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フリーランスになる前にやっておきたいたった1つのこと

2020/10/22に公開

フリーランスになろうと考えている人にとって最も知りたいことの1つに 「会社員のうちにやっておくべきことは何か」 という疑問があるかと思います。

ネットで調べれば出てくる通り、各種ローン(特に家のローン)やクレジットカード、届出関係はまあその通りではあるのですが、それよりもこの記事で私が強く薦めたいのが 会社の他部署の人の仕事を観察する ということです。

いうまでもなく、フリーランスは開発だけではなく、営業、会計、法務、渉外、意思決定などなど、会社が部署という単位で分業している仕事すべてを自分ひとりでやらなければなりません。

場合によっては外注することもあるかと思いますが、その「外注する」という行為もひとつの仕事です。誰に、いくらで、どのくらいの期間で外注するのか、など考えることはたくさんあります。

そんな多種多様な仕事をいざ自分がやらねばならない、という時に役に立つのが、実際にその道を専門にしてきた人の仕事ぶりを思い出すことだと私は考えています。

この記事では、どのようにその仕事ぶりを観察すれば良いのかについて書いてみます。

どのような仕事をしているのかを観察する

まずは、 「会社にはどのような仕事があるのか」 を観察してみましょう。社内の各部署の1人ひとりがどのような仕事をしているのかを観察してみます。

ここで大事なのが、「イメージ」に囚われずに観察してみる、ということです。
おそらくみなさん誰しも、他部署の仕事に対して何かしらのイメージを持っているのではないかと思います。例えば「営業」と言えばひたすら電話をかけたり顧客に頭を下げたりしているイメージがあったりするのではないでしょうか。

もちろんそのような場面も実際にあるでしょうし、そのような場面が目に入りやすいため印象にも残りやすい面もあるのではないかと思いますが、それだけではないはずです。開発者だってきっと四六時中キーボードをコトコト叩いてコーディングしているわけではないはずです。

ここで注意したいのが、観察対象は自分と同格の人だけではないという点です。たとえ自分が役のないいち従業員だったとしても、他部署の同じようなポジションの人だけを観察するのではなく、プロジェクトマネージャー、管理職、役員、社長に至るまで、様々な役職の様々な立場の人の仕事を観察します。

どの部署のどの立場の誰がどのような仕事をやっているのかが見えてくれば、自分が知らなかった業務が会社運営のために存在することが分かってきます。そしてその業務はすべて、自分がフリーランスになった時に「自分が」やらなければならない業務になる可能性があるのです。

その仕事が何のために存在するかを考える

さて、どの部署の誰がどのような仕事をやっているかが見えてきたら、次に 「その仕事は何のためにやっているのか」 を考えてみましょう。

まともな会社であれば、無駄な仕事は極力省こうとする力が働きます。ということは、省かれずに残っている仕事には必ず何かしらの意味や役割があると考えられます。

その資料は何のために作成しているのか、その会議はなぜ定例で開かれるのか、その目標は何のために存在するのか、そのメールはなぜその文章で書かれたのか、ひとつひとつの行動に対して「なぜ」そうしているのかを想像してみましょう。

機会があれば(飲み会や雑談などで)直接聞いてみるのも良いと思います。誰しも、他部署の人間が自分の仕事に興味を持ってくれていると伝われば、快く教えてくれると思います。

くれぐれもその時に「もっとこうすれば良いと思います!」と上からアドバイスするようなことを言ってはイケないことにご注意ください。そこにはこちらからは見えていない何かしらの事情があるはずで、それを知らない人間に外から何か言われることを多くの人は好みません。聞くことに徹しましょう。

そうして考えたことは、後々自分がフリーランスになって同じようなことをしなければならなくなった時の助けになるはずです。改善案があるのなら、自分の仕事に活かしてみれば良いでしょう。

