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マルチエージェント (AI Agent) システム設計ガイド
本記事は、マルチエージェントに関するドキュメントを読んで、マルチエージェントシステム構築のポイントを整理したものです。LLM ベンダー等が推奨するアプローチと実践的なガイドラインを共有できればと思います。
マルチエージェントシステムとは
複数の AI エージェントが連携して、一つのエージェントでは解決困難な問題に取り組むシステムです。それぞれが異なる専門分野を担当し、協力することで複雑なタスクを効率的に処理できます。
それって本当にマルチエージェントでやるべき?
そもそも、マルチエージェントでやるべきかの確認が推奨されています。
- タスクがマルチエージェントアプローチでないと実現できない?
- 性能向上がコスト・複雑性の増加を正当化できる?
- 適切な評価・監視体制を構築できる?
マルチエージェントが有効な場面
- 予測困難なタスク: 必要なステップ数が事前に予測しにくいオープンな問題
- 分野横断的な処理: 異なるドメインの専門知識を組み合わせる必要がある場合
- 段階的なワークフロー: 前工程の出力が次工程の入力となる処理
避けるべき場面
- 単一の LLM 呼び出しで解決できる問題
- 遅延やコストの増加が許容できない場合
- 明確に定義された固定的なワークフローで十分な場合
マルチエージェント開発の課題
複雑さの急速な増大
エージェント協調、評価、信頼性において新しい課題が生じ、複雑さが急速に増大する
実装上の課題
- コンテキスト・エンジニアリング: エージェントに適切なコンテキストを伝える技術
- エージェント間競合: 重複作業や矛盾する行動の解消
- 複雑なエラー: 自律的な性質により、エラーが連鎖的に拡大する可能性
- コスト増大: マルチエージェントシステムは単一エージェントの 15 倍のトークンを消費
マルチエージェント開発の原則
段階的構築アプローチ
シンプルなプロンプトから始め、包括的な評価で最適化し、よりシンプルなソリューションが不十分な場合にのみマルチステップのエージェントシステムに取り組む
(Anthropic、OpenAI、Google)
段階的構築ステップ
- 単一 LLM 呼び出しの最適化
- シンプルなワークフローの実装
- 必要に応じてマルチエージェントシステムへ拡張
役割分担と責任境界
- 汎用より専門特化: 明確な役割分担で性能向上
- モジュラー設計: 各エージェントが独立して機能し、保守性を向上
- 責任境界の明確化: エージェント間の役割分担を明確に定義
開発運用の重要ポイント
- シンプルさの維持: 必要最小限の複雑性
- 透明性の確保: エージェントの計画ステップを明示
- 包括的な評価: 性能測定と反復改善
- サンドボックステスト: 安全な環境での十分なテスト
- ガードレールの実装: 適切な制約と安全措置
- 観測可能性: システム動作の監視・分析機能
マルチエージェント特有の考慮事項
- エージェント間の協調設計: 重複作業や競合の回避
- コンテキスト共有: エージェント間での適切な情報伝達
- エラー伝播の制御: 一つのエージェントの失敗が全体に影響しないような設計
まとめ
マルチエージェントは強力なツールですが、本記事であげたように複数の課題があります。
シンプルなソリューションからはじめ、複雑性、コスト、複雑なエラーといった課題を理解した上で、段階的な構築アプローチを取ることが重要です。
マルチエージェントを設計する際の参考にしていただければ幸いです。
参考資料
主要 AI 企業ガイド:
- Anthropic - Building Effective AI Agents
- OpenAI - Orchestrating multiple agents
- Google - Building agents with Google Gemini and open source frameworks
実装ガイド:
フレームワークドキュメント:
Discussion