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AI時代におけるRevOps

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概要

この記事の対象者
マーケ・営業・CS部門での業務効率化やAI活用に関心があるビジネスパーソンや企業のデジタル推進担当者。

この記事の内容
RevOps(収益オペレーション)の概要と、生成AIを活用した業務改善・データ基盤・ガバナンス強化の実践例を紹介。

この記事を読むとできること
自社の収益プロセスにAIを効果的に組み込み、部門横断の業務最適化と再現性のある成長戦略を描けるようになる。

序章

みなさん、RevOpsが大事だと聞いたことはありますでしょうか?
(私は、ないです)
しかし、今後どうなるかわからない世の中、1つや2つ知って損はないと思います。
この機会にRevOpsについて考えてみてはいかがでしょうか?

RevOpsって何?

「Revenue Operations? 収益のオペレーション?? むずかしそう…」――私も最初はそうでした。
でもざっくり言うと 「マーケ・営業・カスタマーサクセスの“川”を 1 本にまとめて、水漏れゼロにしようぜ!」 という発想です。

  1. マーケティングが見込み客を集め、
  2. 営業が契約を取り、
  3. カスタマーサクセスが解約を防ぐ

この三銃士がバラバラに動くと、せっかくのリード(見込み客)が途中で迷子になります。
そこで RevOps は 共通KPI と 共通データ基盤 を作り、「川下り」をスムーズにするわけです。

💡 雑学:名前のルーツ
「RevOps(Revenue Operations)」という用語の起源については、明確な定義が存在しないものの、いくつかの情報源によれば、LeanDataのCEOであるEvan Liang氏が2016年にこの用語を初めて使用したとされています。彼は、営業とマーケティングチームの連携を強化する必要性から「RevOps」という言葉を生み出したと報告されています。[1]

生成AIと組むと何がうれしいの?

AI は“収益川”の流速を倍にする

生成 AIは、メール本文や提案書を自動で書いてくれる執筆マシーンです。
さらに、音声認識モデルの Whisper[2] が商談を文字起こし→要約→CRM 登録まで一気通貫。人間は「次に何を話すか」を考える余裕ができます。

💡 豆知識
GPT‑4 を 1 回学習させる電力量は推定 1.3 GWh。
これは一般家庭 1.5 万世帯の年間消費電力に匹敵します。
エコな使い方、大事ですね。

2‑2 “幻覚”はどうするの?
LLM はたまに堂々とウソをつきます(これを Hallucination と呼びます)。
そこで登場するのが RAG[3]
信頼できるドキュメントを検索→回答に差し込むので、ウソ率がぐっと下がります。

AI のユースケース

部門 “昔ながら”のやり方 生成 AI時代のやり方
マーケ メルマガを月1配信 LLMが1通ずつパーソナライズ
営業 日報を手入力 Whisperが自動作成→Copilotが要約
CS 問い合わせを待つ Churn予測で先回りメール

各部門において、生成AIの導入により業務の進め方が大きく変わりつつあります。たとえばマーケティング部門では、従来は月に1度メルマガを一斉配信していましたが、現在では大規模言語モデル(LLM)によって、顧客ごとにパーソナライズされた内容を自動で作成・配信することが可能になっています。

営業部門では、以前は手作業で日報を入力していましたが、今ではWhisperなどの音声認識モデルが自動で音声をテキスト化し、それをCopilotが要約して日報として整える流れが定着しつつあります。

カスタマーサクセス(CS)部門では、これまでは問い合わせが来るのを待つ受動的な対応が一般的でした。しかし今では、解約(Churn)予測モデルによりリスクの高い顧客を事前に把握し、 proactive(先回り)のメールを送ることで対応の質とスピードを高めています。

マーケティング:メール件名は絵文字が勝つ?

HubSpotのコミュニティ投稿によると、あるメディア企業が6か月間のデータを収集した結果、ニュースレターの件名の最初に絵文字を追加することで、開封率が27%向上したと報告されています。[4]
また、HubSpotのナレッジベースでは、件名に絵文字を追加することで視覚的な関心を引き、受信者とのエンゲージメントを高めることができると述べられています。ただし、過度な使用はスパムと見なされる可能性があるため、1つか2つに留めるのが最適とされています。

カスタマーサクセス:Netflix 式“1 %の魔法”

Netflixは、解約率を1%改善することで年間10億ドル以上の増収が見込めると公表しています。​
また、データ分析と生成AIを活用してチュートリアル動画を自動生成し、顧客に送付することで、解約率が0.8ポイント下がった事例も報告されています。​
さらに、2024年後半には、Netflixの解約率は1.8%と業界平均を大きく下回っており、解約後6か月以内に50%、1年以内に61%のユーザーが再加入していることが報告されています。[5]

データ基盤――SSOT と Data Mesh

生成 AIの性能は、モデルサイズよりデータ品質で決まります。そこで必要なのが SSOT[6] です。

ETL / ELT[7] で各SaaSから CDW[8] へ吸い上げ

dbt[9] で変換ロジックを Git 管理

Reverse ETL[10] で MA や CRM に戻す

雑学
ベクトルDBの FAISS は Facebook AI Research が 2017 年に公開。開発者は「ファイス」と発音するそうです。

ガバナンス――速さと安全、どう両立?

