「伸び悩んでいる3年目Webエンジニアのための、Python Webアプリケーション自作入門」を更新しました
本を更新しました
チャプター「テンプレートエンジンを実装する」 を更新しました。
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以下、書籍の内容の抜粋です。
テンプレートエンジン?
さて、この章ではいわゆる「テンプレートエンジン」なるものを実装していくのですが、「テンプレートエンジンとはなにか」をくだくだと説明することはしません。
私達は難しい言葉について理解したいのではなく、単に便利に使えるWebアプリケーションを作りたいだけなのです。
ですので、この章でもやることは単純で、ここまで作ってきたWebアプリケーションを見渡してみて「ここ使いにくいな〜」「ここ見にくいな〜」と思うところをただ改善していくだけです。
それが終わって気がついてみれば、結果的に世の中ではテンプレートエンジンと呼ばれているものを作ることになっていた、と、そういう仕立てになっています。
STEP1: レスポンスのテンプレートをHTMLファイルに切り出す
では、具体的に「ここ使いにくいな〜」ポイントについて見ていきます。
この章で扱うのは Pythonのソースコード(views.py
)の中でHTMLを作っている 部分です。
以下は、現在のviews.py
からの一部抜粋です。
def now(request: HTTPRequest) -> HTTPResponse:
"""
現在時刻を表示するHTMLを生成する
"""
html = f"""\
<html>
<body>
<h1>Now: {datetime.now()}</h1>
</body>
</html>
"""
body = textwrap.dedent(html).encode()
content_type = "text/html; charset=UTF-8"
return HTTPResponse(body=body, content_type=content_type, status_code=200)
レスポンスとして返すHTMLを、pythonのf-string(変数展開のできる文字列)を使って構築しています。
これはこれでお手軽にHTMLを作れて良いのですが、ちょっと大きめのWebページを作ったことのある人はわかると思いますが、普通のWebページはたった1ページのHTMLだけで何百行〜何千行もあるものです。
それをこのviews.py
に全部書いていては見通しは悪くなるのは自明です。
また、htmlを記述している部分はエディタからするとただのpython文字列に見えるでしょうから、エディタの強力なHTML作成補助機能の恩恵を受けづらいという側面もあります。
(シンタックスエラーなどを表示してくれなかったりなど。)
そこで、htmlを構築する部分を外部ファイルに切り出し、これらの問題を解決していきましょう。
まずはこのnow
関数だけ、HTMLを外部に切り出してみたのが以下になります。
ソースコード
study/vies.py
study/templates/now.html
レスポンスの雛形となるhtmlファイルは、新たにtemplates
というディレクトリを作り、そこの中にまとめることにしました。
解説
study/vies.py
14-16行目
with open("./template/now.html") as f:
template = f.read()
html = template.format(now=datetime.now())
やっていることは難しくないでしょう。
pythonの文字列として作っていたHTMLを外部ファイルから読み込むことにして、.format()
メソッドによって変数の置き換えを行っているだけです。
ここでは、now
という変数をHTMLファイルの中に記載しておき、それを後から.format()
によって現在時刻に置き換えています。
study/templates/now.html
<html>
<body>
<h1>Now: {now}</h1>
</body>
</html>
こちらも特に説明はありません。
pythonの文字列として定義していたものを、HTMLファイルに切り出しただけです。
ただし、注目すべき点として、htmlファイルになったことでエディタの支援が受けられるようになっているということです。
恐らく皆さんが使っているようなモダンなエディタであれば、シンタックスハイライト(色付け)がされるようになったでしょうし、恐らくEmmet記法なども使えると思います。
エディタの機能を豊富に使えるかどうかというのは開発速度に大きく影響する部分なので、これだけでもかなりありがたいですね。
コラム: Emmetとは
Emmet
とは複雑なHTMLを短い記法で表現する記法(あるいはマークアップ言語)のことで、ご存知でない方は、htmlファイルで何もないところに!
とだけ入力して、Tab
キーを押してみてください。または、h1*3
とだけ入力してTab
キーを入力してみてください。
PyCharm
やVisual Studio Code
、Sublime Text
などといった最近のエディタであれば、HTMLタグが展開されると思います。
他にも色々な短縮記法が使えるので、是非調べてみてください。
動作確認
まだ改良したいポイントはたくさんありますが、まずはこまめに動作確認をしておきましょう。
サーバーを再起動したらブラウザで http://localhost:8080/now
へアクセスしてみましょう。
以前までと変わらず、現在時刻が表示されていれば問題ありません。
STEP2: お決まりの処理をフレームワーク内に隠蔽する
さて、HTMLファイルを切り出せただけでも結構な偉業ですが、view関数の中に
- ファイルを開く (
open()
) - ファイルを読み込む (
read()
) - 変数を置き換えるためのメソッドを呼び出す (
format()
)
などの処理が残ってしまっています。
しかも、これらの処理はHTMLを外部から読み込む場合には今後も毎回必ず必要になります。
たった2行ほどのことではありますが、エンジニアは繰り返しを嫌うものですから、これらもフレームワークの中に隠蔽してしまいましょう。
ソースコード
それがこちらです。
study/henango/template/renderer.py
study/vies.py
henango
の中にtemplate
というディレクトリを作り、そこにHTMLの構築に関する共通機能をいれることにしました
解説
study/henango/template/renderer.py
def render(template_path: str, context: dict):
with open(template_path) as f:
template = f.read()
return template.format(**context)
こちらはview関数の中でやっていたことをそのまま持ってきただけなので、とくに解説することもないでしょう。
study/views.py
15-16行目
context = {"now": datetime.now()}
html = render("./templates/now.html", context)
ファイルがどうとかwithがこうとか、わずらわしいことは全てrender()
関数に隠蔽し、テンプレートファイル名とパラメータを渡すだけでよくなりました。
ちなみに、パラメータはdjangoに倣って辞書で渡すことにしました。
行数でいうとたった1行減っただけですが、私はかなりスッキリしたように感じます。
動作確認
しつこいようですが、動作確認はこまめにやりましょう。
サーバーを再起動したらブラウザで http://localhost:8080/now
へアクセスし、表示を確認しておいてください。
STEP3: テンプレートファイルの置き場を設定値で変えられるようにする
ところで、雛形となるHTMLファイル(以下、テンプレートファイルと呼びます)の置き場は独断でstudy/templates/
の下にまとめておくことにしましたが、この置き場所はプロジェクトによって変更したくなることがあるでしょう。
static
ディレクトリのときと同様に、settings
に設定値を切り出すことで、フレームワークに手をいれなくても簡単に変えられるようにしておきましょう。
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