物理配列一覧(2024年11月令和最新版)
個人製作系の自作キーボード、カスタムキーボード等でよく見かける配列を網羅した記事が無かったので書きました。
基礎となる大区分配列から出来る限り系統立てて説明するようにはしていますが、間違いや追加希望があったらコメントか何かをお願いします。
サリチル酸氏の記事( https://salicylic-acid3.hatenablog.com/entry/key-layout )を踏襲し、本記事内では主にアルファキーで配列を区別することとします(最下段はキーボードによりばらばらだし、選択可能になっているものも多いので)
「キー配置群」では、キーそれぞれの配置を用いて配列を判定しています。
「固有名称群」では、特定の著名な配列にのみ与えられる特定の名称により判定しています。概ねサイズ順に並べていますが、40%でありながらキー数が70%を超えるものなどもあるため、厳密な判定はご容赦ください。
「その他の配列」にまとめられているのは、提唱者以外に製作者がいないなどの理由で一般化していないと考えられる配列となります。
例示されるキーボードは、概ね以下の条件のどちらかを満たしたものを記載しています。
・著名な製作者によるもの
・入手性がよい、又はデータが公開されている
2つ以上の例示ができない場合、以下の条件に適合するものを上から優先して記載しています。
・配列名の元となったキーボード
・堕落猫氏によるNoraneko Projectに収録されているキーボード
・企業製キーボード
キー配置群
ロースタッガード
いわゆる普通のキーボード。Q行、A行、Z行がそれぞれ横方向にずれており(キーの隙間が長い横線を描く)、家電量販店などでも最も見るキーボード。
Equal Row Staggered
Equalが指定された際は、Q行、A行、Z行のズレが等しい配列になっている。右のShiftを分割して1u+1uにしたいなどの需要に応える配列。
大抵の場合は0.25uズレだが、クラシカルなHyper 7配列などで稀に0.5uズレのものもある。
採用例:Mint60、JISplit89
Symmetric Row Staggered
通常のロースタッガードではなく、ホームポジション中央を起点として左右対称に分割する配列。対称であり、かつ各行にズレがあればSymmetric Row Staggeredとされる傾向にある。
採用例:Treadstone48、Nirvana Type-SS
Alice配列
ホームポジションに近い内側のキーを、手前に直線的に折り込む配列。Linworks EM.7を元祖とし、TGR Aliceで有名になった。ょぅι゛ょ
採用例:Naked64SF、Lain
GRIN配列
policium氏による、手前を向いた弓型に湾曲する曲線配列。配列の名前の元となったGRINが有名。KKaK氏によるRiemannなどオーソリニアを湾曲させたものもある。
採用例:GRIN One、Noraneko42GR
サジタリウス配列
Gondolindrim氏による、キーボード左右下を中心とした円弧状に湾曲する配列。一部Alice配列との混同/混合が見られる。
採用例:Sagittarius、Earth72Alice
カラムスタッガード
縦方向にキーをずらす(キーの隙間が長い縦線を描く)配列。採用例と種類が多い割にひとくくりにカラムスタッガードと呼称されるため、大きな差異を持つ一部を紹介する。
Claw44/Wings42
Daily Craft Keyboards製の特に有名な2種。スタッガードの頂点は中指と人差し指にあり、小指クラスタを大きく下げている。
Keyball
Yowkees氏によるトラックボール付きカラムスタッガード・キーボード。頂点は中指であり、円弧に近いなだからなズレ幅を持つ。
Pangaea
Pangaea Projectによる調整可能キーボード。小指クラスタと親指クラスタを主基板から分離しており、それぞれの位置と角度が調整可能。
Willow配列
キーを円弧上に配置する。円弧の中心は、左手クラスタは左側に、右手クラスタは右側にあり、)))(((型の曲線配置となる。
採用例:Willow64、Ergotonic49
Lotus配列
