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【数学】コラッツ予想を解きたい!13

2022/10/10に公開約10,500字

前回のまとめ

前回は、一般の t に対する j_t が全単射になることを見ました。

Thm:巡回列空間上で一般ツリーはすべての巡回列をちょうど1つずつ持つ

巡回列空間 \mathbb{J} 上において、奇数集合を O、偶数集合を E とする。関数 t:\mathbb{J} \rightarrow \mathbb{J} を2つの全単射写像

t_o:O \rightarrow \mathbb{J} \\ t_e:E \rightarrow \mathbb{J}

を用いて、

t(x) := \left\{ \begin{align*} t_e(x) \quad & (x \in E) \\ t_o(x) \quad & (x \in O) \end{align*} \right.

と表せるとする。
さらに、任意の n \in \mathbb{N} に対し、

\begin{align*} & a-b\ は \ 2^n\ の倍数\\ \Leftrightarrow \quad & t_e(a)-t_e(b)\ は \ 2^{n-1}\ の倍数 または t_o(a)-t_o(b)\ は \ 2^{n-1}\ の倍数 \end{align*}

が成り立つとする。
このとき、a \in \mathbb{J} を起点とする t による巡回列 j_t(a) \in \mathbb{J} は次のように定義される:

\forall i \in \mathbb{N},\ (j_t(a))_i = \chi_O (t^{i-1}(a))

ただし、\chi_OO の定義関数である:

\chi_O(x) = \left\{ \begin{array}{ll} 1 & (x \in O) \\ 0 & (x \in E) \end{array} \right.

このとき、t による巡回列全体の集合はすべての巡回列をちょうど一つずつ持つ。つまり、

  • すべての巡回列を持つ
\forall a \in \mathbb{J},\ \exists b \in \mathbb{J}, \quad j_t(b) = a
  • 一意性
\forall a,\ b \in \mathbb{J}, \quad j_t(a) = j_t(b)\ \Rightarrow \ a=b

を満たす。

前回の最後ではいくつか仮説を見ました。

より一般のツリーに対する全射性

仮説:任意ツリーの巡回列は全射

全単射の2つの関数

t_o:O \rightarrow \mathbb{J} \\ t_e:E \rightarrow \mathbb{J}

を用いて、

t(x) := \left\{ \begin{align*} t_e(x) \quad & (x \in E) \\ t_o(x) \quad & (x \in O) \end{align*} \right.

と表せる t について、j_t: \mathbb{J} \rightarrow \mathbb{J} は全射となるか?

前回の最後にこれを見てました。

簡単そうに見えて難しい問題です。

以下のような2分法でいけるかと思いましたが、精査してみるとダメでした。

2分法による証明(失敗)

\mathbb{J} を閉区間 [0,\ 1] \subset \mathbb{R} に落とし込めば、発散することはありませんよね。

前半部分は前回と同じです

proof.) (前半)

任意に \alpha \in \mathbb{J} を取る。

ここで、\alpha と任意の自然数 n \in \mathbb{N} に対応した f_n=t^n を考える。つまり関数

t_i = \left\{ \begin{align*} t_e \quad & (\alpha_i = 0) \\ t_o \quad & (\alpha_i = 1) \end{align*} \right.

の合成によって

f_n:= \prod_{i=1}^n t_i

と定義する。
ここで集合 J_n \subset \mathbb{J}J_n=f_n^{-1}(\mathbb{J}) と定義すると、

f_n: J_n \rightarrow \mathbb{J}

は全単射となる。
また、集合の列 \{ J_n \}_n は減小列である。

(ここまでは前回と同じ)

proof.) (後半)

任意の a \in \mathbb{J} に対し、2進数とみなすことで、\mathbb{J} \rightarrow [0,\ 1] \subset \mathbb{R} への一対一対応を考える。つまり、

a \quad \mapsto \quad a_1 \cdot 2^{-1} + a_2 \cdot 2^{-2}+ a_3 \cdot 2^{-3} + ...

