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Cline 導入検証した所感

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はじめに

GitHub CopilotやCursorといったAIコーディング支援ツールの登場により、システム開発の現場は日々変化しています。
これらのツールはコード補完などを通じて開発者の生産性を向上させてきました。

そして、新たに「AIエージェント」と呼ばれるツール群が注目を集めています。
これらは単なる支援に留まらず、より自律的にタスクを理解し、計画・実行する能力を持ちます。

自分が所属するチームでは、開発効率と品質向上のため AIエージェント「Cline」& Claude 3.7 Sonnet APIの導入検証を実施しました。

やり方としてはチームの一部のメンバーにClineを導入(会社の経費でClaude 3.7 Sonnet API トークンを購入)してもらい、業務を通して使用感を試した上で意見をもらい、チーム全体に本格導入するかどうかの判断材料としました。

この記事では、検証に参加したメンバーの意見を基に、ClineのようなAIエージェントがもたらすメリットや導入にあたって考慮すべき点などの所感をまとめていきます。

対象読者

  • AI開発支援ツールに関心のあるITエンジニア
  • 開発チームの生産性向上策を検討しているリーダーやマネージャー
  • AIコーディング支援ツール(Copilot, Cursor, Cline等)の導入を考えている方

本題

Cline とは?

Clineは、ターミナル上で動作するAIエージェントです。
指示を与えると、タスクを理解し、コードベースの読み込み、計画立案、コード生成・修正、ファイル操作、コマンド実行まで自律的に行ってくれます。

他のツールと比較すると、Copilotはリアルタイム補完、Cursorはエディタ統合型のAI機能に強みがあるかと思います。
一方Clineはターミナルをインターフェースとし、より広範な開発タスクを自律的に実行することに特化しており、特にコマンド実行やエラーハンドリング能力が「エージェント」らしさを際立たせています。

Clineの解説や導入方法などは特にこちらの記事がわかりやすかったです。
https://www.ai-souken.com/article/what-is-cline

検証メンバーの評価

実際にClineを試したメンバーから寄せられた意見を紹介します。

1. コード理解・レビューの効率化

プロジェクトへの新規参加時にはコードの全体像の理解に時間がかかるが、Clineがこれを支援してくれた。

  • オンボーディング支援
    • コードベースを読み込んで概要説明してくれるので、新しい人が早くキャッチアップできそう
    • ドキュメントが不十分な場合でも、プロジェクトの全体像を掴む助けになる
  • レビュー時間短縮
    • 知らない言語のレビューでも、変更概要を文章で出してくれるので時間短縮になりそう
      • AIの要約を起点にレビューを進めることで、効率化が期待できる(ただし、これは他のLLMでも工夫次第で可能)
  • ドキュメント作成支援
    • コードから簡単な仕様書をMarkdownで作れるのは引き継ぎに役立った

2. 実装・開発の加速

コーディング作業そのものも、AIエージェントによって効率化できた。

  • ゼロからの開発を支援
    • 他のファイルを参考に、フォームをまるまる生成してくれた
    • ゼロイチ開発には特に便利
  • 質の高いコード生成
    • 複数のメンバーが「Copilotより回答の質が良い」と評価
    • また、曖昧な指示でもある程度意図を汲んでくれるため、スムーズな開発体験に繋がるという意見もあった
    • テストコード修正においても、より文脈に合った提案が期待できた
  • 開発フローの改善
    • 「ブラウザのAIとエディタを行き来する手間が減った」という意見もあり、ターミナル内で作業が完結することによる集中力維持の効果もあった

3. 問題解決・調査の効率化

エラー解決や未知の技術調査においても有用的だった。

  • 調査の起点を提供
    • 何から手をつけるべきか分からない時、次のアクションを提案してくれるので、解決の糸口になった
  • コマンド実行と自動修正
    • 「コマンド実行→失敗→エラー箇所を自動修正、という流れを実行してくれた」という報告もあり、これがClineの際立った特徴であると感じた
      • この自律的な試行錯誤によって、デバッグ作業を大幅に効率化してくれた
  • 複雑なタスクの自動化
    • 「Next.jsのPage RouterからApp Routerへの変換作業で、Clineは自動で最後まで実行できた」という事例があり、大規模なリファクタリング等への応用も期待できた

