AWSを無料またはポケットマネーの枠で使用する
AWSの学習において、実際の環境を触ることはほぼ必須です。参考書や学習サイトの動画を見ているだけではなかなか身につきません。
しかしもちろん、システムやサービスの利用には料金が発生します。何も考えずに利用しまくればとんでもない料金が請求されてしまいます。
というわけで、学習や資格取得のために無料枠あるいはポケットマネーに収まる範囲で使用できるように、料金について簡単にまとめました。これらの内容を抑えておけば不意の高額請求に怯えることなくがっつりシステムを触ることができますし、予算を組む上でも参考になるかと思います。
公式情報のリンクを貼るようにしていますので、必ずそちらを参照の上自己責任で使用してください。
(2023年7月17日 記事作成)
1. 無料利用枠
個人の学習や企業のスタートアップのために、無料で利用できる枠が用意されています。この範囲に収まっていれば料金が請求されることはありませんが、何らかの支払い方法の登録は必須ですので、クレジットカードなどを用意してください。
(1) 12ヶ月間無料
AWSにサインアップしてから12ヶ月間は一部のサービスが無料で使用できます。12ヶ月過ぎたあともインスタンス作成時などに「無料枠」と言って提案してきますが、信用してはいけません。ちゃんと自分のアカウント情報は確認しましょう。
アカウント作成時に住所を入力するので、アカウントを複数作成することはたぶんできません。
EC2
- 750時間/月
-
t2.microまたはt3.micro

AWSといったらEC2ですね。ハンズオンでサーバーを立ててログインしてみましょうみたいな時によく使うやつです。月あたり31.25日使用できるので、マシンを1台立てっぱなしにすることができます。
インスタンス作成には別途ファイルストレージが必要になります。無料利用枠の一覧には表示されていませんが、最大30GBのEBS汎用(SSD)ストレージが利用できます。
RDS
- 750時間/月
- MySQL, PostgreSQL, MariaDB, SQL Server
- 20GB汎用(SSD)ストレージ
- 20GBデータベースバックアップ及びDBスナップショット
こちらも1台なら立てっぱなしにすることができます。この枠はRelational DBのみで、NoSQLのDynamoDBは後述の「常に無料」に含まれます。
S3
- 5GB
- 20,000件のGetリクエスト
- 5,000件のPutリクエスト
画像や動画を保存するストレージです。リクエスト回数の制限は1ヶ月あたりではなく累計ですので注意しましょう。
(2) 常に無料
12ヶ月過ぎたあとも一部のサービスは無料で使い続けることができます。コアな機能は含まれず、どちらかというとシステム運用をサポートするためのものが多いです。
Lambda
- 100万回/月
- 320万秒/月
EC2インスタンスを作成せずにPythonなどのコードを実行できるサービスです。時間を設定して定期実行したり、S3へのアップロードなどのイベントをトリガーにすることができます。回数だけでなく計算時間も制限に含まれるので注意してください。
DynamoDB
- 25GBストレージ
- 2億リクエスト/月
- 25個の書き込みキャパシティユニット(WCU)
- 25個の読み込みキャパシティユニット(RCU)
AWSが提供するkey-value NoSQLのデータベースです。Relational DBは前述の12ヶ月無料の枠のみであり、常に無料の枠はありません。
CloudFront
- 1TBデータ転送
- 1,000万件のHTTP/HTTPSリクエスト
- 200万件の関数呼び出し
コンテンツ配信サービスです。上記の枠は月あたりの値ではなく累計です。使い切ったら料金が発生しますので注意してください。
2. 料金表
無料枠を超えてももちろん料金を支払えば使用できます。検索すると色々出てきますが、各製品の「料金」タブが一次情報なのでそちらを見るようにしましょう。
EC2
オンデマンドのうち低価格なプランをまとめます。世代が新しいものの方が安い傾向にあります。
Saving Plan(1年または3年の長期契約)やスポットインスタンス(未使用のリソースを安価で使用できるものの中断の可能性がある)の方が更に安く使用できますので、そちらも合わせて検討してみてください。
リージョン:ap-northeast-1 (Tokyo)
OS:Linux
| インスタンス | 時間単価 | vCPU | メモリ | ストレージ | ネットワークパフォーマンス |
|---|---|---|---|---|---|
| t4g.nano | 0.0054 USD | 2 | 0.5 GiB | EBS のみ | 最大 5 ギガビット |
| t4g.micro | 0.0108 USD | 2 | 1.0 GiB | EBS のみ | 最大 5 ギガビット |
| t3.nano | 0.0068 USD | 2 | 0.5 GiB | EBS のみ | 最大 5 ギガビット |
| t3.micro | 0.0136 USD | 2 | 1.0 GiB | EBS のみ | 最大 5 ギガビット |
| t3a.nano | 0.0061 USD | 2 | 0.5 GiB | EBS のみ | 最大 5 ギガビット |
| t3a.micro | 0.0122 USD | 2 | 1.0 GiB | EBS のみ | 最大 5 ギガビット |
| t2.nano | 0.0076 USD | 1 | 0.5 GiB | EBS のみ | 低 |
| t2.micro | 0.0152 USD | 1 | 1.0 GiB | EBS のみ | 低~中 |
EBS
EC2単体であればインスタンスを停止すれば料金は発生しませんが、アタッチされたEBSが存在すればその分の料金が発生します。基本的には通常の汎用SSDを使用していくことになりますので、なるべく少ない容量を確保するようにしましょう。
リージョン:ap-northeast-1 (Tokyo)
| ボリュームタイプ | 料金 |
|---|---|
| 汎用SSD(gp3)ストレージ | 0.096USD/GB月 |
| 汎用SSD(gp2)ストレージ | 0.142USD/GB月 |
| スループット最適化 HDD (st1) | プロビジョニングされたストレージ1GBあたり0.054USD/月 |
| Cold HDD (sc1) ボリューム | プロビジョニングされたストレージ1GBあたり0.018USD/月 |
VPS
基本的にVPSでは無料で使用できますが、NATゲートウェイやIPAMといった一部の機能では料金が発生します。
ECS
ECS自体に料金は発生しません。作成したEC2インスタンスやEBSボリュームに対して料金を支払う形になります。
3. 料金確認
今実際にどれくらいの利用料金になっているのか、きちんと確認しておきましょう。デフォルトはルートユーザーから閲覧しますが、IAMユーザーに閲覧権限を付与することもできます。
Cost Explorer
料金の内訳について解析します。料金発生のタイミング、金額の推移、サービスごとの内訳を確認できます。

Billing Manager
右上のメニューの「請求ダッシュボード」からアクセスします。
Cost Explorerは利用料の内訳をサービスやリージョンなどで分類して解析する用途でしたが、こちらは請求書や支払いの手段を管理するためのものです。

最後に
AWSの勉強をはじめるにあたり料金を調べてみたのですが、料金の計算や予算の確保は問題に含まれないということを後から知って崩れ落ちました。よくよく考えてみればそれはそうですね。
とはいえ実務にあたりコスト計算は必須の能力ですので、やっといて損はないでしょう。そう思うことにします。
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