【数学】コラッツ予想を解きたい!05
前回のまとめ
部分集合
Def:正規分割E
集合
Thm:fの存在
集合
このとき、次の
自然に議論を発展させていこう
こっからどうするか? これは常に悩ましいですが、ただ今回は希望も多いように思います。強い概念を考えるということは、発展性という面からすればプラスなのかもしれません。
ということで、こっからどうしていくか、例えば↓のようなものも考えましたが、微妙でしょうか。
正規分割となるツリー全体
とりあえず、
ツリーを要素と捉えるというのは、抽象度を上げる方法としては自然です。そして、このツリーからなる集合上でツリーを考えるとかもやりたくはなりますが、具体的にどうしていくのかは見えないところです。
結局どうするのかというと、さらに概念を強くするようですが、次のような話題を考えるのが本筋だと筆者は見ました:
仮説Thm
集合
上に2つのツリー A がある。また、 T_1=\mathrm{Tree}(t_1),\ T_2=\mathrm{Tree}(t_2) とする。 E \subset A
このとき、次のは同値である: (\mathrm{i}), \ (\mathrm{ii}) \begin{align*} & (\mathrm{i}) \qquad T_1 と T_2 の E 構造は一致 \\ \\ & (\mathrm{ii}) \qquad \exists 全単射 \sigma:A \rightarrow A, \ \forall a \in A, \\ & \qquad a を起点とする t_1 の巡回列と \sigma(a) を起点とする t_2 の巡回列は一致 \end{align*}
巡回列がすべて一致するのなら、
実はこれはほとんど成立します。ほとんどというのは、正確にはギリギリ成立していないという意味です。条件に追加が必要で、
Thm:構造一致の別表現
集合
上に2つのツリー A がある。また、 T_1=\mathrm{Tree}(t_1),\ T_2=\mathrm{Tree}(t_2) を E \subset A の正規分割とする。 T_2
このとき、次のは同値である: (\mathrm{i}), \ (\mathrm{ii}) \begin{align*} & (\mathrm{i}) \qquad T_1 と T_2 の E 構造は一致 \\ \\ & (\mathrm{ii}) \qquad \exists 全単射 \sigma:A \rightarrow A, \ \forall a \in A, \\ & \qquad a を起点とする t_1 の巡回列と \sigma(a) を起点とする t_2 の巡回列は一致 \end{align*}
proof.)
まず
を示す。 (\mathrm{i}) \ \Rightarrow \ (\mathrm{ii})
構造の定義より、ある2つの全単射写像 E が存在して、 \sigma_e:E \rightarrow E,\ \sigma_o:A \setminus E \rightarrow A \setminus E \begin{align*} & \sigma(x) := \left\{ \begin{array}{ll} \sigma_e(x) & (x \in E) \\ \sigma_o(x) & (x \in A \setminus E) \end{array} \right. \\ \\ & \sigma \circ t_1=t_2 \circ \sigma \end{align*} が成り立つ。
よって、任意のと a \in A に対し、 i \geq 0 \chi_E(t_1^i(a))=\chi_E(\sigma(t_1^i(a)))=\chi_E(t_2^i(\sigma(a))) が成立する。
次に
を示す。 (\mathrm{i}) \ \Leftarrow \ (\mathrm{ii})
仮定は、任意のに対し、次の2つの数列に a \in A を作用させたものは一致することである: \chi_E \begin{matrix} a, & t_1(a), & t_1^2(a), & t_1^3(a), & ... \\ \\ \sigma(a), & t_2(\sigma(a)), & t_2^2(\sigma(a)), & t_2^3(\sigma(a)), & ... \end{matrix} \ 最初の要素に着目すれば、任意の
に対し、 a \in A \chi_E(a)=\chi_E(\sigma(a)) が成り立つから、
は \sigma それぞれで定義できる。 E,\ A \setminus E
また、を a に置き換えれば、次の2つの数列に t_1(a) を作用させたものは一致する: \chi_E \begin{matrix} t_1(a), & t_1^2(a), & t_1^3(a), & t_1^4(a), & ... \\ \\ \sigma(t_1(a)), & t_2(\sigma(t_1(a))), & t_2^2(\sigma(t_1(a))), & t_2^3(\sigma(t_1(a))), & ... \end{matrix} \ ここで数列の一致性を見比べると、次の2つの数列に
を作用させたものは一致することが分かる: \chi_E \begin{matrix} t_2(\sigma(a)), & t_2^2(\sigma(a)), & t_2^3(\sigma(a)), & t_2^4(\sigma(a)), & ... \\ \\ \sigma(t_1(a)), & t_2(\sigma(t_1(a))), & t_2^2(\sigma(t_1(a))), & t_2^3(\sigma(t_1(a))), & ... \end{matrix} \ よって、
を起点とする t_2(\sigma(a)) の巡回列と t_2 を起点とする \sigma(t_1(a)) の巡回列は一致する。ここで t_2 は E 正規分割だから、 T_2 t_2(\sigma(a))=\sigma(t_1(a)) が成り立つ。これは任意の
に対して成り立つ。(証明終) a \in A
後半の証明は前回のproof.)で出てきたやり方と同じですね。
それとこの証明では、
Thmから分かること
このThmの主張は、ツリーの
o1: 0───1───0───1───0───1───...
