2025年に竣工した3階以下にスターバックスがある東京23区内の大型オフィスビルは?
こんにちは。
「店舗経営を支える、世界的なインフラを創る」をミッションに掲げる株式会社カンリーの萩野です。2025年はCAIOへと役割を変えてがんばってます。
この記事は『カンリー Advent Calendar 2025』初日、12月1日分の記事として執筆しています。
2025年個人的ニュースを聞いてみた件〜高円寺〜
カンリー参画前、起業をしてオフィスを構えたのが杉並区高円寺なのですが。
高円寺はとても魅力的な街です。『月曜から夜ふかし』などでもよく話題となる魅力が溢れすぎている街です🍻
高円寺の魅力についてもっと知りたい方は、高円寺チャンネルをぜひ御覧ください。
高円寺には個人経営の美味しい喫茶店やコーヒースタンドが多く、コーヒー好きにはたまりません。
個人的にはMÖWE COFFEE ROASTERSや CITY、NEYO KOENJIなどスペシャリティ系コーヒーのお店がお気に入りです☕️
コーヒー天国の高円寺ですが、中央線快速駅で23区にもかかわらずスターバックスがない駅は高円寺と西荻窪(荻窪、阿佐ヶ谷、中野は2店舗ずつあるのに)などと言われていました。そんな高円寺駅前についに2025年3月3日 スターバックス コーヒー Olive LOUNGE 高円寺店がオープンしました!
「Olive LOUNGE」と「SHARE LOUNGE」が併設されているおしゃれ空間です!
そんな高円寺駅前のスターバックスのラウンジで筆を執り、アドベントカレンダー1日目の記事を書いています!
それでは、2025年のニュース・トレンドとAIエージェントをミックスしたテクノロジーの進化を味わってください🗓️🎄
AIエージェントの躍進と残された課題
2025年は、大規模言語モデル(LLM)のファウンデーションモデルがさらに進化した年でした。Gemini 3 Pro、GPT-5.1、Grok 4.1、Claude Sonnet 4.5といった最先端モデルが登場し、自然言語理解・コード生成・マルチモーダル処理の各分野で飛躍的な進歩が見られました。
さらに、2025年は「AIエージェント元年」という言葉にふさわしい1年でもありました。エージェントフレームワークのみならずマルチエージェントが組み込まれたサービスが次々と誕生し、複数のツールを組み合わせた自律的なタスク実行が可能なAIエージェントの民主化が一気に進みました。
そんな目覚ましい進化を続けるAIですが、AIが答えることが難しい質問ってありますよね。
例えば、この記事のタイトルでもある次のような問題をAIに聞いてみましょう。
2025年に竣工した3階以下にスターバックスがある東京23区内の大型オフィスビルは?
ためしに、Google検索のAIモードで質問してみました。
Google Search(AIモード)で「2025年に竣工した3階以下にスターバックスがある東京23区内の大型オフィスビルは?」と質問したときのUIイメージ
「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」正解です!今年開業した「フェアモント東京」のビルの中層階がオフィスになっているんですね。
ご丁寧に私の近所の情報(杉並区高円寺)まで提供してくれました(笑)
でも実は、もう一箇所あるんです。
そう、皆さんご存知の2025年2月に竣工した「虎ノ門アルセアタワー」です。ビル1階に「スターバックス コーヒー 虎ノ門アルセアタワー店」があります。
このような問題はAIが答えるのは難しいですよね!!というテーマで記事を書こうと思ったのですが。
すみません、早くも計画が狂いました。AIの進化は想像以上でした。
ChatGPT(無課金)に聞いてみました。すると…
Q: 2025年に竣工した3階以下にスターバックスがある東京23区内の大型オフィスビルは?
A(ChatGPTによる回答例):
- 虎ノ門アルセアタワー(2025年竣工・東京都港区虎ノ門2-6)
- 1階にスターバックス コーヒー 虎ノ門アルセアタワー店がオープン
- 延床面積約18万㎡の大型複合ビル
- BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S(2025年竣工・東京都港区芝浦1-13-1)
- 2階にスターバックス店舗が出店
- 延床面積約5万㎡の高層オフィスビル
これらは2025年竣工の東京23区内大型オフィスビルで、低層階(3階以下)にスターバックス店舗がある代表例です。
難なく答えられている…。Gemini 3 Proでも試してみました。
Q: 2025年に竣工した3階以下にスターバックスがある東京23区内の大型オフィスビルは?
