Cursorで始める外部API連携:仕様理解から実装補助までAIの使いどころを探る
はじめに
はじめまして、カンリーエンジニア部の三上です。
カンリーのメインプロダクトであるカンリー店舗集客の開発に携わってから早いもので3年目を迎えました。
カンリー店舗集客はGoogle Business Profileを主軸に様々な媒体の店舗情報を一元管理するシステムとして作られました。FacebookやInstagramの他にApple Business Connect、Yahoo!プレイスと、連携できる媒体がどんどん拡大してきています。
私自身Apple Business ConnectとYahoo!プレイスの連携機能の導入に携わり、リニューアルプロジェクトや運用を通してその他の媒体も一通り触ってきました。
媒体連携を実装するにあたって外部媒体のAPI仕様を把握することが不可欠です。当時はすべて自力でドキュメントを読み漁り、パラメーターを変えてAPIを叩きまくるという泥臭い手順で仕様理解を深めていました。
しかし昨今のAIの進化は凄まじく、社内でも気軽にAI開発支援ツールを利用できる環境になりました。
今ならもっと楽に色々なことができるのでは...?
そこで今回は、外部連携機能の開発においてAI開発支援ツールを活用することでどれだけ調査や開発が効率化出来るか検証してみたいと思います。
前提
対象媒体 | Google Business Profile |
AIツール | Cursor バージョン: 1.2.4 |
CursorはVSCodeベースのエディタで、AIコーディングアシスタント機能が搭載されています。自然言語の指示からコード補完、ドキュメント理解の支援などが可能です。普段の開発で使っているため、今回はこのツールのAgentモードを利用します。
余計なコンテキストを読み込まないように、ワークスペースは空の状態にしておきます。
Cursorで全体像を把握してみる
概要を調べる
いきなり詳細から入るのは辛いので、まずは公式ドキュメントからガイドページを渡してCursorに概要をまとめてもらいました。
@https://developers.google.com/my-business/content/overview?hl=ja
Google Business Profile APIについて知りたいです。公式ドキュメントの概要ページから主なエンドポイントと利用手順をまとめてください。
出力内容全文はこちら
Google Business Profile APIsについて、公式ドキュメントの概要ページから主な情報をまとめさせていただきます。
Google Business Profile APIs の概要
Google Business Profile APIsは、ビジネスプロフィールアカウントとビジネスデータを管理するためのプログラミングインターフェースです。販売者や販売担当者が、Googleでのビジネスデータの表示方法や共同管理権限をプログラム的に管理できます。
主な機能
- ビジネス情報の管理: 写真、営業時間、ウェブサイトリンクなどの基本情報
- 投稿の作成: ビジネスに関する投稿の作成と管理
- クチコミの管理: ユーザーレビューのデータ管理
- メディアのアップロード: 写真や動画のアップロード
- 分析情報の取得: ビジネスのパフォーマンスデータ
- 管理者の管理: 共同管理者の権限管理
- リアルタイム通知: 変更通知の管理
利用条件
APIにアクセスするには以下の条件を満たす必要があります:
- 有効なGoogleアカウント
- ビジネス上の正当な理由
- 有効なGoogle Cloudプロジェクト
- ビジネスのウェブサイトの有効なURL
主なエンドポイント(推測される主要なAPI)
公式ドキュメントから推測される主要なエンドポイント:
アカウント管理
- アカウントの取得・作成
- アカウントの更新・削除
ビジネス情報管理
- ビジネス情報の取得・更新
- 場所情報の管理
- 営業時間の設定
コンテンツ管理
- 投稿の作成・更新・削除
- メディアのアップロード
- クチコミの取得・管理
分析・レポート
- パフォーマンスデータの取得
- 分析情報の取得
利用手順
-
基本セットアップ
- Google Cloudプロジェクトの作成
- APIの有効化
-
OAuth認証のセットアップ
- OAuth 2.0認証の実装
- アクセストークンの取得
-
ビジネス情報のセットアップ
- ビジネスアカウントの作成
- 場所情報の設定
-
APIの実装
- クライアントライブラリの使用
- APIエンドポイントの呼び出し
制限事項
- APIにはレート制限が適用されます
- 利用には審査が必要です
- ビジネス目的での使用が必須です
関連するAPI
- Google Maps Platform: ローカルビジネス情報の取得
- AdWords API: 手動住所表示オプションの管理
このAPIは、ビジネスのオンラインプレゼンスを効率的に管理し、Google検索やGoogleマップでの可視性を向上させるために使用されます。
操作できるコンテンツがなんとなくわかりました。