として、閉区間 [0,\ 1] \subset \mathbb{R} への対応を考える。
ここで各 J_nK_n \subset [0,\ 1] に写るとする。
これらは空集合ではないので、

\forall n \in \mathbb{N},\ \exists r \in [0,\ 1],\ \quad r \in K_n

が言える。
このとき、

\forall n \in \mathbb{N},\ \exists r \in [0,\ 1/2],\ \quad r \in K_n

または

\forall n \in \mathbb{N},\ \exists r \in [1/2,\ 1],\ \quad r \in K_n

が成り立つ。
理由は、以下のような背理法に因る。

\exists n \in \mathbb{N},\ \forall r \in [0,\ 1/2],\ \quad r \notin K_n

かつ

\exists n \in \mathbb{N},\ \forall r \in [1/2,\ 1],\ \quad r \notin K_n

を背理法の仮定とする。
K_n は減少列だから、十分大きな n に対して、

\forall r \in [0,\ 1],\ \quad r \notin K_n

が成り立ってしまう。これは矛盾である。
よって、

\forall n \in \mathbb{N},\ \exists r \in [0,\ 1/2],\ \quad r \in K_n

または

\forall n \in \mathbb{N},\ \exists r \in [1/2,\ 1],\ \quad r \in K_n

が成り立つ。
ここで、[0,\ 1/2] について成り立つなら、I_1 = [0,\ 1/2] とし、そうではないなら I_1 = [1/2,\ 1] とする。
さらに、I_1 を2つの区間に分けて同様にすることで I_2 も定義できる。以下、\ I_3,\ I_4,\ ... も定義できる。
すると、

\forall n,\ m \in \mathbb{N},\ \exists r \in I_m,\ \quad r \in K_n

と言える。
ここで実数の完備性から、ある s \in [0,\ 1] が存在して、すべての I_m に対し、s \in I_m となる。

この s が求めるものだということを示すために、背理法を使います。

\exists n \in \mathbb{N},\ \quad s \notin K_n

と仮定する。

例えば、K_n=(0,\ 2^{-n}) という開区間とすると、\{ K_n \}_nは減少列だが、共通の要素を持たないような例になっています。

つまり、各 K_n が閉集合であってくれれば...という気もしますが、そもそもそんなことが言えるのかという話もあります。

あと、上の議論でダメなところは、そもそも \mathbb{J} \rightarrow [0,\ 1] への全単射なんてないという話ですね。。。

例えば、

0.1000000..._{(2)} \\ 0.0111111..._{(2)}

は2進法では、どちらも 1/2 になるんですよね。

となると、既存の空間をそのまま使うのは不都合が大きそうという感じもしてきました。
なので、巡回列空間上に頑張って位相を入れるということを考えてみましょう。

巡回列空間に位相を導入する

巡回列空間を距離空間にしてみます。

Def:巡回列空間上の距離

距離 d:\mathbb{J} \times \mathbb{J} \rightarrow \mathbb{R} を以下のように定義する:

d(x,\ x) := 0

x \neq y のとき、

d(x,\ y):=2^{-n}

ただし、n \geq 0 は、 x,\ yn 項まで一致するが n+1 項目は異なることによって決定されるとする。

これは以下の距離空間の定義を満たす:

\begin{align*} &d(x,\ x)=0 \\ &d(x,\ y)>0 \quad (x \neq y) \end{align*}
d(x,\ y)=d(y,\ x)
    1. 三角不等式
d(x,\ y) + d(y,\ z) \geq d(x,\ z)

これらは明らかですね。

そして、開集合、閉集合、連続関数も定義しておきますか。おそらく t に連続性は必要っぽいので。

開集合の定義のためにまず近傍を定義します。

def:近傍

x \in \mathbb{J} に対し、任意の \varepsilon > 0 を用いて、以下のように表せられる集合を近傍という:

B(x;\ \varepsilon):= \{ \ y\ |\ d(x,\ y) < \varepsilon \ \}

Def:開集合

U \subset \mathbb{J} について、

\forall x \in U,\ \exists \delta > 0,\ \quad B(x;\ \delta) \subset U

を満たすとき、開集合であるという。

def:閉集合

U \subset \mathbb{J} が閉集合であるとは、その補集合 \mathbb{J} \setminus U が開集合であることである。

Def:連続関数

関数 f: \mathbb{J} \supset U \rightarrow \mathbb{J} が連続であるとは、任意の開集合 V \subset \mathbb{J} に対し、その逆像 f^{-1}(V) もまた開集合になることである。

収束に関する話を見ていきます。

def:収束

点列 a_n \in \mathbb{J}\alpha \in \mathbb{J} に収束するとは、

\forall \varepsilon > 0,\ \exists N \in \mathbb{N},\ \forall n > N,\ \quad d(a_n, \alpha) < \varepsilon

