🦆

バックオフィス業務のAIサービスを調べてみる

2025/03/15に公開

なぜ作成したのか

  • 資格受験ストレスの息抜きに調査タスクを入れ込んでみる(逃避)

バックオフィス業務

  • ここでは経理・人事・総務・法務の分野をピックアップ
  • バックオフィス業務の効率化には、経理・人事・総務・法務といった各部門で発生する定型業務を洗い出し、AIで自動化できる領域を特定することが重要です [1][2]。以下、主要プロセス別に抱えている課題と、それらに対応するAIサービスを整理します。企業は自社の課題に合ったソリューションを選ぶことで、業務効率や生産性の大幅向上が期待できます。

経理部門: 業務課題とAIソリューション

  • 業務の例と課題:

    • 請求書・領収書の処理、経費精算、仕訳入力、月次決算対応などが挙げられます。
    • 紙書類からのデータ入力やチェック作業が多く、月末月初に処理が集中しがちで残業の原因にもなります[1:1]
    • 人手での入力はミスのリスクもあり、経理担当者は単純作業に追われて本来注力すべき分析業務に時間を割けないという課題があります。
    • また、従業員からの経費や勘定科目に関する問い合わせ対応にも時間を取られることが少なくありません。
  • AI活用の方向性:

    • 紙の請求書・領収書をAI-OCRで読み取りデータ化し、仕訳や振込処理まで自動化することで、手入力の手間とミスを削減できます。
    • 経費精算の不正検知や承認プロセスもAIで効率化が可能です。
    • さらに、社内問い合わせ対応にはチャットボットを導入し、よくある質問への回答を自動化することで、経理スタッフの負担軽減と迅速な回答を実現できます。
  • 主要な経理向けAIサービスの比較:

    • 以下の表に、経理業務の課題に対応する代表的なAIサービスをまとめます。
サービス名 提供企業 機能・特性 導入メリット(訴求点) 導入事例・効果例
sweeep(スウィープ) オートメーションラボ㈱ 請求書処理をエンドツーエンドで自動化するAIシステム。多様な様式の請求書をOCRでデータ化し仕訳・振込まで処理。 紙・メール・システムなど複数経路の請求書を一元データ化。手作業ゼロで支払まで完結し、入力ミス削減と処理スピード向上。 ZOZOで導入し月次締め処理が7営業日→3.5営業日に短縮。紙の請求書保管を廃止し業務効率化。
CloudAIチャットボット JBCC㈱(俺のクラウド) IBM Watson搭載の社内向けAIチャットボット。FAQを学習させ経費精算や勘定科目などの問い合わせに自動回答。 24時間365日対応で締日前の問い合わせ集中による残業削減。未回答質問を学習し回答精度向上も容易。担当者不在時も即時回答し業務停滞防止。 C&Cビジネスサービスで導入し、経理部門の問い合わせ対応工数を大幅削減。レスポンス迅速化と約30~40%の時間削減を実現。
SAPPHIRE(サファイア) Miletos㈱ 経費精算領域に特化したAIプロダクト。通勤・交通費申請をAIで自動処理し、申請内容のチェックや不正検知も実施。 申請者・承認者双方の作業を削減し、経費精算ワークフローを自動化。不正な経路申請の異常検知でガバナンス強化にも寄与。 花王ビューティブランズ社で導入し、年間約5.5万時間の業務削減に成功。

※その他、LayerX INVOICE(㈱LayerX)ではAI-OCRで請求書から仕訳データを起こし会計ソフト(弥生会計等)に連携するサービスも提供されており、中小企業の手入力作業を削減します。自社の会計システムと連動できるかも選定時のポイントです。

人事部門: 業務課題とAIソリューション

  • 業務の例と課題:
    • 人事部門では、採用(応募者対応・面接)、労務管理(勤怠・給与計算)、人事評価、社員からの問い合わせ対応(福利厚生や制度質問)が主な業務です。
    • 課題として、新卒・中途採用では大量の応募書類を確認し選考する負担が大きく、評価基準のブレや属人化も問題になります[3]
  • AI活用の方向性:

