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HRTとクリティカルシンキング

2024/09/06に公開

クリティカルシンキングとは

クリティカルシンキング(批判的思考)とは、ある課題に対する答え(解決方法)について「この答えは本当に正しいのか」という批判を繰り返すことでより本質的な答えを導き出す技術である。

※クリティカルシンキングの方法論としてはいろいろ述べられているが、本質的には同じものである。


      ※これはクリティカルヒット(クリティカルシンキングとは無関係です)

こんな時に役に立ちます

  • 要望に対して対応策を行ったが顧客に不満が残った、または別の顧客から不満が出た
  • 相手と認識がずれたまま会話してしまい、伝えたいことが伝わらない
  • 会議で話がまとまらず、結局何も決まってない
  • タスクを頑張って消化しているのに全然楽にならない

クリティカルシンキングのwhat

クリティカルシンキングは次の3つを導き出すことである。

  1. 目指すものを定義する
  2. 何が課題なのか明らかにする
  3. 打ち手を考える

1から3は論理的に整合性がとれている必要がある。ここまではロジカルシンキングと同じである。
クリティカルシンキングにおいては、1から順番に答えを出していくが、途中で前工程の答えを疑ったり、すべて答えが出た後に再度疑ってみることが大切である。

目指すものを定義する

まずはアクションの結果何を達成したいのかを決める必要がある。
ここで言うアクションとは課題解決、要望への対応、タスク遂行といった明確な行動を伴うものから、意思決定、会議のファシリテーション、コミュニケーション(説得や情報伝達)など、幅広く含まれる。

簡単に言うと、何を考えるべきか受け手の関心は何かを考えることである。
イシューを特定すると言ったりもする。

何が課題なのか明らかにする

次に「目指すもの」を達成するために何が課題なのかを明確にする。
ここで言う課題とは現状と「目指すもの」のギャップともいえるので、もしそもそも現状が不明確なのであれば、現状についても明らかにする。

打ち手を考える

最後に課題に対してどういった打ち手を講じることで対策するかを考える。

クリティカルシンキングのhow

クリティカルシンキングのwhatに対して批判的思考を繰り返しながら本質に迫っていく。
どのように批判を行っていくかというと、次のようなステップになる。

  1. 違和感に気付く
  2. 疑ってみる
  3. 仮説と検証をする

違和感を見つけ出す

考えたことや発言などに対し注意深く観察して、これは真実だろうかという違和感がないかを意識してみる。
なんとなく正しそうだ、過去そうだったから今回もそうだろう、あの人が言うのだから間違ってなさそうという思考の偏りはなるべく排除する必要があるが、慣れていないとなかなか難しい。
そういう時は次のTipsを参考にしてみるとよい。

Tips

  • それは事実か?(客観的事実と、想像や意見を分ける。主観や感情にとらわれない)
  • 具体的には?(客観的な情報を把握する。定性的な情報でなく定量的な情報だとなおよい)
  • そもそもはどうだったか?(表面的な部分ではなく本質的な部分に意識を向ける)
  • 他にはないか?(今の意見が正しいとしてもより良い意見や、別の見方がないかを考えてみる)

疑ってみる

感じ取った違和感について、違和感が正しいか(違和感のある対象が間違っているか)を疑ってみる。具体的には客観的な事実を調査し、違和感を証明しようとする。
もし違和感の方がが間違いだったとしたら再度違和感を探すところから始める。

仮説と検証をする

疑ってみた際に得られた情報から新しい仮説を立て、それに対して本当に正しいか検証してみる。
検証は前行程の「違和感を見つけ出す」と「疑ってみる」と同じことで、自身のアイデアに対してなるべく客観的に批判と確認を行う。その際、実際に簡単な成果物を作って検証してみてもよい。

HRTとは

「Team Geek ― Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか」という書籍で紹介されている「HRT(ハート)の原則」というものがある

謙虚(Humility)
世界の中心は君ではない。君は全知全能ではないし、絶対に正しいわけでもない。常に自分を改善していこう。

尊敬(Respect)
一緒に働く人のことを心から思いやろう。相手を一人の人間として扱い、その能力や功績を高く評価しよう。

信頼(Trust)
自分以外の人は有能であり、正しいことをすると信じよう。そうすれば、仕事を任せることができる。

この3つを合わせて「HRT」と呼びたい。
読み方は「ハート」だ。
痛みを軽減するものだから、苦痛の「hurt」ではなく、心の「heart」である。

これは単に雰囲気の良い職場で気持ちよく働けるようにしようというだけではなく、大きな成果を出すには個人ではなくチームで仕事をしなければならない。そのために円滑な人間関係が必要であるというためのものである。

HRTとクリティカルシンキング

HRTは円滑な人間関係を作るためのもので、クリティカルシンキングは場合によっては他者に批判的意見を向けるものであり、一見対立しそうにも見える。しかし実際は以下の点で両者は互助関係にあると言える。

  • クリティカルシンキングは本質的な部分に目を向ける必要がある。
    そのためには、立場や理解・知識といった前提の異なる相手に対する理解がなければ意思疎通が成り立たずに本質に目を向けることが出来ない。そして相手から客観的事実やそもそもを引き出すのにHRTに則ったコミュニケーションが役に立つと言える。

  • HRTはより良い成果はチームで出すものということが前提にある。クリティカルシンキングは自分の思い込み・考えの偏りを排除し、相手が感じている課題や伝えたいことの本質を明らかにして、より適切な打ち手を講じようとするものなので、クリティカルシンキングをベースにした相手に対する尊重が役に立つと言える。

ケーススタディ

ケース1

スクラム開発を行うチームで最近アウトプットが減っているからもっと開発生産性をあげようという意見が出た。これに対して違和感、批判的な意見、仮説などを出してみてください。

回答例はスクロールしてください
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回答例1

  • アウトプットが減っているというのは何を根拠に言っているのか
  • アウトプットが減っているのが正しいとしても以前はコストや品質を犠牲にしていたのではないか
  • そもそもアウトプットが多い状態とはどういう状態を指すのか
  • そもそもアウトプットの多さを目指すべきなのか
  • 他部署や他の方からも同様の意見が出ているのか
  • チームの人数が変わってたり、前提条件は同じか
  • アウトプットの定義(単位?)を明らかにすべき
  • 目標とすべきアウトプットがあるとして、その根拠は何か
  • 最近とは具体的にいつのことなのか(過去のいつと比較しているのか)

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