💡

【数学】コラッツ予想を解きたい!06

2022/08/21に公開

前回のまとめ

前回は次の定理を証明しました:

Thm:構造一致の別表現

集合 A 上に2つのツリー T_1=\mathrm{Tree}(t_1),\ T_2=\mathrm{Tree}(t_2) がある。また、E \subset AT_2の正規分割とする。
このとき、次の (\mathrm{i}), \ (\mathrm{ii})は同値である:

\begin{align*} & (\mathrm{i}) \qquad T_1 と T_2 の E 構造は一致 \\ \\ & (\mathrm{ii}) \qquad \exists 全単射 \sigma:A \rightarrow A, \ \forall a \in A, \\ & \qquad a を起点とする t_1 の巡回列と \sigma(a) を起点とする t_2 の巡回列は一致 \end{align*}

またこの定理から着想を得て、次のような概念を定義しました:

Def:分割Eによるツリーの正規化

集合 A 上のツリー T と分割 E について、a,\ b \in A に対し、

a を起点とする巡回列と b を起点とする巡回列が一致するならば、 a \sim b

によって同値関係 \sim を定める。
このとき、T から新たなツリー T / \sim を生み出すことを、E による正規化、もしくは単に正規化と定義する。

今回は

今回はついに、コラッツ予想を直接考えてみます。
とりあえず、次のようなツリーを定義しておきます:

ツリーの例:\mathbb{R}上のコラッツ予想を表すツリー

\mathbb{R} 上でツリー T=\mathrm{Tree}(t) を、E \subset \mathbb{R} を用いて、次のように定義する:

t(x) := \left\{ \begin{array}{ll} x/2 & (x \in E) \\ 3x+1 & (x \in \mathbb{R} \setminus E) \end{array} \right.

分割 E も定義しなければなりません。
今までの流れで言うと、すべての巡回列のパターン(0, 1 からなる数列全体の集合)を持つような分割を考えたくなるでしょう。
この分割とはどのようなものでしょうか。

実数集合上の偶奇とは何か

分割とは、偶奇性の一般化だったので、このようなタイトルにしました。

では考えていきましょう。
例えば次のような場合は...

T の一部:

このような要素に対しては、

t_e(t_e(t_o(x))))=x

を考えると、

\frac{3x+1}{2^2}=x

より、x=1 となります。つまり、1 は巡回列 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ 1,\ 1,\ ... に対応し、
1 \in \mathbb{R} \setminus E となる...かもね。

そう「かもね」なんです。
この議論には穴があります。どこか分かるでしょうか?

考えてみましょう。

例えば、E を前回と同様、

E = \sum_{i \in \mathbb{Z}}\ (2i-1,\ 2i \rbrack

としてみます。
すると、例えば、0.8 を起点とする巡回列は何になるでしょうか?

T の一部:

これも 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ 1,\ 1,\ ... の巡回列になってしまうのです。

つまり、巡回列 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ 1,\ 1,\ ... があるよ~ってだけでは 1 \in \mathbb{R} \setminus E になるとは限らないということなんです。1 \in \mathbb{R} \setminus E とさせたいのなら、追加の条件が必要になってきます。

thm: 1 \in \mathbb{R} \setminus E

上で定義した T が巡回列 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ 1,\ 1,\ ... を持つとする。また、次のような完備性を備えているとする:

巡回列の一致性: a_1\ \sim \ a_2\ \sim \ a_3\ \sim ... \\ を満たす任意の数列 \{ a_i \}_i に対して、\\ もし \alpha に収束するなら、\alpha の巡回列も一致する。

このとき、1 \in \mathbb{R} \setminus E である。

proof.)

a \in \mathbb{R} を起点とする巡回列が 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ 1,\ 1,\ ... になると仮定する。 a \in \mathbb{R} \setminus E である。
a = 1 ならば題意は示されるから、a \neq 1 とする。
また、

\begin{align*} & (\mathrm{I}) \qquad a_1 = a \\ & (\mathrm{II}) \qquad \forall i \in \mathbb{N}, \quad a_{i+1} = t_e(t_e(t_o(a_i))) \end{align*}

