鯖立て後が本番!サーバーモデレーションについて
Misskey アドベントカレンダ―2023 8日目の記事となります。
技術回り(日々のアップデートやセキュリティやクラウドでの運用)の記事は、他の多くの方がアドベントカレンダ―で記事にしているので、本記事では、サーバーを建てた後、主にサーバーモデレーションについてを記事にします。
現在進行形で「かせいすきー」という意☆味☆不☆明なインスタンスを運営しております!
是非、観光や避難先として、あるいは移住者開拓者としての移民は常時受け付けております!
もう地球ダメじゃね!? ささやかなバーチャル火星 かせいすきー
本記事では、かせいすきーでのサーバーモデレーションの考え方を紹介し、他鯖の運営の手助けになればと思います。
Misskey それはインターネット最後の楽園
そもそも、misskeyを知ったのは、2023年4月。
Twitterユーザーに送るMisskeyのススメ~最高に楽しいSNSへようこそ!~ というおかゆりぞっと様の記事を見て、「あ、これぇぇ!求めていたのコレええええ」となって、misskey.ioに登録したのがきっかけです。
元々、SlackやDiscordのように「カスタム絵文字によるリアクションの送信」ができて、なおかつTwitterみたいな公開SNSを作ろうとしていたので、「あ、これえええ!既にある!神!!いやママ!」となって、すぐにしゅいろママファンクラブ会員(自称)になりました。
misskey.ioに登録して、初めてついたリアクションは「レターパックで現金送れ」
いや、最高かよ!!最近のネットスラングはぶっ飛んでんな!おもしれえええ!
三日でミス廃になりました。
自鯖を建ててから公開鯖にするまで。
さて、MisskeyがOSSであるという知識は既にあったので、とりあえず鯖建てだけでもしてみるかと、個人のプライベートな鯖を建てたのが5月8日。7月2日にイーロンマスクがやらかし、大量の難民が misskey.ioに押し寄せサーバーダウンし、「あ、これアカン。プライベート鯖を公開鯖にして、誰でも参加できるようにしよう!」と思い鯖を作り直したのが7月4日。以後、なんか鯖主もびっくりする速度で発展して今に至ります。
※ 余談ですが、かせいすきーと同様に、7月生まれのサーバーはけっこう多くて、鯖缶同期みたいな感じでみんなすごく仲がいいです。
目標は1年間の安定稼働、そして1000ユーザー
せっかく公開鯖として運営しているのですから、やはり安定稼働、そして、せっかくだから色々な人に使ってもらいたい!という理由で、上記二つの目標だけを掲げ、運営していく事になりました。
本記事では、
- どうすれば1年間継続して運営できるか
- 1000ユーザーに使ってもらえるにはどうすればいいか?
