🦆
【ST試験対策】システム戦略
なぜ作成したのか
- ITストラテジスト合格のため、書籍の内容をまとめてみる
参考
午前Ⅱ対策
システム戦略
全体最適化
システム戦略の全体最適化とは
システム戦略の全体最適化とは、企業の経営目標を達成するために、情報システム全体を経営戦略と調和させ、効率性と効果性を最大化することを目指す考え方です。これを実現するには、経営戦略との整合性、システムの標準化、最適なITガバナンス、リスク管理体制の確立など、多面的なアプローチが必要です。
以下に、各観点から全体最適化のポイントを解説します。
1. 経営戦略との連携
-
概要:
- 経営戦略を支えるための情報システムを設計し、経営目標と情報システムの機能が一致するようにする。
-
全体最適化のポイント:
- 経営課題を明確化し、それを解決するシステムを導入。
- システム化による業務効率化や競争優位性の強化を図る。
-
例:
- データ分析を活用した意思決定を支援するために、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入。
2. 情報システム化戦略
-
概要:
- 経営戦略を具現化するためのIT化の方向性を示し、個別システム間の調整を行う。
-
全体最適化のポイント:
- 業務プロセス全体を分析し、システム化の優先順位を設定。
- サイロ化を防ぎ、システム間の連携性を確保。
-
例:
- ERP(統合基幹業務システム)の導入により、購買、生産、販売データを一元管理。
3. ITガバナンス
-
概要:
- IT資源を効果的に活用し、経営目標達成を支援する仕組み。
-
全体最適化のポイント:
- IT戦略委員会などを設置し、経営層とIT部門の連携を強化。
- 予算配分や投資判断を全社的な視点で最適化。
-
例:
- 新規システム導入時に、ROI(投資利益率)やTCO(総所有コスト)を評価し、プロジェクト優先順位を決定。
4. システム管理基準
-
概要:
- 情報システムの企画、開発、運用、保守の標準化と効率化を図るための基準。
- システム監査を行う際の監査人の判断尺度となる基準。
- 平成16年に経産省で策定されたシステム管理基準は「全体最適化」「企画業務」「開発業務」「運用業務」「保守業務」「共通業務」で構成される
-
全体最適化のポイント:
- システム開発のプロセスを統一し、コスト削減と品質向上を実現。
- トラブル防止のための運用ガイドラインを策定。
-
例:
- ITIL(ITサービスマネジメントのベストプラクティス)を活用した運用プロセスの標準化。
5. IT経営力指標(IT Score)
-
概要:
-
平成18年(2006年)に経済産業省が策定した「ITの戦略的導入のための行動指針」では、ITを経営戦略の一環として活用するための指針が示されました。
-
この中で、「ITの7つの機能」 として、企業がITを戦略的に導入する際に注目すべき役割が提示されています。
- 1. 情報の共有
- 2. コミュニケーションの促進
- 3. 経営資源の有効活用
- 4. 業務プロセスの効率化
- 5. 意思決定の支援
- 6. 顧客対応力の強化
- 7. 新たな事業機会の創出
-
-
経済産業省が提唱する「ITの戦略的導入のための行動指針」に基づくIT経営力では、ITを経営戦略の中核に据え、企業の競争力や成長力を測るために、IT活用度を4つのステージに分類しています。
-
これらのステージは、企業のIT経営力の成熟度を示し、各段階での課題や取り組みを明確化するものです。
-
ステージ別の特徴と取り組みまとめ
ステージ | 特徴 | 取り組み例 |
---|---|---|
ステージ1 | ITが業務効率化の補助的ツールとして活用される段階。 | 単機能のITツール導入、業務の一部でのIT活用。 |
ステージ2 | 部門横断的な業務効率化が進み、ITが全社的に活用される。 | ERPの導入、業務プロセスの標準化、データ共有。 |
ステージ3 | ITが経営戦略の一部として統合され、競争力強化に寄与。 | BIツールやCRM、SCMの活用、意思決定の高度化。 |
ステージ4 | ITが経営そのものを革新し、新たなビジネスを創出する。 | AIやIoT、デジタルプラットフォームを活用した事業変革。 |
