【組み立て済み購入者向け】よくある質問とカスタムガイド
Childhood's End/Constant Moderato/IMPULSE77をご購入いただき、ありがとうございます。
自作キーボードは市販されるキーボードとは異なり、個人で設計・制作・頒布を行っている品物です。
それゆえ、通常とは使い勝手が異なる部分が存在します。
以下によくある質問や使いかたをまとめましたので、ぜひご確認ください。
組み立て済みキットの使いかた
キーボードキットは届いた時点で組み立てられていますが、スイッチやキーキャップは実装されていません。
スイッチを一つずつはめていく作業を行い、キーキャップを配置して、普通のキーボードとして使えるようになります。
必要なもの
- キースイッチ
- キーの数だけ必要になります。稀に壊れていたり、音質や感触が全然違うものがあるので、2~3個多めに買うのがおすすめです。
- キーキャップ
- キーの数だけ必要になります。日本語配列の自作キーボード向けキーキャップ「Acid Caps」シリーズをおすすめしています。
- 刻印が違うとか、足りない分は別のセットを使う、などでもよければ、英語配列向けのキーキャップも使えます。
- パソコンとUSB Type-Cケーブル
- 接続は全てType-Cケーブルを使用します。通信が可能なもの(充電専用ではないもの)を使用してください。
- Vial-QMKシステム
- Web:https://vial.rocks/
- App:https://get.vial.today/download/
- キーの機能を書き換えたり、通電しているか確認できるソフトです。
- アプリ版だと日本語に対応していますし、認識が速いです。
- キープラー、キーキャッププラー
- キーやキーキャップを引き抜く大きなピンセットのような工具です。キーボード専門店や家電量販店にあると思います。
- スイッチやキーキャップを買うと付いてくることもあります。
- 全くミスせず実装できるならいらないのですが、ミスがあった時の修復に、あるいは単純にカスタマイズするときに使うので、あると便利でしょう。
- 0番十字ドライバー、六角レンチ(対辺4mm)
- キーボードを分解・組み立てるときに必要になります。
- 基本的には不要ですが、改造したいときには使います。
- レンチは最悪なくても手で頑張って回したりプライヤーでつかんだりできますが、組み立て段階でしっかり締めてしまっているのでつらいかもしれません
スイッチの実装
正方形の穴にCherry MX互換型のスイッチが入ります。
丸いパーツの真ん中に金属のパーツが見えているところに、スイッチの足が入るように向きをそろえてください。
銀色の四角い穴がスイッチを収める穴で、穴の奥左の部分に丸い場所が見えます。ここを狙います。
傾いていると足が折れてしまって導通しなくなるので、まっすぐカチッとはまるように押し込みます。
通電確認
Vialというシステムをダウンロードするか、Web上で利用します。
Web App:https://vial.rocks/
ダウンロード版:https://get.vial.today/download/
Windowsであればアプリ版をおすすめしています。日本語に対応しています。
Web App
キーボードを繋いだら中央のStart Vialをクリックします。左上の方にシステムウィンドウが出てくるので、キーボードの名前を選択して認識させます。
すると、つないだキーボードに合わせてこのような画面が表示されます。
出てこない場合は画面右上のRefreshを押し、左の枠をクリックして対応するキーボードを選択してください。
画面上中央のMatrix Testerのタブを開き、右下のUnlockをクリックします。
表示される位置のキーを、進捗バーがいっぱいになって元の画面に戻るまで長押ししてください。
押し込んだスイッチが反応する状態になります。
すべてのスイッチを押して、反応していることを確認してください。
反応してない場合は、そのスイッチを抜いてください。
スイッチの足が折れていたりしたら、足を丁寧に曲げ戻すか、新しいものに交換して、再度挿入します。
極稀にスイッチ自体が破損していたり、基板側が破損していることもあります。
そのような場合は一度連絡いただければ原因を特定し、対応します。
ダウンロード版
アプリをダウンロードし、実行したらキーボードを繋ぎます。
すると、つないだキーボードに合わせてこのような画面が表示されます。
出てこない場合は画面右上のRefreshを押し、左の枠をクリックして対応するキーボードを選択してください。
画面上中央のMatrix Testerのタブを開き、右下のUnlockをクリックします。
表示される位置のキーを、進捗バーがいっぱいになって元の画面に戻るまで長押ししてください。
押し込んだスイッチが反応する状態になります。
すべてのスイッチを押して、反応していることを確認してください。
反応してない場合は、そのスイッチを抜いてください。