Murasaki氏による、Willow配列と円弧の向きを逆にした配列。キーが内向きに丸まり、蓮(Lotus)の花のように見えることが名前の由来。
採用例:Akasha Amrita、Noraneko42L
オーソリニア
格子状にキーを配置するもの。EnterやShiftなどの幅・高さも整数値に取ることが多い。
採用例が非常に多く、かつ配置に明確な差がないため省略。
英語圏では稀にMatrix Layoutと呼称されることがあり、後述のMatrix Staggeredと混同することがあるため注意が必要。
マトリクススタッガード
みなも氏の提唱する、縦横両方にズレを作る配列。キーピッチが通常より大きくなり、タイプミスが減ると言われている。
採用例:ことのは「盆栽」、uzu42
中間配列
複数の大区分配列の特徴を持つもの。
セミオーソリニア配列(ロースタッガード×オーソリニア)
QA行をオーソリニア、AZ行間を0.5uズレとしたロースタッガードの配列。ロースタッガードからの移行が楽でありながら指の動きを安定化させやすいオーソリニアの特徴を持つ。
採用例:alphalpa plus、alpha
固有名称群
~100%
Space Cadet Keyboard
キーを大量に(概ね120以上)持つキーボードの総称。後述のHyper 7もこれに該当する。
Hyper 7配列
左右対称のアルファキーに加え、大量の制御キーを追加、さらにテンキークラスタに近い縦5u横4uの20キーを左右に配置。この上に大きく手前向きに傾斜したファンクションキーなどを追加する超大型キーボード。ごく稀に販売される。
100%~75%
1800
Cherry G80-1800を元祖とする配列。ナビゲーションキーをテンキー上に配置し、十字キーをアルファキーとテンキーに食い込むように配置するため、100%のキーボードと同等程度の機能を持つが、横に短く、縦に長い。
Compact 1800
1800配列からナビゲーションキーを抜き、十字キーとテンキーは残したもの。1800配列に比べて縦方向が短くなり、少し大きめのTKL程度のサイズになる。
カスタム界隈では比較的多い。メーカー製はゲーミングコンパクトキーボードとして販売されるものがある。
コンパクトといいつつ96キー程度(日本語配列であれば100キー程度)はあり、90%相当のキーボードである。
TKL
100%のキーボードから、テンキー部を切り落としたもの。80%キーボード。
メーカー製、カスタム界隈の双方で人気が高いが、自作キーボード界隈では素材要求量の多さから一般的ではない。
75%~60%
75%
100%キーボードからテンキー、ナビゲーションキーを抜き、十字キーとFn行、加えて3~4個のマクロキー等を残したもの。
Escキーや全角半角キー、Delキーを窮屈なく配置しようとすると75%が最小となることが多い。
70%
文字キーと修飾キーに加えて10キー程度を配置するもの。
Keychronなどが多く販売しているが、自作キーボードではあまり見かけない。
65%
文字キーと修飾キーに加えて5キー程度を配置したもの。65%ケースなどといった場合は横16u縦5uの横長であることが多い。
十字キーを配置しやすい都合から、自作キーボード・カスタムキーボードどちらの界隈でも人気が高く、ケースも互換基板も数多く存在する。
HHKB配列(英語版)
HHKBの採用するUNIX配列、あるいはそれに近い配列。非常に人気が高い。左下と右下にキーブロッカーを配置するのが一般的。
HHKB Lite2では一部配列を変更している。
HHKB配列(日本語版)
HHKB TypeSや、HHKB Studioの日本語版でのみ見られる配列。
Equal Matrix Staggeredを採用しており、最下段を非常に細かく分割する、スペースに2.5uを使用するなど独自性の高い配列。
HHKB Lite2日本語版では英語版HHKB配列を踏襲する配列のため、注意が必要。
60%
文字キーと修飾キーのみで済ませる、縦5u横15uのキーボード。HHKBも概ねこれに相当する。
キーボードのサイズを考える上では100%に次ぐ第二の基準であり、60%〜65%がコンパクトキーボードかどうかの境目とも言える。
Tron配列
