安価な10GbE/2.5GbEスイッチングハブを使ってみた
はじめに
フレッツ光クロスのような10Gbpsのインターネット回線が普及し始め、家庭内でも10GbEが身近な存在になってきました。私も宅内のみですが、10GbEや2.5GbEを自宅サーバでの通信に用いています。
10GbE機器はまだまだ高く、BuffaloのLXW-10G2/2G4やQNAPのQSW-2104-2T(いずれも10GbE 2ポート + 2.5GbE 4ポート)でも20000円以上します。
ところが、最近かなり安価な10GbE搭載スイッチングハブが海外やAmazonマーケットプレイスで売られていると聞き、実際に購入して試してみました。
安価な10GbE搭載スイッチングハブ
中国語圏のサイトを検索するとたくさん出てきますが、安価な製品の多くは10GbE 1~2ポート+2.5GbE 4~5ポートの構成になっていることがわかります。
JD.comで "交换机 10g" と検索した際の結果
Twitter等で調べてみると、これは搭載しているチップがRTL8372であることに由来しているようです。Realtekのサイトのラインナップには記載がなく、データシート等も出てきません。Baiduで検索してみたところ、ブロック図の記載があるサイトを発見しました。
原文:2个万兆光口变成2个万兆电口可以加万兆电口PHY(RTL8261),也就是可以做成4*2.5GE+2*10G SFP/4*2.5GE+1*10G SFP+1*10GE/5*2.5GE+1*10G SFP
Google翻訳:2 つの 10G 光ポートは、10G 電気ポート PHY (RTL8261) を追加することで 2 つの 10G 電気ポートに変換できます。つまり、4*2.5GE+2*10G SFP/4*2.5GE+1*10G SFP+ 1*10GE/5*2.5GE+1*10G SFP にできます。
2.5GbE 4ポートと10GbE 2ポートを実装できるチップセットであることがわかります。またRTL8261を追加すれば10GBASE-T(RJ45)での実装も可能なようです。
原文:而Realtek的RTL8372就是能让市场上用最低成本获取万兆网络的解决方案
Google翻訳:Realtek の RTL8372 は、市場が最低コストで 10 ギガビット ネットワークを入手できるようにするソリューションです。
チップの売価は不明ですが、上のような記述があるので相当に安いのでしょう。
おそらくですが、10GbEと2.5GbEの組み合わせのハブで安価なものはRTL8372を搭載しているのではないでしょうか。
日本でも類似の製品を購入している方がいるようでこちらも参考になりました。
SKS1200-4GPY2XF-P
色々探したところ、2.5GbEにPoEがついているものを見つけ購入しました。
ブラックフライデーセールで11/24に購入、12/02に到着しました。
ブラックフライデーセールで送料込み約6500円
なおメーカーのラインナップには記載がないのですが、JD.comの商品ページはありました。
外観
ロゴが漢字の"八丁"としか見えないですが、安徽兮克(seekswan)というメーカのようです。(中国語だとそういう発音なんでしょうか?)
外箱
正面
背面
側面(左右両側に通気穴が空いています)
中身
分解して中身を確認してみます。右側がハブの回路、左側が電源回路になっています。
筐体を開けた状態
ハブ
PCBに型番のようなものがシルク印刷されていました。機能によって様々なバージョンが供給されているのかもしれません。
PCB-K0402W-U13-V1.0という表記がある
チップの型番も直接確認したかったのですが、ヒートシンクがかなり固くついていて壊してしまいそうだったので諦めました。海外サイトで紹介されていたYuanLeyというメーカの製品とチップ構成はあまり変わらないように見えるので、RTL8372なのはほぼ確実でしょう。
基板と本体の間にはサーマルパッドが挟まれており、ヒートシンクに加え金属製のシャーシで放熱できるようになっていました。
サーマルパッドが挟まれている
電源
ごく普通のスイッチング電源のようです。
Hi-POWER-75W-V7.0という表記がある
一応サーミスタとヒューズがついていました。(ヒューズは3.15A / 250Vでちょっと大きすぎるような気もしますが)
一次側にあるサーミスタとヒューズ
iPerf3
同チップを搭載した製品のベンチマークはたくさん出てるので簡易的な計測です。
サーバとクライアントそれぞれをハブにつなぎ、iPerf3での計測を行いました。
- サーバ
- OS: Windows Server 2019 Standard 1809
- ネットワークカード: HP 560SFP+
- 接続方法: 光トランシーバ(HP 455885-001 / FINISAR FTLX8571D3BCL)
- クライアント
- OS: Windows 11 Pro 23H2
- ネットワークカード: Intel X520
- 接続方法: DAC(Amazonマーケットプレイスで購入したノーブランド品)
以下クライアント側での計測結果です。
> iperf3.exe -c 192.168.0.250 -P 3 -t 300
[ ID] Interval Transfer Bandwidth
[ 4] 0.00-300.00 sec 111 GBytes 3.17 Gbits/sec sender
[ 4] 0.00-300.00 sec 111 GBytes 3.17 Gbits/sec receiver
[ 6] 0.00-300.00 sec 110 GBytes 3.14 Gbits/sec sender
[ 6] 0.00-300.00 sec 110 GBytes 3.14 Gbits/sec receiver
[ 8] 0.00-300.00 sec 110 GBytes 3.14 Gbits/sec sender
[ 8] 0.00-300.00 sec 110 GBytes 3.14 Gbits/sec receiver
[SUM] 0.00-300.00 sec 330 GBytes 9.45 Gbits/sec sender
[SUM] 0.00-300.00 sec 330 GBytes 9.45 Gbits/sec receiver
iperf Done.
9.45Gbpsほど出ています。問題なく通信できていることがわかります。
SFPの相性
手持ちのトランシーバやDACをいくつか試してみたところ、相性と呼ばれるような事象は起きず問題なく使用できました。上で計測したように、ノーブランドのDACも使えたので大抵のものは動きそうです。
また、MikrotikのS+RJ10のようなRJ45に変換するSFPモジュールも動作しました。一般的なツイストペアケーブルでの運用も可能でしょう。(発熱がすごいですが)
PoE
説明書には単ポートで30W、5ポート合計で75Wまでの出力に対応しているとの記載がありました。
手持ちのネットワーク機器で802.11atに対応した機器はないので、802.11atに対応した12VのPoEスプリッタで動作を確認しました。PoE機器は持っていないのできちんと規格通りの電力が引けるのかはわかりませんが、合計75Wだと11at 2ポート+11af 1ポート程度になりそうです。
スプリッタから12Vが出力されていることがわかる
なお、本体のランプは通信速度を示すもので、PoEのステータスを示すランプはありません。(緑が10/1000/1000M、黄色が2.5Gでリンクしていることを表すようです)
ハブにPoE給電のランプはない
まとめ
1週間ほど使ってみましたが、RTL8372を搭載した安価な10GbE/2.5GbEスイッチングハブでもホビーユースであれば十分な性能であることがわかりました。(Realtekのチップは正直あまりいいイメージはなかったのですが、良い意味でイメージが覆されました)
また、値段の割にしっかりとした作りという印象を受けました。中華ガジェットでよくあるコイル鳴きや異常な発熱はありませんでした。
2.5GbEであればネットワークカードは安価ですし、ケーブルもCat5eが使えるのでとりあえずのアップグレードにはちょうどよいのではないかと思います。
皆さんも年末に自宅ネットワークの性能向上に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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