A(Gemini 3 Proによる回答例):
- 虎ノ門アルセアタワー(2025年港区竣工、1階にスターバックス店舗)
- BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S(2025年港区竣工、2階にスターバックス店舗)
いずれも3階以下にスターバックスがある2025年開業の23区内大型オフィスビルとして紹介されました。
ご覧の通りGemini 3 ProもChatGPT同様に、正解を抽出できています。
ご丁寧に補足までつけてくれました。駅内のスターバックスはよく通っていましたが、高輪ゲートウェイシティのスターバックスは5階なのか…。
※補足:高輪ゲートウェイシティについて 2025年3月開業の「高輪ゲートウェイシティ(THE LINKPILLAR 1)」も大型ビルですが、同ビルのオフィス棟内に出店しているスターバックス(ニュウマン高輪店)は5階となります。
※なお、隣接する「高輪ゲートウェイ駅」の改札外3階には既存のスターバックスがありますが、こちらは駅舎内の店舗となります。
ご覧の通り、現状の大規模言語モデル(LLM)はこのような複雑な条件のクエリでも、極めて正確な情報を返せるようになってきました。
「2025年の新規開業情報」や「階層ごとのテナント情報」まで盛り込んだ複雑な条件付きの問い合わせにも、インターネット検索を使いAIエージェントが正確性をもって回答できるようになってきました。
2025年はAIの著しい進化を日々実感できた、まさに刺激的な一年でした。
これから始まる12月、みなさんの毎日がカンリーアドベントカレンダーの記事で少しでも楽しく、豊かになりますように――
どうぞ最終日まで一緒にワクワクしながらお付き合いください!
初日担当は萩野でした。それでは、またお会いしましょう!
APPENDIX
スターバックスの2000店舗達成とドミナント戦略の背景
2025年、日本で2000店舗を突破
スターバックスコーヒージャパンは、2025年3月末時点で2011店舗を達成し、日本国内のカフェチェーンとしてマクドナルドに次ぐ第2位の規模となりました。1996年に東京・銀座に日本1号店をオープンしてから約30年で、日本の47都道府県すべてに出店を果たしました。
ドミナント戦略の本質
スターバックスの成長を支えているのがドミナント戦略です。これは、特定のエリアに集中的に出店し、その地域でのブランド認知度と市場シェアを最大化する戦略です。
例えば、東京・虎ノ門エリアでは、虎ノ門ヒルズ駅周辺だけで7店舗ものスターバックスが展開されています(虎ノ門ヒルズ ステーションタワー店、ビジネスタワー店、虎ノ門アルセアタワー店など)
スターバックスのドミナント戦略は、店舗密集による認知度・利便性向上や売上増加のメリットがあり、共食いリスクも来店客の分散によって克服しています。
日本を代表するカフェチェーンの出店戦略
カフェ業界の市場規模とシェアランキング
2025年時点で、日本のカフェ業界の市場規模は約1兆円超に達しています。コロナ禍からの回復により、2025年2月の外食産業全体の売上は前年比106%と好調です。
主要カフェチェーンのマーケットシェアランキングは以下の通りです:
| 順位 | ブランド | 国内シェア | 店舗数(2025年) |
|---|---|---|---|
| 1位 | スターバックス | 31.93% | 約2,011店 |
| 2位 | ドトールコーヒー | 8.08% | 約1,100店(直営+FC) |
| 3位 | コメダ珈琲店 | 4.62% | 約1,083店 |
| 4位 | タリーズコーヒー | 4.21% | 約800店超 |
| 5位 | サンマルクカフェ | 約2% | 約291店 |
東京オフィスビル市場の最新統計と動向
空室率の急激な低下と「空室枯渇時代」の到来
2025年の東京オフィスビル市場は、劇的な需給逼迫を迎えています。JLLの調査によると、2025年第3四半期(9月)末時点の東京Aグレードオフィス(延床面積30,000㎡以上、基準階床面積1,000㎡以上、竣工年1990年以降、都心5区:千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の空室率は0.9%を記録しました。
空室率0%台は、コロナ前の2019年(0.6%)、「不動産ミニバブル」と言われた2006年(0.6%)以来のことです。2025年第2四半期末時点の空室率は2.5%でしたが、第2四半期から1四半期(3カ月)で空室率0%台へと急落し、まさに「空室枯渇時代」が到来しました。
