ドリルダウン/ドリルアップとドリルスルー機能の違い
はじめに
Power BIにはドリルダウン/ドリルアップとドリルスルーの2つの機能があり、名前が結構近いが、かなり異なる機能である。
ドリルダウン/ドリルアップとドリルスルーの違い
ドリルダウン/ドリルアップは同じビジュアル上で表示するデータの粒度を変更する機能である。
その内ドリルダウンはデータの粒度を細かくする。例えば年単位の集計を四半期単位の集計に切り替える際に使用する。
逆にドリルアップはデータの粒度を荒くする。例えば四半期単位の集計を年単位の集計に切り替える際に使用する。
対してドリルスルーはページ間で特定のフィールドの値の選択を共有するための機能である。
例えば日ごとの売上合計を示すページで、特定の日付に対し別のページにドリルスルーし、飛んだ先のページでその日のより細かい内訳、もしくはまったく別の種類の情報(出勤人数とか)を参照するなどが主な使い方である。
各機能の詳細比較
ドリルダウン/ドリルアップ
機能の目的
同じビジュアル上で、より細かい粒度のデータを展開する、もしくは荒い粒度に戻す。
前提条件
ドリルダウンを使用するには、ビジュアルに設定したDimensionが階層状である必要がある。
日付階層みたいに最初からPower BIの中で「階層」として指定したものでもいいし、
わざわざ「階層」を作らずに、それぞれの次元に該当するフィールドを単純に並べただけでも問題ない
ビジュアルによってドリルダウンが機能する場所が違う。例えばマトリックスなら行と列、折れ線グラフならX軸がドリルダウン機能に対応する。
使用方法
ドリルダウンとドリルアップが使えるビジュアルにカーソルを合わせたり、もしくは選択するとビジュアルの右上に下記のようなアイコンが出現する。
- ドリルダウン
- ドリルアップ
- 階層内で1レベル下をすべて展開
- 階層内の次のレベルに移動
ドリルダウン
ドリルダウンのアイコンを押すと、ドリルモードがONになり、アイコンの色が変わる。
ドリルモードがONになっている状態でマトリックスの階層列の特定の行や、折れ線グラフの特定の点など(ビジュアルごとに違う)をクリックすると、階層内の現レベルの値をクリックしたところの値に限定した上で、1レベル下を展開してくれる。
例えば下はドリルダウン前のマトリックスで、産業分類_Lv1まで展開した状態である。
ここで「建設業」をクリックしてドリルダウンすると、「建設業」の下の産業分類_Lv2が展開され、代わりに「建設業」以外の産業分類_Lv1の項目が全部消える。
これがドリルダウンである。
ドリルアップ
ドリルダウンの逆で、ドリルダウンの操作を1回撤回し、1レベル上に戻る。
ドリルダウンとは違ってアイコンを押す度に1回ドリルアップされ、特定のデータを選ぶ必要はない。
おまけ:「階層内の次のレベルに移動」と「階層内で1レベル下をすべて展開」
「階層内で1レベル下をすべて展開」は現在レベルの区切りを維持した上で、1レベル下の情報を更に展開する。
例えば下の日付階層でグラフを描く場合、
「年」から「階層内で1レベル下をすべて展開」をすると、年ごとの四半期を横に展開してくれる。
対して「階層内の次のレベルに移動」は1レベル下を展開するが、その際上のレベルを特定の値に制限しない。
例えば「年」から「四半期」に「階層内の次のレベルに移動」すると、横軸の単位が年から四半期に変わるが、同じ四半期名の全年度分のデータが集計される。
ドリルスルー
機能の目的
ページ間で特定のフィールドの値の選択を共有するための機能である。
前提条件
目標ページ(ドリルスルーして飛んだ先のページ)の「視覚化」パネルの「ドリルスルー」のところに、対象となるフィールドを設定することで、「ドリルスルー」が有効になる。
またデフォルトでは「すべてのフィルターを保持する」がチェックされる。この場合、他のページのビジュアルから目標ページにドリルスルーしたら、目標ページのドリルスルー対象となるフィールドとして設定されているか否かによらず、そのビジュアルにかかっているすべてのフィルター(スライサーの効果も含む)が目標ページ全体に適用される。
例えば上記では産業分類のLv1とLv2しか対象となるフィールドとして設定していないが、このページにドリルスルーしたら、日付のスライサーの設定や、ビジュアルに設定したその他のフィルターも同時に適用された。
この動作が望ましくない場合は「すべてのフィルターを保持する」のチェックを外す必要がある。そうすると下記の画像のように、このページにドリルスルーしたら、最初から設定されている産業分類のLv1とLv2しかフィルターが設定されなかった。
以上の設定をすることで、対象となるフィールドを使って作成されたビジュアルであれば、そのビジュアルがどのページに置いてあっても、そこから目標ページにドリルスルーできる。(ドリルスルーの元となるページという設定は特にない)
使用方法
ボタンを使用する方法と使用しない方法がある。
ボタンを使う場合のメリット:
- ユーザーがドリルスルーできることを一目で分かる
ボタンを使う場合のデメリット:
- ページ上でボタンを配置するスペースを用意する必要がある
- ビジュアルをハイライトにする必要があり、スライサーを起点にドリルスルーすることができない
ボタンを設置しない基本的な使用方法
対象となるフィールドを使って作成されたビジュアルで、選択したいマトリックスの行やグラフの点などに対し右クリックすると、出てくるメニューの「ドリルスルー」のサブメニューに、目標ページの一覧が表示されるので、ドリルスルーしたいページを選ぶ。(前提条件の設定をしていないとメニューの「ドリルスルー」項目自体が表示されない。)
ボタンでドリルスルーする方法
まずボタンとなるものを設置する。
ボタンの書式設定パネルで「アクション」を以下のように設定すると、ボタンでドリルスルーすることが可能になる。
ドリルスルーしたい場合、ビジュアルの該当の行やグラフの点などをクリックでハイライト状態にしてからボタンを押せばいい。
ドリルスルーのボタンは特定のビジュアルと紐づく設定はないので、同じページにあるどのハイライト可能なビジュアルでも同じ動きをする。
この方法はビジュアルをハイライト状態にしないといけないので、スライサーなどを元にドリルスルーすることはできない。
注意事項
目標ページにドリルスルーした後、対応するフィルターが目標ページ全体にかかった状態になる。これらのフィルターは目標ページ内のスライサーで解除することができない。(スライサー自体もフィルターがかかって他の値を選択できない。)もう1回目標ページにドリルスルーすればフィルターが全部上書きされる。
発行したレポート内で、それ以外の方法でフィルターを解除するには、ページの右側にあるフィルターパネルでフィルターをクリアするか、もしくはレポートのリセットボタンでレポート全体を初期設定にリセットする必要がある。前者は一般ユーザーにとって慣れない操作であることが多く、後者は他のページの設定にも影響してしまう。従って、一般的には目標ページを非表示にしてドリルスルー専用にするのが好ましい。
どうしても目標ページをドリルスルー用と一般用の両用にしたい場合、以下の動画が参考になる。
参考
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