Lean CoffeeとYWTで始める振り返りMTG
これは何?
振り返りMTG手法のひとつとして、 Lean Coffee と YWT を用いたものを紹介する。
Lean Coffee は構造化された会議ですが、議題はありません。参加者が集まり、議題を作成し、話し始めます。会議の議題は民主的に作成されたため、会話は方向性があり、生産的になります。
(Google翻訳より)
Lean Coffeeは「アジェンダのないMTG」と表現されることが多い。
事前準備は不要で、参加者がMTG内でアジェンダの作成から議論まで完結させるものである。
「事前準備なしにMTGが成り立つのか?」という疑問が生じるかもしれないが、むしろ準備がないおかげで生産的なMTGを実現できるといっても過言ではない。
もちろんMTG種別によって向き不向きはあるが、振り返りMTGにおいてこの手法は適していると考えている。
YWT(やったこと・わかったこと・次にやること)とは、日本能率協会コンサルティング(JMAC)が開発した振り返り・リフレクション(内省)の考え方・実践手法である。
YWTは日本人向けKPT(Keep Problem Try)のようなものである。(正確には似て非なるものだが)
個人の「Y: やったこと」「W: わかったこと」をチームで共有し、「T: つぎにやること」に繋げる。
個人的にこのフレームワークを推す一番の理由は、日本人にとってわかりやすいからである。
まず、略称からわかるように日本で生まれたものであるため、フレームワークの概念を直感的に理解しやすい。
(KPTにありがちな「Keepって何を指すの?Problemは何となくわかるけど、Tryってどこまで考えるべき?」などの疑問が生じにくい印象)
また、個人の経験ベースで振り返るため、振り返りしやすい。
こういったわかりやすさ・使いやすさは大切。
このLean CoffeeとYWTを取り入れた振り返りMTGをなぜ実施するのか、具体的にどのようにMTGを進めていくのか、について本記事で触れていく。
なぜLean CoffeeとYWT?
振り返りMTGは難しい
健全なチーム体制を保つためには、定期的に振り返りMTGを開催することが大切である。
とはいえ、振り返りMTGを開催すると色々な問題に直面する。
- 問題その1: 事前にチームメンバーへ振り返り事項の記載を依頼しても、集まりが良くない
- 「優先度高い他タスクあるから、それらを片付けてから書こう!」
- →何もせず当日を迎える
- 「ここ1ヶ月でやってたこと、すぐには思い出せない〜!まとまった時間確保して思い出そう!」
- →何もせず当日を(以下略)
- 「振り返り事項って何書けばええんや……誰かが何か書いたらそれを参考にして記載しよう!」
- →何もせず(以下略)
- 「優先度高い他タスクあるから、それらを片付けてから書こう!」
- 問題その2: MTG時間が足りない
- 「誰も事前に記載してない……仕方ないのでMTG冒頭で記入する時間を確保します!」
- →初っ端から遅延が発生し、議論する時間が足りなくなる
- 「せっかくみんな振り返り事項たくさん書いてくれたし、ひとつひとつ見ていこう!」
- →全ての意見を見聞きしているとMTG時間が足りなくなる
- 「誰も事前に記載してない……仕方ないのでMTG冒頭で記入する時間を確保します!」
- 問題その3: 振り返りMTGの効果を感じることができない
- 「開催したのは良いけどなにか意味あった?」
- →業務時間を使っている以上、何かしら業務に還元できる成果を得たい
- 「聞いているだけで何もせずに終わったわ」
- →せっかく時間を確保したので、発言なり何かしらの形でMTGに参加してほしい
- 「MTG時間大幅に伸びてしまったけど、何とかMTG終わったからヨシ👉」
- →ヨシではない
- 「改善事項は議事録に書いたから完璧!ヨシ👉」
- →なお、翌日以降に議事録を見返すことはない模様
- 「開催したのは良いけどなにか意味あった?」
どうすれば良いか?
