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テンプレに頼らず、対話でつくる「ふりかえりの場」——AIと回すスプリント

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はじめに

こんにちは!

カンリー店舗集客チームのエンジニア、藤川(@h_fujikawa_eng)です!
今回のテーマは打って変わってスクラム支援(特にふりかえり)とAIという視点で書いてみようかと思います。

スクラム実践者やスクラムマスターはもちろんですが、プロジェクトの終わりにふりかえりやKPTをやったことがある方、チームで協力して成果を最大化しようとしているすべての方に読んでいただける記事にしたいと思います。
ぜひ最後までご覧ください!

背景と課題

スクラム実践において、「ふりかえり」はチームの学習と改善を支える重要なイベントです。

そのふりかえりに対してこんな声を聞いたことはないでしょうか?

「KPTで振り返ると暗い空気になったり会話が弾まなかったりする」
「慣れてきたけど、いつも同じ方法だから惰性でやってる感じがする」
「本当に課題になっていることに踏み込めているのか疑問」

自分が経験したものも含め「あるある」と言ってくれると嬉しいですが、
ふりかえりは理解しやすいイベントであるのと同時にうまくやるのが難しいイベントでもあります。
当然特定のふりかえりフレームワークが悪いという話ではなく、”自分たちに一番必要な改善”に取り組んでいかなければいけないからです。

スクラムチームは、⾃分たちの効果を改善するために最も役⽴つ変更を特定する。最も影響の
⼤きな改善は、できるだけ早く対処する。
スクラムガイドより

最も、とはいえ毎スプリント異なる状況の中で「どんなふりかえりが最適か?」を考えるのは、想像以上に難易度が高いです。またそれに向けた資料作りなども考えるとなかなか手が回っていない方もいるのではないでしょうか?
例えば、スクラムマスターやアジャイルコーチなどロールが明確な環境もあれば、スクラムチームとして開発している皆さんのなかにも、スクラムマスターは不在で、リーダーや有志の方が開発もしながらイベントのファシリテーションや準備をしているチームもあるでしょう。

今回は上記のような状態からスタートした新米リーダーの自分が、チームにフィットするふりかえりをAIと壁打ちして作ってみてそこから得られた学びについて共有します。

🎯本記事での提案内容

ChatGPT を活用してふりかえり

  • スプリントの情報収集
  • 問いと何を振り返るべきかの設計
  • Notionテンプレートの準備

を一緒に作っていきます。

まずは事前準備から。

アジャイルコーチに任命

まずはChatGPTくんにコーチになりきってもらいましょう。
カスタマイズで自分専属のアジャイルコーチとして壁打ちしてほしいと依頼します。


かなりシンプルなカスタマイズ


素晴らしい意気込み

スプリント報告テンプレートを作成

ふりかえりの設計をするために、そのスプリントで何があったかを一緒に整理していきます。この時報告用のテンプレートを作っておくと楽です。テンプレートも最初はChatGPTコーチに丸ごと出してもらって埋めていくといいでしょう。自分はだんだん簡略化して今はこんな感じで送ってます。

次のふりかえりを設計したいです。以下の情報をまとめました:

- スプリントゴールと達成度は:
- 印象に残った出来事(成功・混乱など)は:
- チームの空気感は:
- 話したい or 違和感を感じたテーマは:
- 試したこと・変えたことは:
- 注目したい主軸は:

これらをもとに、レトロスペクティブの構成(問い・流れ・アイスブレイクなど)を提案してください。

壁打ちタイム

最初にChatGPTコーチが出してくれた案のなかで、やりにくそうだな?と思う部分をブラッシュアップしていきましょう。
例として、今回のスプリントは多くの課題が見つかったスプリントだったので、課題について話す場としたかったのでアイスブレイクを追加してもらいました。


結構ざっくり投げても回答が期待通り。これはいけそう!?

結果できたテンプレート

以下のようなテンプレートを作ってもらえました!
表現の校正やNotionでやる場合データベースビューなどは別途設定する必要がありますが、こんなことしたいな、をサッと形にする力は流石AI👍 ChatGPTコーチすごい!