2025年には、虎ノ門アルセアタワー(2025年2月竣工、延床面積約18万㎡、38階建て)や、渋谷桜丘再開発 SHIBUYAタワー(2024年秋~2025年完成、39階建て)、 高輪ゲートウェイシティ(2025年3月27日まちびらき、複合開発)など大型ビルの竣工が相次ぎましたが、それを上回るオフィステナント需要があるようです。
株式会社カンリーも組織拡大に伴い、2025年5月7日(水)に天王洲オーシャンスクエアへ本社を移転しました。
2025年の新築オフィスビルでは、カフェ(特に有名ブランド)の誘致が差別化と利便性向上の鍵となっています。実際に複数の大型ビルでスターバックスやブルーボトルコーヒーが入居し、集客力向上に寄与しています。
Take 2
ここから本編です(笑)
表題のタイトルはあっさりとAIに正解されてしまいました😇
「2025年に竣工した3階以下にスターバックスがある東京23区内の大型オフィスビルは?」
ということで、タイトルを変更します!
「2025年に東京23区で竣工した延床面積3万㎡以上の新築オフィスビルA、徒歩80m以内にスターバックス、最寄り駅X(400m以内)、駅X半径1km圏内にスターバックス5店舗以上、駅X徒歩800m圏内に延床面積1万㎡以上・2025年竣工・徒歩80m以内にカフェ(スタバ/ドトール/タリーズ/コメダ)ありの別ビルB、ビルA・B中間地点800m以内で駅Xとは異なる駅Y、駅Y半径800m圏内にドトール・タリーズ・コメダ合計3店舗以上ある組み合わせは?」
これは最新のAIモデルでも流石に答えられまい!!
ChatGPTやGeminiを使って問い合わせたところ、毎回異なる結果が返ってきてしまいました。やはり難しいようですね😏😏
LLMが解けない難問:スターバックス×オフィスビル×最寄り駅
それでは、本題である「LLMが解けない難問」を提示します。
どういう状況で使うのというツッコミは無視して、問題文を正確に見ていきましょう。
問題文
2025年に東京23区内で竣工した延床面積3万㎡以上の新築オフィスビルで、徒歩1分以内(半径80m以内)にスターバックスが出店しているビル(ビルA)の最寄り駅(徒歩5分=400m以内)を駅Xとする。
駅Xから半径1km圏内にスターバックスが5店舗以上あり(ドミナント戦略の実践地域)、かつ駅Xから徒歩10分圏内(800m以内)に別の2025年竣工オフィスビル(延床面積1万㎡以上、ビルB)があり、そのビルにも徒歩1分以内(半径80m以内)にカフェ(スターバックス、ドトール、タリーズ、コメダのいずれか)が出店している組み合わせを見つけよ。
さらに、ビルAとビルBの中間地点(2ビル間の距離を2等分する地点)から最も近い駅(徒歩10分=800m以内)を駅Yとする。ただし、駅Yは駅Xとは異なる駅でなければならない。
駅Yから徒歩10分圏内(800m以内)にドトールまたはタリーズまたはコメダが3店舗以上ある組み合わせをすべて列挙せよ。
この問題が「LLMにとって極めて困難」な理由
この問題は、以下の6つの段階的な関係性トレースと地理空間計算を要求します:
① ビルAの特定(2段階フィルタリング)
- 2025年竣工 × 東京23区 × 延床面積≥3万㎡ → オフィスビル候補を抽出
- 徒歩1分以内(半径80m以内)にスターバックス → 該当ビルに絞り込み
② 駅Xの特定(地理空間探索)
- ビルAから徒歩5分圏内(400m) の最寄り駅を特定
- 複数候補がある場合は距離計算で最近傍を選択
③ ドミナント戦略の検証(定量条件A)
- 駅Xから半径1km圏内のスターバックス店舗を列挙
- 店舗数が5店舗以上であることを確認
④ ビルBの特定(3段階フィルタリング)
- 駅Xから徒歩10分圏内(800m) → 範囲内のビルを抽出
- 2025年竣工 × 延床面積≥1万㎡ → オフィスビル候補を絞り込み
- 徒歩1分以内(半径80m以内)にカフェ(スタバ/ドトール/タリーズ/コメダ)出店 → 該当ビルに絞り込み
⑤ 駅Yの特定(幾何学計算+制約条件)
- ビルAとビルBの中間地点の座標を計算(緯度経度の平均)
- 中間地点から800m以内の駅を探索
- 駅X≠駅Yの制約条件を満たす駅を選択
⑥ 競合カフェ密度の検証(定量条件B)
- 駅Yから半径800m圏内のドトール/タリーズ/コメダ店舗を列挙
- 合計店舗数が3店舗以上であることを確認
なぜSQLでは困難か?