日本語入力用のエルゴノミックDVORAK配列。説明すると非常に長いので各自ググってください……
TRON KeyboardでググるとRazerの映画Tronコラボキーボードも出てくる
既製品ではTronやµTRON、自作キーボードではTL Split Keyboard、NISSEなどが該当する。
60%~30%
Ambi配列
Cerbekos氏が提唱する、40%程度のキーボードを一体型のまま左右に分離し、中央に45度傾けたテンキークラスタを配置する配列。
Tenalice-ambidextrousが初出であり、テンキーが両利き(ambidextrous)で使用できることが名前の由来。
ブルアカの早瀬ユウカ(両利き)の愛用品がキーが45度に傾いた関数電卓なのはAmbi配列だと言われていたりいなかったり。
30%~
アルファベットは重複なく配置できるが、記号や数字列はすべて削り、親指の担当する4~6キー程度ですべてを済ませるサイズ。ここまで来るとほとんどが配列名というより固有名称だが、参考に記す。
おさかなキーボード
大西拓磨氏による、32キーの無線キーボード。特殊な物理配列に合わせたキーキャップを装着しており、外形が魚に見えることが名前の由来。
mato式
mato氏による、24キーのカラムスタッガードキーボード。超小型ではあるが、通常の形状のキーキャップを利用する。
掌
がらくたでぶ氏による、16キーの握り込み型無線キーボード。シリコンバンドを手に通し、固定できるという特徴がある。
これ以外に固有名称のある配列があれば連絡ください
その他配列に関連する重要単語
WKL
Windows-Keyless。WindowsにおけるWin、macOSにおけるCommandといったGUIキーを配置せず、ブロッカーで塞ぐ配列。塞いでいない場合(ゲーミングキーボード等、他のキーの幅を増すなどしてGUIキーを配置しない場合)はWKLと呼称しないことが多い。
伝統的なAlice配列が採用する。
QAZ配列
Tab、Caps Lock、Shiftを別の位置に配置し、左端の列をQ、A、Zに設定する配列のこと。ロースタッガードのキーボードの場合に特にQAZ配列と呼称することが多い。
19.05mmピッチであれば3cmほど横幅を削減できる。
重複レイアウト
分割キーボードの左手側に右手用の一部キーを、右手側に左手側の一部キーを配置する配列。
左手でHキーを打ったり、右手でGキーを打つなどといった癖を吸収することができるが、その分キーボード自体が大きくなるほか、左右を密接させると中央に重複したキーが2つ並ぶようになる。
なお、Bキーが二つあるなどといった「そもそも左右のどちらの手で打つか分かれるキー」が重複しているものは重複レイアウトと呼称しない。
モジュラーキーボード
キーボードのパーツを任意に設置したり、交換、あるいは排除できるキーボード。
設計・開発が非常に面倒になるため、数が少なく価格も高い傾向にあるが、一定数存在する。
Reex
九嶋八氏による、トラックボール・ロータリーエンコーダー・追加キー・OLEDが取り付け可能なキーボード。全ての機能を単一のファームウェアで実現している。
その他の配列
特定のキーボードしか採用していない配列等です。
Spreadwriter
takashicompany氏の提唱する、指に合わせて全列をバラけさせる放射状の配列。サジタリウス配列のような外形を持つが、カラムスタッガードの造形を持っている。
氏の設計であるBaumkuchen、Spreadwriter、Radialex等が採用している。
goaisatsu
ookura氏の提唱する、右手外側を右下に傾斜させる配列。Enterキーの位置が近くなる効果がある。
Childhood's End - 違い棚配列
筆者(Cheena)の提唱する、右手内側を左上に傾斜させ、右手外側を水平にする配列。左右非対称な姿勢でコンパクトな打鍵を可能にしている。
更新履歴
2024年11月13日 公開・hyper7配列・セミオーソリニア配列・1800配列を追加
11/14 おさかなキーボード、その他サイズ別キーボードを追記
12/1 掌、mato式、Reex、Pangaeaを追記
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