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【門外不出】Azure OpenAI Landing Zone: エンタープライズ生成AI基盤を解き放つ魔法のレシピ【もう迷わない🤗!?】

2024/08/14に公開

AI の可能性は無限大!でも、エンタープライズで活用するには…?

人工知能(AI)の進化は目覚ましく、ビジネスのあらゆる側面に変革をもたらし、私たちの生活に革新をもたらしています。特に、Azure OpenAI Service のような生成AIは、まるで魔法のような能力で、自然言語処理、コンテンツ生成、意思決定支援など、様々な分野で新しい価値を生み出しています。

しかし、エンタープライズレベルで AI を導入し、その真価を発揮させるには、しっかりとした土台作りが重要です。堅牢性、スケーラビリティ、セキュリティ、コンプライアンス…どれも欠かせない要素です。そこで登場するのが Azure OpenAI Landing Zone です!

https://github.com/Azure/azure-openai-landing-zone

Azure Landing Zone って、どんなもの?

Azure Landing Zone は、大規模なクラウド導入を成功させるための設計図のようなもの。Microsoft Cloud Adoption Framework (CAF) の一部として提供されており、ガバナンス、セキュリティ、コンプライアンスといった重要な要件を満たしつつ、スケーラブルで効率的なクラウド環境を構築するためのベストプラクティス集です。

CAF は、クラウド導入のライフサイクル全体をカバーし、戦略策定から計画、準備、導入、管理、ガバナンスに至るまで、各段階におけるベストプラクティス、ツール、ガイダンスを提供します。Azure Landing Zone は、CAF の "準備" 段階において、クラウド環境を適切に構成し、導入のための基盤を整えるために重要な役割を果たします。

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例えば、家を建てる時、基礎工事や水道、電気、ガスの配管など、事前にしっかりとした土台作りが必要ですよね? Azure Landing Zone も同じように、クラウド環境を構築する際に、事前に必要な設定や構成をまとめておくことで、後々のトラブルを防ぎ、スムーズな運用を実現するんです。

Azure OpenAI Landing Zone は、この Azure Landing Zone の考え方を AI ワークロードに特化させたもの です。Azure OpenAI Service を利用した AI アプリケーションを構築する際に、必要な Azure サービスを統合し、最適化された環境を提供します。

Azure OpenAI Landing Zone を導入するメリット

Azure OpenAI Landing Zone を導入することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 迅速な AI 環境構築: 繰り返し利用可能なテンプレートや構成が提供されるため、AI 環境を効率的に構築できます。標準化されたアーキテクチャを採用することで、一貫性のある環境を構築できるのもメリットです。
  • 強固なセキュリティ: Azure Firewall、プライベートエンドポイント、マネージド ID など、Azure の強力なセキュリティ機能を活用することで、AI ワークロードを多層的に保護できます。
  • コンプライアンス遵守の自動化: Azure Policy を使用すれば、組織のセキュリティ、コンプライアンス、データプライバシーに関するポリシーを自動的に適用できます。
  • 柔軟なスケーラビリティと高パフォーマンス: 需要に応じてリソースを自動的にスケールアップ/ダウンできるため、柔軟性と高パフォーマンスを両立できます。
  • 運用効率の向上: Azure Monitor や Azure Automation を活用すれば、AI 環境の監視、管理、ガバナンスを自動化できます。運用コストを削減できるだけでなく、担当者の負担も軽減できます。

Azure OpenAI Landing Zone の構成要素

Azure OpenAI Landing Zone は、AI ワークロードを効率的かつ安全に実行するための様々な Azure サービスで構成されます。


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上の画像は広大すぎるため、重要な箇所をズームインしたのが以下となります。
(あと、引用元は2023年時点の情報のため、Azureの各種サービス名称が現在とは違うことに注意)

構成要素の概要を説明します。

1. ネットワーク: AIのための安全な道

  • ハブアンドスポークネットワーク: 共有サービス (VPN ゲートウェイ、Azure Firewall など) をホストするハブと、個々のワークロード (AI アプリケーションなど) を分離するスポークで構成されます。セキュリティと分離性を高めるためのアーキテクチャです。

  • Azure Virtual Network: AI リソースを他のシステムから分離し、セキュリティを強化するための仮想ネットワークです。

  • Azure Firewall: ネットワークの出入り口を守るファイアウォール。外部からの不正アクセスを防ぎ、AI ワークロードを保護します。

  • プライベートエンドポイント: Azure OpenAI Service、Azure Storage、Azure Cosmos DB などの Azure サービスへ、安全なプライベート接続を提供します。パブリックインターネットを経由せずにアクセスできるため、セキュリティリスクを低減できます。