この問題をSQLで解こうとすると、以下の課題に直面します:
| 課題 | SQL実装の困難性 |
|---|---|
| 地理空間計算の反復 | Haversine計算式を複数回呼び出す必要があり、クエリが複雑化 |
| 多段階JOIN | ビル→駅→店舗→カフェ→中間地点→別の駅→別の店舗 = 10+ JOIN |
| SELF JOIN | 同一テーブル(店舗、駅)を複数回参照する必要がある |
| カーディナリティ爆発 | 中間結果が数万~数十万行に膨れ上がり、パフォーマンスが悪化 |
| 空間インデックスの限界 | PostGISを使っても、複数段階の空間探索は最適化が困難 |
| クエリの可読性 | 数百行のSQLコードになり、保守性が著しく低下 |
そこでナレッジグラフですよ!
こうした複雑な条件判定や論理的推論が絡む問いに立ち向かう――「そこでナレッジグラフですよ!」。
言語モデル単体では悩ましい「知識×空間×論理」の難問を、ナレッジグラフを使ってどう解くか、その実践的方法を解説します。

Neo4jに構築されたナレッジグラフの全体構造。灰色のノードがビル、緑色のノードが駅、茶色のノードがカフェを表しています。各ノード間の関係性(エッジ)により、ビルと駅、ビルとカフェ、駅とカフェの地理的関係性がグラフ構造として表現されています。複数のクラスタが形成されており、それぞれが特定のエリア(京橋、虎ノ門、新宿など)のビル・駅・カフェの関係性を示しています。
グラフデータベースで難問に挑む(Neo4j編)
グラフデータベース(Neo4j)とCypherクエリなら、こんなに直感的でスッキリ。冗長なSQLの狂宴とは一線を画します。
// ① ビルAの特定
MATCH (buildingA:Building)
WHERE buildingA.completion_year = 2025
AND buildingA.ward IN ['千代田区', '中央区', '港区', '新宿区', '渋谷区', ...]
