Alibaba製AI IDEのQoderを試してみる
びーぐるです🐶
先日、中国を代表するテクノロジー企業AlibabaからAI IDEのQoderが発表されました。
説明を読む限り面白そうな機能を搭載しているため、今回はこちらを試してみたいと思います。
更新履歴
- 2025/08/25 公開しました
- 2025/08/26 導入方法 - WSLへの接続が可能な旨, その他の機能を更新しました
- 2025/08/31 利用規約について追記しました
利用規約について(8/31追記)
本題に入る前に、Qoderの利用規約についてとりあげます。
この項目を追加する以前、私は以下のように記載していました。
本件に関して補足説明しておきます。
5.1にて、著作物の権利はユーザーが保持する、としながらもQoder側が「無条件・取消不能・非独占的・ロイヤルティフリー・永続・譲渡可能・サブライセンス可能なワールドワイドライセンス」を得るとしています。
思いつく限りの強そうな形容詞を大量に並べられても、何を言っているのか全くわかりませんが
Qoderで作成されたものは、Qoder運営側がユーザーと同等の権利を得て、行使できる
くらいには思ったほうがよいでしょう。
そのため、挙動の研究やPoC開発等、著作物の完成を目的としない用途でのみQoderを利用することを強くおすすめします。
なお、サービス利用規約はこちらになります。
Qoderとは?
冒頭の説明通り、QoderはAlibabaが開発したAIエージェントと連携したIDEです。
2025年8月22日にプレビュー版がリリースされました。
公式では明言されていませんが、間違いなくVSCodeのフォークです。
"Qoder thinks {deeper} to solve real software challenges."
(Qoderは真のソフトウェアの課題の解決のために{より深く}考える)
を中核に開発されています。
また、呼び方は/ˈkoʊdər/とありますので、coderと同様で良さそうです。
Qoderの機能
外見を含め、GitHub Copilotに酷似しています。以下の類似機能があります。
- コード補完機能
- AIチャット (Askモード、Agentモードが存在)
- インラインチャットでピンポイントにコードに関する問い合わせ・修正が可能
- MCP, コーディングルール(.qoder/rules)の設定が可能
各機能はGitHub Copilotを改善していて、一回り便利になっている印象を受けます。
また、独自機能として以下のものがあります。
- Spec駆動開発を開始するQuestモード
- Gitのリポジトリを深く解析するRepo Wiki機能
特にQuestモードはQoderの要となる機能かと思います。
利用できるモデル
AIコーディングで利用できるモデルは明かされておらず、自発的に選択することもできません。
中国の配布サイトでは
Qoderは、自社開発のNESモデルと、業界をリードする様々なAIモデル(Claude、Gemini、GPTシリーズなど)を統合しています。
タスクの複雑さとコストに基づいて、実行に最適なモデルを自動的に選択するため、開発者が手動で切り替える必要はありません。
とありました。
なかなか釈然としませんし、どうしてこのような判断になったのでしょう。
Alibabaには自社開発のQwenやQwen Coderがありますし、悪くないモデルですのでこちらを採用する手もあると思うのですが。
導入方法
上記サイトからダウンロードできます。
macOS、Windowsに対応しているのですが、Linux環境には未対応となります。
インストールを行い、Qoderアカウントでログイン(またはGitHub等と連携)すると、Qoderの機能が使えるようになります。
ログインは右上のアイコンやAIチャットウィンドウ、(デフォルトでは)左にあるアクティビティバーのアイコン"Quest" "Repo Wiki"よりできるかと思います。
注意すべき点は、WindowsでWSLの環境に接続して利用することはできません。
WSLへ接続しても何故かQoderアカウントのログインセッションが切断されてしまい、WSLを抜けるまで再ログインができなくなります。
(ですので、Kiroで使えていたサードパーティ製エクステンションを導入する手段は意味がありません。
8/26のアップデートにてWSLへの接続が可能になりました。
日本語化に関しましては、最近のアップデートでVSCodeの日本語エクステンションが導入可能になりましたので、そちらを利用します。
また、メニューの ファイル - ユーザー設定 - Qoder Settings - Language - Response Language for AI
を日本語にしておくとよいでしょう。
AIからの応答が日本語になります。
料金プラン
TBD(未定)となっています。
有料プランは2000リクエストが付与されるようです。
プレビュー版ユーザーも同等に2000リクエストが付与されていますので、ある程度試して消費度合いをチェックできそうです。
なお、今のところIDE側にクレジットの残量を見る機能がないため、以下のURLにアクセスして確認できます。
Questモード
Questモードとは、AIとの対話を通じ、これから行うことについて仕様書を先に作成してからタスクを実行していく機能です。
最近のAgentic Codingでよく採用されているSpec駆動開発(SDD)にあたるものです。
特に同じAI IDEのKiroの中核となっているSDDを強く意識したものに見えます。
Questモードの開始
アクティビティバーのQuestアイコン - New Taskボタンより開始できます。
Designフェーズ
新たに開いたチャットウィンドウに、自然言語で要件を記述していきます。