  • Azure Private DNS Zone: プライベートエンドポイントを使用した、プライベートな DNS 解決を可能にします。

  • Azure Application Gateway: Web アプリケーションや API へのアクセスを管理し、負荷分散、SSL オフロード、Web アプリケーションファイアウォール (WAF) などの機能を提供します。外部からのアクセスを制御し、セキュリティを高める役割を果たします。

  • Azure API Management: API の公開、管理、保護を行うためのサービスです。Azure OpenAI Service へのアクセスを制御し、セキュリティを強化できます。また、API の利用状況を監視し、分析することも可能です。

2. セキュリティ: あなたの資産を守る鉄壁の守り

  • Azure RBAC (ロールベースのアクセス制御): 「最小権限の原則」に基づき、ユーザーやアプリケーションに必要なアクセス権限だけを付与します。権限を必要最低限にすることで、セキュリティリスクを最小限に抑えます。
  • Azure Key Vault: API キーやシークレット、証明書など、重要な機密情報を安全に保管できるサービスです。厳格なアクセス制御により、情報漏洩を防ぎます。
  • Microsoft Defender for cloud: Azure 環境全体のセキュリティ対策を強化してくれるサービスです。脅威を検知し、脆弱性を管理することで、AI ワークロードを様々な脅威から守ります。
  • Azure Sentinel: セキュリティイベントを収集・分析し、脅威に迅速に対応するための SIEM (セキュリティ情報イベント管理) ソリューションです。
  • マネージド ID: Azure サービスが相互に認証するための安全な方法を提供します。Azure OpenAI Service や他の Azure サービスにアクセスする際に、資格情報をコードに埋め込む必要がなくなり、セキュリティリスクを軽減できます。

3. 監視とロギング: システムの健康状態を常にチェック!

  • Azure Monitor: Azure OpenAI Service、関連サービス、アプリケーションのパフォーマンスや正常性を監視します。メトリック、ログ、アラートを活用して、AI 環境が常に健康な状態を保っているかを確認できます。
  • Azure Monitor Logs: Azure OpenAI Service、アプリケーション、インフラストラクチャのログを収集・分析できます。ログを分析することで、問題解決やセキュリティ分析、パフォーマンス最適化に役立ちます。

https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/ai-services/openai/how-to/monitoring

  • Azure Application Insights: アプリケーションのパフォーマンス、可用性、使用状況を監視するための APM (アプリケーションパフォーマンス管理) サービスです。

4. ガバナンス: 環境を適切に管理

  • Azure Policy: セキュリティ、コンプライアンス、コストに関するポリシーを定義し、Azure リソースに適用できます。AI 環境が組織のルールに従って適切に運用されているかをチェックする、いわば管理者のような役割です。
  • Azure Blueprints: 繰り返し利用可能な Azure リソースのセットを定義し、デプロイするためのテンプレートを提供します。AI 環境の標準化を促進し、迅速なデプロイを実現するのに役立ちます。
    ※Azure Blueprintsは以下の通り、今後、非推奨となるため注意が必要です。

https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/governance/blueprints/overview

2026 年 7 月 11 日に、Blueprints (プレビュー) は非推奨になります。 既存のブループリントの定義と割り当てを Template Specs とデプロイ スタックに移行します。

Azure OpenAI Landing Zone の実装における考慮点

Azure OpenAI Landing Zone は、Azure OpenAI をエンタープライズ環境に統合するための強力なフレームワークを提供しますが、実装時にはいくつかの課題も存在します。

  • エンタープライズ環境のセキュリティ: Azure OpenAI Service へのアクセスを適切に制御し、機密データを保護するためのセキュリティ対策を講じる必要があります。
  • システムのスケーラビリティとアップタイムの維持: AI ワークロードは、大量の計算リソースとストレージを必要とする場合があり、システムのスケーラビリティとアップタイムを維持することが重要になります。
  • 効率的なワークフローの設計: データの収集、前処理、モデルのトレーニング、デプロイ、監視など、AI ワークロードには複雑なワークフローが含まれることが多く、効率的な設計が求められます。
  • 反復的なタスクの自動化: AI ワークロードには、データのクリーニング、モデルの再トレーニング、パフォーマンスの監視など、反復的なタスクが多数含まれます。これらのタスクを自動化することで、効率と正確性を向上させることができます。
  • 新機能の統合: Azure OpenAI Service は常に進化しており、Batch API(※以下の記事参照)などの新しい機能が追加されています。これらの新機能を効果的に統合することで、AI ワークロードの価値を高めることができます。

https://zenn.dev/microsoft/articles/319fe212ef4d3f

https://zenn.dev/yamaday/articles/aoai-batch-api

Azure OpenAI Landing Zone を実装するためのステップ

Azure OpenAI Landing Zone の実装は、単にテンプレートをデプロイするだけではありません。組織の AI 戦略、セキュリティ要件、コンプライアンス要件、運用プロセスなどを考慮した、綿密な計画と設計が必要です。

