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【ST試験対策】システム戦略

2025/01/17に公開

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午前Ⅱ対策

システム戦略

全体最適化

システム戦略の全体最適化とは

システム戦略の全体最適化とは、企業の経営目標を達成するために、情報システム全体を経営戦略と調和させ、効率性と効果性を最大化することを目指す考え方です。これを実現するには、経営戦略との整合性、システムの標準化、最適なITガバナンス、リスク管理体制の確立など、多面的なアプローチが必要です。

以下に、各観点から全体最適化のポイントを解説します。


1. 経営戦略との連携

  • 概要
    • 経営戦略を支えるための情報システムを設計し、経営目標と情報システムの機能が一致するようにする。
  • 全体最適化のポイント
    • 経営課題を明確化し、それを解決するシステムを導入。
    • システム化による業務効率化や競争優位性の強化を図る。
    • データ分析を活用した意思決定を支援するために、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入。

2. 情報システム化戦略

  • 概要
    • 経営戦略を具現化するためのIT化の方向性を示し、個別システム間の調整を行う。
  • 全体最適化のポイント
    • 業務プロセス全体を分析し、システム化の優先順位を設定。
    • サイロ化を防ぎ、システム間の連携性を確保。
    • ERP(統合基幹業務システム)の導入により、購買、生産、販売データを一元管理。

3. ITガバナンス

  • 概要
    • IT資源を効果的に活用し、経営目標達成を支援する仕組み。
  • 全体最適化のポイント
    • IT戦略委員会などを設置し、経営層とIT部門の連携を強化。
    • 予算配分や投資判断を全社的な視点で最適化。
    • 新規システム導入時に、ROI(投資利益率)やTCO(総所有コスト)を評価し、プロジェクト優先順位を決定。

4. システム管理基準

  • 概要
    • 情報システムの企画、開発、運用、保守の標準化と効率化を図るための基準。
    • システム監査を行う際の監査人の判断尺度となる基準。
    • 平成16年に経産省で策定されたシステム管理基準は「全体最適化」「企画業務」「開発業務」「運用業務」「保守業務」「共通業務」で構成される
  • 全体最適化のポイント
    • システム開発のプロセスを統一し、コスト削減と品質向上を実現。
    • トラブル防止のための運用ガイドラインを策定。
    • ITIL(ITサービスマネジメントのベストプラクティス)を活用した運用プロセスの標準化。

5. IT経営力指標(IT Score)

  • 概要

    • 平成18年(2006年)に経済産業省が策定した「ITの戦略的導入のための行動指針」では、ITを経営戦略の一環として活用するための指針が示されました。

    • この中で、「ITの7つの機能」 として、企業がITを戦略的に導入する際に注目すべき役割が提示されています。

      • 1. 情報の共有
      • 2. コミュニケーションの促進
      • 3. 経営資源の有効活用
      • 4. 業務プロセスの効率化
      • 5. 意思決定の支援
      • 6. 顧客対応力の強化
      • 7. 新たな事業機会の創出
  • 経済産業省が提唱する「ITの戦略的導入のための行動指針」に基づくIT経営力では、ITを経営戦略の中核に据え、企業の競争力や成長力を測るために、IT活用度を4つのステージに分類しています。

  • これらのステージは、企業のIT経営力の成熟度を示し、各段階での課題や取り組みを明確化するものです。

  • ステージ別の特徴と取り組みまとめ

ステージ 特徴 取り組み例
ステージ1 ITが業務効率化の補助的ツールとして活用される段階。 単機能のITツール導入、業務の一部でのIT活用。
ステージ2 部門横断的な業務効率化が進み、ITが全社的に活用される。 ERPの導入、業務プロセスの標準化、データ共有。
ステージ3 ITが経営戦略の一部として統合され、競争力強化に寄与。 BIツールやCRM、SCMの活用、意思決定の高度化。
ステージ4 ITが経営そのものを革新し、新たなビジネスを創出する。 AIやIoT、デジタルプラットフォームを活用した事業変革。

