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SKD(SRE Knowledge Database)x Notion MCPでADRを実装に直結させた話

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こんにちは、カンリーでSREをしている吉村です。

今回は、「SKD(SRE Knowledge Database)× Notion MCPでADRを実装に直結させた話」をします。
エディタ上でAIが Notion MCP 経由でSKDを読み、組織で合意された方針(ADR/Guide/Tips)をその場の実装判断に差し込む。
いわば「ドキュメントをヒトが読まずとも、AIが読んでくれる」前提の開発体験について書きます。

🧠 SKD(SRE Knowledge Database)とは

社内では以前から SKD(SRE Knowledge Database) を運用しています。
SKDは、信頼性に関するインフラ周りの知識をひとつの場所に集約し、誰もが同じ前提で判断・実装できるようにするためのナレッジ基盤です。

SKDのカテゴリ(役割)

ドキュメントはカテゴリ分けされた上で整備しており、その構成は以下となっています。

  • ADR: 全プロダクトにおける設計方針などの決定事項が書かれています。採用理由や適用範囲・例外、根拠を明確にしています。
  • Guide: 開発者にイネイブリングできうる内容が記載されており、現場が自走しやすいよう、具体的なやり方・設定・チェックポイントをまとめています。
  • Tips: プロダクト運用上、役立つ知識を記載しており、何らかの技術の活用のコツや学びを記載しています。

この“カテゴリ分け”があるからこそ、AIが Notion MCP 経由で要点・適用範囲を返しやすくなっています。

🖼️ 背景:なぜ SKD を作成したか

開発のスピードと品質を同時に高めるには、組織で合意された方針(ADR/Guide) に素早くたどり着けることが重要ですが、日々の運用で次の課題が目立っていました。

  • 情報の散在と探索コスト:決定事項・運用の知見がSlackのスレッドやGoogleドキュメント、Notionなどあちこちにあり、必要な根拠にたどり着くまで時間がかかっていました。

  • 属人化と口伝の限界:人に依存した共有では、抜け漏れや解釈のズレが起きやすく、再現性が下がっていました。

  • 横展開の遅れ:同じ課題でもプロダクトごとに対応が分かれ、共通ルールが広まりにくい状態でした。

これらの課題解決のため、信頼性に関するインフラ周りの知識の置き場所として SKD を整えています。

🤖 「ヒトが読む前提」から「AIが読んでくれる前提」へ

従来は、ヒトがSKDで検索してADR/Guideを読み込み、必要に応じてEnablingミーティングで展開する流れが中心でした。これは有効な一方で、ドキュメント読み込みの負荷と共有までのタイムラグが発生しやすい側面があります。

現在は Notion MCP により、エディタから MCP 経由で SKD(ADR/Guide/Tips)を参照できる状態になっているので、上記の問題はほぼ解消されています。

🌀 ワークフローの変化(Before → After)

Before

実装内容の**前提条件(設計方針)**を確かめるたびに Notion を横断検索して読み込み、実装の着手までに時間を要していました。レビューは「前提条件(設計方針)のドキュメントどこだっけ?」という確認から始まり、周知も主に Enabling MTGで順番に回す形だったので、横展開までワンテンポ遅れがちでした。

After

エディタ上で要点・ドキュメント・適用範囲が即時に分かるため、その場で判断して実装へ進めます。レビューはADR/Guideという根拠を起点に始まり、Enablingは“読み上げ”ではなく適用範囲や例外のすり合わせに集中できます。また、SKDの更新をしたら即時反映されるため、横展開のスピードも早くなっています。

エディタからSKDを参照するプロンプト実例

  1. 質問内容

すでにNotionMCPとの接続設定は済ませているので、ざっくりとした質問でも参照してくれます。

  1. Notion MCPを通じ、ADR/Guide/Tipsの参照中

  2. 準拠状況(結論 ※省略)とともに、変更するべき箇所や参照すべきTipsとともに参照結果を共有してくれます。

なお、Notionとの接続は読み取り中心・最小権限で運用しています。参照結果には出典(ADR/Guideの識別子や版)を必ず含め、誰が見ても判断の根拠をたどれるようにしています。

❓どの場面でSKDを参照しているか

参照するタイミングは大きく3つです。
まず実装に入る前
「今回の変更、前提になるADR/Guideってある?」とAIに聞いて、押さえるべきドキュメントを最初にそろえます。

次に実装の途中で迷った瞬間。ログ保持やレジストリ、命名など具体的な疑問が出たら、その場で参照して要点と参照元を確認します。

最後にPRを出す前。SKDの方針に沿っているか軽くセルフチェックし、必要ならPR説明に参照元(ADR/Guideのページ)を添えます。レビューは最初から根拠ベースで始まります。

📖 まとめ

今回の一番の変化は、ヒトによる「この実装に関する ADR / Guide はあるのか?」の確認作業がほぼ消えたことです。Notion MCP 経由で AI が SKD を参照しに行き、該当しそうな組織で合意された方針(ADR/Guide) の要点と適用範囲を添えて提案まで返してくれるので、着手前の「当たりをつける/存在を確かめる」手続きがごっそり減り、最初の一歩から標準準拠の実装に入れるようになりました。

さらに、SKD の更新が参照結果へすぐ反映されるため、横展開やオンボーディングもスムーズです。新しく参加したメンバーでも、AI経由で“いまの方針(ADR/Guide)”に最短で到達できます。

もちろん、AI に参照させる バージョン管理や、ドキュメントの粒度・鮮度の磨き込みなど、課題はまだあります。それでも、確認に費やしていた時間を判断と実装に振り向けられるようになったインパクトは大きいと考えています。

と、まだまだ改善の余地がありますが、スピードと品質の両立を当たり前にしつつ、今後も「人間とAIの協働」を通して会社も個人も成長できるようにいろいろなことに挑戦していきたいと思います。

ご精読いただきありがとうございました。次の記事でまたお会いしましょう。

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