自作プログラミング言語を初級者が1週間で作る方法 (2) 二項演算子と空白文字と浮動小数点数
自作プログラミング言語をなるべく簡単に作る方法を紹介します。また、実際に自作プログラミング言語を作ってみます。
前回の記事の続きです。今回は自作言語に二項演算子の連鎖と空白文字の無視と浮動小数点数の文法を付け加えてみます。
二項演算子の連鎖
前回の記事で足し算と引き算ができる言語を作りましたが、7+23
や 98-4
のように二項演算子を一度しか使えませんでした。そこで 7+23-5+10
のように二項演算子を複数回使えるようにします。
Program
= head:Integer tail:(Operator Integer)+ {
return tail.reduce((acc, x) => acc + " " + x[0] + " " + x[1], head);
}
Operator
= "+"
/ "-"
Integer
= nums:[0-9]+ {
return nums.reduce((acc, x) => acc + x, "");
}
Program
の定義を Integer (Operator Integer)+
にしました。これは Integer
の次に 1 個以上の Operator Integer
が続くということです。たとえば 3 個続くのであれば Integer Operator Integer Operator Integer Operator Integer となり、7+23-5+10
のようなコードにマッチします。
Program
の定義の {}
内では tail
に対して reduce()
を行っています。tail
には N 個の Operator Integer
が入っています。それらを x
という名前で 1 個ずつ取り出しています。各 x
について、x[0]
には Operator
が、x[1]
には Integer
が入っています。
これで 7+23-5+10
のような複数個の二項演算子が続くコードに対応できるようになりました。
また、Program
の定義を
Program
= head:Integer tail:(Operator Integer)*
に変えてみます。(Operator Integer)+
を (Operator Integer)*
に変えました。そうすると 1 個以上ではなく 0 個以上の Operator Integer
になります。これで二項演算子が 0 個のコードにも対応できるようになりました。
空白文字を無視する
プログラミング言語の多くは空白文字を無視します。たとえば 2+3
と 2 + 3
は同じコードと見なします。そこで半角スペースとタブと改行を空白文字として無視するようにします。
Program
= _ head:Integer tail:(_ Operator _ Integer)* _ {
return tail.reduce((acc, x) => acc + " " + x[1] + " " + x[3], head);
}
Operator
= "+"
/ "-"
Integer
= nums:[0-9]+ {
return nums.reduce((acc, x) => acc + x, "");
}
_
= [ \t\n\r]*
上記のコードで定義した _
は 0 文字以上の空白文字です。それを Program
の定義の中のあらゆる隙間に入れました。Program
の {}
内の tail.reduce()
では x[0]
と x[2]
が空白文字で、x[1]
が Operator
で、x[3]
が Integer
となります。そのため、変換後の JavaScript コードに x[1]
と x[3]
だけを入れるようにしました。こうすることで自作言語に空白文字を入力することを許しつつ JavaScript へ変換するときには無視することができます。
実際に試してみると自作言語のコード内の空白文字が無視されることがわかります。
整数の定義を修正する
現在は Integer = [0-9]+
としています。これだと 07
のような先頭が 0
の数字も許してしまいます。そこで次のように修正します。
Integer
= head:[1-9] tail:[0-9]* { return tail.reduce((acc, x) => acc + x, head); }
/ "0"
先頭が 0
の数字は [1-9] [0-9]*
の定義にマッチしないためパースエラーとなります。しかしそれだと単体の 0
もパースエラーになってしまうので "0"
の定義を後半に付け足しています。
Peggy の省略記法を使う
いちいち reduce()
で書くのがつらくなってきたので Peggy の省略記法を使うことにします。上記の Integer
の定義は次のように書き直すことができます。
Integer
= [1-9] [0-9]* { return text(); }
/ "0"
省略記法は { return text(); }
のところです。定義にマッチしたものをすべて連結して一つの文字列にしてくれます。これを使えば reduce()
による連結よりも表記が簡単になります。
浮動小数点数を使えるようにする
整数に加えて、浮動小数点数も使えるようにします。
Program
= _ head:Float tail:(_ Operator _ Float)* _ {
return tail.reduce((acc, x) => acc + " " + x[1] + " " + x[3], head);
}
Operator
= "+"
/ "-"
Float
= Integer ("." [0-9]+)? { return text(); }
Integer
= [1-9] [0-9]* { return text(); }
/ "0"
_
= [ \t\n\r]*
A?
は 0 個もしくは 1 個の A
という意味です。よってこの Float
の定義は Integer
も含むようになっています。そして Program
の定義を Float (_ Operator _ Float)*
にしました。これで 1 + 2.34
のように整数と浮動小数点数が混ざったコードを受け入れられるようになりました。
計算結果を出力する
Program
の一つ上に Start
を作り、変換後の JavaScript コードを eval()
で実行するようにします。そうすると自作言語の実行結果を出力することができます。
Start
= _ p:Program _ { return eval(p); }
Program
= head:Float tail:(_ Operator _ Float)* {
return tail.reduce((acc, x) => acc + " " + x[1] + " " + x[3], head);
}
まとめ
今回は二項演算子の連鎖と空白文字の無視と浮動小数点数の受け入れができるようになりました。次回は変数を使えるようにします。今回までは自作言語の文法が JavaScript とほぼ同じでしたが、次回は JavaScript とは異なる文法にしてみます。
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