  • 全体最適化のポイント
    • IT経営力を可視化し、弱点を補強するためのアクションプランを立案。
    • ITが経営目標達成に貢献しているかを定期的に評価。
    • 「IT Score」を用いて、自社のIT成熟度を評価し、全体最適化の進捗を確認。

6. エンタープライズアーキテクチャ(EA)

  • 概要
    • 業務とITの整合性を図り、全社横断的な視点でシステムを設計するフレームワーク。
    • EAとは「今まで開発してきた業務システムをビジネス価値とソリューション品質の2軸で分析し、業務システムごとの改善方向を決定すること」と表現した過去回答あり
  • 全体最適化のポイント
    • 現状の業務プロセスとシステムを「現状アーキテクチャ」として可視化。
    • 「目標アーキテクチャ」を策定し、段階的な移行計画を作成。
    • 企業内の複数の基幹システムを連携させ、重複を排除。

以下は、エンタープライズアーキテクチャ(EA)の4つのモデルと、それぞれの参照モデルを含めた表形式の説明です。

モデル名 内容 具体例 目的 参照モデル
ビジネスアーキテクチャ 企業全体の業務プロセス、組織構造、戦略などを定義。 経営戦略、業務フロー、KPI 業務の効率化や標準化を図り、全体の方向性を明確化。 eTOM(電気通信業務プロセスフレームワーク)、SCOR(サプライチェーン参照モデル)
データアーキテクチャ 業務に必要なデータの構造や流れ、管理方法を定義。 データモデル、データベース設計、データフロー図 データの一元管理や再利用性の向上、データ品質の維持を実現。 DMBOK(データ管理知識体系ガイド)、Zachman Framework
アプリケーションアーキテクチャ 業務を支えるアプリケーションの構成や機能を定義。 ERPシステム、CRMシステム、APIの構造 各アプリケーション間の連携を強化し、システムの効率性と適応性を高める。 TOGAF(The Open Group Architecture Framework)
テクノロジーアーキテクチャ ITインフラやネットワーク、ハードウェア、ミドルウェアの構成を定義。 サーバ構成、ネットワーク設計、仮想化技術、クラウド環境 IT基盤の信頼性、スケーラビリティ、セキュリティを確保。 ITIL(ITサービス管理フレームワーク)、COBIT(ITガバナンス)

7. 事業継続マネジメント(BCM)

  • 概要
    • 災害やトラブル発生時に事業を継続するための体制を構築。
  • 全体最適化のポイント
    • 全社的な視点で重要な業務やシステムを特定し、復旧計画を策定。
    • ITインフラの冗長化やデータバックアップ体制の整備。
    • データセンターを多重化し、システム障害時にも迅速な復旧を実現。

8. 事業継続ガイドライン

  • 概要
    • 組織が事業継続を確保するための基本方針や手法を規定。

    • 以下は、事業継続ガイドラインのプロセスを表形式で解説したものです。このプロセスは、事業継続計画(BCP)を策定・実行・改善するための基本的なステップを示しています。