前述の問題への対処として、Lean Coffee形式でのMTG開催と、YWTフレームワークの採用を提案する。
Lean Coffeeにアジェンダは存在しないが、大枠は決められている。
- まず、参加者全員でアジェンダを列挙する
- 次に、列挙されたアジェンダに対して投票を行ない、どの議題から優先的に議論すべきかを決める
- 優先度が決まったら、あらかじめ決められた時間内に収まるように、優先度の高いものから順番に議論を進めていく
- 制限時間が過ぎてもまだ結論が出ない場合、その議題を継続するか中断するか(次回に持ち越すか)を再度票して決める(が、個人的には制限時間が過ぎたら次の議題に移るほうが好み)
- 以降はMTG時間が許す限り、優先度の高い議題を順次消化していけば良い
事前に振り返り事項が集まらないのであれば、始めから募集をせずにMTG内でみんなに記載してもらえば良い。
MTG内で作業をするので、他タスクに邪魔されることはない。
(MTG内に全員が作業をすることで、これだけでMTGに参加した意義が生まれる)
また、参加者が同タイミングで作業することで、他の人の記載を見て着想を得ることもできるため、振り返りMTG初心者でもとっつきやすい。
さらに理解が容易なYWTを用いることで、振り返りのしやすさは加速する。
(時間がないMTGにおいて、すぐに理解できてすぐに実行できることは大切である)
そして何より、その場で書き出したものは鮮度が高く、解像度高く議論をすることができる。
(なぜこれを書いたんだっけ?がなくなる)
MTGの時間が足りない問題に対しては、ある意味始めから諦めているともいえる。
極論、やろうと思えば振り返りは永遠にできるものである。
しかし、時間は有限であるため、参加者の関心度が高い議題から優先的に取り上げ、かつ議題ひとつあたりの時間制限を設ける。
期限が設けられることで人間の集中力は高まる、という説もあるし、何かとMTGには時間制限がつきものなので、これはそこまで悪くない方法だろう。
いかにして振り返りMTGの成果を得るか、という問題に対してはYWTが解決してくれる。
各議論のゴールを「T: つぎにやること」に設定することで、自然と成果を得ることができる。
議論によってNEXT ACTIONが生まれるため、それをチケットに起票してタスク化すれば良い。
(これはYWTに限らず、KPTなどでも同様ではある)
具体的な方法
必要なもの
オフラインであれば、人数分のペンとポストイット、ホワイトボードがあれば十分だ。
オンラインであれば、MTGツールと、同時編集可能なホワイトボードツールかDocsツールがあれば良い。
ホワイトボードツールで有名なMiroには、Lean Coffeeテンプレートが用意されているので便利。
とはいえ、Miroほどリッチでなくとも、Googleドキュメントが使える環境であれば十分事足りる。
進め方
所要時間 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
05分 | MTGの進め方やゴールについて共有 | |
10分 | 各自黙々と「Y: やったこと」を書き連ねる | |
10分 | 各自黙々と「W: わかったこと」を書き連ねる(※1) | |
10分 | 他人の投稿を見て、投票とコメントをする(※2) | 「共感できた」「深堀り質問したい」「この課題は解決したい」など自由に気になった投稿に投票&コメントしていく |
10分 | 最も得票数が多い投稿を皆で議論していく(※3) | この議論はファシリが時間内に収まるように上手く導く必要がある |
10分 | 2番目に得票数が多い投稿を皆で議論していく | |
以下、時間の許す限り続く…… | 3番目に得票数が多い投稿を皆で議論していく |
上記の所要時間はあくまで一例である。
参加人数や状況に応じて柔軟に変更すると良い。
(Miroのテンプレでは8分が初期値の模様)
具体例とTips
Googleドキュメントを用いた具体例
「Y: やったこと」を書く
後続ステップで投票する際に便利なので、各参加者は自分の絵文字を決めておくと良い。
得票数がパッと判断できるので視認性が向上するし、絵文字には個性が現れるので場の空気が和む。(諸説あり)
「W: わかったこと」を書く
「経験」を共有しよう。
同じ仕事をしても、ジュニアとシニアでは感じることが異なる。
例えば、シニアは手順書なしでも作業できるが、ジュニアは作業ができない。
シニアは作業が問題なくこなせたので、手順書が存在しないことに対して何も課題を感じない。
しかし、ジュニアは作業をこなす際に各方面に質問をし、周囲の人に迷惑をかけてしまった、無駄に作業時間がかかってしまった、と考えるかもしれない。
これは是非振り返りMTGで取り上げたい「経験」だ。
ちなみに、「W: わかったこと」は改善点や反省点だけでなく、良かったことや継続したいことなどを書くことも大歓迎。
投票とコメントをする
大前提として誹謗中傷はNG。
ただし、反対意見を挙げるのは歓迎されるべきだ。
例えば、Aさんは「毎日30分の相談会のおかげで悩みごとが減って良かった」と投稿したが、Bさんにとっては実は良いことではないので「相談内容に関係ない人も必ず30分拘束されるので時間の無駄に感じる」といったコメントをした。
これはとても有意義なコメントである。
まさに振り返り会をしたのでわかった利点・欠点である。
大切なのは、「褒めるときは人を」「非難するときは事象を」という精神。
「T: つぎやること」を議論する
ここでは「NEXT ACTION」を見つけるための議論をしよう。
もちろん、NEXT ACTIONが不要な議題もある。
しかし、振り返りにおいてよくあるのが「こういった課題感がある」「この動きは良かった」といったことがよくあがる。
課題については解決策を皆で考えてNEXT ACTIONに落とし込むべきであるし、
良かった動きについては、改めて皆で認知し「継続していこう」「より改善していこう」といったNEXT ACTIONを設けることができる。
MTG後にタスク化・チケット化することも忘れず!
おわりに
Lean CoffeeとYWTを組み合わせた振り返りMTGの一案を説明してきた。
自分が使いやすいように元の定義を読み替えたり改良したりしている箇所もあるので、実際に採用する際はチームの特色に合わせる必要があるかと。
また、もちろんLean CoffeeやYWTが適していない場面もあるので要注意。
- 「その場で振り返る」ため、思い出すのに時間がかかるものは抜け落ちてしまう
- とはいえ、すぐに思い出せないものは優先度が低いものと判断してしまって良い気もしているが……
- 日本語話者以外がいる場面でYWTは逆に混乱を招くため、素直にKPTを用いたほうが良い
- 日本語話者のみの場合でも、皆がKPTに慣れ親しんでいるのであれば始めからKPTを採用するのもアリ
とはいえ、チームの振り返りMTGで数回試してみると良さが実感できるのでオススメ!
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