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けっこう使える!生成AIでインタビュー記事を書く6つの手順

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テクニカルライターをしてまして、これまで取材・インタビューしてたくさんの導入事例記事を作成してきました。ChatGPTなどの生成AIを利用すれば、一定の品質を確保した記事を効率よく作成できそうです。最近、記事の書き方を聞かれる機会が増えてきたので、そんなノウハウを整理してみました。

本記事では、生成AIを活用しつつ人間ならではの“深掘り力”を活かすことで、短時間で質の高い記事を生み出す実践的なインタビュー記事制作のプロセスを解説します。

この記事も、AIを使ってセルフインタビューで作成した原稿をリライトしています。

実際に使えるプロンプトも掲載しています。

インタビュー記事の効果

IT企業におけるコンテンツマーケティングでは、導入事例や社員インタビューといった「インタビュー記事」が高い効果を発揮します。製品やサービスを自らアピールするよりも、実際のユーザーやエンジニアの声を通して伝える方が、信頼性や共感を得やすいからです。

一方で、「記事制作に時間がかかりすぎる」「思ったような品質にならない」――そんな悩みを抱えるマーケティング担当者・技術広報は少なくないと思います。インタビュー記事の制作は簡単にできそうにみえますが、「人選・質問設計・文字起こし・記事化・確認」という複数の工程を含むため思った以上に手間がかかります。文章作成が不得意な人には荷が重いときもあるでしょう。

そこで注目されるのが生成AIの活用です。生成AIを活用することで、手間のかかる作業をほぼ自動で進めながら、カギになる部分を人間がしっかりと押さえることが可能になります。

では、生成AIを使って、どのような手順で記事を制作していけば良いのでしょうか。

次のように、6つの手順で進めていくといいと思います。

  • 手順1. コンテンツの「目的」と「読者像」の明確化
  • 手順2. インタビュー相手の選定と質問票の準備
  • 手順3. インタビューする
  • 手順4. 文字起こしと原稿作成
  • 手順5. 編集作業
  • 手順6. 記事を公開する

では、この手順について順番に説明していきます。

手順1. コンテンツ制作の出発点は「目的」と「読者像」の明確化

生成AIを使っても使わなくても、最初に取り組むべきは、「このコンテンツは誰のために、何のために作るのか」を明確にすることです。

例えば:

  • 導入事例記事:製品を導入してくれた顧客にインタビューし、抱えていた課題とその解決を描くことで、同様の課題を抱える他社にアピールする。
  • 採用広報記事:社員のリアルな働き方を伝え、候補者に自社の魅力を伝える。
  • 技術解説記事:エンジニアが持つ専門的なノウハウを共有し、企業ブランドの専門性を強化する。

といった感じですね。

目的と読者像を整理すれば、次のようにコンテンツのあるべき姿も固まりやすくなるでしょう。

  • コンテンツの形式:インタビュー、チュートリアル、解説
  • 掲載場所:オウンドメディア、技術ブログ、ホワイトペーパー
  • 拡散手段:SNS、イベント、営業活用

「とりあえず記事を作って」と依頼された場合は、このような完成後のイメージをすり合わせておきましょう。

確認しておかないと、完成後に「イメージが違う」となることがよくあります。この企画段階で整理しておくことが、成功への第一歩です。

手順2. インタビュー相手の選定と質問票の準備

さて、インタビュー記事を作ることが決定したら、まずはインタビュー相手の人選です。

インタビュー記事は「誰に語ってもらうか」で大きく出来栄えが変わります。必ずしも話し上手である必要はありません。「このテーマなら語れる」という領域を持つ人なら十分です。

さらに、インタビュアーの人選も重要です。できれば、インタビューするテーマを理解できる人がいいでしょう。質問票をただ読み上げるだけでは表面的な答えしか得られず、「メールで済む話」に終わってしまいます。掘り下げの一言を加えられる知識があるかどうかが分岐点です。

質問票は地図であり、会話の潤滑油

事前に質問票を準備することで、相手も安心してインタビューに参加できます。

生成AIを活用すれば、業界やテーマに合わせた質問票を数秒で生成できます。

プロンプト

IT系メディアの優れたライターとして、システム開発事例インタビュー記事を作成します。

次の条件で、インタビューの質問票を作成して。

- 開発システムの概要:B2B向けWeb広告管理システム  
- インタビュー相手:開発プロジェクトのプロジェクトマネージャ  
- インタビュー記事の目的:開発を担当した当社のシステム開発力をアピールしたい

ChatGPT(5o)の出力例

システム開発事例インタビュー質問票  

対象:プロジェクトマネージャ

**1. プロジェクトの背景と目的**

- このB2B向けWeb広告管理システムの開発に至った経緯を教えてください。  
- クライアントが抱えていた課題やニーズはどのようなものでしたか?  