プロセス 概要 主な活動 成果物
1. 方針の策定(Policy Setting) 経営陣が事業継続に関する方針を明確にし、事業継続管理の基本的な枠組みを構築する。 - 経営戦略に基づく事業継続方針の設定
- 経営層のコミットメント確保
- 事業継続方針書
- 組織全体への周知
2. リスク評価と事業影響分析(BIA) 事業継続に影響を与えるリスクを特定し、そのリスクが組織や事業に与える影響を分析する。 - リスク評価(自然災害、サイバー攻撃など)
- 重要業務と復旧優先度の特定
- 最大許容停止時間(MTPD)の設定
- リスク評価レポート
- 事業影響分析レポート(BIA)
- 優先業務リスト
3. 戦略の策定(Strategy Development) 重要業務を中断させない、または迅速に復旧するための具体的な戦略を策定する。 - リソース(人材、設備、IT)の確保
- 代替手段や外部調達先の検討
- コストと効果の評価
- 事業継続戦略書
4. 事業継続計画(BCP)の策定 戦略に基づいて、具体的な手順や体制を記載した事業継続計画(BCP)を作成する。 - BCPの構成要素(目標、範囲、手順)の明確化
- 連絡体制や復旧手順の作成
- 事業継続計画書(BCP)
5. 訓練と教育(Training and Education) BCPを実行可能な状態にするため、従業員や関係者への教育と訓練を実施する。 - 事業継続訓練(シミュレーション、実地演習)
- 従業員への教育プログラム
- 訓練結果報告書
- 教育プログラム資料
6. BCPの実行(Execution) 実際の緊急事態において、事業継続計画を迅速かつ正確に実行する。 - 緊急対応チームの招集
- 事業継続手順の実行
- 利害関係者との連絡
- 対応記録
- 復旧レポート
7. 評価と改善(Evaluation and Improvement) 訓練や実際の緊急事態を通じて得られた教訓を反映し、BCPを継続的に改善する。 - 訓練や実行後の評価
- 改善点の特定
- 改訂計画の実施
- 改善計画書
- 最新版BCP
  • 全体最適化のポイント
    • ガイドラインに基づき、システムのバックアップや復旧手順を標準化。
    • 災害発生時の意思決定フローを明確化。
    • 自然災害発生時に優先的に復旧すべきシステムをリスト化。

9. JIS Q 22301(事業継続マネジメントシステム:BCMS)

  • 概要
    • 事業継続マネジメントに関する国際規格(ISO 22301)の日本版。
    • インシデントが発生した際の行動や対処の適用範囲を定める
      • インシデントからの保護
      • インシデント発生の可能性の低減
      • インシデントに対する準備
      • インシデントへの対応
      • インシデントからの復旧
  • 全体最適化のポイント
    • 組織全体のBCM活動を文書化し、継続的に改善。
    • ITシステムも含めたリスク分析と事業影響評価(BIA)を実施。
    • ITインフラの停止が事業に与える影響を評価し、復旧優先度を設定。

10. レジリエンス

  • 概要
    • トラブル発生後の迅速な回復能力。
  • 全体最適化のポイント
    • ITシステムの回復力を高め、停止時間を最小化。
    • 予測不能な事態への柔軟な対応力を備える。
    • クラウド環境の採用により、障害発生時の迅速な復旧を実現。

11. 事業継続計画(BCP)

  • 概要
    • 主要事業を継続するための対応方針や手順を定めた、具体的な計画
  • 全体最適化のポイント
    • システム障害や災害時に備えた復旧計画を文書化し、全社員に周知。
    • 定期的な訓練やシミュレーションを実施。
    • サーバ障害時に、クラウドバックアップを活用して重要データを即時復旧。

ビジネスプロセス

  • システム戦略におけるビジネスプロセスの最適化や効率化は、企業競争力の向上において重要な役割を果たします。

1. IDEAL(Improvement, Diagnosis, Establishment, Acting, Leverage)

  • 概要
    • プロセス改善のフレームワークで、組織のプロセス改善を体系的に進めるためのモデル。
  • 主なステップ
    1. Initiating(診断):改善対象を特定。
    2. Diagnosing(診断):現状と問題点を評価。
    3. Establishing(確立):改善の計画を策定。
    4. Acting(実行):計画を実施。
    5. Leveraging(活用):成果を評価し、次の改善に活かす。
  • 用途
    • ソフトウェア開発プロセス改善やビジネスプロセス管理に適用。

2. BPM(Business Process Management)

  • 概要
    • 業務プロセスを設計、実行、監視、最適化するための管理手法。
  • 特徴
    • 業務プロセスの効率化と柔軟性を向上させる。
    • PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルで継続的改善を実現。
  • ツール例
    • BPMソフトウェア(Camunda、Bizagi)。
  • 目的
    • プロセスの可視化と改善による業務効率化。

