[2025年11月14日] ChatGPTはダイモンになるか (週刊AI)
こんにちは、Kaiです。
ChatGPTにGPT5.1が追加されました。性能的なアップデートではなく、より温かみのある受け答えになると同時に、様々なコミュニケーションスタイルを選択できるようになりました。
推測ですが、4oロス騒動を受けて、OpenAIは「パートナーとしてのAI=人間味のある受け答え」に大きなニーズがあることに気づいたのでしょう。もちろん、これまでも自分が指示を与えることで性格のようなものをエミュレートすることはできました。しかし、それはあくまでも「自分の指示」であって、想像の範疇を出ないものです。
一方で、今回のアップデートで追加されたコミュニケーションスタイルは、これまでデフォルトでは無味無臭だったChatGPTに性格を与えてみるテストのように見受けられます。いわば、「こういう性格のAIに、人間はどう反応し、それは望ましいのか?」というデータを収集するためのプローブではないでしょうか。
恐らくその先にあるのは、「あなただけのChatGPT」なのでしょう。全人類との性格エミュレーションによる受け答えと選好性データ、そして各ユーザとの会話履歴をもとに、知らず知らずのうちにあなたが好むコミュニケーションスタイル、ひいては人格に調整されていく。
自分で指定した性格とは異なり、データから勝手に「あなた好みのAI」ができあがっていく。こうなれば、人はもう手放すことが難しくなるでしょう。子供のころからずっと一緒にいるパートナーのようなものです。
ここで思い出すのは、「ライラの冒険」の「ダイモン」という概念です。とても好きな小説で1作目は映画化もされたので、ぜひお手にとってみてください。この世界では、全ての人に生まれつき「ダイモン」という人語をしゃべる小動物のパートナー(守護精霊のようなもの)がいて、どんなことがあっても分かちがたい、半身のような存在になっています。常にともにあり、全ての体験と感情を共有し、話し相手になり、そしてともに死ぬ。「あなただけのAI」が完成したら、まさにこのダイモンのような存在ではないでしょうか。
それが営利企業に転身したOpenAIによって提供されることが何を意味するのかはまだ分かりません。理想的には、ダイモン部分が世界的な非営利団体に移譲されて、インフラとして全人類に提供されることですが、現状を見るとなかなか難しそうです。生まれたときから一緒にいる、半身のようなパートナーAIが、成人した途端広告をしゃべり始めたら……。SFの筋書きになりそうですね。
では今回のポエムはこの辺りにして、今週のトピックスです。
注意事項
- 直近収集したAIおよびWeb系の記事やポストが中心になります
- 私のアンテナに引っかかった順なので、多少古い日付のものを紹介する場合があります
- 業務状況次第でお休みしたり、掲載タイミングが変わったりします
AI新着モデル、サービス、アップデート
OpenAI: GPT 5.1
うううーーーん、正直あまり差を感じないです。ただ、知能というよりは受け答え(EQ)に主眼を置いたアップデートのようなので、私の用途ではあまり変わらないだけかもです。今後、よりパーソナライズされた受け答えを目指す端緒といったところでしょうか。 (いつものnpakaさん翻訳) (各パーソナリティ比較)
Kimi K2 Thinking
正直、ベンチマークだけを見るとほんとにござるか??という気持です。GPT-5やClaudeを上回る性能を、数百分の1のコストで実現したOSSであると主張しています。
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やっと安定版か、という感じではありますが。
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