スクラムマスター研修受けてきたので、好きに感想を書く
はじめに
最近、Agile Business Instituteさんのスクラムマスター研修を自費で受講してきました。その感想を自由に書いてみたいと思います。
なお、研修運営の方から「記事執筆OK」という許可をいただいています。この場を借りて、快く了承いただいたことに感謝申し上げます!
ということで、その「快さ」に乗じて、好き勝手に感想を綴ります。
なぜ研修を受けることにしたのか
研修を受けようと思った理由は以下の通りです。
- 普段マネジメント的な役割を担っているが、自分のやり方が正しいのか全く自信がない
- スクラムの考え方や知識と照らし合わせて、擬似的な答え合わせをしたかった
- 現在の業務で感じている課題に対する解決策を見つけたかった
- 自分が見逃している可能性のある課題を把握したかった
- スクラムというものを体験してみたかった(これが一番の理由)
- 書籍を数冊読んだものの、実践に結びつけられるほど理解が深まらなかった
- 「なんとなく素晴らしいもの」として扱われている印象があるが、それが本当に素晴らしいのか、自分で体感して判断したかった
研修はどうだったのか
結論から言うと受けてみて良かったです。
「百聞は一見に如かず」とはよく言ったもので、これまであまり実感が湧かなかった部分が、ある程度クリアになった感覚がありました。
研修の内容は、座学、ワークショップ、ケーススタディ、講師の方への質疑応答など、非常に多岐にわたるものでした。2日間、1日あたり8時間という長丁場で、内容が非常に濃密だったため、正直ついていくのが大変な部分もありましたが、受講前と比べてスクラムに対する理解や納得感が大きく深まりました。
ただし、注意点として、この研修を受けただけでスクラムマスターとしての能力が身についたかといえば、そんなことはないと思っています。 今回の体験をどう活かすかは、今後の自分次第だと感じています。
研修の内容について
こんな感じの流れになってました
- 初日
- アジャイル
- アジャイルやスクラムとは何か
- 責任
- スクラムに登場する役割、責任、成果物について
- イベント
- スプリントとスプリント内でのイベントについて
- 見積もり
- QA
- アジャイル
- 2日目
- MobAI
- 3-5-3
- Test
- 認定スクラムマスターのテスト対策
- lean coffee
座学とワークショップの2種類で構成されており、ワークショップは4人程度でチームが組まれ、そのチームで単位で行うというものでした。
大体半日ごとに、各メンバーの役割をシャッフルし、基本的には全員がスクラムにおける全ての役割を体験できるようになっています。
研修の内容のそれぞれの項目について、もう少し詳しい内容を記載します。
アジャイル
ここでは、アジャイルとは何か、スクラムとは何か、スクラムとウォーターフォールの違い、スクラムのメリット、今回のスクラム研修の全体像について説明がありました。このパートは座学Onlyです。
せっかくなので、それぞれの内容について自分なりの言葉でまとめてみます。
アジャイルとは何か
アジャイルとは「俊敏性のある開発」を示す概念です。変化に柔軟に対応し、価値を早く届けることを重視するアプローチを指します。
スクラムとは何か
スクラムはアジャイルを実現するための1つの手法です。
アジャイルを実現するための手法は複数存在していますが、スクラムはその中でも「チームワークを重視した手法」になります。また他の手法と比べてシンプルなルールで構成されているのが特徴です。
研修では「2日で習得できるので人気」「チームが高度なアジャイルに移行するための非常に良い出発点」と紹介されていました。
アジャイルとスクラムの関係性を表す図は以下になります。
出典: Agile Business Institute. SCMトレーニング資料より引用. 提供日: 2025年1月
スクラムとウォーターフォールの違い
ウォーターフォールは、最初に、将来を予測し計画をたて、その計画に基づいて進める手法です。
スクラムは、リアルタイムでフィードバックを受けながら、必要に応じて計画を都度柔軟に変え、進めていく手法です。
研修では、変更が4%未満であればウォーターフォール、変更が4%以上であればスクラムが向いているよ、という説明がされていました。
スクラムのメリット
各役割に対して、以下のようなメリットがあるよと説明がありました。
- プロダクトオーナー
- 作業の優先順位を頻繁に変更することができ、状況に応じた価値提供の最適化が可能になる
- スクラムマスター
- ウォーターフォールと比較して、計画を立てることと、進捗の追跡が比較的容易
- プロジェクトの状況を常に正確に確認できる
- 開発者
- 非生産的な作業(誰も使用しない仕様書の作成など)を減らし、開発作業を楽しむことができる
- 自分の仕事が評価されていることも知ることができる
- 経営層や上司
- プロジェクトの可視性が高く、その情報に基づいて戦略の調整が容易
