🦆
コワーキングスペースのセキュリティリスクについて
なぜ作成したのか
- 何やらダマでコワーキングスペースで作業した輩がいるらしいので、心を落ち着けるために文書化を試みる
コワーキングスペースとは
- 共有型のオープンスペースで仕事をするスタイルのオフィススペースです。
- 月額固定費用で利用するものや、ドロップインと呼ばれる時間/分単位や1日単位でスペースをオンデマンドで利用するものがあります。
セキュリティリスク
1. 情報漏えいリスク
- 会話漏えい: 周囲の利用者に業務上の機密情報や個人情報が聞かれる可能性がある。
- 画面・資料の視覚的漏えい(ショルダーハック・ピーピング): PC画面や書類などが周囲から容易に見えてしまう可能性がある。
- 盗難・紛失: PCやUSBメモリ等の機器や資料を放置・紛失することで情報が漏えいする可能性がある。
- ネットワーク盗聴・ハッキング: コワーキングスペースのWi-Fiを利用した際に通信を傍受される、あるいは悪意あるホットスポットに接続してしまうリスク。
2. コンプライアンス違反リスク
- 契約・規定違反: 顧客との秘密保持契約や自社の情報セキュリティポリシーに反する行動(機密情報を不適切に取り扱うなど)を取ってしまうリスク。
- 個人情報保護法違反: 個人情報が含まれる業務資料を第三者に漏えいするリスク。
3. 物理的セキュリティリスク
- セキュリティの不十分なロッカーや席: 荷物の一時保管場所が十分に安全でない場合、盗難や紛失リスクが高まる。
- 災害・火災・停電などによる事業継続リスク: コワーキングスペースの設備や立地条件により、災害や緊急時に業務を継続できない可能性がある。
4. 操作ミスやヒューマンエラーのリスク
- 周囲の環境要因による注意不足: オープンスペースでの業務では集中力が低下することが多く、誤送信やファイルの誤廃棄などが起きやすくなる。
- 第三者との混同: 他社の利用者と間違えてデータを共有・送付してしまうなどのリスク。
2. リスク顕在化による影響
- 機密情報漏えいによる信用失墜: 取引先や顧客への信用に大きなダメージを与え、場合によっては取引停止や損害賠償に発展する。
- 法的制裁・罰則の可能性: 個人情報保護法や顧客との契約違反などにより、行政処分や訴訟リスクが生じる。
- 金銭的損失: 賠償責任や訴訟費用、調査費用などで大きな支出が発生する可能性。
- ブランドイメージの低下: 公的に企業名が報道されるなどして、長期的なブランド力の低下や新規顧客獲得の阻害が起こる。
- 事業継続への影響: 災害や設備トラブルなどが発生した際、コワーキングスペース側の復旧体制が不十分な場合、業務継続が困難になる。
3. 有効な対策
情報管理面の対策
- 業務範囲の明確化: コワーキングスペースでは機密度の高い業務は行わない、もしくは業務の種類や取扱情報のレベルに応じて利用可否を事前にルール化する。
- 画面フィルターの使用: ノートPCやタブレット端末にプライバシーフィルターを装着し、周囲からの視線を遮る。
- ヘッドセットや静音スペースの活用: 周囲に声が漏れにくい場所や音声通話用の個室スペースを利用し、会話が第三者に聞かれないようにする。
- 印刷物・紙媒体の管理: 不必要な紙ベースの資料を持ち歩かない。持ち出した際は鍵付きバッグやセキュリティバッグを使用し、閲覧後は速やかにシュレッダー処理するか社内に持ち帰る。
- デバイスの持ち込みルール: 私用デバイスと業務用デバイスを明確に区別し、業務用PCには端末暗号化やリモートワイプ機能などのセキュリティ対策を実施する。
ネットワーク・システム面の対策
- VPNの活用: 公衆Wi-Fiは利用せず、社内VPN経由で接続するか、厳格に設定されたモバイルルータなど安全な回線を使用する。
- 多要素認証(MFA)の導入: 端末ログインやVPN接続、クラウドサービスへのアクセスには多要素認証を必須とする。
- データ暗号化: データ送受信やデバイス内のデータは暗号化を施しておく。
