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測地系には有効な期間がある

2020/10/27に公開

はじめに

JGD2011の座標系にtowgs84が無いとかそもそもtowgs84って何やねん の引っ越し前のサイト記事におい

JGD2000やJGD2011は、WGS84と結構近いので、特に問題がないなら(アンダーメートルの精度が要るほどじゃないなら)、towgs84=[0,0,0,0,0,0,0]として、変換しません。

と発言しました。

これに対して、@ozo360 さんのコメントで、

これはとても違和感があるというか東北の方ではメートルオーバーの誤差があるはずではないかと思うのですが何か勘違いしているでしょうか。

というコメントを頂きました。

これに対しては私は

空間参照系には有効期限があるものなので、時期に応じて使い分けないといけないものです、としか言いようがない

と回答しています。

あまりに簡潔すぎて、必要な情報を伴っていません(すみません)。もうちょっと付け足します。

JGD2000とJGD2011は時期に応じて使い分けてください

WGS84から見てみるとひどくこんがらがる

まず、大前提として、JGD2011とJGD2000とでは見過ごせない程度のズレがあります。

そのうえで、以前、2011年より前にGPSで取得した緯度経度をJGD2000の地図にそのまま書き込んだら、たぶん、その書き込んだ点は結構精度良かったのではないでしょうか。

また、現在、GPSで取得した緯度経度をJGD2011の地図にそのまま書き込んだら、たぶん、その書き込んだ点は結構精度良いのではないでしょうか。

そして、GPSで取得した緯度経度は、WGS84での緯度経度を示しています(測定誤差は考えない)。

これらを混ぜ合わせると、JGD2011=WGS84, JGD2000=WGS84 といえます。ところが明らかにJGD2011≠JGD2000です。あれ、さっきの等式から言うとJGD2011=JGD2000じゃないの?

年に注意してみよう

先ほどの話について、年に注意してみてみましょう。2011年以降では、JGD2011とWGS84とがだいたい同じです(現在形)が、2011年以前では、JGD2000とWGS84とがだいたい同じでした(過去形)。

つまり、時期によって採用する測地系を選ぶと、WGS84とはほぼ同じである、と言えます。

さらに言うと、2011年以降では、JGD2000とWGS84とはズレが出ます(現在形)。2011年以前に取得したGPS位置でJGD2011をプロットするとズレが出ます(JGD2011とWGS84とではズレが出ました)。

よって、時期に応じて使い分けないといけません。

2011年以降に得たGPSデータはJGD2011の地図に、2011年より前に得たGPSデータはJGD2000の地図に、それぞれプロットしなければ、うまくいきません。時期に応じて使い分けて下さい。

2011年に規定された座標系を2002年時点の資料で語ること

さらに次のようなコメントを頂きました。

2002年の書籍を参考文献として2011年に規定された座標系について認識するのもちょっと気になるのですが、

座標系というと、今回の話では若干分かりにくくなるので、測地系としておきます。

測地成果2011 (JGD2011)は2011.4年(".4"は0.4年であり4か月ではない)を元期としています。JGD2000からJGD2011に改められる際に、基準回転楕円体は変えていませんし、三次元直交座標系のフレームは実は変えていますが違いはほぼありません。つまり地球全体に影響を及ぼす数式、パラメータ等は変わっていない、と考えて差し支えありません。

東北地方太平洋沖地震は、東日本を中心に甚大な被害を与え、地表も大きく動きました(最大6m程度)が、あくまで局地的で、地球全体のモデルとしては変更はありません。

よって、2002年以前から現在に至るまで有効なモデルを記載している資料から2011年の測地系のうち地球全体のモデルの話をしても問題はありません。

地震によるズレについては、モデルを変更する話でなく、測量基準点を再測量して、JGD2000からJGD2011に(線形で)変換するパラメータを発表することで対応できるようにしています。局所的ですので、こうせざるを得ません。これは地球全体のモデルの変更でなく、そのモデル上のごく一部で地面が動いたので、現状の状況を計測しなおした、ととらえるのが良いかと思います。

JGD2000とJGD2011を区別する意味

測地系がTokyo1918からJGD2000に変わった際には、基準回転楕円体がベッセルからGRSに変わりました。この一大事業によって測地系が変更されるのは当然だろう、空間参照系コードが変わるのも当然だろう、と思えます。でも、JGD2000からJGD2011では、モデルについては、そう大きな変更はありません。towgs84パラメータは全く同じでも困らない程度です。

でも、測地系を変え、当然空間参照系コードも変えています。ここまでする意味はあるのでしょうか。

最初に述べた「時期に応じて使い分けないといけない」を思い出して下さい。空間参照系をEPSG:4326(JGD2000地理座標系)とされている地物は、2011.4年より前に測られたものであり、EPSG:6668(JGD2011地理座標系)とされている地物は、2011.4年以後に測られたものをそれぞれ示します。空間参照系コードを使うことで「時期に応じて使い分け」ることができます。

でもWGS84に変換したらまずい

EPSG:4612とEPSG:6668とは混ぜにくい(混ぜるとエラーが出る)のでいいのですが、EPSG:4612からEPSG:4326(WGS84地理座標系)に変換したものと、EPSG:6668からEPSG:4326に変換したものとは混ざります。かつどちらもtowgs84パラメータは同じです。

これはどうしようもありません。

おわりに

大地震によって大きく地表が動き、そのたびに測地系は変更されます(東北地方太平洋沖地震では最大6m程度動き、JGD2000からJGD2011に変更になりました)。測地系は時期に応じて使い分けることが求められますし、言い換えると、使用する空間参照系を吟味するなら測った時期を明示できることができると言えます。

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