今のところこのチャットウィンドウはクセが強く(もしくはバグっている?ので)、テキストは他のエディタに記述して貼り付けたほうがよいでしょう。
さて、今回も人力で簡単に作れそうなものをあえて作らせてみました。
実際に要件を記述すると、以下のような画面になります。
はい、Kiroですね。緑がメインカラーになって、KiroちゃんがいなくなったKiroです。
Kiroとは異なり、こちらはすぐにDesignから始まっています。
いきなり設計から始められるものの、本当にこちらの要件を理解してくれているのかを確認するフェーズがなく、少々不安です。
Kiroのrequirements.mdの作成は一見冗長のようで、しかし双方の理解の確認作業に大変役に立っていたと理解できました。
で、このDesignフェーズで作られるマークダウンなのですが…
簡易的な要件定義が冒頭に加えられ、割と細部のアーキテクチャ仕様まできっちり定めて行くタイプとなります。
KiroがややPM, PdM寄りの設計書を記述するのに対して、Qoderはテックリードや、実装を担当するプログラマー向けの設計書とも言えそうです。
設計フェーズは自動的に終了せず、これで作り始めても良いという段階まで練ったらAccept Fileで確定させます。
設計フェーズでは数回のチャットで21クレジットを消費しました。
Action Flowフェーズ
右上にあるStart Nowボタンを押すとタスクが開始されます。
しかしタスクが具体的に明示されるわけでも、タスクについての議論フェーズがあるわけではなく…
簡易的なTo-doリストを提示したあといきなりコーディングを始めていきます。
あ、これClaude Codeだ…
数分程度でモノリシックなHTML, CSS, JavaScriptが作成されました。
この規模であれば、コーディング速度は良好かと思います。
このフェーズは23クレジットを消費しました。意外に少ないです。
Task Reportフェーズ
作成されたものを承認すると、最後に振り返りのフェーズがあります。
ここで想定していた要件定義やDesignフェーズで作成した文書と比較して、実装漏れがないか・矛盾がないかをチェックできます。
完成したもの
もう一つ作らせてみた
Todoアプリにちょっと複雑な要件を追加したものです。本来はKiro用に作成させようとしましたが、コーディングの途中で破綻して壊してしまいました。
ところがQoderはコーディングを始めてから15分程度で完成。
一つだけあったバグも指摘するとすぐに直せました。
消費クレジットは120程度でした。
良いところと悪いところ
指示通り完成させることができました。
1つ目に関してはちょっと簡単すぎるものを作らせたとはいえ、コードが読みやすく一貫性があります。
2つ目に関しては、Kiroが壊した複雑なものを破綻なく作り上げる能力があることがわかりました。
コードも整理されていて、わかりやすいです。
これは予想外でした。
全体的なフローの洗練はされていないと感じました。
モデル間の差異は吸収できておらず、コマンドやツール類の使い方にばらつきがあります。
また、テストに関しては計画には盛り込んでくれるのですが、実際には行ってくれません。これは仕様かバグか判断できません。
テスト駆動開発、もしくはテストの指示が必要かもしれません。
このあたりは、今後のアップデートに期待したいです。
Repo Wiki機能
Qoderにはもう一つの目玉機能、Repo Wikiがあります。
既存のプロジェクトのGitリポジトリを解析し、プロジェクトの構造化されたドキュメントを自動生成する機能、ということです。
書いてある説明ではわからなかったのですが、先程作成したサイトをgit commit
すると自動的に動き始めました。
数十分後に完成したものは確かにプロジェクト内をくまなく調査したものとなっており、KiroのSteeringファイルを更に詳細に記述したようなものとなっています。
DeepWikiというGitHubの公開リポジトリを詳細に解析するサービスがありますが、それのローカル版のような性能です。
もしもこの機能を存分に活かすコーディングができるのであれば、Qoderを大規模プロジェクトに導入することも夢ではありません。
ここで取得・作成した情報はローカルのデータベースに蓄積されるようで、実体ファイルとしてプロジェクト内に挿入されるわけではありません。
ただ、公式フォーラムにて「必要であれば実体ファイルを作成するように指示すればよい」という話がありました。
また意外にもこの機能を利用してもクレジットの消費がありませんでした。自動的に導入されますし、そういうものなのかもしれません。
その他の機能
今回はコード補完を利用していませんが、独自モデルを採用していて、かなりプッシュされている機能です。
機会があれば利用してみたいです。
また、READMEファイルを作成させるためにAgentモードを利用しましたが、通常のVibeコーディングのように使えました。
少々の作業はこちらで行うと良さそうです。
MCPサーバーはQoder SettingsにMCP Squareというストアがあり、ワンクリックの導入ができそうです。
まとめ
まさにVSCodeにGitHub Copilot + Kiro + Claude Code + DeepWikiをチェリーピックしたようなIDEです。
全部盛りになっているため、模倣元になった各ツールの哲学や経緯を無視してしまっていて受け入れがたい部分もあります。
各機能もまだまだ荒削りです。
しかしながら、発想・(開発リソースが投入されるのであれば)将来性共に悪くなく、何より現時点でコーディング力があるという事実は相当面白いです。
モデルの指定・特定も不可能で、いつまでも強いモデルが使える保証はありませんが… Qoderのことは頭の片隅に入れておくと良いかもしれません。
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