- 顧客
- 短いサイクルでプロダクトを納品してもらうことが可能
- ベンダー
- 価値の高い機能の開発に集中でき、無駄を減らすことができる
- ウォーターフォールと比較して、市場投入までの時間が短縮でき、顧客満足度の向上が期待できる
スクラム研修の全体像
スクラムは3-5-3(3つの役割、5つのイベント、3つの成果物)で構成されるシンプルなゲームだよ、ということを踏まえた上で、これらがどういったものなのかを順番にみていくよ。
この研修自体もスクラムで進めていくよ。という説明がありました。
責任
ここではチームのサイズ、3-5-3の各要素、クロスファンクショナル、3つの役割の責任範囲についての説明がありました。
また、3つの役割の責任範囲についてチームで話し合いながら分類していくというワークショップがありました。
チームのサイズ
理想は3名、最大でも10名にすべきだという話がありました。
3名程度であれば、リーダーがいなくとも簡単に協力し、イノベーションが起こせるとのことです。
また、チームメンバーはフルスタックであるべき、という話もここでありました。
3-5-3の各要素について
3-5-3が示す、3つの役割、5つのイベント、3つの成果物について説明がありました。これがスクラムの構成要素になります。
3つの責任
- PO(プロダクトオーナー)
- プロジェクトの目標と方向性を定義し、プロダクトの価値を最大化する責任者
- やること
- ビジョンと目標の設定
- 価値の最大化
- プロダクトバックログの管理
- ステークホルダーとのコミュニケーション
- SM(スクラムマスター)
- プロジェクトのスムーズな進行を支援し、チームが障害に直面したときに解決を助けるサポート役
- やること
- スクラムプロセスのファシリテーター
- チームを妨げる障害の解決策を提供する
- チームの支援
- プロセスの改善を促進する
- チームの幸福度向上に努める
- D(開発者)
- プロダクトの開発を行い、品質と機能を満たす製品を作る技術者
- やること
- プロダクトの構築
- 自己管理的に作業を進め、チーム内で決定する
- スプリントバックログを完了させる
- 必要に応じてテストし、品質水準に適合させる
5つのイベント
- スプリント
- プランニング
- デイリースクラム
- レビュー
- レトロスペクティブ
3つの成果物
- プロダクトバックログ
- プロダクトの要件や機能、変更要求、技術的な改善など、プロダクトのためのすべての作業をリストしたもの
- スプリントバックログ
- プロダクトバックログを完了させるための具体的な作業をリストしたもの
- インクリメント
- スプリントバックログの作業によって完成したもの
クロスファンクショナル
リリースまでに必要なスキルがチーム内に備わっていることを指します。
メンバーはお互いにスキルを学び合い、最終的には複数の役割を担えるフルスタック人材(T字型)を目指していきます。
出典: Agile Business Institute. SCMトレーニング資料より引用. 提供日: 2025年1月
3つの役割の責任範囲
ここではワークショップ形式で、チームの皆と会話しながら、PO、SM、Dの3つの役割がどういった責任を持つかを整理しました。
3つの役割の責任範囲に関しては、以下の図の通りになります。
出典: Agile Business Institute. SCMトレーニング資料より引用. 提供日: 2025年1月
イベント
ここでは、スプリントとそれを構成するいくつかのイベントについて学びました。
ワークショップでは、スプリントの各イベントをどういう順番で回すかについて、チームで会話しながら整理をしました。
自分たちのチームは以下のような感じでまとめました。
出典: Agile Business Institute. SCMトレーニング資料より引用. 提供日: 2025年1月
スプリント関連のイベントについて、少しだけ詳細を書きます。
スプリント
スプリントとは、計画、開発、テスト、リリース含んだ短いサイクルのことです。
スプリントはテストを実行し、リリース可能な期間で設定され(2週間など、期間をベースで区切るものでないことに注意)、スプリントの終わりには動作するプロダクトや成果物が提供されます。
スプリントの一般的な流れは以下のようになっています
- リファインメント
- プロダクトバックログの要件を明確にするための取り組み
- ※スプリントの最初だけではなく、必要に応じてスプリントの途中で定期的に開催するのもオススメだとか
- スプリントプランニング
- スプリントの期間中に対応するスプリントバックログを決める
- プロダクトバックログを実現するために、タスクを分解し、スプリントバックログとして落とし込む
- デイリースクラム
- チームが情報を共有し、その日の作業について調整する
- スプリントレビュー
- スプリント中に作成したインクリメント(成果物)をステークホルダーにデモする