AND buildingA.floor_area >= 30000
MATCH (buildingA)<-[:NEAR_BUILDING {distance_m: ..80}]-(starbucks:Cafe {brand: 'スターバックス'})
// ② 駅Xの特定
MATCH (buildingA)-[:NEAREST_STATION]->(stationX:Station)
WHERE distance(buildingA.location, stationX.location) <= 400
// ③ ドミナント戦略の検証
MATCH (stationX)<-[:NEAR_STATION {distance_m: ..1000}]-(starbucks_near:Cafe {brand: 'スターバックス'})
WITH buildingA, stationX, count(starbucks_near) AS starbucks_count
WHERE starbucks_count >= 5
// ④ ビルBの特定
MATCH (stationX)<-[:NEAR_STATION {distance_m: ..800}]-(buildingB:Building)
WHERE buildingB.completion_year = 2025
AND buildingB.floor_area >= 10000
AND buildingB <> buildingA
MATCH (buildingB)<-[:NEAR_BUILDING {distance_m: ..80}]-(cafe:Cafe)
WHERE cafe.brand IN ['スターバックス', 'ドトール', 'タリーズ', 'コメダ']
// ⑤ 駅Yの特定(中間地点計算)
WITH buildingA, buildingB, stationX,
point({
latitude: (buildingA.location.latitude + buildingB.location.latitude) / 2,
longitude: (buildingA.location.longitude + buildingB.location.longitude) / 2
}) AS midpoint
MATCH (stationY:Station)
WHERE distance(midpoint, stationY.location) <= 800
AND stationY <> stationX
// ⑥ 競合カフェ密度の検証
MATCH (stationY)<-[:NEAR_STATION {distance_m: ..800}]-(rival_cafe:Cafe)
WHERE rival_cafe.brand IN ['ドトール', 'タリーズ', 'コメダ']
WITH buildingA, buildingB, stationX, stationY, count(rival_cafe) AS rival_count
WHERE rival_count >= 3
RETURN buildingA.name, buildingB.name, stationX.name, stationY.name
実際の実験結果(2025年11月27日実行)
この問題をナレッジグラフRAGシステムで実際に解いた結果、以下の組み合わせが発見されました(2025年11月時点の実データに基づく):
問題の条件を満たす組み合わせ:京橋エリア🏙️
-
ビルA:八重洲ダイビル(中央区京橋、延床面積45,000㎡、2025年竣工)
- スターバックス出店:Starbucks Coffee - Yaechika(徒歩1分以内・半径80m以内、距離62m)
-
駅X: Tōri-Sanchōme (Tōri 3) (東京メトロ銀座線)
- ビルAからの距離:29m(徒歩5分=400m以内 ✓)
- ドミナント戦略:駅X半径1km圏内にスターバックス7店舗(条件: 5店以上 ✓)
-
ビルB:第一生命京橋キノテラス(中央区京橋、延床面積16,140㎡、2025年竣工)
- 駅Xからの距離:駅Xから徒歩10分圏内(800m以内)
- カフェ出店:Doutor Coffee(徒歩1分以内・半径80m以内、距離48m)
-
駅Y:Kyobashi Sta.(東京メトロ銀座線)
- ビルA・B中点からの距離:147m(徒歩10分=800m以内 ✓)
- 駅Xとの関係:駅Xとは異なる駅(条件 ✓)
- 競合カフェ密度:駅Y半径800m圏内にドトール/タリーズ/コメダ31店舗(条件: 3店以上 ✓)

京橋エリア周辺の拡大マップ。八重洲ダイビル(ビルA、青色)と第一生命京橋キノテラス(ビルB、オレンジ色)の位置関係、および周辺のカフェ店舗(スターバックス、ドトール、タリーズ、コメダ)の分布を示しています。Tōri-Sanchōme駅(駅X)とKyobashi Sta.(駅Y)の位置も確認できます。

京橋エリア周辺のナレッジグラフ拡大図。八重洲ダイビル(ビルA)、第一生命京橋キノテラス(ビルB)、Tōri-Sanchōme駅(駅X)、Kyobashi Sta.(駅Y)を中心とした関係性が詳細に可視化されています。各エッジには距離(29m、48m、147mなど)がラベル付けされており、問題文の条件(半径80m以内、400m以内、800m以内など)を満たす関係性が一目で確認できます。周辺のカフェノード(スターバックス、ドトール、タリーズなど)との接続も表示されており、ドミナント戦略や競合カフェ密度の条件を視覚的に理解できます。