# 💬 感情を出すふりかえりセクション(アイスブレイク付き)

## 🎯 目的
- スプリントを通して感じたことを率直に出せる場をつくる  
- チーム内の感情の流れを可視化することで、共感と改善の出発点を持つ  
- 課題を「構造」として扱う土台を作る  

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## 🌤 アイスブレイク(3〜5分)

### 🧠 「このスプリントを〇〇に例えると?」ワーク

> 💬 「今スプリントを◯◯でたとえると何だった?」(例:天気・乗り物・食べ物・映画タイトルなど)

例:
- 天気:嵐のち晴れ  
- 乗り物:ノンストップ急行  
- 食べ物:カレー3日目(こなれてたけどちょっと飽きた)  
- 映画:『ミッション・インポッシブル』だったな…  

🌱 ポイント:
- あくまで **「たとえ」で遊ぶ** ことで感情を出しやすくする
- お互いの主観を尊重する場づくりに繋がる
- 笑いや軽さが生まれればベスト!

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## 😐 感情のふりかえり(10〜15分)

### ✍️ Glad / Sad / Frustrated を出す

> このスプリントを通して、以下の感情に当てはまる場面・出来事・印象を書き出してください。

- 🙂 **Glad(よかったこと・嬉しかったこと)**
- 😐 **Sad(残念だったこと・期待外れだったこと)**
- 😤 **Frustrated(イライラ・モヤモヤ・違和感があったこと)**

👥 やり方:
- 各自ふせん or コメント欄に記入(5分)  
- 全員で共有&深掘り(10分)  
  → ファシリが「これは他にも共感した人いますか?」など問いかけていく

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## 💡 ファシリテーションのポイント

- **感情の正しさを議論しない**:その人にとってそうだったことを大切に
- 言いづらい感情ほど「出せたこと」をチームで歓迎する
- 責任追及に寄らず、「なぜそう感じたかの背景」に注目していく

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## 🔄 このあとの流れにどうつなげる?

- 感情の共有から出たモヤモヤ → 構造的な課題として扱う  
- Glad は「チームの価値・強み」として見出していく  
- Frustrated や Sad から「次スプリントで変えたいこと」に移行しやすくなる

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## 🙌 補足Tips(貼っておくと便利)

> 😐「ネガティブな感情も、ここで出すことで“チームの改善”につながります」  
> 💬「すぐ解決できないことも、まずは“見える化”するだけで意味があります」  
> 👣「今すぐ全部変えられなくても、**一歩踏み出すことが大事**です」

不要なポイント部分などは削ってOK

そしてジャーニーへ

これで一番解決したい課題について集中できる!---と思いきやなかなかそうはいきませんでした。
実際に今回のテンプレートを使ってふりかえってみると思ったよりも反応が薄かったり手応えがなかったり。なんとなく形だけ豪華になって核心を捉えていない感覚がありました。

そこでなぜか?と考えるうちにいくつかの課題を発見しChatGPTとの対話を変えてみました。
重要なのは、どれだけチームで発生している情報を拾っていけるのか、また、それをテンプレートに混ぜ込めるかが重要だとわかりました。

実際に直面した課題たちと変わったこと

問題 原因の仮説 対策
① テンプレの意図が伝わらず、参加者がノり切れていない。 ・どんなふりかえりをしたいかチームと Sync できていなかった デイリーで
「どんなレビューになりそうか」「何を振り返りたいか」
を会話し、その結果を ChatGPT コーチに適宜共有
② 今回のふりかえりは良かったのか悪かったのか不安になる。 ・すぐ次のイベントが始まり、ふりかえり自体の良し悪しを話せていない 「ふりかえりのふりかえり」を設置しフィードバックを収集
手応えが薄かった回でも高評価があることを確認し、すぐ共有
③ ふりかえる対象がバラバラで議論が発散。 ・スプリントで “何を為すか” の合意形成が不十分 スプリントゴールでアウトカムを明示
レトロではそのアウトカムに言及するスタイルを試行
アウトカム欄を ChatGPT 報告テンプレートに追記

上記は一部ですが、このようにチームとの対話をしながら生の意見を収集し、ChatGPT とも対話しながら提案サイクルを回すことで、形だけでなく課題を深掘りできるふりかえりへと少しずつ変容してきました。

まとめ

今回はスクラムとAIによる支援についての記事でした。
一番重要な課題に注目するためにふりかえりの設計からAI支援に手伝ってもらい、ふりかえり方式をオーダーメイドできましたが
それだけでは形は整っても本来のやりたい議論に辿り着けませんでした。

重要なのは、
日々チームと対話し、一緒に仕事をする中で見つけた共通認識や違和感を持ち寄り、
何をふりかえるべきかをスプリントでしっかり収集することだと学びました。

今後もそれらに向き合い、意味のあるふりかえりの場を追求していきたいと思います!
拙い文章で恐縮ですが今回はここまでです。
ご精読ありがとうございました!

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