- ステークホルダーからフィードバックや質問を受ける
- レトロスペクティブ
- スプリント内でのプロセスを振り返り、チームのパフォーマンスの最適化を図る
- ※悪かった点だけではなく、良かった点も共有し、チームの雰囲気をポジティブにすることも大事
見積もり
ここでは、現在よくある期間で見積もりの有用性に対する疑問と、スクラムでよく行うサイズやフィナボッチ数列を使った見積もりの手法をワークショップ形式で体験しました。
- 人間の見積もりの精度はフィナボッチ数列+1程度しかない
- サイズが大きい見積もりはブレがどうしても大きくなる
- スクラムでは、バーンダウンチャートを利用し、トレンドラインで先の予測をはかる
という内容を学びました。
QA
ここでは、スクラム用語に関する問題を解くということやりました。
スクラムはとにかく独特の用語が多いので、その辺りの意味合いの理解を深める上で助かりました。
ここで1日目は終了になります。
MobAI
2日目に入り、MobAIというものを学びました。
またここでは、実際にMobAIを使ったワークショップも行ってます。
まずMobAIのMobとは、チーム全員で同じことを同時に、同じスペースで、同じ作業をする手法です。
そしてAIを活用しながらMobを行うことをMobAIと言います。
これを行うことによる効果は以下のとおりです。
- 問題解決のスピード向上
- 同期的なコミュニケーションがとれるので、情報連携の速度向上や誤解の軽減が期待できる
- 知識共有とチームの強化
- チーム内でお互いのスキルを学び合うことができ、クロスファンクショナルなチームを育成できる
- 作業の継続性とスピードアップ
- メンバーが別の作業に移るときでも、他のメンバーが作業を続けられるため、プロジェクトが止まらず進行する
- 迅速なフィードバック
- メンバー同士で常に議論が行うことができるため、迅速なフィードバックが得られ、別途行うコードレビューや会議が減ります
- AIを活用した効率化
- AIを使うことで、繰り返し作業やデータ分析が自動化され、チームの生産性が向上します。人間はより創造性が必要な部分に集中することができます
MobAIは次の3つの役割に別れて行います
- ドライバー
- 実際に手を動かし、作業を進める役割
- ナビゲーターの指示に従ってコードを書いたりタスクを進行します
- ナビゲーター
- ドライバーをサポートし、進行を監督する役割。方向性を指示したり、次のステップを検討します
- MobAI
- チーム全体でAIツールを活用し、データ分析や反復作業の自動化を実施します。ナビゲーターの補助役としてAIを活用する視点を提供します
出典: Agile Business Institute. SCMトレーニング資料より引用. 提供日: 2025年1月
3-5-3
ここでは実際にスプリントを2回行い、簡単なプロダクトを作るということをやりました。
1回のスプリントは50分程度です。
自分たちのチームでは
- それっぽいことを返してくれる「おみくじAI」
- 体をほぐすための「中年ハッピーリモートワーク体操」
というプロダクトを作りました。
特に2番目のプロダクトの名前がカオスな気がしますが、確実に1人では発生し得ないプロダクトが実現できたのではないかなと思います。チームってすごい。
Test
ここでは認定スクラムマスターの試験対策として、難易度が高めの問題を10問解きました。
正直、解説聞いても微妙だなぁと思う問題もありましたが、まぁ試験問題ってそういうもんだよね、という感じで気楽に流すことにしました。
lean coffee
最後は、チーム間で話し合いたい内容について、lean coffeeという手法を使ってやってみるというワークショップをやりました。
自分たちのチームでは「スクラム自体はなんとなくわかったけど、実際に導入するイメージが湧かない」という話をしました。
日本の既存の商習慣とは合わなそうな部分も一定あるので、なかなか難しいんだろうな〜と、この時自分は考えてました。
印象に残った内容
研修の中で、スクラムはあくまで手段であるという趣旨の内容がありました。
この考え方は自分の感覚とも一致しており、「スクラムを導入すること自体を目的としてはいけない」と以前から考えていましたが、研修でそのような話題に触れたことで、この意識がさらに強まりました。
さいごに
研修の内容をあれこれずらずら書きましたが、実際の研修の内容はもっと盛りだくさんでした。
大量の参考資料、ケーススタディ、正直まだ全然消化しきれていません。
研修に使った資料は、研修後も閲覧可能となっているので、折をみてちょっとずつみていければなと考えています。
最後になりますが、研修を担当してくださった講師やスタッフの皆さん、一緒にワークショップをやってくれたチームの皆さん、一緒に参加してくれた皆さん、本当にありがとうございました。
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