したいのか」「どんなデータを学習させているのか」という具体的な課題に耳を傾けていました。「このAIエージェントの仕組み、うちのお客様の問い合わせ対応フローに応用して時短できないか?」と、全ての事例を自分の仕事の参考資料としてインプットしていました。壮大な未来像が、目の前の具体的な課題解決のヒントに変わった瞬間でした。

2. Cloud Run で手軽に始めるサービスメッシュ:複雑な技術が、身近な解決策に

このセッションでは、複雑な設定なしに Cloud Run で高度なサービス間通信を実現する、Cloud Service Mesh の利点と、これを Cloud Run と組み合わせることで、これまで Istio と GKE の組み合わせのようなマイクロサービスアーキテクチャの高度な知識がないと実現できなかったサービスメッシュを手軽に実装できる事例が解説されていました。

[複雑なサービスメッシュはもう古い?Cloud Run で手軽に始めるサービスメッシュ]

バックエンド側で複数の処理を疎結合に連携し、スマートな実装を目指す者としては非常に魅力的で、これを活用できるようになることによって新たな Cloud Run の活用術が広がると感じました。この場では研修でバックエンドについて学んでいたことを思い出しながら聞いており、専門学校で学んだ時とは違う視点で、より深く理解できている自分に驚きました。

  • 以前の私なら: 「サービスメッシュ…聞いたことはあるけど、なんだか難しそう。すごいアーキテクチャなんだろうな」と、自分にはまだ早い技術だと感じていたはずです。
  • 今回の私は: 「これなら、マイクロサービス間の認証やトラフィック制御の課題を、インフラの専門家でなくても解決できるかもしれない」「学習コストを抑えつつ、堅牢なシステムを提案できるのは大きな武器になる」と、お客様に提案する際の具体的なメリットを考えていました。複雑な技術が、お客様の負担を減らすための身近な選択肢として見えてきたのです。

3. NVIDIA NIM と Google Kubernetes Engine:技術トレンドが、顧客への提供価値に

NVIDIAの推論マイクロサービス(以下、NIM)を Google Kubernetes Engine (以下、GKE)上で動かすこのセッションは、特に注目していました[1] [2]。
NIM は NVIDIA の最新 AIモデルをコンテナとして円滑に稼働させるための取り組みであり、GKE は利用に応じて水平スケールし高負荷時にも安定性を提供します。このセッションでは、これら2つの技術が相乗効果を生み出す構築方法がハンズオン形式で解説されました。

これは、見方を変えれば組織専用のプライベートなAI基盤を構築できることを意味します。
機密性の高いデータを外部に持ち出せない利用者にとって、非常に強力なソリューションになる可能性を秘めていると感じ、胸が熱くなりました。

アーカイブが公開されておらず、加えてセッション時撮影禁止だったため、
参考にした資料を共有します。
[1] GKE で NVIDIA NIM を実行し、生成 AI の導入を加速する

[2] NVIDIA NIM を使用して GKE に AI モデルをデプロイする

  • 以前の私なら: 「 GKE で GPU を動かして AIモデルをデプロイするなんて、最先端だ!」と、技術的なトレンドそのものに興奮していたと思います。
  • 今回の私は: 「ローカル環境での開発のしやすさや、セキュリティを重視するお客様にとって、使い慣れた AIモデルをコンテナとして GKE 上で動かせるのは、まさに求めていたソリューションだ」と、技術がもたらす顧客への提供価値を考えていました。技術トレンドを追うだけでなく、それをどうお客様に届けるか。視点が大きく変わったことを実感したセッションでした。

人との交流の質の変化

会場では、学生時代の同級生と嬉しい再会がありました。学生の頃は好きな技術の話ばかりでしたが、今回は様変わりです。
クイズチャレンジに共に挑みながら、互いの会社の文化や「Google Cloud をどうキャリアに活かすか」といったテーマで語り合いました。
自然と未来について話ができたのも、Next Tokyo が「Google Cloud」という共通言語を与えてくれたからこそと感じています。

根底にある気持ちの変化

イベントを楽しむ原動力が、いつの間にか「認められたい」という思いから、技術で何かを成し遂げたい、価値を生み出したいという「自分の手で貢献したい」という思いへとシフトしていることに、この時気づきました。

事例やハンズオンへの向き合い方も、全く違うものになっていました。学生時代は、ただ自分の好きな技術に触れることが目的でした。しかし今は、自分の「好き」を武器として、「目標に向かう誰かをどう助けられるか」を考えることが目的になっています。自分のための探求から、誰かのための自己研鑽へ。この視点の変化が、自分が新しいステージに進んだことを教えてくれました。

【第3章】まとめ:あなたはどう楽しみますか?

成長とは、視点が変わること

Next Tokyo という同じ場所に参加したことで、私は自身のエンジニアとしての成長、つまり技術への視点や向き合い方の変化を、はっきりと自覚することができました。

この感覚は、単にイベントの内容が前回と異なっていたから、というだけではありません。明らかに、今の自分の立場や参加目的といったマインドセットが、体験そのものを変えたのだと確信しています。

だからこそ、同じイベントであっても、参加する時の立場や目的によって、得られる体験や楽しみ方は全く違ったものになるはずです。

若手エンジニアの皆さんへ

日々の業務で感じている課題を、ぜひイベントに持ち込んでみてください。そこは、あなたのための課題解決のヒントで溢れています。

イベントは、日々の仕事と向き合い、自分を成長させる絶好の機会です。
セッションや誰かとの会話の中に、自身の「達成感」や「自己実現」につながるヒントがきっと隠されています。
ぜひ、この機会を活かして、新たな視点を見つけてみてください。

そして Next Tokyo に限らず、多くの人が集まる場に飛び込んで、その熱量を自分の力に変えてみてください。

就職活動中の学生の皆さんへ

技術そのものだけでなく、登壇企業が「その技術で何を成し遂げたいのか」という背景に目を向けてみてください。

セッションで語るエンジニアやビジネスリーダーたちは、自社の文化や理念を背負った、いわば「会社の顔」です。彼らが放つ熱量や、語られる言葉の裏にある想いに触れることで、パンフレットだけでは分からない、その会社で働くことのリアルな魅力が見えてくるはずです。

自分がその背景を背負って働く姿を想像すると、キャリアデザインはもっと面白くなります。ぜひこの機会に進路という問いを楽しんでみてください。

最後の問いかけ

技術イベントは、参加者の成長段階を映し出す鏡のようなものかもしれません。
次にあなたがこうした機会に参加する時、そこにはどんな景色が見えるでしょうか?
また、あなたはこの機会をどう楽しむのでしょうか?

もしかしたら、そこには自分の秘めたる可能性との出会いが待っているかもしれません。
この記事が、そのための自問自答のきっかけになれば幸いです。

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