VTUNER目当てでJINS MEMEを買うか迷ってるVの人たち向けレビュー
VTUNER目当てでJINS MEMEを買うか迷ってるVの人たち向けレビューです。
序盤の「結論」セクションにも書いていますが、基本的にはJINS MEMEの買い控えを検討させるような内容になっています。何かの進展があったら喜んで記事の修正をしたい所存です…。
本記事の対象読者
- メイン対象: VTUNER目当てでJINS MEMEを買うか迷ってる人で、VTuberであったりアバターをよく使ったりする人
- サブ対象: JINS MEMEをモーショントラッキング用途で使うようなアプリの自作を検討している方
本記事の対象ではない読者
- 既にJINS MEMEを持っている人
- もともとガジェット好きでポンポン買っちゃう人
結論
- JINS MEMEをトラッキングデバイスと見なす場合、コスパがやや微妙
- VTUNERアプリの挙動も個人的にはちょっと気になる所があり、手放しでは勧められない
- 全体として、少なくとも購入前に現物を試してほしい
- iOS/iFacialMocapに比べてユーザーに提供可能なバリューが小さいため、本記事の筆者が作ってるアプリ(VMagicMirror)はJINS MEMEに対応しません
この記事の筆者について
VMagicMirrorというVRMツールの作者です。
このたびVMagicMirrorでJINS MEMEのトラッキングを使えるようにしようかな、と検討課題に挙げていて、その判断のためにJINS MEMEとかVTUNERを触っていました。
参考:
VTUNERを使ってみた動画
こういう感じです。
感想
感想は2つに分けています。
- JINS MEME自体
- VTUNERアプリ
ここで、VTUNERアプリの性能はJINS MEME自体の性能とVTUNERアプリの補正的な処理の足し算で成り立っています。
つまり、VTUNERを使うときはJINS MEMEのよい点(悪い点)がそのままVTUNERアプリにも反映される、と考えてください。
いっぽうアプリ自作の検討にあたっては主にJINS MEME自体の性能に注目すべきで、VTUNERアプリの長所・短所は参考程度に見て下さい。
JINS MEME自体の(トラッキングデバイスとしての)感想
良いところ:
- ちゃんとメガネの見た目だし重くない
- 飲み物を飲んでもトラッキングに悪影響ない
- 価格のわりにまばたきの検出ができており、普通にすごい
気になるところ:
- リアル側でまばたきをしてからアバターに反映されるまでのディレイがかなり長い。0.5秒ほど遅れる
- 個人差や装着状態によってはまばたきが検出されにくい
- 片目閉じや、目を閉じっぱなしの検出ができない
- 細かい眼球運動は検出されない
- 並行移動の検出が難しい
- データ自体のfpsがそこまで高くないため、アプリ側にスムージング機能がないとカクカクした動きになりやすい
なお、「気になるところ」で挙げた問題は他の解決可能な方法が存在して、具体的にいうとiOSのARKitによるフェイストラッキングなら大体どうにかなります。
iOSのフェイストラッキングの性能がピンと来ない場合、拙作のVMagicMirrorとiFacialMocapの組み合わせを見てもらうか、あるいはもっとラクに試すならvearとかがオススメです。
VTUNERアプリの感想
良いところ:
- 備え付けのモーションが結構たくさん用意されている
- 画面を完全に見ないでも絵を撮る余地がある
- ※私はここには少し懐疑的ですが…
良いとは限らないが特徴的
- 表情切り替えが結構ヌルヌル動く
- 備え付けモーションも結構ヌルヌル動く
気になるところ
- モーションが首だけ/腰だけ、みたいな動き方で硬い印象がある
- 口パクとまばたきのカクカク感が強い
- 眼球運動があまり無いように見えがち
- アバターの首が横に向いてしまったとき、UIから再キャリブレーションしづらい
- (センサーが慣性式である関係で)アバター姿勢がたまにリセットされるが、そのときに姿勢がガクンと変化してしまう
- モーションの差し替えUIがあまりわかりやすくない
- MEME接続時に「いったんJINS MEMEを机に置いてね」と言われるのがUX的に好きではない
