脱 KPT 法で楽しく有意義に振り返り! Sailboat Retrospective

2023/02/27に公開

この記事では私たちのスクラムチームでも導入した、スクラムのレトロスペクティブ (振り返り) 手法として海外で著名なフレームワークSailboat Retrospective (帆船の振り返り、帆船アジャイル手法) を紹介します。

サクッと読みたい方はこちらのスライドもどうぞ。

※ この記事に記載の内容は当時の情報です。最新の状況を反映していない可能性があるため、ご了承ください。

背景

皆さんのスクラムチームでは、振り返りでどのフレームワークを使用していますか?

以前私たちは、KPT法を使用していました。付箋を「Keep」「Problem」「Try」のカテゴリに分けて貼っていく手法です。

この手法では、ドキュメント化して報告しやすいという利点がありますが、次のデメリットがありました。

  • 何を書けばいいのかわからない
  • 短期的・長期的な事柄が混ざってしまう
  • プロダクトゴール、スプリントゴール以外のことに話が発散してしまう
  • 反省会になりがち

そこで、私たちのチームではSailboat Retrospectiveというフレームワークに切り替えました。

Sailboat Retrospective とは

ゴールに向かっていく、海に浮かんだヨットをイメージしたイラストに付箋を貼っていきます。

ホワイトボードに次の6つを絵で書き込みます。チームの特性に応じてカスタマイズできますが、チーム内で要素の意味に対して共通認識を持つようにしましょう。

要素 意味
Sailboat (ヨット) 進捗 (スプリント)
Island (島) チームが達成したいゴール (プロダクトゴール・スプリントゴール)
Sun (太陽) 嬉しかったこと (ゴールと関係なくても OK)
Wind (追い風) ヨットを進める追い風、チャンス
Anchor (錨) ヨットを遅らせるブロッカー
Reef (暗礁) ヨットを座礁させる将来的なリスク

Sailboat Retrospective のイラスト例。海の上にヨットのイラストが浮かんでおり、右の島のイラストに向かって進んでいる。空に太陽と追い風のイラストがある。海の下にはヨットに繋がれた錨のイラストがある。ヨットと島との間には暗礁のイラストがある。

Sailboat Retro Created by Brody (CC BY 4.0)

ホワイトボートツールであれば、テンプレートが用意されているのでまずはそのまま使えばOKです。

オフラインであれば、みんなでワイワイお絵描きするのがおすすめです。チームのムードが絵に現れます。

https://www.figma.com/community/file/967321073661280669

https://miro.com/ja/templates/sailboat-retrospective/

Sailboat Retrospective の特徴

私たちのスクラムチームは、振り返りのフレームワークをKPT法からSailboat Retrospectiveにお試しで変更してみました。

2 Sprintsほど試したところ、 KPT法と比較して次のようなメリットがあることがわかり、チームの振り返り手法として採用することにしました。

  • 短期的・長期的な事柄を区別できる
  • ブロッカーとリスクで分けることで、Problemのコメントが出しやすくなる
  • プロダクトゴール、スプリントゴールに関することに話を集中させることができる
  • イラストを用いることで視覚的に優れ、より楽しい場にできる

次のスクリーンショットは、私たちのホワイトボードです。FigJamを使用しています。

最初はテンプレートを活用していましたが、メンバーで意見を出し合い、少しカスタマイズしています。

具体的には、島を2つに増やしスプリントゴール (短期的) とプロダクトゴール (長期的) に時間軸を広げました。

また、モヤモヤや気にかかることの共有を目的に Cloud (雲) という要素を追加しました。

Sailboat Retrospective のボードに付箋を貼った例。付箋にはいいね!などのスタンプを貼り付けている。元あった島よりも先にプロダクトゴールとしての島を新たに追加している。それぞれの島のイラスト付近には、スプリントゴールとプロダクトゴールを貼り付けている。太陽の隣に雲を新たに追加している。

振り返りアジェンダの例

私たちは次のようなアジェンダで進行しています。進行はスクラムマスターが行っています。

  1. 前のSprintで設定したアクションを振り返る
    • アクションを取れた場合、付箋を剥がす
    • アクションを取れなかった場合は原因を議論して、キープするか別のアクションを取るか決定する
  2. 4分測り、各自で今のSprintでの出来事や感想などを付箋に書いて各要素に貼る
    • トピックが多く、時間足りない場合は適宜伸ばす
    • ホワイトボードツールでBGMを流して静まり返らないようにする
  3. 各メンバーから順番に、貼った付箋について発表する
    • 他のメンバーは褒めたり、リアクションスタンプを押したりして盛り上げる
  4. 1分測り、各自で次のSprintでのアクションを決めたい付箋にドット投票する
    • 投票数の制限は設けず、1人あたり何票投票してもよい
    • 投票の色、種類などで投票者を明確にする
  5. 投票が多い順番で付箋をアクション欄に移し、次のSprintでのアクションを議論する
    • スクラムマスターは議論の内容やアクションを別の付箋に書いて貼る
    • 次回は気をつけるなどの暗黙なアクションにはしない。Working Agreement (チームのルール) 化やユーザーストーリーの追加、修正など、残る形でのアクションにする

まとめ

振り返りのフレームワークをKPT法からSailboat Retrospectiveに変更しました。殺伐とした反省会を一転させ、より楽しく、有意義な振り返りにできました。

海外では著名なフレームワークであることからテンプレートも多数存在しており、簡単に始められるのでぜひ試してみてください。

他にもオススメの振り返り手法があれば、ぜひコメントで教えてください!

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