次にAPIリファレンスページを渡すとさらに詳細な情報を教えてくれました。
@https://developers.google.com/my-business/ref_overview?hl=ja
公式ドキュメントのAPIリファレンスからAPIを利用してできることとできないことをまとめてください。
出力内容全文はこちら
Google Business Profile APIsについて、公式ドキュメントのAPIリファレンスを基に、できることとできないことをまとめます。
Google Business Profile APIsでできること
1. Account Management API
- Googleでのビジネスアカウントの管理
- ビジネスアカウントとビジネス情報にアクセスできるユーザーの管理
- アカウントの作成、取得、一覧表示、更新
- 管理者の作成、削除、一覧表示、更新
- 招待の管理(承諾、拒否、一覧表示)
2. Business Calls API
- 自社への電話問い合わせの管理
- 各種インサイトの収集(店舗への不在着信件数など)
- 通話履歴の管理
- Google広告アカウントとの連携による「広告経由の通話数」コンバージョンの確認
3. Lodging API
- 宿泊関連データの管理(施設の設備やポリシーなど)
- ホテルなどの宿泊サービス提供ビジネス向け
- 宿泊施設情報の取得・更新
4. Place Actions API
- ビジネスの位置情報アクションリンクの管理
- 予約、席の予約、料理のデリバリー注文などの操作へのリダイレクト機能
5. Notifications API
- 指定したアカウントの通知設定の管理
6. Verifications API
- ビジネスのオーナー確認
- 販売者の声の有無の確認
- 検証オプションの取得
- 検証の完了
7. Business Information API
- ビジネス情報の管理
- ロケーション情報の作成、削除、取得、更新
- 属性の管理
- カテゴリの管理
- チェーンの検索・取得
8. Q&A API
- ビジネスに関する質問と回答の管理
- 質問の作成、削除、一覧表示、更新
- 回答の削除、一覧表示、更新
9. Business Profile Performance API
- ビジネスリスティングのパフォーマンス分析情報の取得
- 日次メトリクスの時系列データの取得
- 複数のDailyMetricsを1つのAPIリクエストでフェッチ
10. Google My Business v4.9 API
- ビジネスプロフィールに関連するその他の機能
- 投稿、レビュー、メディアなどの管理
Google Business Profile APIsでできないこと
1. 直接的なSEO操作
- Google検索結果での順位を直接操作することはできません
- 検索アルゴリズムへの直接的な影響は制限されています
2. 競合他社の情報取得
- 他のビジネスの詳細情報を取得することはできません
- 競合分析のための他社データへのアクセスは制限されています
3. リアルタイムの顧客データ
- 個別の顧客の詳細情報や行動データへのアクセスは制限されています
- プライバシー保護のため、個人情報の取得は制限されています
4. 自動化された投稿
- 完全に自動化された投稿の作成は制限される場合があります
- スパム防止のため、投稿の頻度や内容に制限があります
5. 直接的な売上データ
- 実際の売上金額や取引データへのアクセスは提供されていません
- パフォーマンス指標は提供されますが、具体的な売上データは含まれません
6. 地理的制限の回避
- 特定の地域でのみ利用可能な機能を他の地域で使用することはできません
- APIの利用可能地域は制限されています
7. 無制限のAPI呼び出し
- APIの使用には制限(クォータ)があります
- 過度なAPI呼び出しは制限される場合があります
これらのAPIは、ビジネス情報の管理とパフォーマンス分析に特化しており、Googleのポリシーとプライバシー保護の範囲内で利用することができます。
機能別に情報をまとめてくれているので全体を俯瞰して把握することができました。
特定のリソースに絞ってまとめる
さらに開発で利用しそうなAPIを絞り込めるようにしてみましょう。今回は例として、カンリー店舗集客で一番よく使うであろうv1.locationsリソースについて調べてみることにします。
@https://developers.google.com/my-business/reference/businessinformation/rest/v1/locations?hl=ja
v1.locationsリソースに関わるエンドポイントを一覧にしてください。
出力内容全文はこちら
Google Business Profile APIのv1.locationsリソースに関わるエンドポイントを一覧にいたします。
v1.locationsリソースのエンドポイント一覧
メインのlocationsエンドポイント
メソッド | エンドポイント | 説明 |
---|---|---|
delete | DELETE /v1/locations/{name} |