- アクセス制御: コワーキングスペースでは必要最小限のシステムやデータにのみアクセスさせる。業務で使うシステムごとにアクセス権限を細かく制御する。
- セキュリティ監視: 社内システムにアクセスする際は、SIEM等を導入して不審なアクセスを検知できる体制を整える。
フィジカルセキュリティ面の対策
- セキュリティレベルが高いコワーキングスペースの選定: 入退室管理がしっかりしている(受付やICカードでの認証等)、ロッカーや個室があるなど、物理的に安全性の高いスペースを利用する。
- 荷物の管理: 席を離れる際はPCや書類を必ず施錠・持ち歩く。貴重品や機密書類を長時間放置しない。
- 個室の確保: オープンスペースではなく、個室や会議室を利用できる場合はそれらを優先して使用する。
コンプライアンス・教育面の対策
- 利用ルールの策定と周知徹底: コワーキングスペース使用時のセキュリティルール、事故が発生した場合の連絡フロー、禁止行為などを社内規程として明文化し、定期的に周知する。
- 研修や啓発活動: 情報セキュリティ研修の一環として、コワーキングスペース利用時のリスクと対策を理解させる教育を実施する。
- 秘密保持契約(NDA)の管理: 自社従業員だけでなく、外部パートナーやフリーランスなどと一緒にコワーキングスペースを利用する場合、秘密保持契約の内容や遵守事項を明確化する。
事業継続(BCP)面の対策
- 業務の優先順位付けと代替策: コワーキングスペースが利用不可となった場合に備え、自宅や別のオフィスの利用など、代替方法を整備する。
- データバックアップ: ネットワーク障害や端末紛失・破損に備えて、クラウドストレージや社内サーバーへ定期的にデータをバックアップする。
- 緊急時対応マニュアル: 火災や停電、災害時などにコワーキングスペースが被害を受けた場合の連絡手段・業務継続方法をあらかじめ検討・文書化しておく。
他社やコワーキングスペースを利用している他者の視点
1. ビジネス面での評価・印象
-
オフィスコストを抑えた柔軟な経営姿勢
-
ポジティブ :
- 「固定的なオフィスを持たずにコワーキングスペースを活用している=資金やリソースを効率的に使う企業」「スタートアップやベンチャーのようなアグレッシブで柔軟な会社なのかもしれない」と好意的に評価される場合がある。
-
ネガティブ:
- 「自前のオフィスを持つ余裕がないのでは」「企業としてまだ安定していないのでは」といった懸念を持たれる可能性がある。
-
ポジティブ :
-
小規模・新興企業としてのイメージ
-
ポジティブ:
- コワーキングスペースの利用者にはIT系・ベンチャー企業やフリーランスが多く、「新しい価値を創造している会社」という印象を与えられる。若々しく、柔軟なカルチャーを持っていそうという好印象を持つ人もいる。
-
ネガティブ:
- 大企業や官公庁など、保守的な企業の担当者からは「信頼性やスケールが不十分では?」と感じられるリスクもある。
-
ポジティブ:
-
ネットワークの広がり・オープンなビジネス姿勢
-
ポジティブ:
- 「他の利用者やスタートアップとコラボレーションをしているかもしれない」「新しいネットワークやアイデアを取り入れていそう」という評価。
-
ネガティブ:
- 「出入りが多い環境で本当に落ち着いて仕事ができるのか?」「会議や商談を落ち着いた環境で行えないのでは?」とビジネス上の信頼性が疑問視される場合がある。
-
ポジティブ:
2. セキュリティ面での評価・印象
-
情報セキュリティ意識への不安
-
ポジティブ:
- しっかりと個室やミーティングスペースを利用し、ヘッドセットや画面フィルターなどのセキュリティ対策を講じている姿が見られれば、「意識高く運用している会社」との印象を持たれうる。
-
ネガティブ:
- 公共の場で重要な会議を行っていたり、PC画面や機密書類をオープンスペースで堂々と開いたりしている場合、「セキュリティ管理が甘い会社」という不安を抱かれる。
-
ポジティブ:
-
コンプライアンスへの懸念
-
ネガティブ:
- 個人情報や取引情報などが他者に漏れないよう配慮しているかどうかが見た目でわかると、信用度が変わる。対策が不十分に見えれば「この会社と機密度の高い案件は難しいかもしれない」と感じられる。
-
ポジティブ:
- セキュリティボックスやロッカーを利用して機密書類を管理している、会議や商談時には必ず個室を利用している、など“見える形”で対策している姿は安心感を与える。
-
ネガティブ:
3. プロフェッショナルとしての評価
-
業務環境が適切かどうか
-
ポジティブ:
- カジュアルな雰囲気の中でも成果を出していると認識されれば、「柔軟に働きながらもきちんと仕事を完結できるプロフェッショナルなチーム」という評価につながる。
-
ネガティブ:
- 「雑多な環境で業務を行うことで生産性や品質が下がっていないか?」と不安に思われることがある。打ち合わせ時の雑音が多いと「本当に集中して話を聞いているのか?」などと疑われる。
-
ポジティブ:
-
ブランディングへの影響
-
ポジティブ:
- コワーキングスペースに集まる人々から見れば、「先進的、フラットな社風」「堅苦しさがない」という好意的なブランドイメージを与える可能性。
-
ネガティブ:
- 「場所や環境を選ばない=やや無計画」「オフィス独自のブランド体験を作り出せていない」と捉えられて、企業のイメージが定着しにくい。
-
ポジティブ:
4. コミュニケーション面での評価
-
オープンなコミュニケーション文化
-
ポジティブ:
- 他社やフリーランスの利用者とすぐにコミュニケーションを取り、新しい繋がりを作ろうという姿勢が見られる場合、「協調性がある」「新しい価値を創出する意欲的な企業」との評価を得やすい。
-
ネガティブ:
- 常にイヤホンやパーティションにこもりきりで周囲と交流がないと、「閉鎖的」「コワーキングスペースの利点を十分活用できていないのでは」という印象を与える。
-
ポジティブ:
-
対外的な印象作り
-
ポジティブ:
- フリーアドレスやカジュアルな商談スペースで、クライアントとリラックスした雰囲気の中で打ち合わせをする企業として、「フレキシブルで親しみやすい」というイメージを得られることもある。
-
ネガティブ:
- 重要な打ち合わせ相手が保守的な企業や行政機関の場合、「落ち着いた場所を用意できない企業」「公衆の場に顧客を呼ぶのは非常識」などとマイナス評価につながるケースも。
-
ポジティブ:
5. まとめ
コワーキングスペースで業務を実施している企業に対しては、柔軟で先進的な印象を抱かれる一方で、セキュリティ管理や企業としての安定性に対する懸念が同時に生まれやすいという特徴があります。とりわけISMS認証などセキュリティ基準をアピールする企業の場合、「認証に見合う運用」をしっかり行えているかどうかを周囲から注視されるでしょう。(実際にコワーキングスペースで ISMS認証取得するこもと可能 らしい)
-
ポジティブなイメージ:
- コストやスペースを合理的に利用する姿勢
- ネットワークを広げ、コラボレーションを重視する会社
- 先進的な、スタートアップ的マインドやカルチャーを有する企業
-
ネガティブなイメージ:
- セキュリティやコンプライアンスに対する意識・対策が甘いのではないか
- 企業としての信頼性や安定性が確立していないのではないか
- ビジネスの重要な場面で不適切な環境を選ぶリスク
最終的には、コワーキングスペースを利用する企業がどのようなセキュリティ対策や業務スタイルを実践し、「どこまでプロフェッショナルに運用しているか」が他社や周囲の評価を左右します。 そのため、実際に利用する際は、対外イメージの向上と安全管理が両立するよう、ルール作りと実践を徹底してアピールしていくことが重要です。
所感
- 正直「コワーキングスペースでセキュリティを維持しながら業務を遂行する」ルール作成はナンセンスだと思う。
- MDMやVPN、覗き込み防止、不特定他者が使用しない個別回線…考えていくほどに自宅で仕事してもらってたほうがまだマシ。
- HMD持ってきて「これで覗き込み対策はばっちりです!」とかいいだしたらどうしよう
Discussion