という事を目標に、技術面の話は可能な限り抜きにして 技術以外の事を話します。
1年間安定稼働させるために
最も大事なリソースは、鯖缶のモチベーション
サーバーを建てて公開するには、自宅鯖を建てるにせよ、クラウドサービスを契約するにせよ、コンピュータリソースが必須です。多少なり金銭の出費がかさみます。
が、それ以上に何よりも一番大事なリソースは 鯖缶のモチベーション です。サーバーは金で買えても、モチベーションは金で買えません
商業として収益を出そうとチャレンジするサーバー(例えば 9ineverse)もありますが、正直、今のMisskeyはまだまだ商業利用に耐えうるソフトウェアではありません。商業として成立するのであれば、金銭の享受による、いわゆる「外発的動機付け」の力を借りることが出来ますが、そうでないのであれば、全て、「内発的動機付け」にモチベーションが依存することになります。
内発的動機付けドリブンで一番大事なのは、ストレスなどの外的要因によってモチベは急激に下がる という事です。なので、とにかく鯖缶のストレスを回避する事をまず、最優先のサーバーモデレーション事項とします。
制約1. 鯖缶をしていてストレスがかからないようにする
そんなに手間暇をかけられない事を前提に考える
地球上では、世を忍ぶ仮の姿として社畜をしているので、24時間365日、サーバーの状況を見てたりできまん。(そもそも仕事中はMisskeyクライアントは全部閉じています)
なので、いかに手間暇をかけずにサーバーを運営するかを考えます。
当初、多くのサーバーのカスタム絵文字は申請方式で、鯖缶が時間があるときに1個1個追加するスタンスが多かったのですが、かせいすきーでは、これをユーザーが全部自分で出来るようにしました。
正直、カスタム絵文字管理をユーザーに一般開放するのはリスクしかありません
本当にお勧めしません。お勧めしませんが、1個1個鯖缶が管理する時間はとてもかけられないので、バックアップを定期的に取って、何かあったらロールバックできる状態にしつつ、後はユーザーに丸投げというスタンスを取ることにしました。
制約2. ユーザーに可能な限り丸投げ
突然の神奈川県警の襲来に備えろ
個人がサーバーを公開する上で一番怖いのはサイバー攻撃ではありません。神奈川県警です。直近ではCoinHive事件が記憶に新しいですが、日本の警察は点数稼ぎのために言いがかりをつけてくることがあります。サイバー攻撃は対処できますが、公権力の暴走は基本的に対処不可です。
ので、彼らがいちゃもんを付けてこないように気を付ける必要があります。いちゃもんを付けてくるポイントは、主に「不正指令電磁的記録に関する罪」と「わいせつ物陳列罪」の二点です。これらは、恣意的な運用が可能な条文になっており、確実に対処するには、専門の弁護士を雇うほかありません。
当然、個人運営の趣味の範囲ではそんなの雇えるわけが無いので、これらを自鯖から極力排除する必要があります。
制約3. 面倒事を極力回避する
さて、ここまでで大きく三つの制約が列挙されました。
- 制約1. 鯖缶をしていてストレスがかからないようにする
- 制約2. ユーザーに可能な限り丸投げ
- 制約3. 面倒事を極力回避する
次に、これらの制約を前提に、利用規約の内容を検討します。
利用規約を書く
モデレーションはallow all, deny Aの順番で考える
セキュリティの場合は、まず deny all してから、許可する動作のみを allowする順番で考えますが、モデレーションの場合は逆で、まず allow all してから 許可できない動作をdenyする順番で考えます。
これは、組織論の話と一緒です。
「アレやっていいんだろうか?ダメなんだろうか?」と考え結果何も出来ん!になるより、まずはやってみて、アカンかったら後で訂正する、のほうが上手くいくので、そのようにします。
許可できない動作は全部利用規約に記載します
よくある一般的な「法律を守る」とか「反社会的な事や誹謗中傷はダメよ」みたいなものももちろん記載しますが、それら一般通念とは別に、サーバーとして許可できない事ははっきり書きます。
かせいすきーは、deny listが長いので、最初は「え?これやっていいんだっけ?ダメなんだっけ?」みたいになりがちですが、逆に言うとdeny listにさえ触れなければ何をやっても良いぞ。とも言えます。
禁止じゃない行為はなんでもやっていいんだな!とは言わせない