-
全体最適化のポイント:
- IT経営力を可視化し、弱点を補強するためのアクションプランを立案。
- ITが経営目標達成に貢献しているかを定期的に評価。
-
例:
- 「IT Score」を用いて、自社のIT成熟度を評価し、全体最適化の進捗を確認。
6. エンタープライズアーキテクチャ(EA)
-
概要:
- 業務とITの整合性を図り、全社横断的な視点でシステムを設計するフレームワーク。
- EAとは「今まで開発してきた業務システムをビジネス価値とソリューション品質の2軸で分析し、業務システムごとの改善方向を決定すること」と表現した過去回答あり
-
全体最適化のポイント:
- 現状の業務プロセスとシステムを「現状アーキテクチャ」として可視化。
- 「目標アーキテクチャ」を策定し、段階的な移行計画を作成。
-
例:
- 企業内の複数の基幹システムを連携させ、重複を排除。
以下は、エンタープライズアーキテクチャ(EA)の4つのモデルと、それぞれの参照モデルを含めた表形式の説明です。
モデル名 | 内容 | 具体例 | 目的 | 参照モデル |
---|---|---|---|---|
ビジネスアーキテクチャ | 企業全体の業務プロセス、組織構造、戦略などを定義。 | 経営戦略、業務フロー、KPI | 業務の効率化や標準化を図り、全体の方向性を明確化。 | eTOM(電気通信業務プロセスフレームワーク)、SCOR(サプライチェーン参照モデル) |
データアーキテクチャ | 業務に必要なデータの構造や流れ、管理方法を定義。 | データモデル、データベース設計、データフロー図 | データの一元管理や再利用性の向上、データ品質の維持を実現。 | DMBOK(データ管理知識体系ガイド)、Zachman Framework |
アプリケーションアーキテクチャ | 業務を支えるアプリケーションの構成や機能を定義。 | ERPシステム、CRMシステム、APIの構造 | 各アプリケーション間の連携を強化し、システムの効率性と適応性を高める。 | TOGAF(The Open Group Architecture Framework) |
テクノロジーアーキテクチャ | ITインフラやネットワーク、ハードウェア、ミドルウェアの構成を定義。 | サーバ構成、ネットワーク設計、仮想化技術、クラウド環境 | IT基盤の信頼性、スケーラビリティ、セキュリティを確保。 | ITIL(ITサービス管理フレームワーク)、COBIT(ITガバナンス) |
7. 事業継続マネジメント(BCM)
-
概要:
- 災害やトラブル発生時に事業を継続するための体制を構築。
-
全体最適化のポイント:
- 全社的な視点で重要な業務やシステムを特定し、復旧計画を策定。
- ITインフラの冗長化やデータバックアップ体制の整備。
-
例:
- データセンターを多重化し、システム障害時にも迅速な復旧を実現。
8. 事業継続ガイドライン
-
概要:
-
組織が事業継続を確保するための基本方針や手法を規定。
-
以下は、事業継続ガイドラインのプロセスを表形式で解説したものです。このプロセスは、事業継続計画(BCP)を策定・実行・改善するための基本的なステップを示しています。
-
プロセス | 概要 | 主な活動 | 成果物 |
---|---|---|---|
1. 方針の策定(Policy Setting) | 経営陣が事業継続に関する方針を明確にし、事業継続管理の基本的な枠組みを構築する。 | - 経営戦略に基づく事業継続方針の設定 - 経営層のコミットメント確保 |
- 事業継続方針書 - 組織全体への周知 |
2. リスク評価と事業影響分析(BIA) | 事業継続に影響を与えるリスクを特定し、そのリスクが組織や事業に与える影響を分析する。 | - リスク評価(自然災害、サイバー攻撃など) - 重要業務と復旧優先度の特定 - 最大許容停止時間(MTPD)の設定 |
- リスク評価レポート - 事業影響分析レポート(BIA) - 優先業務リスト |
3. 戦略の策定(Strategy Development) | 重要業務を中断させない、または迅速に復旧するための具体的な戦略を策定する。 | - リソース(人材、設備、IT)の確保 - 代替手段や外部調達先の検討 - コストと効果の評価 |
