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海里を緯度分で測ると問題ではないのかという言いがかり

2022/07/28に公開

はじめに

船舶航行の速さの単位としてノット(kn)が知られています。ノットは1時間あたり進む海里(nm)数です。海里は距離の単位で、1[nm] は正しく 1852[m] とされています。ですので、1[kn] は正しく 1852[m/h] です。

この1 [nm]は、どのように決まったのかというと、緯度1分で計算されました。

当初のメートルの定義では「北極点から赤道までの子午線弧長の1/10,000,000」とされていたので、北極点から赤道までの子午線弧長は10000000[m]、地球を球面と仮定した場合、1分の弧長は \frac{10,000,000}{90 \cdot 60} \fallingdotseq 1852 で、1[nm] = 1852[m]となったわけです。

ここで「地球のモデルが回転楕円体でないのか?それでいいのか?」と思う人は相当重度の何かを抱えているのかも知れません。もし緯度分に依存するようなことをしているなら、回転楕円体では緯度によって1分の弧長が変わるからです。

しかしながら、現在は 1[nm] = 1852[m] と決まっているので、緯度1分とは関係はありません。球面であろうと回転楕円体であろうと、1[nm] = 1852[m] です。

ところで、小型船舶1級の学科試験では、架空の陸地や島が描かれた試験用海図が渡され、「〇灯台から最大3[nm]接近する進路を取り…」といった文が並んだプランが示されていて、それに沿って最終位置を緯度経度で出したり、プラン記載のノットをもとに所要時間を算出する等します。

海里 (nm)を単位とした距離をどうやって測っているかというと、試験用海図は、20万分の1海岸図に模したもので、次のような目盛りがあります。

海図の緯度方向の目盛り

緯度に1分ごとに白黒で塗分けがあり、さらに0.2分ごとの目盛りが振られています。メートル尺も図郭に描かれていますが、そちらは使わずに、こちらの目盛りを見て、1分を海里としているので、その白または黒の一つぶんが丁度 1[nm] で、端数は目盛りとかを使って…

緯度分使っとるやないか!

メートル尺あるのに使ってないやないか!

1852メートルと違うかも知れんやないか!

…ということで、緯度によって分の長さが違わんか確認せんといけませんね。

実際に検討してみましょう

まず、WGS84の半径等の確認をしましょう。なお、海図での基準回転楕円体は WGS84 です。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/地球楕円体#各種の準拠楕円体 を見てみます。
WGS84 の長半径は 6378137[m]、1/f は 298.257223563 よって短半径は b = a(1-f) = 6378137*(1-1/298.257223563)=6356752.31425 と計算できます。

長半径を半径とする球面の場合の1分の弧長は \frac{2 \pi 6378137}{360 \cdot 60} = 1855.32 となります。これは、赤道付近の子午線曲率半径を使った緯度1分の距離になります。1852[m]から少しずれますね。

今度は、短半径を半径とする球面の場合、半径は 6378137(1-\frac{1}{298.257223563}) = 6356752.31425 で、緯度1分の距離は、\frac{2 \pi 6356752.31425}{360 \cdot 60} = 1849.10 となります。赤道より、やや短くなります。

本来の海里から見て何海里の差があるかを見てみましょう。

長半径では (1855.32-1852)/1852 = 0.00179265658
短半径では (1849.10-1852)/1852 = -0.00156587473

先ほども申しました通り、20万分の1海岸図の目盛りは 0.2[分]が限度です。おおむね 0.2[nm]が分解能となると、0.001[nm]の桁で値が違ってても誤差の範囲内です。問題ありません。

おわりに

いかがだったでしょうか。これで小型船舶1級の学科試験の勉強もはかどりますね。ていうか、こんなところを気にしてたらいけないとおもいます。

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