によって数列 \{ a_i \} を定義する。このとき、任意の a_i の巡回列は等しい。
また、d_i := 1 - a_i とすると、

\begin{align*} a_{i+1} &= \frac{3 \cdot a_i +1}{4} \\ \\ 1 &= \frac{3 \cdot 1 + 1}{4} \end{align*}

より、両辺の差を取って、

d_{i+1} = \frac{3}{4} d_i

となる。よって、数列 \{ a_i \}1 に収束する。
仮定より、1 \in \mathbb{R} \setminus E となる。(証明終)

完備性を追加すれば、1 \in \mathbb{R} \setminus E を示すことができました!

では次に、ループする前の要素に対してはどうなるでしょうか?
例えば、

f_o(0)=1

より、0 は分かるのでしょうか。
やってみましょう。

仮説:

上で定義した T が巡回列 0,\ 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ 1,\ 1,\ ... を持つとする。また、次のような完備性を備えているとする:

巡回列の一致性: a_1\ \sim \ a_2\ \sim \ a_3\ \sim ... \\ を満たす任意の数列 \{ a_i \}_i に対して、\\ もし \alpha に収束するなら、\alpha の巡回列も一致する。

このとき、0 \in \mathbb{R} \setminus E である。

proof.)

a \in \mathbb{R} を起点とする巡回列が 0,\ 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ 1,\ 1,\ ... になると仮定する。 a \in \mathbb{R} \setminus E である。
a = 0 ならば題意は示されるから、a \neq 1 とする。
0 \in \mathbb{R} \setminus E を見るためには、0 に収束するような数列 \{ a_i \} を定義したい。

\begin{matrix} f(a) & \rightarrow \rightarrow \rightarrow & f^4(a) & \rightarrow \rightarrow \rightarrow & f^7(a) & \rightarrow \rightarrow \rightarrow & f^{10}(a) & \rightarrow \rightarrow \rightarrow & ... \\ \uparrow & & \uparrow & & \uparrow & & \uparrow & & \\ a & & a_2 & & a_3 & & a_4 & & ... \end{matrix} \

このようなイメージから、

\begin{align*} & (\mathrm{I}) \qquad a_1 = a \\ & (\mathrm{II}) \qquad \forall i \in \mathbb{N}, \quad a_{i+1} = t_o^{-1}(t_e(t_e(t_o(t_o(a_i))))) \end{align*}

によって数列 \{ a_i \} を定義する。
しかし、a_i \in \mathbb{R} \setminus E とは限らない...

というわけで、不成立ですね。

巡回列 0,\ 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ 1,\ 1,\ ... があるよ~ってだけでは、巡回列の完備性を兼ね備えていたとしても 0 は決定できないということになります。しかし、他のいろいろな巡回列も持つと仮定すれば、全体との兼ね合いから、もしかしたら 0 も決定できるかもしれません、

そしてこのような発想をすると、いろいろ気になることが出てきます。
なお、今議論している T をコラッツ木と呼ぶことにします。

仮説いろいろ

仮説1:well-defined性

コラッツ木 T がすべての巡回列のパターン(0, 1 からなる数列全体)を持つとする。
このとき、そのような分割 E は存在するか?