ナレッジグラフRAGシステムの推論プロセス
本システムは、LangGraphを使用した7ステップの推論チェーンを実装しています。各ステップでLLMがどのように思考し、どのようなクエリを実行したかを解説します。
ステップ1: ビルAの特定
LLMの思考:
「まず、2025年竣工で延床面積3万㎡以上のオフィスビルを検索します。次に、各ビルについて徒歩1分以内(半径80m以内)にスターバックスが出店しているかを確認する必要があります。」
実行されたクエリ:
- 延床面積3万㎡以上、2025年竣工のビルをNeo4jから検索
- 各ビルについて、緯度経度ベースの距離計算で半径80m以内のカフェを検索
- スターバックスが出店しているビルを特定
結果:
条件を満たすビルA候補を5件発見しました(詳細は「実験の詳細」セクション参照)
ステップ2: 駅Xの特定
LLMの思考:
「ビルAの最寄り駅を特定します。Neo4jのHAS_NEAREST_STATION関係性から、400m以内の最寄り駅を取得します。」
実行されたクエリ:
各ビルA候補について、最寄り駅を検索(距離400m以内)
結果:
八重洲ダイビルの最寄り駅としてTōri-Sanchōme (Tōri 3) を特定(距離29m)
ステップ3: ドミナント戦略の確認
LLMの思考:
「駅X周辺1km圏内にスターバックスが5店舗以上あるかを確認します。これはドミナント戦略の実践地域であることを示す指標です。」
実行されたクエリ:
Tōri-Sanchōme駅を中心とした半径1km圏内のスターバックス店舗数をカウント
結果:
7店舗を確認(条件: 5店以上 ✓)
- ドミナント戦略の条件を満たしています
ステップ4: ビルBの特定
LLMの思考:
「駅Xから800m以内に、2025年竣工で延床面積1万㎡以上の別のオフィスビルを検索します。さらに、そのビルから徒歩1分以内(半径80m以内)にカフェ(スターバックス、ドトール、タリーズ、コメダ)が出店しているかを確認する必要があります。」
実行されたクエリ:
- 駅X周辺800m以内のビルを検索
- 延床面積1万㎡以上、2025年竣工の条件でフィルタリング
- 各ビルについて半径80m以内のカフェ出店状況を確認(緯度経度ベースの距離計算)
結果:
第一生命京橋キノテラスを発見
- 延床面積16,140㎡、2025年竣工
- Doutor Coffeeが48mの距離で出店(条件: 80m以内 ✓)
ステップ5: 駅Yの特定
LLMの思考:
「ビルAとビルBの中間地点を計算し、その地点から800m以内で最も近い駅を特定します。ただし、駅Xとは異なる駅でなければなりません。」
実行されたクエリ:
- ビルA(八重洲ダイビル)とビルB(第一生命京橋キノテラス)の緯度経度から中点を計算
- 中点から800m以内の駅を検索
- 駅X(Tōri-Sanchōme)を除外して最も近い駅を選択
結果:
Kyobashi Sta. を特定(中点からの距離147m、駅Xとは異なる ✓)
ステップ6: カフェ店舗数の確認
LLMの思考:
「駅Y周辺800m圏内にドトール、タリーズ、コメダが3店舗以上あるかを確認します。」
実行されたクエリ:
Kyobashi Sta.を中心とした半径800m圏内のドトール/タリーズ/コメダ店舗数をカウント
結果:
31店舗を確認(条件: 3店以上 ✓)
- 競合カフェ密度の条件を満たしています
実験の詳細
検索結果:
- ビルA候補: 5件発見
- BLUE FRONT SHIBAURA (S棟) - 港区芝浦、延床面積550,000㎡
- 虎ノ門アルセアタワー - 港区虎ノ門、延床面積180,600㎡
- ミタマチテラス - 港区芝、延床面積50,000㎡
- 八重洲ダイビル - 中央区京橋、延床面積45,000㎡ ✓
- IT TOWER TOKYO - 豊島区西池袋、延床面積41,639㎡
- 条件を満たす組み合わせ: 1件

東京23区内のオフィスビルとカフェチェーンの分布を示す広域マップ。青色のマーカーはビルA候補、オレンジ色のマーカーはビルB候補を示しています。カフェチェーンは色分けされており、緑色がスターバックス、オレンジ色がドトール、茶色がタリーズ、赤色がコメダです。京橋エリア(中央部)に八重洲ダイビル(ビルA)と第一生命京橋キノテラス(ビルB)が集中していることが確認できます。
LangGraph × Neo4j統合:エージェントフレームワークとグラフDBの融合
エージェントフレームワーク「LangGraph」とグラフデータベース「Neo4j」の統合が実用化され、複雑な推論タスクをエージェントが自律的に実行できるようになりました。本記事で紹介したRAGシステムも、このLangGraphとNeo4jの統合を活用しています。
特徴:
- 状態管理と推論チェーン:LangGraphの状態管理機能により、複数ステップの推論プロセスを自然に表現
- Cypherクエリの自動生成:LLMが自然言語の質問をCypherクエリに変換し、Neo4jで実行
- エージェントの自律実行:各ステップで条件を満たすまで自動的に探索を続ける
実装例(Python):