結論:Cline とても便利

メンバーから寄せられた意見を総合すると、Clineは開発の様々なフェーズにおいて開発者の負担を軽減し、生産性を向上させられそうでした。

コーディングを任せられるのはもちろんですが、他にもコードの読解やレビュー、ドキュメント作成といった「理解」に関する作業の効率化に役立ってくれるので、チームへの新規参画やプロジェクトの引き継ぎをスムーズにし、属人化の解消につながります。

特に注目したいのは問題解決における自律的能力です。
コマンド実行やコード上のエラーを自動で修正、実行できる自立性は、従来のAIコーディング支援ツールとは違う「エージェント」としての強力なポテンシャルを感じさせてくれます。

また、完全に主観となりますが、CursorのAIチャット機能よりも精度が高い印象でした。
これに関しては選択するAIプロバイダーやそのバージョンによって大きく変わりそうです。

導入の懸念

メリットが多い一方で、懸念点もいくつか挙げられます。

費用

Cline自体はオープンソースのため無料で利用できますが、選択したAIプロバイダーのAPI料金が従量課金で発生します。
そのため「細かい修正に使うには費用が高いかも」「大量のコード生成時のコストが気になる」といった声もありました。

そのため、大きな工数削減が見込めるタスク(ゼロイチ開発、大規模改修、複雑な問題解決)に限定して利用するなど、ある程度の戦略的な活用が重要そうです。
また、タスクの複雑さや対話量によってコストが変動するため、タスクごとに適切にセッションを切り替えるなどの多少の工夫も必要です。

あまり費用を気にしすぎでCline使用を控えすぎると本末転倒なので、そこの見極めの感覚は利用を重ねていく上で身につけていけたら良いかと思います。

Cursorだと定額制でClineと同じような機能も使えるため(しかもgithub copilotのようなコード補完もしてくれる)そちらの導入も検討しました。
ですが、本格導入となった際にビジネスプラン $40/月 をメンバー分購入すると考えると、いったんは従量課金制のClineで様子を見た方がコスパがいいとなりました。

使用していく上でのリスク

他のAIツールでも言えることですが以下のような注意点もあります。
費用での話と被りますが、従量課金制なので曖昧指示によるコスト増が発生しないかは特に気をつけたいところです。

  • 要件理解の曖昧化リスク
    • AIが過度に補完し、要件確認の機会を逃す可能性
      • 「AIの提案を鵜呑みにせず、必ず確認プロセスを入れる」ことが重要です
  • 曖昧指示によるコスト増
    • 意図が伝わらない指示は、試行錯誤を増やしコスト増に繋がる可能性。
      • 「明確な指示(プロンプト)を心がける」スキルが求められます。
  • 生成コードの品質担保
    • AI生成コードもレビューは必須。
      • 処理が正しいか追いきれない場合もあるため、細かなコミットやテストが重要です。
  • 情報セキュリティ
    • ソースコードを外部APIに送信するため、セキュリティポリシーの確認とリスク評価が必要です。

まとめ

今回Clineの導入検証をしてみて、今後の開発でかなり強力なツールになりそうだと感じました。
コードの読解を手伝ってくれたり、実装が早くなったりするのはもちろんですが、特にコマンド実行やエラーの自動修正みたいな自律的な動きは、開発の生産性を高く向上してくれそうです。
コード書くのが楽になるのはもちろん、新しいメンバーの助けになったり、誰か一人しか仕様がわからないみたいな状況を減らすのにも役立ちそうです。

ですが、API利用料がかかることや上記で挙げたような注意点(要件の確認漏れ、コード品質、セキュリティとか)も考慮しないといけません。
特にコスト面では、どの場面で使うか考えたりプロンプトを工夫したりするのが大事になりそうです。

結論としては、Clineは、メリットとリスクをちゃんと理解して使えば、開発のやり方をいい方向に変えてくれると感じています。
この記事が、Cline導入を考えるときの参考になれば嬉しいです。

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