仮説2:巡回列の完備性

コラッツ木 T がすべての巡回列のパターン(0, 1 からなる数列全体)を持つとする。このとき、T は次のような完備性を備える:

巡回列の一致性: a_1\ \sim \ a_2\ \sim \ a_3\ \sim ... \\ を満たす任意の数列 \{ a_i \}_i に対して、\\ もし \alpha に収束するなら、\alpha の巡回列も一致する。

巡回列 0,\ 1,\ 1,\ 0,\ 1,\ 1,\ ... のみを考えた場合は完備性が必要でしたが、他すべての巡回列を考えた場合、なんかいろいろ制約が発生し、なんやかんや完備性を獲得するか? という話題です。

仮説3:有理数、無理数

コラッツ木 T がすべての巡回列のパターン(0, 1 からなる数列全体の集合)を持つとする。
T 正規化することを考えると、

・最終的にループするノードは、有理数を起点とする巡回列
・発散するノードは、無理数を起点とする巡回列

となる。

前回(05)で最後に話題にした t(x) = 2x の話でいうと、循環小数(有理数)はループし、循環しない数(無理数)は発散するということです。

仮説4:well-defined性と完備性(有理数)

有理数全体の集合 \mathbb{Q} 上のコラッツ木 T がすべてのループする巡回列(0, 1 からなる数列全体の内、最終的にループするもの)を持つとする。
このとき、T が存在し、次のような完備性を備える:

巡回列の一致性: a_1\ \sim \ a_2\ \sim \ a_3\ \sim ... \\ を満たす任意の数列 \{ a_i \}_i に対して、\\ もし \alpha に収束するなら、\alpha の巡回列も一致する。

仮説5:範囲について

仮説1~3について、コラッツ木は \mathbb{R} 上という前提で考えてきた。
次のように修正するべきか?

\mathbb{R}\infty を追加する
\mathbb{R}\mathbb{R}_{>0} に変更する
0 \in \mathbb{R} に対してのみ、特別な扱いをする

仮説1~5まで、いろいろ書きました。正しいんでしょうか? おそらく完璧に正しいものはないと思いますが、いくつかの修正で成立するものがあったらいいな、という感覚です。発想の方向性としてはこんなイメージで、という気持ちでやっています。
そして、ここに来てやっとなのですが、コラッツ予想というのはツリーうんぬんというよりも、偶奇性を実数全体に拡張できるか? というゲームのような気もしてきました。

偶奇性の拡張という発想を持つと、\mathbb{Q} 上ですが、一つ、自然な拡張はありますよね。

仮説6:自然な有理数上の偶奇性

任意の p \in \mathbb{Q} について、

p = \frac{m}{n} \qquad ( m,\ n は互いに素な整数で n>0)

と表した時、

m は偶数 \ \Leftrightarrow \ p \in E

によって、E \subset \mathbb{Q} を定める。
このとき、コラッツ木 T はすべてのループする巡回列を持つか?

これはどうなんでしょうかね。
正直、全然分からないです...

今後の方針

さて、いろいろ仮説を書いたのはいいのですが、はっきり言って、これらの仮説を考えるためのツールがありません。

今までやったことの流れとしては、

ツリーについての議論をする

偶奇性も入れた方がいいんじゃね

巡回列って概念入れるべきだ

巡回列中心に考えてみよう

仮説がたくさん生まれた

こんな感じ。
仮説が生まれて、今までやったこと自体は悪くなかったと思います。
ただ、ツリーの理解度を上げるという方針でやってきましたが、これからはツリーの理解度を上げると言うよりも、偶奇性(分割)の話が主役なんじゃないかと思い始めました。

そして、直近の目標は、コラッツ木ではなく、それを簡単にした以下のツリーについて仮説が成り立つかです:

ツリーの例:\mathbb{R}上の簡易ツリー

\mathbb{R} 上でツリー T=\mathrm{Tree}(t) を、E \subset \mathbb{R} を用いて、次のように定義する:

t(x) := \left\{ \begin{array}{ll} x/2 & (x \in E) \\ x+1 & (x \in \mathbb{R} \setminus E) \end{array} \right.

3倍をなくしただけのものです。
これでもかなり複雑ですが、これ以上の単純化もどうすればいいか分からないところです。

次回からは偶奇性(分割)についての議論を進める方針でいきたいと思います。では。

Discussion

ログインするとコメントできます