from langchain_neo4j import Neo4jGraph
from langchain_openai import ChatOpenAI
from langgraph.graph import StateGraph
from typing import TypedDict
# Neo4jに接続
graph = Neo4jGraph(
url="bolt://localhost:7687",
username="neo4j",
password="password"
)
# LLMを初期化
llm = ChatOpenAI(model="gpt-4", temperature=0)
# 状態定義
class ReasoningState(TypedDict):
building_a: dict
station_x: dict
starbucks_count: int
building_b: dict
station_y: dict
rival_cafe_count: int
results: list
# LangGraphで推論チェーンを構築
workflow = StateGraph(ReasoningState)
# 各ステップを定義
workflow.add_node("find_building_a", find_building_a_node)
workflow.add_node("find_station_x", find_station_x_node)
workflow.add_node("check_dominant", check_dominant_node)
workflow.add_node("find_building_b", find_building_b_node)
workflow.add_node("find_station_y", find_station_y_node)
workflow.add_node("check_rival_cafes", check_rival_cafes_node)
# エッジを定義
workflow.set_entry_point("find_building_a")
workflow.add_edge("find_building_a", "find_station_x")
workflow.add_edge("find_station_x", "check_dominant")
workflow.add_edge("check_dominant", "find_building_b")
workflow.add_edge("find_building_b", "find_station_y")
workflow.add_edge("find_station_y", "check_rival_cafes")
# アプリを実行
app = workflow.compile()
result = app.invoke({})
2026年の展望:ナレッジグラフとAIエージェントの融合
2026年に向けては、ナレッジグラフの自動構築やリアルタイム化、エージェントによる外部記憶としての活用、さらにはテキストだけでなく画像・動画・音声など複数のデータを統合したマルチモーダル対応が進展すると予想されます。LLMの進化により、企業文書や外部データからエンティティや関係性を自動抽出し、継続的なアップデートも手間なく実現可能となります。加えて、IoTや各種リアルタイムデータと連携した動的な最適化、複数エージェント間での知識共有・更新など、ナレッジグラフがAIシステムの中核インフラとしてその役割を一層強めていくでしょう。
まとめ:LLMとナレッジグラフの未来
2025年は、LLMが飛躍的に進化した年であり、同時にエージェント元年とも呼べる年でした。しかし、LLMだけでは解けない問題も明確になりました。
スターバックスの2000店舗達成とドミナント戦略、2025年竣工オフィスビル、MEO戦略を題材にした本記事の難問は、まさにその典型例です。多段階の関係性トレース、地理空間計算、定量条件の厳密評価が求められるこの問題は、ナレッジグラフとCypherクエリによって初めて実用的に解くことができます。
実際にナレッジグラフRAGシステムでこの問題を解いた結果、 京橋エリア(八重洲ダイビル×第一生命京橋キノテラス) という組み合わせを発見しました。通り三丁目駅(Tōri-Sanchōme)周辺にスターバックス7店舗(ドミナント戦略)、京橋駅(Kyobashi Sta.)周辺に競合カフェ31店舗という実データに基づく分析により、MEO戦略の実践例を定量的に評価できました。
2026年に向けては、ナレッジグラフの自動構築、エージェントとの統合、リアルタイム化、マルチモーダル化といったトレンドが加速するはずです。
LLMとナレッジグラフを組み合わせた、より高度で実用的なAIエージェントシステムが発展していくことを考えるとワクワクがとまりません!
参考リンク
株式会社カンリーは「店舗経営を支える、世界的なインフラを創る」をミッションに、店舗アカウントの一括管理・分析SaaS「カンリー店舗集客」の開発・提供、他複数のサービスを提供しております。 技術系以外のnoteはこちらから note.com/canly



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