AI Agents vs Agentic AI : 用語の違いを整理してみた
こんにちは。最近は、「AI Agents」とか「Agentic AI」といった言葉をちらほら見かけるようになりました。「ほぼ同じ意味でしょ」と思いつつ調べてみたら、どうやら両者は少し意味合いが違うようなんです。とはいえ、定義は曖昧なので混在して使われがちではあり、使い分けは発信者の意図や思いに依るところも大きいと考えられます。
この記事では、自分のなかでの用語整理も兼ねて、AI AgentsとAgentic AIの違いを整理した内容を記事にしました。私自身が調べた限りの理解なので「なるほど、こういう見方もあるんだな」くらいの感覚で読んでいただけると嬉しいです。
AIエージェント(AI Agents)とAgentic AIをイメージで例える
まずは分かりやすく、日常的なイメージに置き換えてみました。
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AIエージェント = 「秘書さん」
あなたが「会議を予約して」とお願いしたら、必要な情報を確認して会議室を押さえたり参加者に招待メールを送ったりしてくれます。与えられた指示の範囲内でのサポートに徹するイメージです。 -
Agentic AI = 「自律型マネージャー」
「プロジェクトを進めたい」と伝えると、自分で必要なステップを考え、タスクを洗い出して順序立て、関係者に連絡して、時には勝手に資料を作成してくれたりします。ただ命令を実行するだけでなく、どうすれば目的を達成できるかを考え、自分の判断で動くんですね。
なんとなく雰囲気が伝わりましたでしょうか。「AIエージェント」は与えられたタスクをこなす秘書役で、「Agentic AI」はもっと高度に自律・意思決定ができるマネージャーといった感じです。
まずはAIエージェント(Agent AI)の基本像
定義や実例
AIエージェントとは、ユーザーや他のシステムの代わりにタスクを実行するよう設計されたソフトウェア的存在。いわゆる「自律的に行動するAIプログラム」の総称として、チャットボットから家庭用のバーチャルアシスタント(Siri、Alexaなど)に至るまで、幅広いものが含まれます。
- チャットボット:カスタマーサポートで事前に用意されたQ&Aを自動で回答してくれるAI。
- 音声アシスタント:AlexaやSiriなど、音声指示に従って質問に答えたり、家電を操作したり。
ここで特徴的だと思ったのは、多くの場合「人間が用意したデータやルールに沿って動く」という点です。「メールを○○の条件で振り分けてほしい」「FAQから答えを見つけて返してほしい」のような決められたタスクを効率よくこなすのは得意ですが、それを超えた臨機応変さはあまり期待されない。あくまで「決まった範囲での自動化」がメインという印象です。
Agentic AI(エージェンティックAI)とは何が違うのか?
高度な自律性と意思決定能力がキーワード
一方、Agentic AIと呼ばれるものは、もっと先進的な概念のようです。キーワードは「自律性」と「意思決定」。これは人間の指示を待つだけでなく、必要に応じてタスクを自分で設定したり、状況に合わせて臨機応変に学習しながら行動を変えていくようなAIシステムを指します。
- 自動運転車:人間の操作なしでも周囲の環境を認識し、自律的に走行ルートや安全判断を行う。
- 高頻度取引システム:市場状況を瞬時に分析して、どの銘柄を売買すればいいか自動的に決定する。
こんな感じで、Agentic AIは単に「命令を遂行する」だけでなく、自ら「どう動くべきか」を考えていく部分が重要になってきます。「AIが一つの主体になっている」というイメージに近いかもしれません。
違いを整理してみる
自分の理解をまとめた表がこちらです。
特徴 | AIエージェント | Agentic AI |
---|---|---|
主な役割 | 代行してタスクを実行 | 自ら意思決定して行動 |
自律性 | 限定的(定義された指示に従う) | 高度(自分で考えて動く) |
適応性 | 決まったタスク範囲をこなす | 新しい状況に学習しながら対応 |
意思決定 | ルールやプログラムに基づく | 状況を評価・分析して判断 |
主体性 | ユーザーからの依頼を待つ | 自ら問題・解決策を探る |
データ要件 | 事前に人間が整理したデータに基づく | 必要な情報を自分で取りに行く |
大雑把に言えば、Agentic AIは「AIエージェント」よりも一段進んで、自分で計画を立てて動けるAI、という感じでしょうか。どちらかだけが特別優秀というわけではなく、解決したい課題によって使い分けるイメージです。
仕組みの面で見ると?