**2. システムの概要と特徴**

- 今回開発したシステムの主な機能や構成についてご説明いただけますか?  
- 他社の類似システムと比べて、差別化ポイントはどこにありますか?  

**3. 開発プロセスと体制**

- プロジェクトの体制(チーム構成、役割分担など)について教えてください。  
- 開発期間やフェーズの進め方はどのように設計されましたか?  

**4. 技術的な工夫とチャレンジ**

- 技術選定のポイントや、採用した主な技術スタックについて教えてください。  
- 開発中に直面した技術的な課題と、それをどう乗り越えたかを教えてください。  
- パフォーマンスやセキュリティ面で特に工夫した点はありますか?  

**5. プロジェクトマネジメントの視点**

- スケジュール管理や品質管理で意識したことは何ですか?  
- チーム内のコミュニケーションやモチベーション維持のために工夫したことはありますか?  

**6. クライアントとの関係構築**

- クライアントとの要件定義やレビューの進め方について教えてください。  
- クライアントからの評価やフィードバックで印象的だったことはありますか?  

**7. 今後の展望とメッセージ**

- 今回のプロジェクトを通じて得られた知見や成長ポイントは何ですか?  
- 今後、同様のシステム開発に取り組む際に活かしたいことはありますか?  
- 最後に、御社のシステム開発力を一言で表すとしたら?

質問票は事前に渡しておこう

質問票ができたら、インタビュー相手に事前にお渡しして、狙いなどを説明しておくといでしょう。

相手も、必要な情報を下調べしておくことができますし、心の準備もできるでしょう。

「こういう質問が答えやすい」「この質問には回答が難しい」といったポイントがあれば、これもすり合わせておけば、取材当日にスムースに進められると思います。

手順3. インタビューする: 現場の工夫で、信頼関係と空気づくり

インタビューの段取りができたら、いよいよ取材本番です。

インタビューの際には、次の点に気を配るといいでしょう。

冒頭は雑談でほぐす

インタビューの冒頭は、相手の緊張を和らげる時間にあてましょう。

インタビューに慣れている人は、ほとんどいません。「緊張しますよね」と声をかけるだけで、ちょっと余裕が出てくると思います。

録音や録画する場合も「編集用で、これをそのまま公開することはないので、まずは気楽に話してください」と伝えるだけで安心感が生まれます。

役割と発言者を明確にする

複数人が参加する場合は、必ず全員に自己紹介をしてもらい、担当業務や役割を明らかにします。オンライン・オフラインを問わず、誰がどこに座っていたか、誰がどの発言をしたかを記録することが、後の整理をスムーズにします。

掘り下げの一言が記事を面白くする

質問票通りに進めるだけでは凡庸な記事になりがちです。その場で気づいた「もう一歩踏み込みたい部分」を追加で聞くようにしましょう。

例えば「開発で苦労した点は?」という質問に対し、「納期管理です」と一言だけ答えが返ってきた場合、さらに「具体的にはどんな苦労があったのか」「チームの雰囲気はどう変わったか」と掘り下げれば、記事の厚みが増します。共感できるポイントあれば、それを起点にさらに会話を盛り上げましょう。

知り合いの編集者にも、インタビューの極意を聞いてみました。

たくさん話してくれる人には、打ち合わせし過ぎない。あえて質問票にないことを聞いてみる。

なかなか答えが引き出せない場合は、「記事では、こういう情報を載せたい。そのためにこういう質問をしています」と質問の意図を説明する。IT系のエンジニアは、意図を説明したほうが答えてもらいやすい。