AI を使うほどリスクも増えます。たとえば シャドー IT[11] や モデル毒性[12]

Zero Trust[13] で API コールを常時監視

Guardrails LLM[14] でトーンを制御

Observability[15] で「誰が・いつ・何を」まで追跡

💡 雑学:OpenAI は 2024 年に「幻覚率」を KPI として公開し始め、将来はサービスレベル目標(SLO)に組み込む方針を示しています。

日本企業の“時計職人症候群”を脱するには

多くの国内企業は「うちの業務は特殊」と信じ、CRM を過度にカスタマイズ。結果、Salesforce の Einstein 1 Studio[16] など最新機能が使えない――これが“時計職人症候群”です。

脱出ステップはシンプル。

SBOM[17] で技術負債を棚卸し

BPR[18] で業務を標準化

Composable Architecture[19] へ再構築

雑学
スイス時計産業はクオーツ革命に乗り遅れましたが、のちに高級機械式で復活。差別化ポイントを見極めた好例です。

未来設計:4 つの羅針盤

GIGA[20]――悪いデータは AI が増幅。まずはデータ品質。

Agentic Workflow――複数エージェントを Orchestrator[21] が束ね、Human‑in‑the‑Loop[22] で品質担保。

FinOps × Green AI――コストとCO₂を同時最適化。

RLHF[23]――人のフィードバックでモデルを継続矯正。

💡 雑学:LinkedIn は 2022 年、「Prompt Engineer」を“最も急成長した職種”に選出しました。プロンプトで年収 2,000 万円超えも珍しくありません。

終章 ターボチャージャーとしての AI
RevOps が生成 AIを取り入れるとは、

SSOT が燃料を最適に送り、

AI が燃焼効率を高め、

ガバナンス がエンジンブローを防ぐ――

という、ターボ付き収益エンジンを組むことです。
まずは 「データとプロセスを共通言語で語る文化」 を作り、そこへ AI を“増槽”として取り付けましょう。

おまけ

先日RevOpsの発表をしてきましたので、こちらも共有しておきます!
https://speakerdeck.com/tyukei/revops-aigachuang-zao-suruinpakutonituite

脚注
  1. https://yoodli.ai/blog/revops?utm_source=chatgpt.com ↩︎

  2. OpenAI のエンドツーエンド音声認識モデル ↩︎

  3. Retrieval‑Augmented Generation。ベクトル検索で取得した社内文書を LLM に引用させ、幻覚を抑制する手法 ↩︎

  4. https://community.hubspot.com/t5/Email-Marketing-Tool/Adding-an-Emoji-to-an-Email-Subject-line/m-p/694272?utm_source=chatgpt.com ↩︎

  5. https://www.businessinsider.com/netflix-chart-win-back-canceled-subscribers-2025-2?utm_source=chatgpt.com ↩︎

  6. Single Source of Truth。部門横断で唯一の真実を保持するデータ基盤 ↩︎

  7. Extract‑Transform‑Load/Extract‑Load‑Transform ↩︎

  8. Cloud Data Warehouse。Snowflake、BigQuery など ↩︎

  9. data build tool。SQL 変換をコード管理する OSS ↩︎

  10. 整形済みデータを再び SaaS に書き戻す仕組み ↩︎

  11. 組織が承認していない IT 利用 ↩︎

  12. 差別的・不適切な AI 出力 ↩︎

  13. 社内外を問わず全アクセスを常時検証するセキュリティモデル ↩︎

  14. LLM 出力をルールでフィルタするフレームワーク ↩︎

  15. ログ・メトリクス・トレース+プロンプト監査による可観測性 ↩︎

  16. Salesforce の生成 AI 機能群 ↩︎

  17. Software Bill of Materials ↩︎

  18. Business Process Re‑engineering ↩︎

  19. API 連携を前提にした積み木式設計 ↩︎

  20. Garbage In, GenAI Amplifies ↩︎

  21. タスクを編成・配分する調停役 ↩︎

  22. 人間が最終確認する仕組み ↩︎

  23. Reinforcement Learning from Human Feedback ↩︎

ちゅらデータ株式会社

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