なぜAPIの動作確認のためにデータベースのエミュレータを使ったテストをするのか
はじめに
APIの動作確認は、開発プロセスにおいて重要なステップです。
ここでは、データベースアクセスを伴うAPIの動作確認のために、エミュレータを使用する理由について、他のテスト手法と比較しながら説明します。
テスト手法の比較
APIをテストする手法として、以下の3つの主な手法があります。
- データベース処理のモック化
- 実際のデータベースを使用する
- データベースエミュレータを使用する
これらの手法にはそれぞれ独自のメリットとデメリットがありますが、ここではエミュレータを使用する手法にフォーカスして詳しく見ていきます。
エミュレータを使用する理由
エミュレータを使用する最大の理由は、実際のデータベース環境に近い条件でテストが可能でありながら、さまざまな環境での動作が可能で、コストが低い点です。
メリット
実際のデータベースに近いテスト環境
エミュレータは実データベースシステムの挙動を模倣するため、APIが実データベースとのやり取りをある程度再現・検証できます。これにより、実際のクエリの正しさを検証できます。モックを使用する場合、クエリを実行することができないため、検証が困難です。
環境における汎用性の高さ
エミュレータはソフトウェアとして提供されるため、実データベースシステムの設置が難しい環境でも構築が可能です。例えば、Cloud SpannerやPub/Subなど、特定のクラウドに依存するリソースも、エミュレータを使用すれば、ローカルやCI/CD環境でテストが可能です。
コストの低減
実際のリソースを用意する必要がないため、運用コストを抑えてテスト環境を用意できます。
※有料のエミュレータの場合はこの限りではありませんが、現時点では筆者は見たことがありません。
デメリット
エミュレータの構築コスト
エミュレータを使用する場合、その構築コストが一定発生します。
実際に導入を検討する際には、その構築コストも踏まえた上で検討することをおすすめします。
完全な挙動の再現の限界
エミュレータは実データベースの挙動を高度に模倣しますが、すべての挙動を完全に再現するわけではありません。テスト結果に影響を与える可能性がある挙動の差異には注意が必要です。
エミュレータを使用する際には、実際のものとどういった点が違うのかを確認してから使用することをおすすめします。
有効なシナリオ
エミュレータを使用するテスト手法は、以下のようなシナリオで特に有効です。
初期開発フェーズ
実際のデータベース環境がまだ用意されていない、またはアクセスできない開発の初期段階で、APIの基本的な動作確認に使用します。
CI/CDパイプライン
自動化されたテスト環境で迅速にAPIテストを行いたい場合、エミュレータの使用が適しています。
コスト感度が高いプロジェクト
実際のリソースやデータベースライセンスへの投資なしに、テスト環境を構築したい場合に有効です。
おわりに
APIの動作確認において、エミュレータを使用することは、実データベース環境に近い条件でのテストが可能であり、環境構築の手軽さとコストの低さを兼ね備える点で非常に有効です。
ただし、エミュレータの限界を理解し、必要に応じて他の手法と組み合わせることで、より包括的なテスト戦略を立てることが重要です。
この辺りはプロジェクトの予算、人員、スキルセット、によって変わってくるもので判断が難しいところですが、この記事がテスト戦略を検討する上で助けになれば幸いです。
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