RubyKaigi 2025 に参加してきました
はじめに
エンジニアの才記です。普段は Ruby on Rails でブルーモのバックエンド開発を主にやっています。
先週 RubyKaigi 2025 Day1, Day2 の速報記事を公開しましたが、皆様ご覧になっていただけましたでしょうか?もしまだ読んでいない方がいらっしゃいましたら、以下の記事からどうぞ!
Day1, Day2 ときて Day3 のまとめ…ではなく、本記事では RubyKaigi 2025 総まとめ的な感じのことを書いていこうと思います。
…が、せっかくなので Day3 のセッションもちょっとだけ書いておこうかと思います。
セッション紹介 Day3
Ruby Committers and the World
RubyKaigi 名物、 Ruby Committers が壇上に会して激論(?)を交わす時間。
Matz とコミッターたちが Ruby をどういうふうにしたいのかが垣間見えて非常に楽しいセッションです。
今年も真面目なものからちょっとネタっぽい感じのものまで、様々なトークテーマが用意されていました。流行りのAIの話、Rubyに欲しい機能、逆に消したい機能、Static Barrier...
中でも面白かった、印象に残っているトークは、「後方互換性を無視していいとして、新しく入れたい機能は?」というトークテーマに対する「インラインコメントが欲しい」という要望についての話でした。
「後方互換性を無視していい」という前提があったはずなのに、いつの間にか後方互換を残してどういう記号なら実現できるかを真剣に議論していた、というのが非常に印象に残っています。
( (||)
を考えていたけど今後 |
周りで不具合が出るようになってしまうのでは?とか、 #
の後ろに何か記号をつけてインライン化できないかと思ったが #
の後に任意の文字が入りうるために既存のコメントが壊れかねない、とか)
Ruby という言語とそれに携わっている人々が後方互換性というものをどれだけ大事にしているかが垣間見えた気がして非常によかったです。
Matz Keynote
これを外すわけにはいかなかった、 RubyKaigi を締めくくる Matz Keynote。
舞台奥になんか穴が空いてると思ったら下から迫り上がってきました。何を言っているのか分からないかと思いますが本当なんです。
(以下は知人の撮影した動画です)
上記のせりあがり Matz で全部持って行かれた感がなくもないですが、その後のお話ももちろん良いものでした。
タイトルとしては AI 時代のプログラミング言語、という感じで、この先 AI がさらに発展していくであろう遠くない未来において、どういうプログラミング言語が良いのか?を考えるような時間でした。
現状人気の言語が静的型の言語になっていることであったり、実際静的型言語は楽しいという話であったり、今の AI 的には静的型言語の方が何かと都合が良いという話がまず最初にありました。これは実際正しいと思っています。AI が持っている(学習に使われた)コード量という意味でもそうです。
が、しかし。AI がより賢くなっていった少し未来であれば、「より短く、最小限、人間が理解しやすいコードであること、が良いプログラミング言語の条件になってくるのではないか?」と。また「拡張性が高く、いろいろな分野に使える言語であること」も大事そうであると。
そう、これは Ruby の持っている特徴と一致しています。今はまだ他のプログラミング言語の方が優勢ですが、いずれ Ruby が好まれるようになってくる可能性も十分あるだろう…というお話でした。
納得感はありつつ、実際の未来がどうなるかはもちろん分からないことも多いですが、個人的には上記のような未来が来たらいいなぁと思っています。
RubyKaigi 2025 はどんな内容だったか
さて、ここからは RubyKaigi 2025 全体の総括に入っていきたいと思います。
今回の RubyKaigi、大きくまとめると
- やはり世はまさに大parser時代
- Ruby はまだまだ早くなる
- 広がる Ruby 活用の幅
- みんな音が好き
という感じになるのかなと思ったりしました。前3つは順当な RubyKaigi の内容という感じですが、個人的には4つ目の「音」関連の発表がいろいろあったところが個人的には今年のハイライトです。
やはり世はまさに大parser時代
ここ数年の RubyKaigi で毎年のように言われているのが「世はまさに大parser時代」です。
私が聞いた範囲だけでも1日に1本以上は Parser に関する話が出てきていたり、またある発表中で別の(後日や同日後に行われる)関連発表の話が出たりする程度には多くの発表がありました。
一昨年〜去年がやはり開発真っ只中でかなりホットな話題だったので、それに比べると少し発表の数自体は落ち着いたのかなという気もしますが、去年12月リリースの Ruby3.4からデフォルトパーサが Prism になったことで変わらず話題としてはホットなままだったように思えます(デフォルトになったことで利活用の幅が一気に広がったのが大きいのかなという気がしています)。
おそらく次回の RubyKaigi でも変わらずこのあたりの話は行われると思うので、それまでにもう少し理解できるように学んでおきたいところです。
背景や歴史もかなり複雑ですし、そもそもパーサとはというところから既に難しいのでハードルは高いですが、少しずつでも…
この辺りの話は @hachi8833 さんのまとめ記事がとても参考になりそうなので読んでおきたいところ。