3. BPR(Business Process Reengineering)

  • 概要
    • 業務プロセスの抜本的な再設計と改革を行う手法。
  • 特徴
    • 従来のプロセスをゼロベースで見直し、大幅な効率化を目指す。
    • ITを活用して新しいプロセスを構築。
  • 具体例
    • 銀行のオンラインバンキング導入により、窓口業務の削減と効率化。
  • 目的
    • コスト削減、品質向上、リードタイム短縮。

4. BPO(Business Process Outsourcing)

  • 概要
    • 業務プロセスを外部の専門業者に委託し、コスト削減や業務効率化を図る手法。
  • 対象業務
    • 人事、会計、カスタマーサポートなどのバックオフィス業務。
  • メリット
    • コスト削減、専門性の活用、リソースの集中。
  • 具体例
    • 多国籍企業がコールセンター業務を外部委託して顧客対応を強化。

5. SOA(Service-Oriented Architecture)

  • 概要
    • ソフトウェアやシステムをサービス単位で設計し、それらを柔軟に組み合わせるアーキテクチャ。
  • 特徴
    • システム間の統合が容易になり、業務プロセスに応じた柔軟な変更が可能。
    • 再利用性と拡張性を重視。
  • 具体例
    • APIを利用して顧客データを複数システムで共有。
  • 目的
    • システム全体の効率化と柔軟性向上。

6. ERP(Enterprise Resource Planning)

  • 概要
    • 財務、人事、在庫、販売などの業務を統合管理する基幹業務システム。
  • 特徴
    • 部門ごとの情報を一元管理し、リアルタイムでデータを共有。
    • 企業全体の可視性を向上。
  • 具体例
    • SAPやOracle ERP Cloudの導入。
  • 目的
    • 業務効率化、コスト削減、データの一貫性確保。

7. BI(Business Intelligence)

  • 概要
    • 経営判断を支援するために、企業内外のデータを分析・可視化する手法やツール。
  • 特徴
    • データに基づいた意思決定を可能にする。
    • ダッシュボードでリアルタイムの情報を提供。
  • ツール例
    • Tableau、Power BI、Qlik。
  • 目的
    • データ活用による迅速な意思決定。

8. SCM(Supply Chain Management)

  • 概要
    • 製品の原材料調達から製造、流通、販売に至るサプライチェーン全体を最適化する手法。
  • 特徴
    • 供給プロセスを可視化し、リードタイムの短縮とコスト削減を実現。
    • 在庫管理の効率化と需要予測の向上。
  • 具体例
    • Amazonの効率的な在庫管理と配送システム。
  • 目的
    • サプライチェーン全体の効率向上と顧客満足度の向上。

9. SCOR(Supply Chain Operations Reference)

  • 概要
    • サプライチェーンプロセスを「計画」「調達」「製造」「配送」「返品」に分類し、標準化・最適化するフレームワーク。
  • 特徴
    • サプライチェーンのパフォーマンスを測定・改善。
    • グローバル標準として広く採用。
  • 用途
    • プロセスのボトルネックを特定し、改善計画を策定。
  • 具体例
    • サプライチェーン全体の効率性を評価し、輸送コストを削減。

まとめ

観点 目的 具体例
IDEAL プロセス改善の枠組み ソフトウェア開発プロセス改善
BPM 継続的なプロセス管理 業務フローの自動化
BPR 抜本的な業務改革 オンラインバンキング導入
BPO 業務の外部委託 コールセンターのアウトソーシング
SOA サービス単位の設計 API連携によるデータ共有
ERP 業務の統合管理 SAPの導入
BI データ活用による意思決定 Tableauを活用したダッシュボード
SCM サプライチェーンの最適化 Amazonの在庫管理
SCOR サプライチェーン標準化 輸送コスト削減の分析
GitHubで編集を提案

Discussion