スイッチの足が折れていたりしたら、足を丁寧に曲げ戻すか、新しいものに交換して、再度挿入します。
極稀にスイッチ自体が破損していたり、基板側が破損していることもあります。
そのような場合は一度連絡いただければ原因を特定し、対応します。
キーキャップの実装
全て反応したら、キーキャップをはめます。
キーの幅にはユニットという単位を使い、アルファベットや数字のキーは1uと表記します。
ユニット数は0.25単位で上がり、例えば、Tabキーは1.5u、Caps Lockは1.75uに相当します。
わかりづらかったらいくつか並べて比較してみてください。
時々、軸が多かったり、中央からずれているものがあります。
隣のキーや黒いパーツ(スタビライザー)と干渉してしまう場合は使えませんので、合うものを探すか、短いものを使うか、単品で購入します。
Constant Moderatoの複数対応スイッチについて
Constant Moderatoでは左のShiftを普通の大きさである2.25uに設定するか、1uのファンクショキーと1.25uのShiftキーに分割して置き換えることができます。
分割状態ではスタビライザーは不要ですが、2.25uではがたつきを抑えるためにスタビライザーを使うのが普通です。
入れ替えたい場合はキーボード全体を分解してスタビライザーのつけ外しを行うか、元からスタビライザー無しで作っておき、キーががたつくのを承知で使う、ということになります。
また、スペースバーと両隣のキーも1.25u+3u+1.25uにするか1.5u+2.75u+1.5uにするか選択可能です。
3uのパーツは基本的に入手が難しいので1.5u+2.75u+1.5uで設定してあります。
完成したら、ぜひ電子的文具工房の名とともにTwitterなどで自慢していただけるとありがたいです。
特に裏面の文字やロゴはとてもこだわっているので、共有していただけると私が喜んでRTしに行きます。
ハッシュタグなどは用意していないので、直接メンションしてください。
キーマッピング
先ほどの通電確認でも使ったVialを利用します。
Web App:https://vial.rocks/
ダウンロード版:https://get.vial.today/download/
Windowsであればアプリ版をおすすめしています。日本語に対応しています。
接続
Web App
キーボードを繋いだら中央のStart Vialをクリックします。左上の方にシステムウィンドウが出てくるので、キーボードの名前を選択して認識させます。
すると、つないだキーボードに合わせてこのような画面が表示されます。
出てこない場合は画面右上のRefreshを押し、左の枠をクリックして対応するキーボードを選択してください。
画面上でキーボードのキーを選択し、下のリストのタブをISO/JISに切り替えます。
ここから割り当てたい機能を選択するとすぐに反映されます。
なお、言語に依存するキーの見た目が変わってしまうため、基本的にはダウンロード版をおすすめしています。
上の画像では「~ `」や「JYEN」のキーがそれで、PCが日本語キーボード設定だと全角半角キー、円(¥)キーとして機能します。
ダウンロード版
アプリをダウンロードし、実行したらキーボードを繋ぎます。
すると、つないだキーボードに合わせてこのような画面が表示されます。
出てこない場合は画面右上のRefreshを押し、左の枠をクリックして対応するキーボードを選択してください。
画面上でキーボードのキーを選択し、下のリストのタブをISO/JISに切り替えます。
ここから割り当てたい機能を選択するとすぐに反映されます。
レイヤーの概念について
自作キーボードではキーボードの機能は層のように積み重なったものとして考えることが多くなっています。
ノートパソコンのキーボードを想像してください。普通にアルファベットや数字を打ち込むときは、Fnなど別のキーを押すことなく操作できます。
次に、画面の光量や音量、機内モードの設定などを行いたいときを考えます。
このとき、キーボードの下のほうにあるであろうFnキーを押しながらFn行(一番上)のキーを操作することが多いでしょう。
このように、特定のキーを操作すると元の入力とは全く違う入力が可能になる層のシステムをレイヤーと呼称し、アルファベットを打つレイヤーをレイヤー0、Fnキーを押したらレイヤー1に遷移して…………という構造を取っています。
上で例示した2つのキーボードのキーマップには、左の隅の方にMO(1)というキーが設定されています。
これはMomentary Layer 1の略称で、これを押している間はレイヤー1に移動するという意味があります。
これ以外にもTO(1)ではレイヤー1番に移動し、押した後もレイヤー1番に居続ける、などといったFnキーに相当するものがたくさん用意されており、界隈で流行している小型キーボードではこれを活用してレイヤー0ではアルファベットだったキーをレイヤー1では記号にするなどの手法を取り入れています。
よくある質問
キットの内容物について
キースイッチとキーキャップは同梱されていないの?