といったアドバイスをもらいました。なかなか奥が深いです。

何より相手の話を理解し、共感し、さらに読者が知りたい内容を引き出すことが重要だと思います。

20分から30分程度のインタビューで、5000文字くらいの記事の情報が得られると思います。

手順4. 生成AIによる原稿作成

インタビューが終わったら、その内容を整理します。

自動で文字起こし

インタビュー終了後は録音・動画を文字起こしします。

近年は自動化精度が大幅に向上しており、ChatGPTや専用サービスを利用すれば「えー」「あのー」といった不要なフィラーも除去可能です。

Zoomなら、レコーディングから音声ファイルだけを取りだせます。

録画ファイルしかない場合、**VLCというツール**で音声ファイルを抜き出すことができます。

生成AIで、文字越しから原稿作成

実際の原稿作成も、生成AIで簡単にできるようになっています。

この記事も、自分で自分に質問した動画の文字起こしから、ChatGPTで作り出して、そこからリライトしています。

インタビューの記事作成プロンプト

あなたはIT分野に精通したプロのライターです。

以下のインタビュー文字起こしを基に、読者にとって読みやすく、魅力的で、かつコラム記事を執筆してください。

**【必須要件】**

- 読者ターゲットはIT企業の<システムエンジニア>を想定する。
- 文字起こしの口語表現や冗長な部分を削除し、読みやすい文章に整える。
- 用語や固有名詞は一貫性を保ち、必要に応じて補足説明を加える。
- 引用と要約を組み合わせ、発言者の個性を活かしつつテンポよく展開する。
- ITトレンドや業界背景と関連づけて読者に価値を提供する。
- 数値・技術用語は正確に表記する。


**【記事構成のガイドライン】**

- 添付ファイルの順番に従って作成
- 作成する記事は、インタビューではなくインタビュー相手の考えをまとめたコラムとして出力
- セクションごとに出力すること
- 全体の文字数:4000文字程度


**【出力形式】**

- Markdown形式で出力
- 各セクションは必ず見出し(##)をつける
- 読みやすい段落に整形 


**【インタビュー文字起こし】**

<<添付ファイルを使用する>>

質問ごとに整理するのがコツ

いきなり全文をAIに渡して要約させると、強調点がずれてしまうことがあります。

その場合、「質問単位」で整理させるのがオススメです。インタビュー記事は自然にセクション分けされているため、この粒度で処理すると読みやすい原稿が得られます。ただ、ChatGPT(5o)では、5000文字程度のインタビュー記事は分割しなくても、いい感じで出力されました。

ネガティブ表現はポジティブに書き直す

企業コンテンツにふさわしくない要素――競合製品への批判や個人的な事情――は、そのまま載せるべきではありません。

  • 「AAA社のBBB製品が使いにくかった」→「従来のツールではこういう課題が残った」(競合の社名・製品名は書かない)
  • 「うちの組織はダメだった」→「改善の余地があったため、◎◎◎に積極的に取り組んだ」
  • 「◎◎◎な病気」「◎◎◎な家族の問題」 → 「個人的な事情もあって」

誰かの悪口や個人的な事情を具体的に書くのではなく、課題や改善点を中心に書き換えます。

手順5. 記事としての仕上げ:編集とチェックの重要性

ひととおり記事原稿が書きあがったら、掲載する場所に合わせて体裁を整えましょう。

掲載されているほかの記事を参考にして、スタイルを合わせるといいでしょう。

これも生成AIに。

プロンプト

あなたは優れた編集者です。以下の観点に基づいて、この原稿をチェックしてください。

**【読者視点】**  
- 想定読者に合った表現・説明レベルになっていますか?  
- 難しい言葉や専門用語は、必要に応じて説明や例が添えられていますか?

**【構成・流れ】**  
- 導入で読者を引き込めていますか?  
- 段落の流れは論理的で分かりやすいですか?  
- 記事の結論や読者に伝えたいことが明確になっていますか?

**【内容・事実確認】**  
- 情報やデータに誤りがないか確認してください。  
- 余分な情報で焦点がぼやけていませんか?  
- 他の記事との差別化(オリジナリティ)はありますか?

**【言葉遣い・文体】**  
- トーンは媒体や読者に合っていますか?  
- 文体が統一されていますか(「です/ます」や「だ/である」など)?  
- 冗長な表現がなく、簡潔に伝わっていますか?  
- 誤字・脱字・書き間違いはありませんか?