ビジネスを削除します |
get | GET /v1/locations/{name} |
指定したビジネスを返します |
getAttributes | GET /v1/locations/{name}/attributes |
指定したビジネスに設定されているすべての属性を検索します |
getGoogleUpdated | GET /v1/locations/{name}/googleUpdated |
指定したビジネスのGoogleによって変更されたバージョンを取得します |
patch | PATCH /v1/locations/{name} |
指定したビジネスを更新します |
updateAttributes | PATCH /v1/locations/{name}/attributes |
指定したビジネスの属性を更新します |
関連するサブリソースエンドポイント
accounts.locations
メソッド | エンドポイント | 説明 |
---|---|---|
create | POST /v1/accounts/{parent}/locations |
新しいビジネスを作成します |
list | GET /v1/accounts/{parent}/locations |
アカウント内のビジネス一覧を取得します |
locations.attributes
メソッド | エンドポイント | 説明 |
---|---|---|
getGoogleUpdated | GET /v1/locations/{name}/attributes/googleUpdated |
Googleによって更新された属性を取得します |
その他の関連エンドポイント
検索・カテゴリ関連
- categories.list - 利用可能なビジネスカテゴリを取得
- attributes.list - 利用可能な属性を取得
- chains.search - チェーンビジネスを検索
- googleLocations.search - Googleの場所データを検索
認証・検証関連
- locations.fetchVerificationOptions - 認証オプションを取得
- locations.getVoiceOfMerchantState - 認証状態を取得
- locations.verify - ビジネスを認証
- locations.verifications.complete - 認証プロセスを完了
- locations.verifications.list - 認証履歴を取得
これらのエンドポイントを使用することで、Google Business Profileのビジネス情報を包括的に管理できます。
一通り関連するAPIが網羅されていることが確認できました。
特に新しい媒体連携機能を導入する際は、ここまでに調べた情報をあらかじめチーム内で共有しておくと機能設計に役立ちそうです。
ただし、出力された情報の確認はきちんとやっておきましょう。上記のCursorの回答で一部のAPIの情報が欠けていたり、エンドポイントの表記が誤っている箇所がありました。完璧に網羅されているわけではないため、自身でドキュメントを読む際の足がかりとして活用するのが良さそうです。
API実行に使えるPostman Collectionを生成する
下調べが済んだところで、次は実際にAPIを動かしてみましょう。
普段の開発・運用の中でもAPIを直接実行したい場面があります。そんな時に備えてPostmanのCollectionを用意します。開発で利用している認証情報をそのまま使って実行できるようにお願いしてみました。
@https://developers.google.com/my-business/reference/businessinformation/rest/v1/locations?hl=ja
Google Business Profile APIsのリファレンスページを添付しました。このページの「メソッド」に記載されているエンドポイントをPostmanで実行できるようにしておきたいです。Collectionインポートできる形式でJSONファイルを作成してください。
APIアクセストークンの取得はRefresh Tokenを利用する形にしてください。
OAuth 2.0認証に必要なCredencialsは取得済みです。
いくつか改善点があり3往復くらいして出来上がったファイルがこちら。
READMEの手順に沿ってセッティングし、弊社のGBPの情報を取得してみましょう。
うまく疎通できました🎉
各APIの実行前にアクセストークンを自動的に取得して、すぐに目的のAPIを手元で試せるようになっています。Postmanさえインストールしていれば特別な環境を用意せずともAPIを実行出来るので、オンボーディングにも役立ちそうです。
Cursorに制約を踏まえて型定義をさせる
最後に、設計・実装フェーズでの活用を試してみます。
GoogleではBusiness Profile APIsを含むAPIクライアントライブラリが提供されていますが、実際の開発要件に照らすと、ライブラリが用意しているデータ型では少し心許ないケースもあります。
