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スタートアップのSREsとして働くということ

2024/10/15に公開

こんにちは、インフラ/SREグループの三橋です。
booost technologis(以下booost)にSREグループのメンバーとして入社して約1ヶ月が経ちました。この期間でドメインに対する理解が深まり様々な課題が見えてきたため、今回はその内容を共有します。
前職ではSaaS事業を展開する上場企業にて、SREグループの一員としてコスト最適化やオブザーバビリティ向上、インシデントレスポンス改善などSREの文化醸成に注力してきました(過去に執筆したテックブログはこちら)。booostでは、これまでの経験とは異なり、特にSRE文化醸成のための基盤を強化していくことが最優先であると感じています。

想定する読者

  • booostへの入社を検討している方
  • スタートアップでのSREs(SRE Engineers)はどのような仕事をしているかにご興味のある方

私たちが取り組んでいること

業務内容の説明の前に、弊社が取り組んでいる内容およびその背景について簡単にご紹介いたします。
booostではグローバル企業における非財務情報法管理のあり方をBest Practice化する「統合型SX Platform」を提供しており、Sustainability / NET-ZERO Leadersのテクノロジーパートナーとして、企業価値向上に貢献していくことをミッションに掲げています。
わかりやすいように、背景を説明すると下記の通りです。

  • 近年、地球温暖化による気候変動が世界的に深刻な問題となり、国際的な議論が進んでいる
  • 地球温暖化はGHG(温室効果ガス)の排出量と強く相関し、対策を講じなければ取り返しのつかない状況になる可能性がある
  • 国際的にGHG排出量の削減が求められており、各国は自主的な目標を設定し、国内の企業に対して規制やインセンティブを通じた排出量削減の取り組みを行なっている
  • 気候変動だけでなく、持続可能な成長のためには生物多様性や人権保護など、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点が欠かせない
  • 投資家は企業の長期的な成長を評価する際、財務情報に加えてESGに基づく非財務情報を重視するようになっている
  • 企業にはESGに基づく非財務情報の開示が義務付けられ、担当者は目まぐるしく変化する情報をキャッチアップし、グループ会社を含む企業全体の非財務情報を収集し報告/開示をしていかなければならない

このような背景があり、booostはESG活動の推進から非財務情報の収集、レポートの開示に至るまで、企業が抱える課題を効率化し、企業価値の向上を支援していくパートナーとして貢献します。

様々な課題

続いて現在抱えている課題についてご紹介します。

スケーリングが難しいアーキテクチャ

私たちが直面している大きな課題の一つはシングルテナントアーキテクチャ(サイロモデル)の採用によるスケーリングの困難さであると考えています。このアーキテクチャでは、クライアントが増えるたびにそれぞれのインフラを個別に管理する必要があり、運用・保守の工数が増大します。また現在はIaaS環境をベースとしており、OS周りまでメンテナンスをしていかなければなりません。
このアーキテクチャが採用されている背景には以下の理由があります。

  • 今年度に入って「統合型SX Platform」(ESG領域全般に対するプロダクト)を提供していく方針に決まった
  • ESG関連の法規制が入るのはエンタープライズ企業からであり、それらの企業の非機能要件に応えるためには従来の構成では満たせないためカスタマイズが必要である
  • 機能面においてもESG領域はまだ成熟していないため、お客様と一緒にBest Practiceを模索していく必要がある
    • これはつまり事前にSaaSとして機能を展開することが難しいという意味である
  • リソースが不足しておりアーキテクチャの見直しに時間を割くことが難しい
    • ESG領域の変化が激しく、常に最新情報をキャッチアップしていかなければならない
    • 組織のフェーズ的にも売り上げ拡大が最重要である

もちろん、シングルテナントであることでエンタープライズのお客様のコンプライアンス要件に準拠しやすいというメリットはあります。その辺りのトレードオフを考慮しながらビジネス競争力を落とさずにスケールできるアーキテクチャを検討していかなければなりません。

参考:
https://d1.awsstatic.com/webinars/jp/pdf/services/202207_AWS_Black_Belt_SaaS_Architecture_Basic.pdf

SRE活動の難しさ

組織やチームとしての観点からも以下のような課題があります。

改善業務にリソースを割きにくい

既にシングルテナントのサービスを運用しているため、環境構築やメンテナンス、障害対応などの業務に追われ、改善活動にリソースを割くことが難しい現状です。SREチームのメンバーは現状3名と少人数であり、実際の業務内容はインフラエンジニアとしての役割が中心です。

アプリチームとインフラチームの分断

アーキテクチャや組織体制上、アプリチームとインフラチームが分断されています。プロダクトは複数のコンポーネントに分かれていますが、インフラチームはそれらを横断して面倒を見る必要があります。ミドルウェアやインフラ周りなどで不明な点があれば都度インフラチームに問い合わせや依頼が発生します。
このため改善業務にリソースが割きにくいだけではなく、プロダクトチームがインフラに対するオーナーシップを持つことが難しく、リアーキテクチャの進行にも課題があります。

SREsとしての取り組み

前置きが長くなりましたがSREsとしてどのような取り組みを行なっているかについてご紹介します。

組織を変革し、文化を醸成する

組織が成長していく中で、効果的な改善を進めるためには、まず文化を醸成することが欠かせません。私たちが取り組んでいるのは、改善を進めやすい組織文化を築くことです。特に、「惰性」の文化を取り除き、各メンバーが積極的に改善に取り組める環境を作ることが重要です。

組織の体質を現場から変える100の方法」にもあるように、組織の文化を変えるには小さなアクションの積み重ねが大切です。これに共感し、以下のような取り組みを進めています。

  • チームミッションとビジョンの定義
    • 目の前の業務に追われることが多くなっていたため、チーム内でディスカッションを行い長期的な方向性を確認しました。また方向性に問題がないか上長とも認識のすり合わせを行いました。
    • 今後はミッションやビジョンの定期的な振り返りと積極的な発信活動を通してSREの存在意義を示していきたいと考えています。
  • コミュニケーションツールの導入
    • 担当プロダクトを超えた交流が生まれづらい環境だったため、コミュニケーションツールを試験的に導入しました。
    • 今後はコミュニケーション活発化のための取り組みなどを通して組織内の心理的安全性の向上に寄与したいと考えています

とにかく巻き込む

一人の力では限界があるため、周りを巻き込むことが大切です。先輩方の経験や各プロダクトチームの知見を最大限に活かし、改善の道筋を模索しています。大きな意思決定には上長の承認が必要となるため、負担を減らすために必要な情報を事前に揃えておくことも重要です。さらに、リソース不足が顕著であるため、ツールの導入やパートナーの模索も同時に進めています。

おわりに

組織が急拡大する中で、これまで見えなかった課題が次々と顕在化しています。現時点では解決の道筋が完全には見えていない課題もありますが、私たちのプロダクトは将来の持続可能な社会に欠かせないものであり、その開発に強い使命感を持っています。また、プロダクトを通じて次世代により良い未来を残したいという信念を持っているメンバーが多く集まっているのもbooostの特徴です。

もしこの記事を通じて弊社に興味を持っていただけた方がいれば、採用ページより是非ご連絡ください。

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