e1: 1───0───1───0───1───0───...
o2: 0───1───1───1───0───1───...
e2: 1───1───0───1───0───1───...
o3: 0───1───1───0───1───0───...
e3: 1───1───1───0───1───0───...
つまり、上の図と下の表で表している
少し違う表現をすれば、
「このツリーは、これとそれとあれの巡回列を持つ」
みたいな感じで、巡回列の集合だけでツリーを述べることができてしまうということです。
この発想は重要なことを教えてくれているのではないでしょうか。
それは、ツリーを知る上で重要なことは何かと聞かれたら、巡回列が重要だと答えたくなるという感覚です。ただし、巡回列が重要となってくれるためには正規分割ではなくてはなりません。
そして、「正規分割=同じ巡回列は1つしかない」とも言い換えることもできます。
じゃあ、巡回列が2つ以上あったらどうするか?
無理やり「同じ」としてしまえばいいじゃん! っていう発想も生まれてきます。
巡回列で同値類を考えてみよう
つまり、次のような同値関係を導入するということです:
E によるツリーの正規化
Def:分割 集合
上のツリー A と分割 T について、 E に対し、 a,\ b \in A a を起点とする巡回列と b を起点とする巡回列が一致するならば、 a \sim b によって同値関係
を定める。 \sim
このとき、から新たなツリー T を生み出すことを、 T / \sim による正規化、もしくは単に正規化と定義する。 E
と一応、well-defined性も書いておきます。
というのも、感覚的にちょっと今までやってことと違っているからです。今までは巡回列はあくまで脇役のようなイメージだったのに、ここに来て急に世界の中心かのような振る舞いをし始めたからです。
どういうことか?
例えば次のツリーの正規化を考えてみましょう:
o1: 0───1───0───1───0───...
e1: 1───0───1───0───1───...
o2: 0───1───0───1───0───...
e2: 1───0───1───0───1───...
o3: 0───0───1───0───1───...
e3: 1───0───1───0───1───...
o4: 0───1───0───1───0───...
e4: 1───1───0───1───0───...
巡回列による同値関係を考えると、ツリーの要素は以下の4つになります:
つまり
こんな風になりますね。
このように、正規化とは「要素を巡回列にする」操作とも言い換えられます。正規化されたツリー上では、巡回列こそが中心なのです。
となると、すべての巡回列のパターンを考えるというのも自然に思えてきます。
すべての巡回列のパターンとは、
実数集合上のツリー
t(x)=2x
ツリーの例:
上でツリー \mathbb{R} を次のように定義する: T=\mathrm{Tree}(t) t(x)=2x ここで分割
を、 E \subset \mathbb{R} E = \sum_{i \in \mathbb{Z}}\ (2i-1,\ 2i \rbrack とする。
このとき、による E の正規化を考える。 T
例えば、
という感じになっていきます。
となります。
以下ずっと同じなので、
一般に、差が2の倍数となるような値の組に対して、
また、例えば、
となっていきます。
ここで、
となる。つまり、
一般に、
より、巡回列と一致する。
よって
こんな感じで今回は終わりにしようと思います。
次回は、やっと...やっと...ついに、直接コラッツ予想を考えてみるつもりです。(まあ、まだ何もできないと思いますが...)
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