AIエージェント(従来型)
- 「認識 → 判断 → 行動」のシンプルなループ構造
- 判断部分はルールベースや機械学習モデルなど、比較的限定的
- 想定外の状況に弱い
Agentic AI(エージェンティックAI)
- 「知覚(Perceive) → 推論(Reason) → 行動(Act) → 学習(Learn)」という複雑なサイクル
- 大規模言語モデル(LLM)など強力なAIモデルを組み込み、外部ツールやデータにもアクセスして成果を出す
- 実行結果のフィードバックを取り込んで、どんどん自己改善していく
要は、Agentic AIでは「自分で外部のツールを呼び出す」「結果を踏まえて次の手を考える」みたいな高度なやりとりができるんですね。私たち人間が連想しながら試行錯誤を進めるように、AIも柔軟にタスクを調整しつつゴールに近づけるのがポイントかと。
AIの進化における位置づけ
市場分析を手がける企業(Gartnerなど)では、こういったAIの発展を「Everyday AI(日常業務を自動化するAI)」と「Game-changing AI(新しい価値を生むAI)」に分けているそうです。もちろんこれらは明確に線引きできるわけではないですが、Agentic AIは明らかに後者寄り。「自動運転」や「創薬における研究支援」など、今までの仕組みでは難しかったことを根本的に変えてしまう可能性を秘めています。
今後10年くらいで、AIはますますビジネスプロセスに溶け込んでいくと予測されています。Agentic AIが実用化されることで、私たちの仕事のやり方や生活そのものが大きく変わるのかもしれません。
フレームワークやサービスもいろいろ
最近は、このAgentic AIを実現するための開発フレームワークやサービスもどんどん増えてきています。とくに以下の5つは大手企業やコミュニティが積極的に開発・提供しているみたいです。
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LangGraph
LangChainが提供するエージェント構築プラットフォーム。長期メモリやスケールアウトの仕組みが整っていて、実サービスへの展開を見据えたフレームワークだそうです。
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AutoGen/Semantic Kernel
Microsoftの研究部門がオープンソースで公開しているフレームワーク。複数のエージェント同士が連携してタスクを進める“協調”が特徴的。
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crewAI
クルー(複数のエージェント)を編成して、それぞれ役割を持ってチームでタスクをこなす仕組みが面白いです。ブレスト用途や複雑タスクの分担など、遊びがいがありそう。
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OpenAI Agents SDK
OpenAI純正の軽量SDK。最小限のプリミティブ(Agent、Handoff、Guardrails)を組み合わせて柔軟にエージェントを作れるとのこと。試作しやすそうですね。
触ってみた際の記事:
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Azure AI Agent Service
Microsoft Azure上でAgentic AIをマネージドサービスとして提供してくれるプラットフォーム。コード実行環境やWeb検索などのツールが標準で揃っているから便利。
触ってみた際の記事:
どれもまだ発展途上っぽいですが、今後ますます充実していくはず。興味があれば触ってみると、Agentic AIの可能性を体験できるかもしれません。
Agentic AIが注目される理由
最後に、なぜここ1~2年で「Agentic AI」がこんなに盛り上がっているのか、私なりに整理してみました。
- 大規模言語モデル(LLM)の登場:GPT-4oなどのモデルが、文章理解・生成のみならず、推論の柔軟性を実現し始めた
- ReAct手法などの研究:LLMが自分で行動計画を立て、ツールを呼び出すプロンプト設計が考案された
- Auto-GPTやBabyAGIの話題:オープンソースで誰でも試せる形で公開され、大きなインパクトを与えた
要するに、「ChatGPTみたいに自然言語を理解するだけでなく、そこからさらに自分で考えて行動するAIが作れちゃうかも?」という期待感が、Agentic AIブームに火をつけているわけですね。
まとめ
結論として、AIエージェントとAgentic AIは似て非なるものといった印象です。
- AIエージェント:あらかじめ定義されたタスクや決められた範囲を自動化する
- Agentic AI:AIが自分でタスクや手順を考え、結果を見ながらさらに学習・改善していく
どちらかが優れているというよりも、解決したい課題や求める柔軟性の度合いによって使い分けるものかな、と思います。シンプルなFAQチャットボットならAIエージェントで十分だし、複数のステップを伴う複雑なタスクを自律的にこなしたいならAgentic AI的な技術が欠かせない、といった感じでしょうか。
いずれにせよ、こうしたAIが私たちの働き方や暮らしをどんどん変えていく流れは間違いなさそう。個人的には、AIが単なる「ツール」から「パートナー」のようになっていくその進化を見ていると、ちょっとワクワクします。これからの展開も注目していきたいところです。
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