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ナレッジツールについて改めて考えてみる

2024/07/02に公開

はじめに(個人の感想)

20年近くSES案件・請負案件を経験してきて、
ナレッジツールの重要性を身をもってしみじみと実感してきました。
あるプロジェクトでは、情報や知識が個々のエンジニアに散在しており 
(あるあるだと思います)、
それが原因で様々な問題が発生しました。
前任者の引き継ぎや初参画時キャッチアップの際に、
ロクなドキュメントがないなんてこともしばしばでした。
「そんなの普通でしょ、どこでも大なり小なりそんなもんじゃない?」
と思う方が多くいるのも理解できます。
でも、そうじゃないほうがみんな幸せなんじゃないかな、と私は思います。
以下はそんな経験から得た気づきです。

まず、ナレッジツールがあれば、情報共有が飛躍的に向上します。
プロジェクトの初期段階では、設計や仕様の変更が頻繁に発生しますが、
ナレッジツールがないとそれらの情報がうまく共有されず、混乱が生じがちです。
特に、メールや口頭でのやり取りに頼っていたため、
重要な情報が伝わっていないことが何度もありました。
ナレッジツールを使えば、すべての情報が一元管理され、
誰もが最新の情報にアクセスできるようになります。

また、重複作業を防ぐことができる点も大きなメリットです。
同じ機能を複数のエンジニアが別々に実装してしまうという事態が発生したこともありました。
これによって無駄な時間と労力がかかり、プロジェクト全体の効率が下がりました。
ナレッジツールがあれば、誰が何をしているのかをリアルタイムで把握でき、
重複作業を防ぐことができます。

さらに、過去の知識や経験を有効活用できることも大きなポイントです。
プロジェクト中盤で技術的な問題が発生した際、
過去に同様の問題を解決した経験を持つエンジニアが限られていたため、
解決に時間がかかりました。
ナレッジツールにこれまでの問題解決の履歴を蓄積しておけば、
同じような問題が発生した際に迅速に対処できます。

新人エンジニアの教育にも非常に有効です。
新入社員がプロジェクトに参加した際、
必要な情報やベストプラクティスをすぐに取得できる環境が整っていれば、
彼らの成長が加速します。
ナレッジツールがあれば、教育コストを削減しつつ、新人の早期戦力化が実現できます。

これらの経験を通じて、ナレッジツールの導入がいかに重要かを痛感しました。
ナレッジツールは単なる情報管理のツールではなく、
プロジェクトの成功を左右する重要な要素だと感じています。

「ナレッジツール」の有用性を強調して書きましたが、
必ずしも「ナレッジツールを使う」ことが正しいわけではなく、
ナレッジ(知識・情報)を集約・共有できる仕組み・文化を実現できることが大切だと思っています。
今回はそんな 「ナレッジツール」って何なの? をできるだけ簡潔にまとめてみたいと思います。

ナレッジツールとは

企業や組織内で知識や情報を収集、整理、共有、管理するための
ソフトウェアやシステムのことを指します。
業務の効率化、知識の継承、意思決定の質向上など、
さまざまな目的で使用されます。

ナレッジツールの歴史

1980年代ごろ

コンピュータの普及とともに、
文書管理システムやグループウェアの原型となるツールが登場します。

1990年代ごろ

インターネットの普及により、Webブラウザベースのナレッジツールが登場します。
また、「ナレッジマネジメント」という概念が提唱され、
知識を経営資源として活用する重要性が認識されます。

