見積もりは絶対じゃない。『アジャイルサムライ』が教えてくれた安心感
はじめに:「見積もり=約束」だと思っていた
正直に言うと、僕はこれまでアジャイル開発に詳しくありませんでした。
仕事ではスプリントという言葉を耳にすることはあっても、
「それって結局、タスクを細かく分けて早く終わらせる方法でしょ?」
くらいの理解でした。
だから「見積もり」という言葉を聞くと、
“ズレてはいけないもの”
“外したら怒られるもの”
そんなプレッシャーの象徴みたいに感じていたんです。
でも『アジャイルサムライ』を読んで、その考えがガラッと変わりました。
この本は、まるで“呪い”を解くように、
「見積もりは絶対ではない」と教えてくれたのです。
「正確な見積もり」よりも「学びの見積もり」
本の中で特に心に残ったのがこの一文。
「見積もりは未来を予言するものではない。
チームがどのくらいの速さで進めそうかを学ぶための出発点だ。」
それまで僕は、見積もりを“精度の勝負”だと思っていました。
でもアジャイルでは、見積もりは学びのための仮説なんです。
「やってみなければわからない」
そんな現実を前提にして、
チームで考え、見積もり、実際に進めてみて、
ズレたらそのズレから学ぶ。
最初から完璧を目指すのではなく、
**“動きながら正確になっていく”**のがアジャイル的な見積もりなんだと気づきました。
ストーリーポイントとベロシティの考え方が新鮮だった
アジャイルでは、時間ではなくストーリーポイントという“相対的な大きさ”で見積もります。
「このタスクは基準より 2 倍くらい大変」「これは少し軽め」など、
チーム全員で話しながら決めていく。
そして、数スプリント進めていくうちに、
「自分たちは 1 スプリントでだいたい 20 ポイントくらい進める」とわかる。
これがベロシティです。
この“自分たちのペース”を基準に計画していく流れがとても人間的で、
僕にとってはかなり衝撃的でした。
「精密な予言ではなく、現実から学ぶためのリズムをつくる」
この発想が、なんとも気持ちいいんです。
「多めに見積もる」は正解ではなかった
僕は正直、これまで「見積もりは多めに取っておくのが安全」だと思っていました。
でも『アジャイルサムライ』では、それはチームの信頼を壊す危険があると書かれていました。
多めに見積もれば、確かに安心です。
でもそれは「真実の速度」を見えにくくしてしまう。
チームが本当に改善すべきポイントも、見えなくなる。
アジャイルの見積もりは、“余裕を持たせる”のではなく、
**“ズレる前提で学ぶ”**ことを重視します。
そう考えると、
「完璧な見積もりを出そう」と力む必要なんてなかったんです。
ベロシティが落ちたとき、焦らなくていい
さらに印象的だったのは、「ベロシティが落ちたとき」の話。
著者のジョナサン・ラスマッソンはこう言っています。
「ベロシティはチームの健康を映す鏡。
数字を叩いて上げようとするのではなく、鏡を磨け。」
つまり、スピードが落ちたら「もっと頑張れ」ではなく、
「どこかに無理が生じていないか」「何か新しい挑戦をしているのか」
とチームの状態を見つめ直すチャンスなんです。
僕のチームでも、タスクが増えたり、新しい技術を取り入れたりすると
一時的にスピードが落ちることがあります。
でもそれを“失敗”ではなく、“学びの期間”と捉えられるようになったことで、
精神的なプレッシャーがかなり減りました。
「見積もり=約束」から「見積もり=仮説」へ
アジャイルを学んで僕が一番ホッとしたのは、
「見積もりは約束ではなく、チームが学ぶための仮説」だと知ったことです。
以前は、上司や顧客に見積もりを出すたびに、
「これ、もしズレたらどうしよう」と不安でした。
でも今は、「ズレること自体が学び」と思えるようになりました。
見積もりは、未来をコントロールするためではなく、
未来に対応できるチームになるための道具。
そう考えるようになってから、
数字に縛られず、もっと“チームの会話”に集中できるようになった気がします。
明日からできること
-
見積もりを「正確さ」ではなく「学びの出発点」として扱う
→ 外れてもいい。そのズレが次の改善のヒントになる。 -
スプリントを短く区切って小さく学ぶ
→ 大きな見積もりよりも、小さな成功を積み重ねる。 -
ベロシティを「評価」ではなく「体温計」として使う
→ 下がったときは、チームの状態を見直すチャンス。
おわりに:「正確さ」より「誠実さ」を大切にしたい
『アジャイルサムライ』を読んでから、
僕は「正確な見積もり」を出すことよりも、
チームに対して誠実でいることのほうが大切だと思うようになりました。
アジャイルは、“ミスをしない方法”ではなく、
“ミスから立ち直れるチーム”をつくる方法。
見積もりを恐れず、学びながら進もう。
完璧じゃなくていい。
チームで考え、試し、修正していけばいい。
もし今、見積もりに悩んでいるなら——
それは、あなたが“ちゃんと届けたい”と思っている証拠です。
だからこそ焦らず、一歩ずつ、学びながら進めば大丈夫です 🌿
Discussion