**【見出し・タイトル】**  
- タイトルは内容を的確に表し、読者を引きつけますか?  
- 小見出しは段落の内容を分かりやすく示していますか?

**【視覚的要素】**  
- 段落が読みやすく分かれていますか?  
- 必要な箇所は箇条書きで整理されていますか?  
- 図表や画像が有効に使われていますか?

**【読後感】**  
- 読み終えたときに読者が何を得られるか明確ですか?  
- 読者が次に行動したくなる余韻がありますか?


**出力形式:**  
1. 強み(良い点)  
2. 変更箇所  
3. 改善点(具体的な提案)。  
4. 書き直し例  
5. 全体的な総評

※全体を書き直して提案しないこと

**チェック対象の企画概要:**  
<添付ファイルを使用する>

**チェック対象の原稿:**  
<添付ファイルを使用する>

リード文とタイトルで読者を引き込む

記事の冒頭の文を「リード文」と呼びます。記事の全体像を紹介するリード文は「この記事は誰に、何を伝えるのか」を簡潔にまとめる部分です。ここが弱いと、せっかくの内容も読まれません。

生成AIで「この記事のタイトルとリードの案を示して」と指示すれば、いくつかの候補を提示してくれます。

「もっとカジュアルに」「もっと面白そうなタイトルで」など、追加の指示で調整もできます。

編集チェックはAI+人間のハイブリッド

AIに「優れた編集者としてチェックして」と指示すれば、誤字脱字や表現の不統一を洗い出せます。

ただし最終判断は人間が行うべきだと思います。専門用語の正確さや読者への伝わり方は、まだ人間の判断力が欠かせません。

編集チェック用プロンプト

あなたはプロの編集者です。添付ファイルの文章を、次の「表現・文体」と「読みやすさ」の特徴に基づいてリライトしてください。

【表現・文体の特徴】

- 敬体(です・ます調)で統一
- フォーマルかつ解説的な語り口
- 専門用語は適切に使いつつ、文脈で補足
- 数字や費用感は具体的に提示し、信頼性を高める

【読みやすさの特徴】

- 見出しや番号付きリストを用い、階層的に整理
- 各段落を短めに区切り(3〜6行程度)視認性を高める
- 「概要 → 詳細 → 事例」という流れで情報を展開
- 専門的な内容でも具体例を挟んで理解を助ける

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リライト対象の文章:

<<添付ファイルを使用する>>

インタビュー相手の確認は確実に

完成した記事は必ず相手に確認してもらいましょう。その場では発言したものの「もう少し違う表現にしたい」となるケースは少なくありません。

企業コンテンツとして公開する場合は、本人の合意を得ることは信頼関係の維持にも直結します。

確認の形式も柔軟に――Wordでコメント、GitHubで修正、対面で読み合わせなど、相手に合わせた方法を選びましょう。

手順6. 公開とその後:マーケティング活用の広がり

記事が完成したら、メディアに掲載して終わりではありません。SNSで拡散したり、営業資料として活用したり、コンテンツの価値は倍増します。

特にIT業界では、技術記事や事例記事が採用・営業・広報すべてのフェーズで「信頼を得る武器」となります。生成AIによって制作負担が軽減された今こそ、積極的にインタビュー記事を仕掛けるべきタイミングです。

まずは気軽に試してみよう!

さて、こんな感じでやっていけばインタビュー記事は、従来と比較してあまり手間をかけずに作成できます。

しかし、いきなり本番の記事で使うのは大変でしょう。

そこで、まずは自分たちの業務などをテーマにして、試作記事を作ってみることをお勧めします。

自分たちの日ごろの業務を対象にして、インタビューしてそれを記事の形にまとめるのです。そうすれば、どのくらいの工数がかかるのか把握できますし、インタビュー記事の面白くするためにはどうすればいいか理解を深めることもできるでしょう。

人間が担うべき「深掘り」と「文脈づけ」

生成AIの登場で、記事制作の多くは効率化できるようになりました。しかし「相手の話を理解し、読者が共感できる形で深掘りする」という役割は、まだまだ人間にしか果たせないと思います。

マーケティング担当者にとっての理想は、AIを使って下準備や編集を効率化し、人間は「本質的な聞き出し」と「戦略的な文脈づけ」に集中することです。

インタビュー記事は、単なる情報伝達ではなく「リアルな声を活かした企業の信頼とブランドづくり」だと思います。生成AIを味方につけながら、より多くの価値ある声を形にしていきましょう。

記事を作成してみたら、ぜひ教えてください!

皆さんのお役に立てば幸いです。

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