自作キーボードでスイッチとキーキャップが同梱されていることは稀です。
スイッチとキーキャップは好みで選ぶものであるから、使う人に選んでもらうのが良い、というのが理由の一つで、もう一つは、単純にたくさん在庫すると大変だからです。
基板とかプレートってなに?
自作キーボードの設計方法に、板とネジとナットを重ねて立体的にする手法が存在します。
横の隙間を塞ぐケースやカバーは無いですが、その分軽量で、うまく設計するとネジが一切見えず浮いているように見える、しかも組み立てで最終的にかかる値段が抑えられるという利点があるため、よく採用されています。
(3Dプリンターで樹脂製のケースを作ることもありますが、こちらは基板自体が安くてもケースでお金を取られてしまうことが多いです。しかも、わりと脆弱です。)
自作キーボード自体について
ShiftキーとかEnterキーがうるさいんだけど…………
スタビライザーというパーツが衝突する音です。組立時に軽く注油していますが、足りない場合は樹脂用グリスなどを投入してください。
タミヤのミニ四駆Fグリスがおすすめです。クレ5-56などの金属用潤滑剤は樹脂に侵食するので使わないでください。
基板が汚れてるんだけど…………
指紋や皮脂についてはごめんなさい。手作業で梱包しているので、ある程度はクリーニングできますがどうしてもついてしまう部分があります。
基板自体についている透明や茶色の乾いた液体のようなものはフラックスといい、はんだに含まれる成分の一種です。気になる場合はフラックスクリーナーやパーツクリーナーで落とすことができますが、樹脂を侵食したりインクを落とすため、スイッチやスタビライザーは全て外したうえで作業を行い、乾燥した後は基板の端の塗装を行ってください。
(黒基板はマッキー、白基板はマッキーホワイトが手軽です)
基板に傷があるんだけど…………
これもごめんなさい。基本的に検品時に「将来的に内部を侵食しそうな傷」があるものは撥ねていますが、細かい傷はどうしても避けられないのでOKとしています。
改造したいんだけど、どこから分解すればいい?
まずキーキャップとキースイッチを外し、穴の開いたプレート(スイッチプレートといいます)ネジを外します。このネジは3mm長です。
スイッチプレートのすべてのネジを外すとプレートも外れ、基板が露出します。
基板上のスペーサーを回して外します。このスペーサーは3.5mm高です。
すべてのスペーサーを外すと基板が外せるようになります。少し硬いですが、水平に持ち上げて外してください。
バックプレートに7mm長のネジと2mmのスペーサーが残った状態になります。このスペーサーを外せば分解が完了します。
基板からスタビライザーを外す際は、基板を裏から見て、爪が1本掛かっている部分と2本掛かっている部分を見つけます。
左側が2本掛かっている部分、右側が1本掛かっている部分です。
2本掛かっている方をつまんで穴から抜けるように押し出し、爪が1本掛かっている方が外れるように回すと完全に外れます。
自作キーボードの機能について
キーマッピングはできる?
キーの機能を編集し、変更する作業「キーマッピング」は、どんな自作キーボードであっても可能です。
また、私のキーボードは画面上で作業できるマッピングシステム「Vial」を使用しているため、キーボードを接続したら画面で表示される位置を確認しつつ作業が行えます。
Vialの機能には同時押しや連打時の機能を置き換えるものもあり、これを用いると、例えば数字キーを長押しするとファンクションキーを入力する、などといったことが可能になります。
無線化はできないの?
無線ユニットが高額だったり、バッテリーの安全性を担保できないことから有線のみの接続となっています。
macに対応できる?
初期状態ではWindows用となっていますが、一部のキーを置き換えることでMacにも対応可能かと思います。
私がMacを持っていないので詳しくないですが、やっている人はいるので、多分できます。
IMPULSE77の右上のツマミはなんの機能?