Ruby はまだまだ早くなる
Ruby3 になってかなりの高速化が行われた Ruby ですが、それでもまだまだ高速化の試みに関する発表がいろいろあったなぁという印象です。
特に ZJIT は発表中でもゲームチェンジャーになるという言葉が出ていたぐらいなので、 Ruby4 ではさらに早くなっていくと思うと非常に楽しみです。
早くなってくれるのは嬉しいものの、今の Ruby らしさ、書いてて楽しい言語であることは変わらずにいて欲しいなぁと思っています…が、ここに関しては Ruby Committers and the World しかり、 Matz Keynote しかり、今の Ruby コミュニティがある限りはまず変わらないだろうとは思ってはいます。
早くなるとは若干違うところかもしれませんが、結構 ZJIT や Static Barrier などでも言われていたのがリソース(主にメモリ)の削減観点だったりしたので、この辺りが改善されると確かにより嬉しい場面は多そうだなとも思いました。クラウドインフラのメモリとか高いですしね…
広がる Ruby 活用の幅
RubyKaigi に来ると普段知らない Ruby の話がいろいろ聞けて面白いです。
今年も mruby, MicroRuby, PicoRuby, wasm などの様々な Ruby 実装の話だったり、GrooveBox を作ったり、MIDI コントローラを作ったり…普段使っている Web アプリケーション開発言語としての Ruby とは違う側面をいろいろ見れるのは非常に興味深く、面白いものです。
特に自分は自作キーボードに多少興味がある人間なのですが、 PicoRuby で自作キーボード関連のコードを書くということがちらほら行われているっぽいので、そこも触ってみたいという気持ちがあったりします(まだ全然触れてないのですが…)。
みんな音が好き
上記の活用の幅の話とも関連するのですが、今年はなんか Ruby x 音みたいな感じの話がちょこちょこ発生していたのが面白かったところです。
例えば初日の TRICK。ぺんさんの作品は波の音を生成するようなコードでした。かなり綺麗でそれっぽい波の音が生成されていてすごかったですね…
例えば2日目の Groovebox, Ruby で電子楽器を作ってその場で音も鳴らしてデモもされていて良かった。結論、まとめの時にいい感じのBGMが鳴っていたのを覚えています。
他にもLTでのゲームBGM作成に、 MIDI コントローラを Ruby で作る話などもありました。会場や実況も盛り上がっていました。
個人的には Ruby の書きやすさ、書いてて楽しいところはこういうエンターテイメント系のプログラミングと相性がいいというか、 Ruby で上記のようなコードを書けると楽しいよねという気持ちが合ったりします。C とかで書かないといけないのが辛いとも言う。
Web アプリケーション開発での利用が多い言語ではあるものの、いろいろなところでもっと Ruby が使われるようになったらいいなぁ、と思っています。
さーて、来年の RubyKaigi は?
さて、スポンサーブースでも来年の開催地予想が行われていたようですが、皆様は来年どこだと予想していましたでしょうか。
Matzを絡めた「浜Matz」説、ありそうでなかった「金沢」説、沖縄があったならここもアリだろ「北海道」説、Rubyistといえば美味いものと日本酒「新潟」説、などなどありましたね。私は金沢or北海道を推していました。新潟も好きですが。
というわけで次回は「北海道(函館)」です!!!
確かに地域単位で見ると北海道だけ抜けてますね…北陸は別じゃないかとか区分に関してはいろいろ考え方ありそうですが…
それはさておき、来年に向けて様々予習をしつつ、また来年も最大限に RubyKaigi を楽しみましょう!
まとめ
以上、今年の RubyKaigi 全体を通しての総括でした。
私は2017年のRubyKaigi@広島から(TakeOut を除いて)毎年参加しているのですが、Ruby3x3 を目指していた頃から本当に3倍早くなって、型も導入され…
RubyKaigi というイベントは、毎年参加するたび、次の Ruby が、次の RubyKaigi が楽しみになるようなイベントだと思います。
初めて参加しても楽しいのですが、毎年継続的に参加しているとだんだん内容の理解度が上がってきたり、 Ruby がどうなっていくのかがなんとなくわかるようになってきて、より参加してセッションを聞くことが楽しく、意義のあるものになってくるような気がしています。
何より毎回参加するたびに Ruby コミュニティのかけがえのなさを痛感するので、 Ruby を使うものとして、参加して少しでもコミュニティを盛り上げることに貢献できたらなと思っています。
雑感
という訳で今日までの3日間、 RubyKaigi2025 について3本の記事を書いてきました。いかがでしたでしょうか。
速報記事を書くのは結構大変だったのですが、一方でその日のセッションの復習ができたり、書くこと自体が思いのほか楽しかったりと、やってよかったかなと思っています。
来年以降も似たようなことをした…いような、結構疲れたので来年はもうちょっとライトにしたいような…もしかしたらやるかもしれないので、来年の私にご期待ください。
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最後になりますが、ブルーモでは Ruby エンジニアを積極採用中です。
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