    • 採用ではAIが応募者の履歴書・エントリーシートを読み取り、自動でスクリーニング評価するサービスが登場しています。
    • AI面接官が質問と分析を行い候補者を評価するシステムも活用が進んでいます。
    • 人事評価では、クラウド上で目標と成果をデータ化し、個人の頑張りを可視化して公平な評価に繋げるAIソリューションが有効です。
    • さらに、社内FAQ対応や福利厚生案内にはチャットボットを導入し、人事担当者に代わって24時間質問に答えることで従業員対応の効率化満足度向上が期待できます。
  • 主要な人事向けAIサービスの比較:

    • 以下に人事領域の課題解決に役立つAIサービスを示します。
サービス名 提供企業 機能・特性 導入メリット(訴求点) 導入事例・効果例
AIチャットボット hitTO ㈱ジェナ 社員向けQ&A対応チャットボット。就業規則や福利厚生など人事部への問い合わせ対応を自動化。 365日気軽に質問できる環境を整備し、人事担当者の対応負荷を軽減。問い合わせ対応の属人化を解消し、人事ナレッジを蓄積。 ホクト㈱で導入し、人事への定型質問対応にかかる工数を大幅削減。リモートワーク下でも迅速な情報提供を実現。
SHaiN(シャイン) ㈱タレントアンドアセスメント 対話型のAI面接サービス。時間や場所を選ばず候補者とAIが対話し、300通り以上の質問から適性を評価。 面接官の質問・評価を標準化しムラを排除。面接記録も自動生成されエビデンスが残るため、公平で納得感のある選考を支援。 松屋フーズHDで店長昇格試験に導入し、評価基準の統一と人事部の負担軽減に貢献。「面接評価のばらつき解消」「フィードバック精度向上」を実現。
あしたのクラウドHR ㈱あしたのチーム 人事評価クラウド。目標に対する取組内容も含めて評価を記録・見える化し、公平で納得感ある評価を支援。 個人の成果だけでなくプロセスも可視化し、公平に評価・フィードバック。紙やExcelでの評価運用をクラウドで一元管理し工数削減。 なかやま牧場で導入し、企業理念浸透と適切な評価制度の構築に成功。評価集計・配布などの作業も一気通貫で管理し、早期離職防止にも寄与。

※このほか、HaKaSe Onboard(㈱人的資産研究所)は新入社員オンボーディングに特化したサービスで、相性診断や育成プラン提案、ピアレビュー分析をAIが行います。導入企業では「新入社員の早期戦力化が2倍に向上」といった成果も報告されています。また、リシテア/AI分析(㈱日立ソリューションズ)では勤怠データからストレス兆候のある部署を検知し、メンタル不調による休職発生を未然防止する機能も提供されています。自社の人事課題に応じて、採用・育成・評価・定着それぞれに強みを持つAIツールを選定するとよいでしょう。

総務部門: 業務課題とAIソリューション

  • 業務の例と課題:
    • 総務は全社横断的な庶務業務を担い、社内問い合わせ対応、書類管理、備品・資産管理、来客受付対応、電話取次ぎ、社内イベント手配など多岐にわたります。
    • 担当範囲が広いため人手不足に陥りやすく、一人ひとりの業務負担が大きい傾向があります。
    • 特に「社内からの各種問い合わせ対応」や「紙書類の管理・検索」「備品の貸出管理」「会議の議事録作成」「電話受付」など、パターン化された定型業務が日常的に発生し、効率化の余地が大きい領域です。[4]
  • AI活用の方向性:
    • チャットボットによる社内問い合わせ対応は総務の効率化で有効な手段です。
    • 社内規程や手続き方法に関する質問にAIが即時回答し、担当者はイレギュラーな案件のみ対応すればよくなります。
    • また、AI-OCRを使った書類電子化・検索により、紙の稟議書や契約書から必要情報を瞬時に検索でき、紙資料を探す時間を大幅短縮できます。
    • 会議の議事録作成も音声認識AIで自動文字起こし・要約が可能となり、手書きメモやテープ起こしの手間を省けます[5]
    • さらに、画像認識AIで備品管理を自動化したり、AI電話受付システムで来客連絡の取次ぎを無人対応するなど、総務の日常業務の多くでAI活用が進んでいます。
  • 主要な総務向けAIサービスの比較:
    • 総務部門の代表的なAIソリューションを以下にまとめます。
サービス名 提供企業 機能・特性 導入メリット(訴求点) 導入事例・効果例
チャットディーラー ㈱ラクス 社内向けAIチャットボット。よくある総務問い合わせに自動応答し、必要な場合のみ人につなぐハイブリッド型。 庶務・施設管理・各種届出など400種以上のQ&Aテンプレートを標準搭載。定型問い合わせ対応に費やす時間を大幅削減し、総務担当者は戦略業務に集中可能。 導入企業では問い合わせ対応時間を数十時間削減したケースもあり、自動応答による生産性向上効果が実証。
スマート書記 スマート書記㈱ AI議事録作成サービス。会議音声をリアルタイム文字起こしし発言を要約。編集しやすい画面で議事録を即時作成可能。 議事録作成の手間と時間を半減し、記録の質を向上。会議直後に要点が共有でき意思決定を迅速化。繰返し発言検索も容易で作業ストレスを軽減。 東京ドームで導入し、経営会議の議事録作成時間を最大6時間→半分の約3時間に短縮 。発言要約機能で他部署へも展開が進み、全社で業務効率化を実現。
活文 Contents Lifecycle Manager ㈱日立ソリューションズ 文書管理・検索システム。社内文書を電子化し、属性検索や全文検索で必要資料を即時に検索可能。 紙書類の山から目的の情報を探す時間を大幅短縮。アクセス権限設定でセキュリティ確保しつつ、社内ナレッジの有効活用を促進。 導入企業では紙文書の検索時間を従来の1/3以下に短縮した例がある。ペーパーレス化により保管コスト削減や在宅勤務時の情報アクセス性向上にも寄与。