例えば、店舗情報を扱ううえで厄介なのが住所です。
日本国内の店舗のみであればまだ扱いやすいですが、カンリー店舗集客では海外店舗も取り扱っているため、各国ごとに住所形式の違いを考慮する必要があります。
そこで今回は、Cursorに対して「この仕様に沿って、どんなクラス構造が適しているか?」という視点で問いかけてみることにしました。
日本とアメリカの住所に対応できるようにしたいです。
Google Business Profile APIが定義する住所項目は以下のドキュメントに記載されています:
@https://developers.google.com/my-business/reference/businessinformation/rest/v1/accounts.locations?hl=ja#postaladdress
また、住所の形式は以下のガイドラインに準拠する必要があります:
@https://support.google.com/business/answer/6397478?hl=jaこの情報をもとに、Go言語で住所型の構造体(Address)を定義してください。
日本とアメリカそれぞれの住所形式を扱えるようにしてください。
フィールドには適切なデータ型・コメントを付けてください。作成した構造体は address/address.go に保存してください。必要に応じて address ディレクトリをワークスペース直下に作成してください。
コードが出来上がりました!
ドキュメントの構造や仕様を元に、Goの構造体に自然にマッピングしてくれました。
特に「国ごとの必須項目の違い」や「文字列の形式制約」に対して、手動でやると見落としがちな点もカバーされている印象です。
例えばアメリカの住所であれば以下のように 郵便番号が XXXXX
または XXXXX-XXXX
の形式のみを許容します。
// validateUSAddress validates US address format
func (a *Address) validateUSAddress() []ValidationError {
var errors []ValidationError
// Validate postal code format (5 digits or 9 digits: XXXXX or XXXXX-XXXX)
postalCodeRegex := regexp.MustCompile(`^\d{5}(-\d{4})?$`)
if a.PostalCode != "" && !postalCodeRegex.MatchString(a.PostalCode) {
errors = append(errors, ValidationError{
Field: "PostalCode",
Message: "US postal code must be in format XXXXX or XXXXX-XXXX",
})
}
...
}
Google Business Profileに対してAPIリクエストする際は、以下のようにするだけでAPIのフォーマットに変換できます。
// 日本の住所を設定
addr.SetJapaneseAddress(prefecture, city, address, postalCode, building)
apiFormat := addr.ToGoogleBusinessProfile()
もちろん細かい点は調整する必要がありますが、基本的な実装方針としては問題なく利用できそうです。
現在は日本とアメリカに限定してハードコードしてしまっているので、これをベースにファクトリーパターンなどを取り入れることでより拡張性が高く実用的になると感じました。
今回のまとめ
Cursorを使って以下のようなことができることがわかりました。
- ドキュメントを渡すだけでAPIの概要や設計方針を効率的に把握
- Postman Collectionも実行可能な形に落とし込める
- データ構造のクラス設計にも初期足場として十分有用
特に効果があったところ
- API仕様の全体像の把握
- パラメーターやエンドポイントの洗い出し
- 構造体の雛形生成
注意したい点
- 出力結果の精度には限界があるので最終的な確認・精査は不可欠
- 特に「抜け漏れ」「用語の曖昧さ」には要注意
AIツールの使いどころを見極めよう
Cursorはあくまで「優秀な助手」として活用するようにしましょう。
すべてを任せるのではなく、自分の思考を補強するツールとしてうまく活用することで、開発効率も理解の深さも大きく変わると実感しました。
おわりに
まだまだ発展途上の部分もありますが、同じように外部APIの仕様に悩んでいる方にとって、少しでも役立てば嬉しいです!

株式会社カンリーは「店舗経営を支える、世界的なインフラを創る」をミッションに、店舗アカウントの一括管理・分析SaaS「カンリー店舗集客」の開発・提供、他複数のサービスを提供しております。 技術系以外のnoteはこちらから note.com/canly
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