- 事業継続戦略書 |
4. 事業継続計画(BCP)の策定 | 戦略に基づいて、具体的な手順や体制を記載した事業継続計画(BCP)を作成する。 | - BCPの構成要素(目標、範囲、手順)の明確化 - 連絡体制や復旧手順の作成 |
- 事業継続計画書(BCP) |
5. 訓練と教育(Training and Education) | BCPを実行可能な状態にするため、従業員や関係者への教育と訓練を実施する。 | - 事業継続訓練(シミュレーション、実地演習) - 従業員への教育プログラム |
- 訓練結果報告書 - 教育プログラム資料 |
6. BCPの実行(Execution) | 実際の緊急事態において、事業継続計画を迅速かつ正確に実行する。 | - 緊急対応チームの招集 - 事業継続手順の実行 - 利害関係者との連絡 |
- 対応記録 - 復旧レポート |
7. 評価と改善(Evaluation and Improvement) | 訓練や実際の緊急事態を通じて得られた教訓を反映し、BCPを継続的に改善する。 | - 訓練や実行後の評価 - 改善点の特定 - 改訂計画の実施 |
- 改善計画書 - 最新版BCP |
-
全体最適化のポイント:
- ガイドラインに基づき、システムのバックアップや復旧手順を標準化。
- 災害発生時の意思決定フローを明確化。
-
例:
- 自然災害発生時に優先的に復旧すべきシステムをリスト化。
9. JIS Q 22301(事業継続マネジメントシステム:BCMS)
-
概要:
- 事業継続マネジメントに関する国際規格(ISO 22301)の日本版。
- インシデントが発生した際の行動や対処の適用範囲を定める
- インシデントからの保護
- インシデント発生の可能性の低減
- インシデントに対する準備
- インシデントへの対応
- インシデントからの復旧
-
全体最適化のポイント:
- 組織全体のBCM活動を文書化し、継続的に改善。
- ITシステムも含めたリスク分析と事業影響評価(BIA)を実施。
-
例:
- ITインフラの停止が事業に与える影響を評価し、復旧優先度を設定。
10. レジリエンス
-
概要:
- トラブル発生後の迅速な回復能力。
-
全体最適化のポイント:
- ITシステムの回復力を高め、停止時間を最小化。
- 予測不能な事態への柔軟な対応力を備える。
-
例:
- クラウド環境の採用により、障害発生時の迅速な復旧を実現。
11. 事業継続計画(BCP)
-
概要:
- 主要事業を継続するための対応方針や手順を定めた、具体的な計画
-
全体最適化のポイント:
- システム障害や災害時に備えた復旧計画を文書化し、全社員に周知。
- 定期的な訓練やシミュレーションを実施。
-
例:
- サーバ障害時に、クラウドバックアップを活用して重要データを即時復旧。
ビジネスプロセス
- システム戦略におけるビジネスプロセスの最適化や効率化は、企業競争力の向上において重要な役割を果たします。
1. IDEAL(Improvement, Diagnosis, Establishment, Acting, Leverage)
-
概要:
- プロセス改善のフレームワークで、組織のプロセス改善を体系的に進めるためのモデル。
-
主なステップ:
- Initiating(診断):改善対象を特定。
- Diagnosing(診断):現状と問題点を評価。
- Establishing(確立):改善の計画を策定。
- Acting(実行):計画を実施。
- Leveraging(活用):成果を評価し、次の改善に活かす。
-
用途:
- ソフトウェア開発プロセス改善やビジネスプロセス管理に適用。
2. BPM(Business Process Management)
-
概要:
- 業務プロセスを設計、実行、監視、最適化するための管理手法。
-
特徴:
- 業務プロセスの効率化と柔軟性を向上させる。
- PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルで継続的改善を実現。
-
ツール例:
