Tokyo1892 のことを書こうとしたらむしろ他のところが長くなった
はじめに
Tokyo1892 については、これまで「PostGIS入門」の方に出していましたが、あまりにマニアックなので、やはり記事に出した方がいいと思ったので、ここに記す。
…と思ったら、Tokyo1892 の分量はかなり少なくなってます。
測地系関係の変遷を時系列に並べる
迅速測図
陸軍は、西南の役等の叛乱の鎮圧において地図が無いことに悩まされたので、国内の地図整備に乗り出しました。ただし、緊急に整備する必要があるので、基準点測量 (三角点等を設置して位置を測ること) を省略して整備することにしました。基準点測量を省略した方法を迅速測図方式と呼びます。
この方法で関東平野に生成されたのが2万分1関東平野迅速測図原図で、1880年から1886年にかけて作られています。原点は皇居・富士見櫓です。
https://www.jsokuryou.jp/PDF/200408/histo6.pdf
https://ja.wikipedia.org/wiki/迅速測図
陸地測量標条例
迅速測図では基準点測量を行っていなかったので基準点はまだありません。地図の作成だけでなく、基準点の全国整備も行っていく必要があります。これの法的根拠が陸地測量標条例です。1880年 (明治23年) に公布されています。
陸地測量標条例は測量法の前の法律で、同条例に基づいた測量のうち測量法で定められる基本測量に属するものについては、基本測量として扱われます (測量法付則2項)。
日本経緯度原点の設置
1892年 (明治25年)、東京麻布に日本経緯度原点が設置されました。"Tokyo 1892"の1892は、原点設置を指しているのだろうと思います。
経度更新
10.405秒ずれているのが発覚して経度の値を改めたのが 1918年 (大正7年) です。
Tokyo1892 + 10.405秒 = Tokyo1918
となるように、経度が更新されました。緯度は更新されていません。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sokuchi1954/45/3/45_3_229/_pdf (ページ内検索をする場合 "10秒405" でヒットします)
JGD2000
2002年4月1日に、Tokyo1918 から JGD2000 に切り替わりました。JGD2000の元期は 1997年1月1日 です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sokuchi1954/45/3/45_3_229/_pdf (「経度更新」と同じURL)
JGD 2011
2011年に、東北地方太平洋沖地震による地殻変動に伴って JGD2011 に切り替わりました。元期は 2011年5月24日 です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/測地系#日本測地系2011
各測地系の地理座標系のEPSGコード
期間 | 名前 | EPSGコード | 備考 |
---|---|---|---|
日本経緯度原点の設置から経度更新(1918年)まで | Tokyo 1892 | EPSG:5132 | 10.405秒のシフトがありません |
経度更新(1918年)から2002年まで | Tokyo 1918 | EPSG:4301 | |
2002年4月から2011年10月まで | JGD 2000 | EPSG:4612 | |
2011年10月以降 | JGD2011 | EPSG:6668 |
Tokyo 1918 がとても長かったのが分かると思います。
おわりに
いかがだったでしょうか。ざっと殺風景に記載しましたが、測地系は Tokyo 1892/1918 と JGD 2000/2011 とに分かれているかんじです。
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Discussion
一部に10.409秒となっていましたが、10.405秒の誤りでした。sakaikさんのX方面からのご指摘によります。
迅速測図のあたりは @wata909さんからの声があったので、それっぽく訂正しました。