※その他、総務ではAI勤怠管理システム(例:ジンジャー勤怠)による不正打刻検知・集計自動化や、画像認識AIを使った備品管理システム(例:Astrolab社の備品管理クラウド)による在庫管理簡略化などの事例もあります。社外からの電話応対には、NTTコミュニケーションズのAI電話サービスのように来訪者受付を自動化するソリューションも登場しています。自社の総務業務のボトルネックに応じて、適切なツールを組み合わせることがポイントです。

法務部門: 業務課題とAIソリューション

  • 業務の例と課題:
    • 契約書のレビュー・チェック、契約書ドラフト作成、稟議書・社内規程の整備、法令調査・コンプライアンス確認などが法務の主要業務です。[6]
    • 中でも契約書レビューは大量の契約書を細部まで確認する必要があり、専門知識を要するうえに時間がかかる業務です。
    • 締結までのやりとりが煩雑で、チェックの抜け漏れが発生すると法的リスクにつながるため慎重な対応が求められます。
    • また、法改正への対応や社内標準ひな型の管理など、知識のアップデートとナレッジ共有も課題です。
  • AI活用の方向性:

    • 近年、AI契約書レビュー支援ツールが多数登場しています。
    • 契約書をアップロードするだけで、AIが不利な条文抜け漏れ条項を自動検出し、修正例や解説を提示してくれるサービスです。
    • これにより法務担当者のチェック作業を大幅に効率化でき、契約リスクの見落としも減らせます。
    • サービスによっては自社で過去に締結した契約書データや審査基準を学習させ、自社ポリシーに沿ったチェックも可能です。
    • また、契約書のバージョン管理や条文の類似検索、ドラフト作成支援(ひな型の自動提案や条文自動修正)といった機能を備えるものもあり、契約業務全般の効率化・高度化に寄与します。
  • 主要な法務向けAIサービスの比較:

    • 以下に契約レビュー業務を中心としたAIサービスを示します。
サービス名 提供企業 機能・特性 導入メリット(訴求点) 導入実績・効果例
LegalForce (リーガルフォース) ㈱LegalOn Technologies AI契約審査プラットフォーム。契約書をドラッグ&ドロップし自社の立場を選ぶだけで、AIが「不利な条文」「欠落条項」「リスク」を網羅検出。1,400以上の契約書ひな型を搭載し、参考条文や解説も提示。最新判例や法改正にも継続対応。 レビュー品質のばらつきを解消し、チェック時間を大幅短縮。見落としがちなリスクも自動洗い出し、契約締結までのリードタイム短縮と法務コスト削減を実現。ChatGPT連携の条文修正支援機能も搭載しドラフト作成を効率化。 導入企業3,500社以上。AIによる迅速なレビューで契約締結スピードが向上し、属人的なチェックからの脱却に成功との報告多数。
LeCHECK (リチェック) ㈱リセ クラウド型AI契約書レビューサービス。和文・英文問わず契約書をアップロードすると、専門弁護士監修のAIがリスク条項を即座に指摘し、修正案を提示。過去の契約書管理やタグ検索、期限アラートにも対応。Google Driveと連携する契約書管理アドオン「LeFILING」も提供。 英文契約含め幅広い契約類型に対応し、24時間いつでも迅速なリーガルチェックが可能[7]。専門家監修の高品質なレビュー基準で法務未経験者でも抜け漏れないチェックを実現。不利条項の自動検知でリスク低減。 大手企業を中心に導入が進み、契約レビュー工数の削減とチェック精度向上を両立。契約書管理の効率化(クラウドでの一元管理と期限管理)によりコンプライアンス強化にも寄与。
OLGA (全社を支える法務OS) GVA TECH㈱ 契約書レビュー+契約管理の統合システム。300種以上の一般審査基準と自社固有の過去契約データを用いた自社基準チェックを両立。WordやPDF間の差分チェック、表記ゆれ自動修正など法務の便利機能も搭載。 部門ごとにばらつきがちな契約審査水準を統一し、属人化を解消。過去の契約書やマニュアルを活用したチェックで自社ルールの徹底が可能。契約書の体裁チェックや差分比較を自動化し、レビューに注力できる環境を提供。 上場企業を含む多数導入。契約書のドラフト~レビュー~管理を一元化することで契約締結までのプロセスを大幅短縮。契約ナレッジ蓄積により、法務部門だけでなく現場担当者でも一次チェックができる体制を構築。

※他にも、無料で使える契約書チェックAIのLawFlow(LawFlow㈱)や、LegalOn社による低価格版ツール LFチェッカー 、NTT-AT社のインテリジェント契約チェッカー 、米DocuSign社の包括的契約管理システムDocuSign CLM など、用途や予算に応じて様々な選択肢があります。自社の扱う契約類型(日本語・英語など)や求める機能(レビュー支援のみか、契約管理・電子署名まで含むか)を踏まえ、比較検討するとよいでしょう。

まとめとソリューション選定ポイント

  • バックオフィスの各部門で共通するのは、「定型的でルールが明確な業務」ほどAIとの親和性が高いという点です。

  • 経理のデータ入力や法務の契約チェック、人事・総務の問い合わせ対応などは、AIに任せることで人為的ミスの削減時間短縮コスト削減につながります。

  • 一方、最終的な意思決定や創造力が求められる業務は引き続き人間が担う必要があります。

  • 企業が適切なAIソリューションを選ぶには、まず自社のバックオフィス業務をプロセスごとに洗い出し、どの業務にボトルネックや非効率があるかを見極めることが肝要です。

  • その上で、本記事で整理したような各分野のAIサービスの機能や導入メリットを比較検討します。

  • 例えば「請求書処理に時間がかかっている」なら経理OCRの導入を検討し、「契約書チェックが追いつかない」なら法務AIレビューを検討する、といった具合です。

  • サービス選定時には、既存システムとの連携可否、自社データや業務ルールへの対応度、導入実績やセキュリティ面なども確認しましょう。

  • 明確な導入目的を設定し、現場担当者への十分な説明とトライアルを経て導入することで、AIツールの定着と効果創出につながります。

  • 各部門の業務課題にマッチしたAIソリューションを選択・導入することで、バックオフィス全体の生産性向上と働き方改革を推進できるでしょう。

  • 例えば、経理では 「入力・照合業務の自動化による ○○% の時間削減」 、人事では 「チャットボット活用による従業員満足度向上」、総務では 「ペーパーレス化による検索時間1/3以下への短縮」 、法務では 「契約審査の効率化とリスク低減」 など、導入メリットが定量・定性双方で現れています。

  • 自社に適したAIサービスを賢く選び活用することで、バックオフィス部門を企業成長の**“攻めの土台”**へと変革していきましょう。

脚注
  1. https://ai-market.jp/industry/keiri_ai/ ↩︎ ↩︎

  2. https://alt.ai/aiprojects/blog/gpt_blog-3445/ ↩︎

  3. https://ai-market.jp/industry/hr_aikatsuyo/ ↩︎

  4. https://alt.ai/aiprojects/blog/gpt_blog-3445/ ↩︎

  5. https://www.ai-souken.com/article/ai-meeting-minutes-tool ↩︎

  6. https://www.aspicjapan.org/asu/article/4803 ↩︎

  7. https://www.legalon-cloud.com/media/review-flow ↩︎

GitHubで編集を提案

Discussion