- BPMソフトウェア(Camunda、Bizagi)。
-
目的:
- プロセスの可視化と改善による業務効率化。
3. BPR(Business Process Reengineering)
-
概要:
- 業務プロセスの抜本的な再設計と改革を行う手法。
-
特徴:
- 従来のプロセスをゼロベースで見直し、大幅な効率化を目指す。
- ITを活用して新しいプロセスを構築。
-
具体例:
- 銀行のオンラインバンキング導入により、窓口業務の削減と効率化。
-
目的:
- コスト削減、品質向上、リードタイム短縮。
4. BPO(Business Process Outsourcing)
-
概要:
- 業務プロセスを外部の専門業者に委託し、コスト削減や業務効率化を図る手法。
-
対象業務:
- 人事、会計、カスタマーサポートなどのバックオフィス業務。
-
メリット:
- コスト削減、専門性の活用、リソースの集中。
-
具体例:
- 多国籍企業がコールセンター業務を外部委託して顧客対応を強化。
5. SOA(Service-Oriented Architecture)
-
概要:
- ソフトウェアやシステムをサービス単位で設計し、それらを柔軟に組み合わせるアーキテクチャ。
-
特徴:
- システム間の統合が容易になり、業務プロセスに応じた柔軟な変更が可能。
- 再利用性と拡張性を重視。
-
具体例:
- APIを利用して顧客データを複数システムで共有。
-
目的:
- システム全体の効率化と柔軟性向上。
6. ERP(Enterprise Resource Planning)
-
概要:
- 財務、人事、在庫、販売などの業務を統合管理する基幹業務システム。
-
特徴:
- 部門ごとの情報を一元管理し、リアルタイムでデータを共有。
- 企業全体の可視性を向上。
-
具体例:
- SAPやOracle ERP Cloudの導入。
-
目的:
- 業務効率化、コスト削減、データの一貫性確保。
7. BI(Business Intelligence)
-
概要:
- 経営判断を支援するために、企業内外のデータを分析・可視化する手法やツール。
-
特徴:
- データに基づいた意思決定を可能にする。
- ダッシュボードでリアルタイムの情報を提供。
-
ツール例:
- Tableau、Power BI、Qlik。
-
目的:
- データ活用による迅速な意思決定。
8. SCM(Supply Chain Management)
-
概要:
- 製品の原材料調達から製造、流通、販売に至るサプライチェーン全体を最適化する手法。
-
特徴:
- 供給プロセスを可視化し、リードタイムの短縮とコスト削減を実現。
- 在庫管理の効率化と需要予測の向上。
-
具体例:
- Amazonの効率的な在庫管理と配送システム。
-
目的:
- サプライチェーン全体の効率向上と顧客満足度の向上。
9. SCOR(Supply Chain Operations Reference)
-
概要:
- サプライチェーンプロセスを「計画」「調達」「製造」「配送」「返品」に分類し、標準化・最適化するフレームワーク。
-
特徴:
- サプライチェーンのパフォーマンスを測定・改善。
- グローバル標準として広く採用。
-
用途:
- プロセスのボトルネックを特定し、改善計画を策定。
-
具体例:
- サプライチェーン全体の効率性を評価し、輸送コストを削減。
まとめ
観点 | 目的 | 具体例 |
---|---|---|
IDEAL | プロセス改善の枠組み | ソフトウェア開発プロセス改善 |
BPM | 継続的なプロセス管理 | 業務フローの自動化 |
BPR | 抜本的な業務改革 | オンラインバンキング導入 |
BPO | 業務の外部委託 | コールセンターのアウトソーシング |
SOA | サービス単位の設計 | API連携によるデータ共有 |
ERP | 業務の統合管理 | SAPの導入 |
BI | データ活用による意思決定 | Tableauを活用したダッシュボード |
SCM | サプライチェーンの最適化 | Amazonの在庫管理 |
SCOR | サプライチェーン標準化 | 輸送コスト削減の分析 |
Discussion