2000年〜2010年ごろ

クラウドサービスの普及により、SaaS型ナレッジツールが普及しはじめます。
また、ビッグデータ分析などの技術を取り入れたナレッジツールも登場します。

2020年ごろ〜今

ナレッジツールは、単なる情報共有のツールから、
AIと共創し、ナレッジ創出や意思決定支援など、より高度な機能を持つツールへと進化してきています。

ナレッジツールの主な機能

1.情報の収集

ドキュメント、電子メール、チャット履歴、プロジェクト管理ツールなどからのデータなど、
さまざまなソースから情報を収集し、一元管理します。

2.情報の整理と分類

収集した情報をタグ付けやカテゴリ分けをして整理します。
これにより、必要な情報を迅速に検索・取得することが容易になります。

3.検索機能

効率的な検索機能を提供し、キーワード検索やフィルタリングによって、
必要な情報を迅速に見つけることができます。

4.ナレッジベースの作成

よくある質問(FAQ)、マニュアル、ガイドライン、ベストプラクティスなどの
ナレッジベースを作成し、共有することができます。

5.コラボレーション機能

社員同士が情報を共有し、共同で編集・更新できる機能を提供します。
コメント機能やディスカッション機能を備えていることが多いです。

6.アクセス制御とセキュリティ

ユーザーごとにアクセス権限を設定し、機密情報を保護します。
情報の不正利用や漏洩を防ぎます。

7.統合機能

他の業務システムやツール(プロジェクト管理ツール、CRM、メールシステムなど)との
統合機能を持ち、情報の連携を図ります。

8.分析とレポート機能

ナレッジツールの利用状況や貢献度を分析し、レポートを生成します。
ツールの効果を測定し、改善点を見つけることができます。

ナレッジツールの種類

ナレッジツールにはいくつかの種類がありますが、以下はその代表的なものです。

1.Wikiツール

社内Wikiとして使用され、社員が自由に情報を追加・編集できるプラットフォームです。
例としては、Confluenceなどがあります。

Confluence

https://www.atlassian.com/ja/software/confluence

kibela

https://kibe.la/

esa

https://esa.io/

notion

https://www.notion.so/ja-jp

Growi(OSS)

https://growi.org/ja/

outline(OSS)

https://www.getoutline.com/

AppFlowy(OSS)

https://www.appflowy.io/

wiki.js(OSS)

https://js.wiki/

2.ドキュメント管理システム

ドキュメントを効率的に管理・共有するためのツールです。
Google DriveやMicrosoft SharePointがこれに該当します。

Google Drive

https://www.google.com/intl/ja_jp/drive/

Microsoft SharePoint

https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/sharepoint/collaboration

Microsoft Onedrive

https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/onedrive/online-cloud-storage

dropbox

https://www.dropbox.com/

box

https://www.box.com/ja-jp/home

nextcloud(OSS)

https://nextcloud.com/

3.FAQシステム

よくある質問とその回答をまとめたシステムで、顧客対応や社員教育に利用されます。
ZendeskやFreshdeskなどが代表的です。

Zendesk

https://www.zendesk.co.jp/

Freshdesk

https://www.freshworks.com/jp/freshdesk/

zamand(OSS)

https://zammad.org/screenshots

4.ナレッジベースソフトウェア

企業内のナレッジベースを構築・管理するための専門的なソフトウェアです。
例として、HelpjuiceやGuruが挙げられます。

Helpjuice

https://helpjuice.com/

Guru

https://www.getguru.com/

dokuwiki(OSS)

https://www.dokuwiki.org/template:dokuwiki

MediaWiki(OSS)

https://www.mediawiki.org/wiki/Download/ja

5.コラボレーションツール

社員同士がリアルタイムでコラボレーションできるツールで、ナレッジ共有機能を備えています。
SlackやMicrosoft Teamsが代表的です。
OSSだとMattermost等があります。

Slack

https://slack.com/intl/ja-jp

Microsoft Teams

https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-teams/group-chat-software

Mattermost(OSS)

https://mattermost.com/

Rocket.chat(OSS)

https://www.rocket.chat/

Zulip(OSS)

https://zulip.com/

ナレッジツールを導入していないと起こりそうな問題・課題

1.情報の分散と共有の難しさ

情報が個々の社員の頭の中や個別のファイルに散在していると、
必要な情報を見つけるのが困難になり、社員間の情報共有が滞ります。

2.業務の非効率化

同じ問題を繰り返し調査・解決する必要があり、時間と労力が無駄になります。
また、情報を探すのに時間がかかるため、業務のスピードが遅くなります。

3.知識の喪失

退職や異動により、特定の社員が持っている知識やノウハウが失われるリスクがあります。
このような場合、重要な知識が企業全体で共有されないまま消えてしまいます。

4.新人教育の手間とコストの増加

新入社員や異動してきた社員に対して、
必要な知識や情報を一から教える必要があり、教育コストが増加します。
また、教育内容の標準化が難しくなります。

5.意思決定の質の低下

過去のデータや成功・失敗事例を参照することができないため、
意思決定の根拠が乏しくなり、質の低い決定が下される可能性があります。

6.顧客対応の質の低下

顧客からの問い合わせやクレームに対して迅速かつ適切に対応できない場合、
顧客満足度が低下し、リピーターの獲得が難しくなります。

7.リスク管理の不備

過去のプロジェクトや業務で発生したリスクやその対策が共有されていないと、
同じリスクが再発する可能性が高くなります。

8.イノベーションの停滞

社員同士が知識やアイデアを共有できない環境では、
新しいアイデアやイノベーションが生まれにくくなります。

9.社内コミュニケーションの問題

情報が共有されていないと、社員間のコミュニケーションが不足し、
誤解やミスコミュニケーションが発生することがあります。

ナレッジツールを導入するメリット(問題・課題の解決)

