人事フリーランスになって半年が経過したので
10年に1度の大嵐が来る…。その前に振り返ってみようと思います。
どんな感じか
だいたい30~100名くらいの規模のテック系スタートアップで採用・人事に主に関わっている。エンジニア採用が中心で、一部は事業開発/コンサルの採用も持っている。2024年2月から活動を始めて、今アクティブに活動しているのは5社(うち2社は採用ではなくマネジメントのサポートや事業の壁打ち)。
採用課題、人集めじゃないがち
いわゆる採用の課題を一般的な範囲で表現すると、「良い人に会えていない」、つまりターゲットとなる人材に応募して貰えない、になると思うが、この半年はそうではないところの課題が多かった。
採用やりますと言ってるので当然話を貰う起点は採用になるわけだが、これまでやってることと言えば
- 報酬レンジと選考プロセスの変更
- 短中期で目指す組織のヒアリングとディスカッション
- 関連する合意形成とアラインメント
- 上記の材料としてのリサーチとレポーティング
- メッセージング・ブランディングの再検討
- 組織開発アクションのサポート
- BIボード作成
- タレントプールの仕組み作り など、
「応募を獲得する」以外の領域にかなりの時間を割いた(スカウトとかエージェントコミュニケーションとかも勿論やる)。実際これらの対応にすぐ着手した組織とそうではない組織では成果の差が出始めている。
では応募獲得以外は採用活動ではないのかというとそんなことはなくて、本来的には全て含まれると考えているが、一般的に「採用に課題がある」と呼ばれる状況の大半は前述の内容を指さないであろうという意味。この後の記述ではこの「良い人に会えていない」に注目する。
補足:「良い人に会えてない」という課題の誤りを主張したいわけではなく、出力増やして解決する問題なのであればそれが最短経路になることは完全に同意している
なぜ採用課題として現れるのか?
外部の情報が見えづらい領域の一つで、つまり比較が行いづらく、その上で採用に帰結しやすいからではないかと思う。
採用は大抵の場合で結果すら断片的にしか見えず、プロダクトリリースのように細かく広報もされるわけでないので様々な推測を生む。そこを逆手に取って「採用が上手くいっている会社」のブランディングを行って結果的に採用を進めることが成立するほどである(余談だが採用が成功しているイメージが強い企業の実績を聞いたら突出したレベルでないケースが複数あった、勿論本当に採用に強い会社もある)。
この状況下では正確に自他を比較することは難しく、成功しているらしき他社の手法を真似ようとするも、そもそもその成功が不確かであるか、他の環境で再現されない別の方法で成功している、なんてこともある。そんな状況のまま活動を走り出せば、認知は「良い人に会えていない」から、「もっと広く知ってもらう必要がある」または「知ってもらう方法を変える必要がある」へシフトするのが限界になるのではないか。
事実ハイクラスの採用は、人事が担おうとするには妙があって経験が効いてくる領域ではあるので、あながち間違ってないのだが、なぜその良い人が自分たちの会社を選ぶのかという理由が客観的かつ妥当な形で説明できないといけない。つまり知ってさえ貰えればほぼ確実に選んで貰えるという確証がない限りは「良い人に会えていないことが課題」という命題は真偽がわからない。
簡単なセルフチェックとしては、その「成功している他社」と併願されても競り勝てるかどうかを考えてみると具体化が進む。
どこで勝てるのか、どこで負けるのかまでは比較的容易に書ききれると思う。書けない場合、課題はそもそも市場把握が不足していることなので、この時点で必要なのは出力への投資(例えばスカウトを大量に送る体制)でないことがわかる。
次に、その勝てる点を重視する人がどのくらいいるのか?の観点を検討する。十分な人数を期待できるのであれば、勝てる点をひたすら打ち出せば有利に進むはずである。では次にどのくらい費用をかけて、どのくらいの人数に届けようか…ここまで読んで頂けるとお判りの通りだが、わたしたちが日々心血を注いでいる、プロダクトのポジショニング、マーケティングをどうするかの話と酷似する。
そう考えると違和感が見えてくる。競合の情報がわからず、ユーザーの声も聞けてなく、他社の価格水準も把握していない状態で、「今はプロダクトを買ってくれる人に出会えていないことだけが課題、どうすれば出会えるのか」と悩んでいる会社があるとしたら…。
同時にこのポジショニングとメッセージングの整理を中心に行う支援企業があるのも納得。
これは推測を越えてぼやきのような話だが、「採用に強い会社」の正体は、広報が強いとかタレントがいるとかも要素としては勿論ありつつ、もっと根源的なところは、もしかしたらプロダクト戦略や採用戦略を、ファクトに基づきながら蓋然性のある意志決定を行うケイパビリティと文化のある会社…ということなのかな?どうなんでしょうね
さて、採用が強い会社と比べると自社が全部の比較軸で負けるという場合が起こりえるが、それ自体は問題ではないように思う。その採用強者が採用しないターゲット層があり、あるいは出さない報酬水準やタイトル、持っていない技術があるはず。問題なのは採用強者と似たターゲットから広げられない場合。どこかの変数を早急に変えないと祈るばかりの採用活動になってしまう。
ちなみに「有名企業出身のリーダーが必要」がこの状況を招きやすい。本当に必要なケースもあると思うが、組織やメンバーが単にそれ以外の要件を言語化できないか、人材リスクを取るマインドセットが備わってないだけのケースも含まれることに注意したい。
採用にぶっ込むその前に
独立前も所属先で似たような不確かな課題で走ってしまうことはあったが、フラットな観点の活動を通じて、事業部側(現場側)のHiring Managerが経験を元に採用についてあれこれ考えてくれたお陰が大きく、在籍期間の後半は最初でつまづく回数はだいぶ少なかった。
採用で食ってる側でもあるので、採用にリソースをぶっ込む意思決定をすることに賛成しかしないし、そのくらいやらないといけないと思う(War for Talent的な話)のだが、ぶっ込む先の見極めをしくじると平気で成果が数ヶ月ずれ込むので、「採用に課題がある」というお話を貰い始めの時は恐縮しつつも、そこじゃない課題の可能性が全然ある…という気持ちで臨んでいる。
それでは引き続き僕は頑張ります。皆様もどうかご自愛ください。
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