マシンの購入前にLinuxのハードウェア対応を調べる
はじめに
みなさん、新しいパソコンを購入したら一番最初にすることはなんでしょうか?
そう、OS削除からのLinuxのインストールですね
しかしもちろん、プリインストールされているものと違い、グラフィックやサウンドがLinuxに対応しているかどうかは実際にインストールしてみないとわかりません。よほど珍しい部品を搭載していない限りは動くとは思いますが、買ってみるまでわからないというのは不安です。OSSというのは基本的に自己責任の世界ですし、Linuxディストリビューションは山ほどあるため、メーカーの公式サポート情報なんてものは期待できません。
LinuxプリインストールのPCというのは探せばけっこう情報が出てきますが、日本で未発売だったり、ハードウェアのスペックがいまいちだったり、好みのディストリビューションじゃなかったりと、選択肢には入りにくいかと思います。
- https://pine64.com/
- https://puri.sm/
- https://starlabs.systems/
- https://starlabs.systems/
- https://system76.com/
というわけで、Linux用のマシンを購入するにあたり対応状況や解決方法を調べることができるように情報をまとめました。実際に筆者がトラブルに遭遇した時の対応も書いておきます。
Ubuntu Certified
Ubuntuなどの一部の大手ディストリビューションからは公式のプリインストールマシンが発売されています。Dell XPS 13, HP Zbook Studio G9, Lenovo ThinkPad P16といった代表的なモデルの他、Dell Inspiron, HP EliteBook, ThinkPad Lといったシリーズも対応しています。日本ではWindowsモデルしか入手できない場合もありますが、ハードウェア対応が宣言されています。
この3つのメーカーについては基本的にはUbuntuに対応しており、ディストリビューションが違ってもまぁ動作すると思って良いでしょう、と思っていた時期が自分にもありありました(後述)。
Linux Hardware Database
世界中のユーザーがLinuxマシンのハードウェア詳細を匿名で収集、互換性をチェックし、ドライバを見つけるのを支援する有志のプロジェクトです。2023年時点で累計20万台くらいのマシンについて情報が集まっています。Ubuntuはもちろん、openSUSE, Fedora, Arch Linux, Gentooといった有名どころのディストリビューションに対応しています。また、マシンに搭載されているデバイスを調べるのにも役立つ場合があります。
ただし、Lenovo,Dell,HPが中心で日本のメーカーは物足りなかったりするのであくまで参考までに。
ArchWiki
Arch Linuxという特定のディストリビューションのドキュメントになりますが、ご存知の通り異様に情報が充実しています。サウンドやグラフィックの具体的な解決策が書いてあったりするので、他ディストリビューションの場合でも一度眺めてみてください。
あくまでArch Linuxのソフトウェアに関するページなので、ハードウェアの型番から探すことはできません(まぁソフトウェアに関しても体系的にまとまってるとは言い難いですが……)
参考になりそうなトラブルシューティングのページをまとめました。購入前にざっとみて検討中のマシンの既知の不具合がないか見てみるとよいでしょう。下記のリンクは日本語ですが、英語も合わせて読むことをおすすめします。
- Advanced Linux Sound Architecture/トラブルシューティング
- PulseAudio/トラブルシューティング
- Intel graphics - トラブルシューティング
- AMDGPU - トラブルシューティング
- NVIDIA/トラブルシューティング
- ネットワーク設定/ワイヤレス - ドライバとファームウェアのトラブルシューティング
例)Dell Inspiron 13 5320
こういった情報をよく調べもせずにLinux用途でノートPCを購入してArchLinuxをインストールしたら、サウンドまわりで致命的なトラブルに見舞われました。
/proc/asound/card0/codec#0
を確認するとサウンドのコーデックはALC3024であることは確認できたので、いろいろ検索して結局カーネルモジュールのロード時に下記の通りパラメータを渡すことで解決しました。
options snd_hda_intel power_save=0
options snd_hda_intel dmic_detect=0
options snd_hda_intel model=dell-headset-multi
サウンド1)出力デバイスを認識しない
普通にインストールした状態だとサウンドの設定画面でNo Output Devices
と表示され、スピーカーもヘッドホンジャックも認識しませんでした。Alder Lake搭載のマシンに関する似たような現象がフォーラムにあり、この中からdmic_detect=0
を追加する方法で解決しました。
No speaker sound on Alder Lake (headphone out and BT works though) / Arch Linux Forums
サウンド2)入力デバイスを認識しない
こちらも同じようにNo Input Devices
と表示されて、ラップトップ内臓マイクもヘッドセットも認識しません。
Dell のノートパソコンの多くは /etc/modprobe.d/modprobe.conf のモデル名に "-dmic" を加えることを必要とします:
ArchWikiのALSAトラブルシューティングの中から上のような記述を見つけましたがそのままではうまくいかず、Linux Kernel Documentationからモデルを色々探し、結果model=dell-headset-multi
を追加するとヘッドセットを認識させることができました。内蔵マイクは使えないままですが、とりあえず会話はできるようになったのでヨシです。
他にもdell-m6
といったモデルもあったので、もしかしたらこの中から該当するものがあるのかもしれません。そのうち時間のある時に再チャレンジしてみます。
サウンド3)再生を開始・停止するとポップノイズが鳴る
出力デバイスの認識は上記の対応で修正できたのですが、動画や音声を再生・停止する時にブチッと耳障りな音が鳴る現象に遭遇しました。
まんま同じ現象がトラブルシューティングにあり、power_save=0
を追加すると解決しました。不具合というよりはサウンドカードの節電機能が洗練されてないことによる現象かもしれませんね。
Advanced Linux Sound Architecture/トラブルシューティング#再生を開始・停止するとポップノイズが鳴る
最後に
言うまでもありませんが、WindowsプリインストールマシンのLinux対応は買ってみるまでわかりません。
ここで紹介した以外にもマシンごとに細かく調整した箇所もあります。筆者にはカーネルやドライバの知識がなく、検索して適当にそれらしい設定をぶっこんでみる方式で探していたので、欲しい情報にたどり着くのに苦労しました。
そういうリスクがあったとしてもOSをインストールする作業は楽しいですよね、というお話でした。
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