ロータリーエンコーダと呼ばれるパーツです。回転と押し込みを認識でき、多分やりたいことはなんでもできます。
例えば音量の上下や画面の光量といったシステム的な処理から、スクロールやサイドスクロールといったマウス機能、果てはスペースキーを登録して回すとスペースが連打されるなど、かなりの機能がこれ1つで行えるようになっています。
注意事項
構造的な部分について
一般的な樹脂のキーボードよりも硬く、たわみづらくなっています。普通の電子機器を扱うのと同じように扱ってもらえればと思います。
なお、液体物をかけた際はすぐにふき取って分解し、キーキャップとスタビライザーは洗浄、キースイッチとネジはもしかしたら交換の必要があるかもしれませんが、基板とプレート類は蒸留水とパーツクリーナーで洗浄することである程度のリカバリーが可能です。
物理的に(折れた・割れた)破損しない限りはだいたい修理可能なので、分からなかったら呼んでください。
RP2040-Zeroのフラッシュメモリモードについて
私のキーボードに使用しているICチップRP2040は、中身が空の時にフラッシュメモリのような挙動を示し、そこにシステムファイルをコピー&ペーストすることでシステムを再書き込みできるようになっています。
リセットを引き起こしうる要素はできる限り排除していますが、強力な電磁波によりリセットされる例があるとのことなので、メモリデバイス(USBメモリやSDカード等)の接続を制限している環境などでは使用しないことをお勧めします。
また、裏面の小さい穴の片方がリセットボタンなので、うっかり置いたところに細長いものが落ちていて押したまま通電したなどといったことがないようにお願いします。
保証関連
頒布段階では私が設計・実装していると確証が持てるものの、後で理由不明の破損があった際にそれが無理な改造によるものなのか、スイッチ側の問題か、初期不良のものなのか、潜在的な問題点によるものなのかの判別ができません。
ゆえに、ある程度こちらから指示を出してのサポートは行えますが、問題を確実に解決するものではない場合があります。
出来る限り柔軟に対応しますが、完璧な対応は難しいので、ご了承ください。
おすすめパーツなど
いいスイッチが欲しい!
一番基本的なスイッチは赤軸・茶軸・青軸と呼ばれるものです。
それぞれ感触が違い、押し込むとストンと素直に落ちるのが赤軸、コリっとした感触があるのが茶軸、カチッとした動作で音がするのが青軸です。
家電量販店に行ってメカニカルキーボードを触ってみるとわかりやすいと思います。赤軸は高級キーボードという評判があり(全然そんなことはないです)、茶軸は安価なメンブレンキーボードに近く、青軸は主にゲーム用なので、ゲーミングPCコーナーなどによくあります。
より高級な選択肢として、黒軸・銀軸があります。
黒軸は赤軸と同じ構造ですが、よりばねが強く押し込みが硬いのが特徴です。押し込んだ時の反発力で指を戻せるため、長時間のタイピングでも疲れづらいですが、底まで押し込んだり、キーを長押しすることが多いような用途では疲れやすい、用途を選ぶ玄人向けのスイッチです。
銀軸も赤軸と同じ構造です。こちらはばねの力は変わりませんが、接点が反応する位置を浅くしており、わずかな押し込みでも入力できるようになっています。この特性から青軸と並ぶゲーム用スイッチとしての地位を確立しています。
これらはCherryというメーカーがCherry MXという名前で販売しているもので、それを模倣したより安価で高性能なものが他のメーカーからも出ています。
Cherry MX2A RedやCherry MX2A Blueなどで調べるとCherryが、Gateron G Pro Blackなどで調べるとGateronというメーカーのスイッチが出てきます。こっちはかなり安くておすすめ。日本での販路もあります。
もっと静かなスイッチない?
名前にSilentと付いたスイッチはシリコンゴムなどを用いた静音構造になっており、通常のスイッチより遥かに静かで高音域の抜けたトコトコ・スコスコした音になります。
カスタムキーボードメーカーのKeychronが販売するSilent K Proスイッチなどはかなり優秀な静音性になっています。
もっと変なスイッチない?
あります。
例えばTecsee Honey Peachは金属製のポールが入っており、打ち込んだ時に金属音がします。
Kailh Midnight Silent TactileはHHKBのクラシック版っぽい感覚です。
Wuque Studio Pearlスイッチは軸がベアリングで保持されており、摩擦のほとんどない高速入力が可能です。
調べてみたり、評判を聞いて少しずつ集めて選んでみてください。
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