- 私は中度近視のコンタクトレンズユーザーなのですが、もし度入りメガネでJINS MEMEを使ってたら「メガネ外しましたらiPadの画面が見えません!!!!」となっちゃう自信があります…
トラッキングデバイスとしてのJINS MEMEが勧めにくいと思った理由
抜粋して再掲しますが、JINS MEMEの性能上とくに気になった点は以下です。
- リアル側のまばたきを検出してからアバターに反映されるまでのディレイがかなり長い
- 個人差や装着状態によってはまばたきが検出されにくい
- 片目閉じや、目を閉じっぱなしの検出ができない
- 並行移動の検出が難しい
これらの欠点に対してJINS MEMEが最小構成で約2万円である事を考えると、人に勧めるにはちょっと高いな…という結論に至りました。
特に本記事の時点ではVTUNERがiOSのみにリリースされているため、「iOSのフェイストラッキングのほうが性能良くない?」という言い方が出来てしまうのもしんどい部分です。
さらにデバイス自体ではなくVTUNERアプリのほうにもやや課題を感じたため、これを踏まえると(ツール自作をしない想定の)VTuberさんにはやはり勧めにくい、という所感になっている次第です。
なお、VTUNERのアバターモーションに関してVRMアプリの製作者として(自分のアプリの課題は棚に上げつつ)物申しておくと、アバターのカクカクした動きの課題点はカクカクしていること自体というより、動きのヌルヌル感に対する一貫性が低いのが気になった…というのがより正確な感想です。
- 首の動きや瞬きなど、JINS MEMEでトラッキングしたデータで動かすときはカクカクする
- 用意されたモーションや表情をボタンで動かした場合はヌルヌルする
現状JINS MEMEのトラッキングデータ自体は低fpsでどうしてもカクカクしてしまうので、VTUNERアプリ側の施策として「いっそ全ての動きをカクカク寄りにしてアニメっぽく動いてくれる」とか、あるいは「JINS MEMEのデータを滑らかに補間してくれる」、といった方向のアップデートで馴染んでいる感じの動きになるのを期待したいです。
感想を踏まえて
いろいろ感想を書いた通り、トラッキングについてはメリットだけでなく課題も多いデバイスです。買って期待外れになるリスクは無視できないので、少なくとも購入前に現物を試してほしいです。
また拙作アプリのVMagicMirrorでJINS MEMEをサポートするかという観点についても改めて。
現在VMagicMirrorでサポートしているiOS+iFacialMocapのトラッキングに比べ、JINS MEMEはユーザーに提供できるバリューがかなり弱いと判断しました。このため、VMagicMirrorはJINS MEMEに対応しません。
最後に
いろいろ課題点をあげつらって「JINS MEME勧めにくいよ」という主旨のことを書きましたが、逆にトラッキング性能が改善してくれたら勧め直したいデバイスではあります。
カメラ無しで頭部の3自由度(または6自由度)運動が分かるだけでもけっこう価値があるのと、あと本記事の時点ではリリースされてませんが技術的にはAndroidアプリが出せる構成で、iOS端末が無い場合の選択肢になるので…。
また、よしんば上記の課題が解決しないとしてもJINS MEMEは一義的にはセルフケアとかライフログ取得用のデバイスです。そっちの文脈でのJINS MEMEを否定するものではありません……まあ私はこの手のデバイスが苦手で正直使いこなせていないですが。
以上のような事も踏まえ、「JINS MEMEがトラッキングデバイスとして改善されるか、またはいっそVTuber特化な"JINS V"みたいな別のトラッキングメガネが出たら嬉しいな…」という一方的な希望を添え、本記事の〆とします。
補足: Twitterで頂いた補足情報
私が特にJINS MEMEのトラッキング性能に不満を漏らしたところ、けっこう詳細に説明を頂けたので冒頭のツイートだけ貼っておきます。興味のある人はぜひご一読下さい。
まばたきの遅れ問題の改善検討に言及されていたり、ハードウェア上対応できない線引きが明示されていたりして、色々と参考になります。
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