Cursor用に思考プロセスを技術実装したルールセットを作りました
Cursorのカスタムルールセット「DEF-A統合ルール」をGitHubで公開しました。
このプロジェクトは、従来の「便利なルール集」とは少し異なるアプローチを取っています。思考プロセス自体を技術システムとして実装し、AIとの協働をより効果的にするためのコンテキストエンジニアリングを加味したルールセットです。
認知科学の知見を取り入れた思考フレームワーク「DEF-A」を基盤とし、技術開発における意思決定と問題解決を体系化したシステムとなっています。
作るに至ったきっかけ
6月からCursorを使い始め、最初は実際に開発しているプロジェクト全体をCursorに見てもらい、ルールにするなどしていたのですが、ChatGPTで過去の履歴について深掘りをしていたところ、自分の生成AIとのやり取りの中にプロセスモデルのDEFがあるという指摘があり、それをきっかけにさらに膨らませ、プロセスモデルとして体系化させ、「DEF-Aモデル」に辿り着きました。
そこからさらに、「DEF-A」をCursorのルールに転用、汎用的に使えるよう、ルールとして構築することで今回のルールセットは出来上がっています。
DEF-Aモデルについて
DEF-Aは、PDCAやOODAと同様のプロセスモデルで、特にAI協働を前提とした思考フレームワークとして設計されています。
基本構造
🎯 Define(問題設定):
目的: 課題を多次元的に定義・要件を整理
AIとの協働: 構造化支援・見落とし指摘
🔍 Explore(多視点分析):
目的: 複数の視点からの分析・深層探求
AIとの協働: 仮説生成・情報収集・関連性分析
✨ Formulate(統合・構造化):
目的: 洞察の統合・実行可能な形への変換
AIとの協働: 文章構成・表現最適化
📝 Act/Apply(実行・適用):
目的: 段階的実装・検証
AIとの協働: 実行支援
📈 Assess/Adjust(評価・調整):
目的: 効果測定・改善点の抽出
AIとの協働: データ分析・改善案生成
柔軟な適用戦略
完全適用だけでなく、状況に応じた部分適用も可能です:
- 緊急対応: Actのみ(即座の問題解決)
- 日常的質問: Formulate→Act→Assess(効率重視)
- 学習支援: Explore→Act(理解促進)
- 複雑な課題: 完全DEF-A適用(包括的解決)
システムの特徴
包括的なアーキテクチャ
15ファイル構成の体系的なルールセットは、ModelをClaude-4-sonnetを使用する想定で最適化して設計されています:
【中央制御システム】
core_rules.cursorrules (基本品質基準・DEF-A統合コア)
├── defa_framework.cursorrules (思考フレームワーク詳細)
├── rule_selector.cursorrules (文脈依存的ルール選択)
└── prompt_templates.cursorrules (最適化テンプレート集)
【技術領域専門ルール】
├── frontend_rules.cursorrules (フロントエンド開発)
├── backend_rules.cursorrules (バックエンド・セキュリティ)
├── testing_rules.cursorrules (TDD/BDD統合)
└── error_handling_rules.cursorrules (エラー対応)
【高次機能システム】
├── team_collaboration_rules.cursorrules (チーム協働)
├── knowledge_management_rules.cursorrules (知識管理)
├── ethics_core.cursorrules (倫理的配慮)
└── programming_ethics_rules.cursorrules (プログラミング倫理)
AI動的ルール選択
従来の静的ルールと異なり、AIが文脈を理解して適切なルールを選択する仕組みを実装しています:
判定プロセス:
質問意図分析 → DEF-A段階判定 → 技術領域識別 →
適切なルール選択 → 最適化応答生成
認知スタイルプロファイル
異なる文脈に応じて、2つの認知スタイルを使い分けます:
🧠 Systems Mode(システム思考型)
適用場面: システム設計・アーキテクチャ・複雑性統合
特徴: 論理的・構造的・全体最適化重視
出力特性: 体系的・分析的
🌸 Empathy Mode(コミュニケーション重視型)
適用場面: 学習支援・チーム協働・ユーザー体験
特徴: 段階的説明・実用性・温かみのある表現
出力特性: 段階的・共感的・関係性重視