1. 計画と設計: AI 活用のためのロードマップ

  • 明確な AI 戦略: AI を活用することで、どんなビジネス課題を解決したいのか?どんな目標を達成したいのか?まずは、AI 活用の方向性を明確にしましょう!
  • ユースケースの特定: AI を適用する具体的なユースケースを決めましょう。チャットボット?コンテンツ生成?それぞれのユースケースに必要な AI 機能、データ要件、パフォーマンス要件などを定義します。
  • アーキテクチャ設計: ユースケースに基づき、Azure OpenAI Service や関連サービス、アプリケーションをどのように組み合わせるか、詳細なアーキテクチャを設計します。
  • セキュリティとコンプライアンス: AI ワークロードのセキュリティとコンプライアンスに関する要件を明確にしましょう。Azure Landing Zone のセキュリティ機能をどのように活用するかを検討します。
  • 運用プロセス: AI 環境の監視、管理、保守、問題解決など、日々の運用プロセスを定義します。

2. Infrastructure as Code (IaC): インフラストラクチャをコードで管理!

  • Terraform または Bicep: Azure Landing Zone と AI ワークロードのインフラストラクチャをコードとして定義し、管理します。IaC を活用すれば、インフラストラクチャの設定を自動化できるだけでなく、再現性やバージョン管理も容易になります。
  • モジュール化: 再利用可能なモジュールを作成することで、インフラストラクチャのデプロイと管理を効率化できます。
  • バージョン管理: IaC コードを Git などのバージョン管理システムで管理することで、変更履歴を追跡したり、以前の状態にロールバックしたりすることが簡単になります。

3. デプロイ: AI 環境を構築!

  • 段階的なデプロイ: いきなり本番環境にデプロイするのは危険!まずは、開発環境やテスト環境に Azure OpenAI Landing Zone をデプロイし、しっかり検証してから本番環境にデプロイしましょう。
  • 自動化: CI/CD パイプラインを使って、インフラストラクチャとアプリケーションのデプロイを自動化します。
  • 監視: デプロイプロセスを監視し、問題が発生したら迅速に対応します。

4. 運用と最適化: AI 環境を常に最高の状態に

  • 継続的な監視: Azure Monitor を活用して、AI 環境のパフォーマンス、セキュリティ、コンプライアンスを常に監視します。
  • パフォーマンス最適化: Azure OpenAI Service の設定、アプリケーションコード、インフラストラクチャ構成を最適化することで、ボトルネックを解消し、パフォーマンスを向上させます。
  • コスト最適化: Azure Cost Management を使って AI ワークロードのコストを監視し、無駄なコストを削減します。
  • セキュリティ強化: Azure Security Center や Azure Sentinel などのセキュリティツールを活用して、セキュリティの脅威や脆弱性に対処し、セキュリティ体制を継続的に強化します。

Azure OpenAI Landing Zone: さらなる成功のために

1. 責任ある AI の実践: AI を倫理的に活用

  • 公平性とバイアス: AI モデルが公平で、バイアスを含まないように、トレーニングデータとモデルの出力結果を注意深く評価します。
  • 透明性と説明責任: AI モデルの意思決定プロセスを分かりやすく説明できるようにし、責任を持って AI を活用します。
  • プライバシーとセキュリティ: 個人情報を含むデータの取り扱いは、プライバシー規制に準拠し、適切なセキュリティ対策を講じます。

2. コスト管理: AI 活用を賢く、経済的に

  • リソースの最適化: Azure OpenAI Service のプラン、モデルサイズ、インスタンス数を適切に選択することで、無駄なコストを削減します。
  • オートスケーリング: 需要に応じてリソースを自動的にスケールアップ/ダウンすることで、コスト効率を向上させます。
  • Reserved Instances: 長期利用するリソースには Reserved Instances を適用することで、お得に利用できます。

3. 継続的な学習と改善: AI と共に成長しよう!

  • 最新技術の習得: Azure OpenAI Service や AI 技術は常に進化しています。常に最新情報をキャッチし、AI 基盤を進化させていきましょう。
  • コミュニティへの参加: Azure コミュニティに参加して、他のユーザーと情報交換したり、ベストプラクティスを学んだりしましょう。
  • フィードバックの収集: AI アプリケーションのユーザーや関係者からフィードバックを収集し、AI 基盤の改善に役立てましょう。

まとめ: Azure OpenAI Landing Zone で、AI 活用を次のレベルへ

Azure OpenAI Landing Zone は、エンタープライズレベルで AI を導入するための強力なフレームワークです。本記事で紹介した内容を参考に、Azure OpenAI Service を活用した AI 基盤を構築し、ビジネスの成功を加速させましょう!

脚注
  1. Azure 向けの Microsoft クラウド導入フレームワークとは ↩︎

  2. Azure OpenAI Landing Zone reference architecture ↩︎

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