観察するための材料

さて、「観察する」とは言っても、言葉通り仕事中にじーっと1人ひとりを見ているわけにもいきません。当然自分の仕事もありますし、何よりそんなことをしていたら端から見ていてヤバい奴です。

そこでよく私がやっていたのが、

  • CC やエイリアスで受け取ったメールをちゃんと読んでみる
  • 自分に関係のない話題でもチャットのやりとりを追ってみる
  • カレンダーを開いてその人の予定をひとつずつ見てみる
  • 共有フォルダに保存された資料を読んでみる
  • 聞き耳を立てる

といったあたりです。

いずれも普段は「自分には関係ないな」とスルーしてしまうようなものを、少しの興味を持って覗いてみるイメージです。これなら仕事の合間にちょっと自分の PC でできることですので、誰の時間をとるわけでも、誰に迷惑をかけるでもなく実行できます。

特にチャットはその仕事が発生した経緯や最終的な成果物に至った経緯が時系列で細かく見て取れますので、上記の「その仕事が何のために存在するか」を考える上でのこの上ない材料になります。

一方で、自分と全く関係のない部署の仕事についてはチャットもメールも入ってこないと思いますので、全社で共有されているカレンダーの予定や全社員にアクセス権限のある共有フォルダ内の資料、また(物理的に机が近い場合に限り)聞き耳を立ててどんな話をしているのか聞いてみる、という方法が有効です。

人によってはプロジェクトの飲み会や喫煙スペースでの雑談、帰りに話しかけてみる、という手もあるでしょう。このあたりは人それぞれやりやすい方法を見つけると良いと思います。

いずれにしても、社内で使えるあらゆる手を使って1つでも多くの仕事を観察してみましょう。閲覧権限のある資料や情報はどんどん閲覧してやれば良いと思いますし、直接話すチャンスがあれば話してみるのが手っ取り早いです。

一度個人でサービス開発してみる

ある程度観察して社内の仕事が見渡せたところで、 自分でひとつサービス開発してみる のも良い経験になると思います。

サービスを開発してユーザーに使ってもらうためには、どんなものを作るかを決め、デザインし、実際に作り、テストし、宣伝し、レビューやアナリティクスを見ながらさらなる成長戦略を考え実行する、という、会社では通常分業する部分をひとりで体験できます。

場合によっては法的に問題がないか、特許を侵害していないか、課金が発生するサービスであれば商取引法に関する表示はできているか、個人情報を受け取るサービスであれば個人情報保護法に従った扱いができているか、などの業務も必要になります。

普段は別の部署の誰かに頼めばいい感じにやっておいてくれる部分も、自分で身を以てやってみることで、「言うのとやるのとでは大違い」を体験でき、それはフリーランスになって実際に自分でやらなければならない(場合によってはその道のプロとして顧客に提案しなければならない)場面が来た時に活きるはずです。

ついでにここで開発したサービスを自分の開発力を示す宣伝材料にすることもできて一石二鳥です。

まとめ

以上、フリーランスになろうと思っている方向けに、会社員でいるうちに 会社の他部署の人の仕事を観察する と良いことを書いてみました。

繰り返しになりますが、 会社で発生する業務は、その全てが「フリーランスになった自分」がやる可能性のある業務 です。

いざフリーランスになった時に、見たことも聞いたこともない業務が現れて慌ててしまわないためにも、 フリーランスは会社の縮図である ことを意識した上で一度社内を広く見渡して観察してみると良いでしょう。

実際、私もフリーランスの仕事をする上で、「あ、これは前職の○○さんがやってた仕事だ。あの人はどんなこと考えてどうやってたかな?」と考えながら対応することが少なからずあります。

全ての仕事を会社員のうちに自分が体験することは不可能ですが、他の人の仕事を見て、聞いて、考えることはできます。むしろそれができるのは自分が会社の中にいる間だけです。

会社員という立場でいるうちに、同じ会社の他の人たちの仕事ぶりを観察してみる、というのが私が考える「フリーランスになる前にやっておくこと」です。


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