倫理的配慮の組み込み
AI時代における技術発展と人間性保護の両立を目指し、4層の倫理システムを実装しています:
Level 1: 基本倫理原則
- 人間尊厳の保護・多様性の尊重
- 成長可能性の重視・包摂的コミュニケーション
Level 2: システム統合
- DEF-A各段階での倫理的配慮の自動統合
- 偏見・バイアスの検出支援
Level 3: リアルタイム監視
- 問題のある表現パターンの検出
- より適切なアプローチの提案
Level 4: 自動応答調整
- 排他的表現→包摂的表現への調整提案
- 学習機会の創出・相互成長の促進
知識管理システム
野中郁次郎氏のSECIモデルを技術開発に適用し、暗黙知の形式知化を支援します:
Socialization(共同化):
体験やノウハウの共有支援
Externalization(表出化):
問題解決プロセスの自動ルール化
Combination(連結化):
既存知識との統合・体系化
Internalization(内面化):
実践を通じた知識の定着支援
期待される効果と注意点
期待される効果
- 思考プロセスの可視化: 問題解決アプローチの体系化
- AI協働の最適化: 人間とAIの役割分担の明確化
- 品質の向上: 一貫性のある高品質なアウトプット
- 学習効果: 段階的理解の促進
重要な注意点
- 学習投資が必要: 場合により、システムの理解と習得に時間を要します
- 個人差による効果の違い: 思考スタイルや経験により効果は変わります
- 継続的改善: 使いながら自分に合わせてカスタマイズが必要です
実装方法
1. リポジトリのクローン
git clone https://github.com/[username]/cursor-defa-rules.git
cd cursor-defa-rules
2. シンプル版で開始(推奨)
# Cursorのルールディレクトリに基本ルールセットをコピー
cp rules/simple/*.cursorrules ./.cursor/rules/
# Cursorを再起動してルールを読み込み
3. 段階的拡張
# 技術領域別ルールを必要に応じて追加
cp rules/defa/frontend_rules.cursorrules ./.cursor/rules/
cp rules/defa/backend_rules.cursorrules ./.cursor/rules/
# 完全版への移行
cp rules/defa/*.cursorrules ./.cursor/rules/
4. ルールの適用確認
Cursorを再起動後、質問を投げてルールが適用されているかを確認してください。ログマーカー(🎯、🔍、✨など)が表示されれば正常に動作しています。
将来的な.mdc形式への対応について
Cursorは将来的に.cursorrules形式から.mdc形式への移行を予定しています。本プロジェクトでは、.mdc形式の具体的な利用方式について明確になり次第、対応したルールファイルを提供する予定です。
今後の展望
ひとまず、体系的に動作が重くなりすぎない状態で網羅的に詰め込んだルールセットになっているのですが、現在は文章作成や記事作成に特化したルール作成を中心に進めており、開発のみにとらわれず、より実用的で効果的なAI協働の方法を模索しています。
現在の取り組み
- 文章作成プロセスの体系化
- 記事作成における品質向上の支援
- 技術文書作成の効率化
今後の方向性
- 特定分野でのルール最適化
- ユーザーフィードバックに基づく改善
- より実用的な機能の追加
限界と課題
- 個人の認知スタイルへの適応性
- システムの複雑性による学習コストの高さ
- 継続的な改善とメンテナンスの必要性
まとめ
このCursor向けルールセットは、思考プロセスの技術実装という実験的な取り組みです。完璧なソリューションではありませんが、AI協働時代における新しい可能性を探る一つのアプローチとして、コミュニティと共に発展させていければと考えています。
他にも認知スタイルプロファイルを活用した取り組みなどもやっているので、その辺りについてもエンジニア視点でZennに記事化できれば考えておりますので気になる方はコメントなどいただけると幸いです。
この記事はCursor上でこのルールセットを活用して作成しました。
🔗 GitHub: https://github.com/cdbk/cursor-defa
📖 詳細ドキュメント: https://notheme.me/2025/07/09/cursor_def-a_model/
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