1.情報の一元化と共有

ナレッジツールを導入することで、企業内の重要な情報やノウハウを一元管理し、
全社員がアクセスできるようにすることができます。
情報の共有がスムーズになり、コミュニケーションの効率が向上します。

2.業務の効率化

過去のプロジェクトやタスクの履歴、問題解決の方法などがナレッジツールに蓄積されていると、
同じ問題を再度調査する必要がなくなり、業務の効率化が図れます。

3.知識の継承と人材育成

ベテラン社員の経験や知識をナレッジツールに記録することで、
新入社員や若手社員への知識の継承が容易になります。
教育コストの削減とスムーズな人材育成が期待できます。

4.イノベーションの促進

社員同士が自由に知識やアイデアを共有できる環境を整えることで、
新しいアイデアやイノベーションが生まれやすくなります。

5.顧客対応の向上

顧客からの問い合わせに対して迅速かつ適切に対応するためには、
ナレッジツールを活用して過去の問い合わせ履歴や解決策を参照することが有効です。
顧客満足度の向上が期待できます。

6.意思決定の質向上

経営陣やマネージャーが重要な意思決定を行う際に、
ナレッジツールを活用して過去のデータや成功・失敗事例を参照することで、
より質の高い意思決定が可能になります。

7.リスク管理の強化

過去のプロジェクトや業務で発生したリスクやその対策をナレッジツールに記録しておくことで、
同様のリスクが再発するのを防ぎ、リスク管理の強化が図れます。

みんなが書いてくれない場合の理由と解決方法

導入したんだけど、みんなが能動的に書いてくれないというケースもよくあると思います。
そんな場合の対応策もまとめてみます。

1.ツールの使い方が分からない

理由

社員がナレッジツールの使い方を理解していないため、どのように情報を入力すれば良いか分からない。

解決方法

ツールのトレーニングセッションを開催し、使い方を分かりやすく説明します。
また、操作マニュアルやチュートリアル動画を用意して、いつでも参照できるようにします。

2.入力・記事作成の手間がかかる

理由

情報を入力する作業が煩雑で時間がかかるため、社員が敬遠してしまう。

解決方法

入力プロセスを簡素化し、ユーザーフレンドリーなインターフェースを提供します。
自動化ツールやテンプレートを用意して、入力作業の手間を減らします。
そのそもUIが優れたツールを採択要因として重要視した選定をするのも良いかもいしれません。

3.メリットが見えない

理由

ナレッジツールに情報を入力することのメリットが分からず、モチベーションが湧かない。

解決方法

ナレッジツールの利用が業務効率化や個人の評価に繋がることを明示します。
具体的な成功事例を共有し、ナレッジ共有のメリットを実感させることが重要です。

4.文化的な抵抗

理由

情報を共有する文化が社内に根付いていないため、ナレッジ共有に対する抵抗感がある。

解決方法

情報共有の重要性を経営層から強調し、リーダーが率先してナレッジツールを活用する姿勢を見せます。
また、ナレッジ共有を奨励するインセンティブ制度
(月間・年間MVPやベストナレッジ賞みたいな社内表彰制度など)
を導入するのもよいかもしれません。

5.達成感の感じにくさ

理由

入力した情報に対するフィードバックがないため、社員が自分の貢献が評価されていると感じない。

解決方法

入力された情報に対して適切なフィードバックを行い、貢献を評価します。
感謝の言葉や評価制度を設けて、情報提供者を称賛します。
「いいね」機能などがあるツールを採択するというのも一手かなと思います。

6.管理者のサポート不足

理由

ナレッジツールの利用促進が管理者からのサポートを得られていない。

解決方法

管理者に対してナレッジツールの重要性を教育し、彼らが積極的にサポートするように促します。
定期的なミーティングや報告を通じて、ナレッジツールの利用状況をチェックします。

さいごに


自分の組織に最適なナレッジツールの選定(複数のツールの組み合わせ)・導入は、
組織内の知識や情報を効率的に収集、整理、共有、管理するための強力なソリューションです。
組織の情報管理と知識共有の中核を担う重要なツールであり、
適切に導入・活用することで大きなメリットを享受することができると思います。

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