Def:巡回列空間上の全順序

任意の異なる2数 a,\ b \in \mathbb{J} に対し、ある項まで一致し、ある項で不一致となる。不一致となるのは、第n項であるとする。このとき、

a_n \neq b_n

であり、片方が 0 でもう片方が 1 となる。
もし、a_n = 0,\ b_n = 1 ならば、a < b
a_n = 1,\ b_n = 0 ならば、a > b
と定義する。

以下の2点は確認しておきましょう。

    1. 推移律
a \leq b \ \land \ b \leq c \quad \Rightarrow \quad a \geq c

proof.)

どちらかが等しい時は明らかなので、a < b\ \land \ b < c と仮定する。
ある n, m \in \mathbb{N} が存在し、a, bn-1 項まで一致し、a_n=0,\ b_n=1b, cm-1 項まで一致し、b_m=0,\ c_m=1 となる。
n \neq m であり、
n < m のとき、

a_n=0,\ c_n=b_n=1

n > m のとき、

a_m=b_m=0,\ c_m=1

となって、a < c となる。(証明終)

    1. 反対称律
a \leq b \ \land \ b \leq a \quad \Rightarrow \quad a = a

これは明らか。

Thm:単調増加列は収束する

巡回列空間内の単調増加列は収束する。

def:閉区間

\mathbb{J} 上の閉区間を以下のように定義する:

[a,\ b] := \{ \ x \ | \ a \leq x \leq b \ \}

proof.)

任意に巡回列空間内の単調増加列 \{ a_n \}_n をとる。
閉区間 I_0 = [m_0,\ M_0] = \mathbb{J} とすると、

m_0 = 0,\ 0,\ 0,\ 0,\ ... \\ M_0 = 1,\ 1,\ 1,\ 1,\ ...

である。
ここで、第一項が 01 かで分けることを考える。
このとき、無限個の a_n を持つ方を選ぶ。
その区間を I_1 = [m_1,\ M_1] と書くことができ、

m_1 = i_1,\ 0,\ 0,\ 0,\ ... \\ M_1 = i_1,\ 1,\ 1,\ 1,\ ...

となる。ただし、i_10,\ 1 のどちらかである。
このような2分法を繰り返すことで、

\forall n \in \mathbb{N},\ \exists N \in \mathbb{N},\ \forall m \geq N,\ \quad a_m \in I_n

となる閉区間列 I_n := [m_n, M_n] とそれを特徴付ける数列 \{ i_n \}_n を決定できる。
ここで、i=\{ i_n \}_n とする。

a_m \in I_n

のとき、ia_m は少なくとも第n項まで一致する。よって、

d(i,\ a_m) \leq 2^{-n}

となる。
よって、任意の \varepsilon > 0 に対し、2^{-n} < \varepsilon を満たす n \in \mathbb{N} が存在し、

\exists N \in \mathbb{N},\ \forall m \geq N,\ \quad a_m \in I_n

となる。よって、

\exists N \in \mathbb{N},\ \forall m \geq N,\ \quad d(i,\ a_m) \leq 2^{-n} < \varepsilon

となる。
以上より、

\forall \varepsilon > 0,\ \exists N \in \mathbb{N},\ \forall m > N,\ \quad d(i, a_m) < \varepsilon

となって、\{a_n \}_ni に収束する。(証明終)

単調減少列についても同様ですね。
次に閉集合内の完備性も見ておきましょう。

thm:閉集合内の完備性

閉集合 U 内の数列 a_n \in \mathbb{J}\alpha \in \mathbb{J} に収束するとする。
このとき、\alpha \in U となる。

proof.)

背理法を用いる。
\alpha \notin U を背理法の仮定とする。
\mathbb{J} \setminus U は開集合だから、B(\alpha;\ \varepsilon) \subset \mathbb{J} \setminus U となる \varepsilon > 0 が存在する。
よって十分大きな n に対して、a_n \in B(\alpha;\ \varepsilon) \subset \mathbb{J} \setminus U となってしまうがこれは矛盾である。(証明終)

Thm:空でない減少閉集合は共通の要素を持つ

空でない閉集合列 J_n \in \mathbb{J} について、

J_1 \supset J_2 \supset J_3 \supset J_4 \supset...

