【数学】コラッツ予想を解きたい!07
前回のまとめ
前回は、いろいろ仮説を書き出しました。
あと最後にコラッツ予想を簡易化したツリーを書いたりもしました。
仮説6:自然な有理数上の偶奇性
任意の
と表した時、
によって、
このとき、コラッツ木
ツリーの例:R上の簡易ツリー
今回は
偶奇性(分割)の議論をしたい...とは思っていたのですが、なかなかどっから手を付けていいかが難しいようです。
では、どうするか?
いきなり抽象化が難しい時にやることは、1つしかないですよね。
具体例を考えればいいです。
運が良いことに、現状でも考えられる具体例が目の前に置いてあったのでそれを使ってみます。
上記仮説と簡易ツリーをそのまま使ったものです:
仮説:簡易ツリーのループ完全性
任意の
について、 p \in \mathbb{Q} p = \frac{m}{n} \qquad ( m,\ n は互いに素な整数で n>0) と表した時、
m は偶数 \ \Leftrightarrow \ p \in E によって、
を定める。 E \subset \mathbb{Q}
上でツリー \mathbb{Q} を次のように定義する: T=\mathrm{Tree}(t) t(x) := \left\{ \begin{array}{ll} x/2 & (x \in E) \\ x+1 & (x \in \mathbb{Q} \setminus E) \end{array} \right. このとき、ツリー
はすべての(最終的に)ループする巡回列を持つか? T
こんなものを考えてみます。
これは結構難しいかと思っていましたが、案外そんなことはないようですね。
なお、「最終的にループする巡回列」という部分の言葉の意味ですが、次のようなものを満たす要素
すべての今ループしている巡回列を持つか
まずは、最終的にループするものではなく、今ループしている巡回列を考えます。
「今ループしている巡回列」の言葉の意味は、次のようなものを満たす要素
例えば、次のような今ループしている巡回列を持つでしょうか。
これは、
を満たすと仮定すれば、
より、
が成り立つから、
が成立する。
他の例として、
については、
を満たすと仮定すれば、
より、
が成り立つから、
このように今ループしている要素が、ピッタリと、僕たちが定義した
一般化
と書ける。ただし、
そして、上記のような方程式(
が成り立つから、
となって、整合性が取れている。
以上より、すべての今ループしている巡回列が存在することが示された。(
すべての最終的にループする巡回列を持つか
こんな感じで、今ループしている要素から、逆順を辿って拡張していくことを考えます。
すると、
については、
よって、
一般に、
だから、
ちょっと考えてみましょう。
これはつまりどういうことかというと、巡回列において、
どうしたらいいでしょうか?
このように修正すれば、いろいろな障害が消えて、すべての最終的にループする巡回列を持つと言える状態になりました!(ただし
また、
を対応させれば、今までの議論が成り立つ。
以上より、以下の定理が示されました:
Thm:簡易ツリーのループ完全性
任意の
について、 p \in \mathbb{Q} p = \frac{m}{n} \qquad ( m,\ n は互いに素な整数で n>0) と表した時、
m は偶数 \ \Leftrightarrow \ p \in E によって、
を定める。(ただし E \subset \mathbb{Q} が整数のときは、 p とする) n=1
また、上でツリー \mathbb{Q} を次のように定義する: T=\mathrm{Tree}(t) t(x) := \left\{ \begin{align*} x/2 \quad & (x \in E) \\ \frac{x+1}{2} \quad & (x \in \mathbb{Q} \setminus E) \end{align*} \right. このとき、ツリー
はすべての(最終的に)ループする巡回列を持つ。 T
しかし、これ以外の巡回列を持つかどうかという部分については何も分かっていません。
循環小数と循環しない小数のようなイメージで言うと、今までやってきたのは循環小数の方。次に、循環しない小数つまりループしない巡回列についても議論するべきでしょう。
ループしない巡回列を持つか?
ということで、すべての要素を起点とする巡回列がループすることを示していきましょう。
任意の
について、 p \in \mathbb{Q} p = \frac{m}{n} \qquad ( m,\ n は互いに素な整数で n>0) と表した時、
の偶奇で場合分けをする。 n
が偶数のとき (\mathrm{i})\ n p\ は \ \frac{奇数}{偶数} であり、
を作用させても、 t_o t_o(p)=\frac{p+1}{2}\ は \ \frac{奇数}{偶数} である。よって、
を起点とする巡回列は p となり、ループする。 0,\ 0,\ 0,\ ...
が奇数のとき (\mathrm{ii})\ n p\ は \ \frac{整数}{n} であり、
を作用させても、 t_e,\ t_o \left\{ \begin{align*} t_e(p)=\frac{p}{2}\ & は \ \frac{整数}{n} \\ t_o(p)=\frac{p+1}{2}\ & は \ \frac{整数}{n} \end{align*} \right. である。また
ならば、 |p|>1 |p|>|t(p)| となる。よって、
の形で 整 / n である |p| \leq 1 の候補は有限だから、 p を起点とする巡回列はループする。 p
とループしない巡回列を持たないことを示すこと自体は簡単です。
ただ、このような議論展開ではダメなのです。なぜかというと、コラッツ予想のツリーは、
であり、この関数に今の議論が適用できないからです。
ただ、一般的な方法というのも、現状では難しいところかもしれません。
あと気になるのは、もしループする巡回列しか持たないと言えた場合に、どんな良いことがあるかというところでしょうか。
ただ、こちらも、現状では厳しいです。
他には、全体集合
Thm:簡易ツリーのループ完全性と正規性
を A \subset \mathbb{Q} A = \{ \frac{m}{n} \ |\ m \in \mathbb{Z},\ n は奇数 \ \} によって定義する。
任意のについて、 p \in A p = \frac{m}{n} \qquad ( m,\ n は互いに素な整数で n>0) と表した時、
m は偶数 \ \Leftrightarrow \ p \in E によって、
を定める。(ただし E \subset A が整数のときは、 p とする) n=1
また、上でツリー A を次のように定義する: T=\mathrm{Tree}(t) t(x) := \left\{ \begin{align*} x/2 \quad & (x \in E) \\ \frac{x+1}{2} \quad & (x \in A \setminus E) \end{align*} \right. このとき、ツリー
はループする巡回列をちょうど1つずつ持ち、ループしない巡回列は持たない。 T
これが成り立つことは、今までの議論より、ほとんど自明でしょう。
そんな感じで、今回は、偶奇性を自然に拡張した
次回はどういう風に進めていくか...今回見た具体例からなんとか抽象化していきたい気はしますが、どうするんでしょう。う~ん...とりあえず、今回はここら辺で終了にします。ではでは。
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