とはいえ、「別に利用規約で禁止されてないから何やっても良いんでしょ」と言われると困ります。ルールをハックしてギリギリを攻められると、あえてグレーにしている領域を白黒つける必要が出てきてしまい、面白みが無くなってしまいます。
利用規約に解釈の幅を残しておくのをお勧めします。
具体的に言うと、禁止行為の中に 「その他、運営が不適切であると判断した行為」 を含める事です。これを柔らかく、misskey風に表現すると「雰囲気でやってる」になります。
例えば、ユーザー数が少ないうちは特定の1人や話題が矢継ぎ早に投稿し続けると、その人に全てのLTLが埋め尽くされてしまい、その話題に興味がある人は別に構いませんが、そうでない人は離脱します。
misskey.ioのように、もはやLTLが濁流と化していて、そこから面白いノートを発掘する、みたいな別の遊びになっているなら良いのですが、LTLでどんな投稿がされているかはかなり気を付けて注視しています。
モデレーションとは雰囲気づくり
「モデレーター」と言うと、不適切な発言やユーザーを取り締まる警察みたいなイメージがありますが、そうではなく、モデレーターはサーバーの方向性を調律する仲介者的な存在です。なので、警察的なムーブをする人よりも、流れを作る人のほうが向いています。
現状、かせいすきーは私1人で運営している個人サーバーなので、モデレーターも私ということになります。なんてことだ。これじゃぁ独裁国家じゃないか。もう助からないぞ
鯖缶の言葉選びが、ユーザーの言葉選びを決定させる
鯖缶は、基本的にネガティブです。何故ならネガティブでないと生き残れないからです。
サーバー攻撃されたらどうしよう?変な人がユーザー登録したらどうしよう?公権力が暴走したらどうする?と、常に悪いことを想定しています。極限までネガティブです。
が、あえてポジティブに振る舞います。
これは、陽気であれ!とか陰キャがダメ!とかそういう話ではなく、文章の作り方を意識します。
例えば、「アドカレを書く」と言うタスクと向き合うときの表現として
「アドカレを書かなきゃダメだ」
「アドカレを書かないといけない」
「アドカレ書くぞ!」
「アドカレをアレしてアレする必要がある」
「アドカレの期限が迫ってくる……!」
「アドカレめんどい」
等が考えられます。全部「アドカレを書く」という趣旨のノートなのに、感情の付与の仕方が違うと、受け取りての感じ方が一気に変ります。
鯖缶はついついネガティブに考えがちなので、ついついネガティブな属性の表現を付与しがちですが、意識してポジティブな属性の表現を付与します。めちゃくちゃ意識しています。
「なぁんだ地球の話か」
別に利用規約的にNGにしているわけではないですが、あえて意図的に投稿しないようにしていることがあります。それはニュースサイトのURLです。特に古いメディアほど不安や恐怖や怒りと言った、マイナスの感情を煽ってPVを稼ぐ傾向が強いので、一気にLTLがネガティブになります。
人によって意見が分かれるやつとかもう最悪です。40万人居るサーバーなら「まぁ意見の違う人も居るよね」で流れますが、500人程度だと、一瞬でコミュニティが瓦解します。
会社に入ると真っ先に「政治と宗教と給料と応援している野球チームの話は、絶対に客先とするな」と教わりますが、それと同じような物です。
それらに対して、極力「なぁんだ地球の話か」「ここバーチャル火星やしな」「いやバーチャル火星って何だよ」と流すようにしています。
落書きを徹底的に消す
行政が地域の治安を改善するためにやる公共事業の一つに、「徹底的に落書きを消す」という物があります。徹底的に落書きを消すだけで治安が良くなります。
ブロークンウィンドウ理論と言う結構有名な奴で、興味のある方はぜひぐぐってほしいのですが、サーバーモデレーションもこれと同じで「あぁこういうノリと投稿をやっていいんだ」となると一気にそっちに持っていかれます。なので、ユーザーから通報があったノートは可能な限り早く対処しています。
※ 風のうわさによると、大手V事務所はライバーの配信コメントにモデレーターが数人常駐していて、ネガティブなコメントや、誹謗中傷コメント、ネタバレコメントを速攻消す体制があるらしいです。こわ
結果、謎の生態系が爆誕してしまった
どうしてこうなった…?w
おわりに
ここに至るまでに結構紆余曲折有りました。隕石の到来によるコミュニティの崩壊も二度ありました。100人~1000人程度の中規模サーバーが一番モデレーションが大変だと個人的には感じているので、この記事が何かしらの役に立てば幸いです!
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