とする。このとき、ある a \in \mathbb{J} が存在して、すべての J_n に対し a \in J_n となる。

proof.)

Thm:単調増加列は収束する と同様の2分法を用いることにより、

\forall n,m \in \mathbb{N},\ \exists a \in J_m,\ \quad a \in I_n

となる閉区間の列 I_n とそれに付随した i \in \mathbb{J} が取れる。
ここで、点列 a_n \in \mathbb{J}

a_n \in J_n \cap I_n

によって1つ選ぶ。これは選択公理によって保証されている。
このとき、Thm:単調増加列は収束する の証明と同様の議論をすれば、a_ni に収束することが分かる。

ここで任意に J_n をとる。

\forall m > n,\ \quad a_m \in J_n

となるから、閉集合内の完備性より、i \in J_n となる。
これは任意の J_n に対して成り立つ。(証明終)

全射の証明

Thm:任意ツリーの巡回列は全射

全単射の2つの関数

t_o:O \rightarrow \mathbb{J} \\ t_e:E \rightarrow \mathbb{J}

を用いて、

t(x) := \left\{ \begin{align*} t_e(x) \quad & (x \in E) \\ t_o(x) \quad & (x \in O) \end{align*} \right.

と表せる連続関数 t について、j_t: \mathbb{J} \rightarrow \mathbb{J} は全射となる。

thm:開集合の和集合は開集合

\mathbb{J} 上において、開集合列 U_n があったとき、その和集合

U=\bigcup_n U_n

もまた、開集合である。

proof.)

任意に a \in Uを取る。
ある n \in \mathbb{N} が存在して、a \in U_n となる。
定義より、ある近傍 B \subset U_n があって、a \in B となる。
よって、a \in B \subset U_n \subset U となる。(証明終)

以下は直接の系である。

thm:閉集合の共通部分は閉集合

\mathbb{J} 上において、閉集合の共通部分は閉集合である。

関数の合成についても見ておく必要があるようです。

thm:連続関数の合成は連続

2つの連続関数 f: \mathbb{J} \supset U_1 \rightarrow \mathbb{J},\ g: \mathbb{J} \supset U_2 \rightarrow \mathbb{J} について、
その合成 f \circ g は連続である。

proof.)

任意の開集合 U に対し、g^{-1}(U) は開集合。f^{-1}(g^{-1}(U)) も開集合。(証明終)

必要なところを少し追加したので、証明に入ります。

proof.)

任意に \alpha \in \mathbb{J} を取る。

ここで、\alpha と任意の自然数 n \in \mathbb{N} に対応した f_n=t^n を考える。つまり関数

t_i = \left\{ \begin{align*} t_e \quad & (\alpha_i = 0) \\ t_o \quad & (\alpha_i = 1) \end{align*} \right.

の合成によって

f_n:= \prod_{i=1}^n t_i

と定義する。
ここで集合 J_n \subset \mathbb{J}J_n=f_n^{-1}(\mathbb{J}) と定義すると、

f_n: J_n \rightarrow \mathbb{J}

は全単射となる。
また、集合の列 \{ J_n \}_n は減小列である。

全体集合 \mathbb{J} は開集合であり、閉集合でもある。
J_n についても、もし開集合かつ閉集合ならば、
f の連続性より、t_e^{-1}(J_n),\ t_o^{-1}(J_n) はともに開集合であり、

t_e^{-1}(J_n) = (\mathbb{J} \setminus t_o^{-1}(J_n)) \cap J_n \\ t_o^{-1}(J_n) = (\mathbb{J} \setminus t_e^{-1}(J_n)) \cap J_n

より、閉集合でもある。よって、J_{n+1} も開集合かつ閉集合となる。
帰納法により、J_n は常に閉集合となる。

よって、Thm:空でない減少閉集合は共通の要素を持つより、ある a \in \mathbb{J} が存在して、すべての J_n に対し、a \in J_n となる。

任意の n \in \mathbb{N} について、
a \in J_n より、j_t(a) の第 n 項までは \alpha と一致する。
n は任意なので、j_t(a) = \alpha となる。
以上より全射性は示された。(証明終)

かなり綺麗に証明できました。

既存の概念を定義から導入したりしましたが、やってみて思うのは、言葉をいろいろ定義するのは見通しを良くするうえで大事なのかもしれませんね。

今回は区切りが良いのでこの辺りで。では。

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